IE9ピン留め
快楽という名の電車

ミニガムの缶と銀製のペンダントトップ。

 近所に「快楽」という名のカフェ兼レストランが開店したことは以前ブログでご紹介したが、このレストランのインテリアにも使われている快楽(PRAZERES)という名の市電28番は世界中のガイドブックに紹介され、リスボンのバス会社CARRISのドル箱、いや円箱?である。乗客の大部分が一見さんの観光客であるのをいいことに、わずか1年かそこらで1.50ユーロ→1,75ユーロ→2.85ユーロというとんでもない値上げをした。しかし肝心のリスボン市民からは特に強い抗議の声は聴かれなかった。市民の利用者の大半はバス・市電・地下鉄の共通定期券を使い、定期の値上げ幅は1回の運賃の値上げ幅に比べ甚だしく大きくはない。半ば諦め気味なのだ。リスボンの市電はもはや交通機関、移動手段としてはその役割を終え、現在は楽しい下町めぐりのアトラクションとしてその存在意義を保っているのかもしれない。
聖アントニオ祭りのシンボル、イワシをデザインした楽しい市電。夏は車内でファドコンサートも行われる。

 老婆心ながらこれからリスボンに来る方々に、市電に乗る時の心得を伝授したい。

1、十分時間に余裕を持つこと。急ぐ時にいつ来るかもいつ着くかも判らぬ市電は乗ってはいけない。市電はしばしば路上駐車の車に立ち往生させられる。営業や配送の車が得意先に立ち寄る際、レールぎりぎりに駐車している。商品の納入や伝票を書き終えるまで数分かかる。そこに市電がやってくる。駐車している方はほんの数分かもしれないが、用事があって市電に乗っている人間にとっては1分が1時間にも感じるものである。

2、老人、妊婦、身障者、赤ん坊にはサッと席を譲る。これはポルトガルで感心したことの一つである。元気な若いモンが座って譲らないとジジババ本人または周りの乗客がさっさと立てと促し、他の乗客もそうだそうだオーラを一斉に発射する。ポルトガルではどう見ても介助が必要な人がよく一人で市電やバスに乗って出かけているが、周りの人が助けてくれる伝統があるからだ。

3、停留所では順番に乗るべし。列があれば当然であるが、列がなくてもちゃんと暗黙の順番があり、誰が先に停留所に来たかはお互いに把握している。市電やバスが着いても誰もすぐに乗ろうとしないときは、先に来た人が先に乗るように順番を待っているのだ。それを無視して我先に乗り込むのはルール違反である。しかし複数の市電やバスが止まる停留所では譲り合っていると、運転士が誰も乗らないものと判断し、出発してしまう時もある。それを避けるために乗ろうとしている車両が来たら、手を水平に挙げて「乗りますよ」という意思表示をした方が良い。

4、窓から頭を出さないように。市電は窓の開閉も旧式の上下にスライドする方式で、窓から首を外に出して写真など取っていると、揺れた拍子に窓枠が落ちてきてギロチンになる可能性もなきにしもあらず。それでなくともかなり狭い道を走るので、窓から出していた肘が建物にこすってすりむけそうな場所もあるからご注意を。
carrisの車庫には市電マニア必見の市電博物館がある。

5、痴漢はまれだがスリはいる。もうひとつポルトガルで感心したのは、痴漢という犯罪がほとんどないことだ。もちろん性犯罪はあるし痴漢も皆無ではないが、社会的な地位のある人間が盗撮するとか、満員電車で見知らぬ女性に触って懲戒免職になるとかは聞いたことがない。
 市電に乗っている間、ゴソゴソと不審な感覚を感じたらそれは痴漢ではなくスリなので絶対に我慢してはいけない。その場から離れ、或いはバッグを持ちかえるなど防御しなくてはならない。また込み合った電車に無理やり入ろうとしてすぐ出て行く三人組(男3人または女3人)はスリである。

6、5と重複するが、多額の現金を持ち歩かない。ポルトガルのATMでお金を下ろすと5ユーロ札、10ユーロ札ばかり,たまに20ユーロ札が出てくるので、ポルトガル人の財布の最も高額な紙幣は20ユーロ札だ。ほとんどの商店では大した金額でなくとも銀行のデビットカードやクレジットカードが使える。どうしても現金払いなのは八百屋や市場で野菜果物を買ったり、カフェでコーヒーを飲んだりタバコや新聞を買うとき、バスや市電に乗る時ぐらい。リスボンではちょっとした買物はVISAカードと小銭さえあれば大体間に合う。しかし、日本人観光客は手の切れるような100ユーロ札、50ユーロ札を束にして持ち歩いている。泥棒の目には日本人はお金を着て歩いているように見えているはず。くれぐれもご注意を!
運転席の側に陣取って景色を眺めるのも楽しい。

7、したがって市電に乗る前に、盗難防止のために、またお札で運賃を払って運転士を煩わせないためにも、あらかじめ小銭または1日乗車券(2012年1月現在5,10ユーロ)を用意し、取り出しやすいところに入れておこう。財布やパスポートなどは容易に取り出せない場所にしまっておく。

 以上の忠告を頭の片隅に入れて、「快楽」行きの愉しい旅を満喫して頂きたい。市電18番「アジューダ(助けて)」や28番「ソコーロ(救援の意、マルティン・モニスの旧地名)」に乗ったら本当に助けを求める羽目になったりしませんよう。
ポルトガルにも手先の器用な人がいる。左は金製、右は銀製の市電のペンダントトップ。CASTELOと行き先の表示やパンタグラフも付いていて、車輪はちゃんと回る。コインやチロルチョコと大きさを比べてください。
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# by caldoverde | 2012-01-21 00:08 | ポルトガルの旅 | Comments(4)
クリスマスの来訪者

 ご近所に住んでいた漫画家のヤマザキマリさんがシカゴに引越して2度目の冬になる。リスボンに住んでいた最後の1年から怒涛のブームを巻き起こしている「テルマエ・ロマエ」が遂に映画化され、来春公開の運びとなった。予告編を見ると往年のハリウッド史劇を彷彿とさせる壮大な出だし、そしていきなり昭和の「時間ですよ」の世界へぶっ飛ぶ古代ローマ人。もうこれだけでも十分可笑しい。劇場でコーラなど飲みながら見るのは危険だ。 


 そんな期待度100%の映画を作った武内英樹監督がリスボンに遊びに行くのでよろしくとヤマザキさんからメールが来た。ご本人からも電話を頂いた。とても気さくな声で楽しみにしていると仰った。私にではなくリスボンに期待していると思うが。ひょっとしたらリスボンを舞台に映画を作るつもりかも知れない。もしリスボンがつまらないと思われたら、企画は流れポルトガルの国家的損失になる。責任重大だ。

「のだめカンタービレ」「電車男」などの話題作で華々しく活躍中の武内監督は街の中心部からやや離れた、普通のホテルに宿泊。空港からはエアポートバスでホテルに来たそうで、このバスの切符がメトロを除く市内の乗り物が自由に使える1日乗車券にもなるということを教えて頂いた。さすが既に訪問国が50カ国という旅の達人である。ちょうど昼時だったので、日本式カステラのお店「カステラのパウロ」でランチをとった後、切符を有効に使うべく市電でリスボンの散歩に出かけた。
ミゲル君が歌っていたサン・ペドロ・デ・アルカンタラ展望台で歌うのも監督の重要なミッションだった
リスボンの青山カンポ・デ・オリーク地区のヤマザキ邸

 この日は素晴らしい天気で、ひなびた街並みもおもちゃのような市電も監督は多いに気に入ったようだ。「出汁がきいてるな~」とは武内監督のリスボン評である。市電から降りて迷路のようなアルファマ地区を歩き、サンタ・アポロニア駅でポルト行きの切符を購入し、プラゼーレス墓地の近くにあるヤマザキマリ邸を訪れ記念写真を撮り、ついでに近所の私のアパートで小休止をとった。「高級住宅街じゃないですか」「リスボンの青山」と賛辞を頂いた。その後ケーブルカーで「消臭力」のミゲルが歌っていた展望台に行き、向かいのポートワイン協会のバーで1ユーロ60セントのグラスワインの味と安さに感嘆していた。ファドをぜひ聴きたいと言うことでバイロ・アルト地区のファド酒場をチェックした後、レスタウラドーレス広場に面したベタなポルトガル料理屋で夕食をご馳走になり、翌日のポルト日帰り旅行後、夜はガイド仲間とのクリスマスパーティーへの合流を約束して別れた。
マヨネーズたっぷりの海老のカクテル
ポルトガルに来たらお約束のシーフードリゾット

 友達のマンションはリスボンのウォーターフロントことエキスポ地区にあり、そこから浦安、ディズニーランドの話に発展し、監督も別の友達もそこでバイトしていたという偶然も重なってパーティーは大いに盛り上がり、2時過ぎ迄に4~5本のワインが空けられた。

 次回作のロケハンという目的でスペインやモロッコに滞在中の武内監督、ついでに立ち寄ったポルトガルが、エキストラから主役に抜擢されて一大ブームを巻き起すことを期待していますよ!
# by caldoverde | 2011-12-27 01:58 | カルチャー | Comments(5)
ファドが世界遺産に
 景気の良い話のないポルトガルに、明るいような明るくないようなニュースが!ユネスコの無形文化遺産にポルトガルの伝統音楽のファドが登録された。ポルトガルの誇りとばかり日曜日の夜の報道番組はずっとそのことが話題となった。めでたいことだ。ファドの知名度が世界的に上がり、本物のファドを聞きにポルトガルに来る人々が増えれば嬉しい。

 一方で、へそ曲がりな私はポルトガルの音楽はファドだけじゃない、もっと色んな音楽があると反論したくなる。ファドってリスボンとコインブラの地方の民謡なのに、それをポルトガル全体で歌われているものとのイメージを固定化してしまうんじゃない?ポルトガル人の好きな音楽は暗い泣節ばかりという先入観を植え付けてしまうんじゃない?
 私は全く音楽には詳しくないので偉そうな事は言えないが、ほんの少しだけ知っているポルトガルの様々な伝統音楽やそれに霊感を受けたミュージシャンをご紹介したい。

 大歌手のアマリア・ロドリゲスの後継者はこの人だと思っていた。ドゥルス・ポンテスは圧倒的な歌唱力でファドもポップもクラシックも歌う。「暗いはしけ」 のオリジナル「黒い母」はブラジルの大農場の女奴隷が主人公。アフリカっぽいアレンジと数オクターブの声が雄大なスケールを感じさせる。

 ポルトガルの文化のルーツの一つはケルト。特に北部にはケルト由来のバグパイプや太鼓を使った民謡や踊りが残っている。ファドにケルトの香りを加えてアレンジしたドゥルスの「川に集う人々」はアマリアの歌以上に心揺さぶられる。

 ポルトガルの公用語はポルトガル語の他に北部の国境の町ミランダ・ド・ドウロで話されるミランダ語がある。ネー・ラデイラスはCD「トラス・オズ・モンテス」で鈴を振るような響きのミランダ語で北部の民謡を現代風にアレンジして歌う。

 アレンテージョ地方の男性コーラスも好きだ。揃いの帽子とチョッキを身につけたおじさん達が力強く歌う労働の歌。そこから革命の合図となったゼカ・アフォンソ「小麦色の町グランドラ」が生まれた。

 田舎者の代名詞となっているアレンテージョ人の中にもソフトで洗練された歌を聞かせてくれる人がいる。大海洋帝国だったポルトガルの凋落を詩的に歌ったヴィトリーノの「帝国の落陽」はしみじみ美しい。

 最後にリスボン近郊のアンゴラ移民街から生まれ世界のダンスシーンに大きな影響を与えたクドゥーロというノリノリの音楽。この夏ヒットしクラブの若者だけでなく村の爺さん婆さんも踊らせたジョゼ・マリョアの「モレーナ・クドゥーロ」

皆さんはどの音楽がお好きですか?
# by caldoverde | 2011-11-28 22:14 | カルチャー | Comments(9)
地の果てる処のキノコ
 リスボンから車で約45分も走ると世界の果てに行き着く。ユーラシア大陸最西端ロカ岬。ここはまたリスボンとは異なる特殊な小気候の地域に属し、独特な植物の宝庫でもある。
 岬を覆うように生えているのは巨大化した「マツバギク」。5月頃満開になり、ピンクや黄色の花はとても可憐で、太い指のような葉は秋になると先が赤く色づいてこれも美しい。繁殖力が強く、時々引き抜かれている。
 春は白い小さな葱坊主のような「アルメリア」が咲く。別名ハナカンザシとも呼ばれるこの花が風に揺れる様は、夢二の描くはかなげな少女のようだ。
 数年前までやたら生えていたが、おそらく駆除されたのだろう。最近あまり見ない「ドクゼリ」は不気味な宇宙人のような姿である。
 何十年に一度しか花を咲かせない「リュウゼツラン」はポルトガルの海岸部でよく見られ、電柱のように丈のある茎を伸ばしてあまり美しくはない黄色い花を咲かせると、倒れて枯れてしまう。

 そして春と秋の、暑くもなく寒くもない時期の雨の後には、ロカ岬にキノコがにょきにょきと生えてくる。春のキノコは巨大な白いキノコで、秋は茶色のこれまたかなり大型化する茶色いキノコが出現する。時々コメントを寄せてくれるOVOSMOLESさん、PATOさんはキノコ狩りの名人で、季節にはリスボンから車を出してロカ岬にキノコを採りに行き、仕事でロカ岬に来る時はビニール袋を持参する程の熱心さである。当然地元の人も黙ってはいない。ロカ岬の観光局のおばさんもキノコハンターの一人で、彼女は食用と毒キノコの見分けがつくと自負している。彼女によると、軸にスカートをはいているのは食べられるということだ。

 先日ロカ岬に行ったところ、このおばさんがずっしり重いビニール袋を私にプレゼントしてくれた。中身は日本では見たこともないような巨大なキノコがたくさん入っていた。椎茸に似た茶色のひび割れた模様のある笠で、軸はかなり長く、開いた状態のものは確かに軸にスカートをはいたような格好に見える。とても一人で食べきれる量ではないので、同じくこのブログの読者のMOREIAさんにおすそ分けすることにした。彼女の旦那様はご母堂がこのキノコをよく料理し食べていたということをおっしゃったので、私も二人の経験者のお墨付きを得たものと心強く、早速その晩に調理に取りかかった。

 一番大きい直径が15cm位あるものは焼き魚用のグリルでシンプルに焼いて、ポン酢で食べた。マツタケどころか椎茸ほどの香りも何もない淡白な味だ。
 丸い、笠の開いていないものは玉ねぎ、ニンニク、ベーコン、ソーセージと一緒に炒めてワインのつまみとして食べた。これも特に印象に残る味や香りはないのだが、キノコ特有の歯ざわり、弾力があり、悪くはなかった。


 しかし食べ終わってしばらくすると腹の具合がおかしくなり、胃腸が不穏な音を鳴らし始めた。ふと数ヶ月前ポルトガルに住むタイ人の家族がキノコで食中毒を起こし亡くなったというニュースが頭の中によぎった。静かなトイレの中で体と心の安定を試みた。最近少々便秘気味だったが問題は一気に解決した。キノコとソーセージの炒め物が私の贅肉となるのは回避された。喜ばしいことだ。

 インターネットで調べると、私の食べたキノコは「オニタケ」か「カラカサタケ」のようだ。ところがこの両キノコは人によって食用とされたり毒キノコとされたり評価はまちまちである。生食厳禁と警告している人もいれば、調理法を紹介しているHPもある。15cm以下のものが毒だという人もいれば、人によって食中毒を起こす可能性もありという記述もある。どうも100%安全なキノコではないらしい。調理の仕方や体質によっては当たる可能性もあるオニタケ?は、命を賭してまで食べたいような美味なものでもなかったので、まだ冷蔵庫に眠っているキノコの処分を今検討中である。
石川県HP「いしかわ きのこ図鑑」より


# by caldoverde | 2011-11-22 02:29 | 野菜・果物・キノコ | Comments(8)
イワシ萌え
 長い夏が唐突に去って秋のしみじみとした寂寥を感じる間もなく、クリスマス商戦が始まった。近所にもクリスマス需要を当て込んだと思われる店がオープンした。市電28番の終点プラゼーレス墓地から一つ手前のサント・コンデスターヴェル教会停留所前にある、洒落たデザインの食品や小物などを売るピメンタ・ローザ(ピンクの胡椒)という店だ。
この教会の向かい側にある

 中身はスーパーで売っているものと大差ないが、パッケージによって立派な贈答品に変身した品々が、細りゆく一方のポルトガル人や私の財布の口を無理やりこじ開けさせる。

 ポルトガルのイラストレーターがセンスを競う魚の缶詰。ポルトガルを代表する魚のイワシの他に、マグロ、イカ、ニシンの缶詰がお洒落な紙箱に包まれ、更に贈答用に4個入る箱も用意されている。缶詰は3ユーロより、贈答箱は4個買えばサービスされる。


 イワシの缶詰をイメージしたレトロなパッケージにイワシ型のチョコレートを詰めたイワシチョコ。可愛いイワシ模様の銀紙に包まれたチョコの中身はイワシのペーストで、チョコと潮の香りが絶妙なハーモニーを醸し、お父さんのビールのお供にも、育ち盛りのお子様にもぴったりのスナックです。
 …というのは嘘です。チョコは単なるミルクチョコで、銀紙をよく見るとバルセロナのメーカーが製造しているではないか。箱はポルトガルのイメージをこれでもかと押し出しているのに、中身はスペイン製、詐欺じゃん!しかもいいお値段。でも面白いから許す。


 陶製のイワシは、中に磁石が仕込まれクリップ留めの機能を有する。


 イワシプリントのエコバッグ。コットン製で数パターンのイワシシリーズがある。


 今までは突き抜けたデザインがあまり見られなかったポルトガル製品に、ようやく可愛いなと思えるものがぼちぼち出始めてきたようだ。ポルトガルは消臭力のミゲル君ばかりでなく萌えキャラクターをどんどん世界に売り込み、オタクのメッカとなることを国策に掲げるべきだ。それはギリシャ、イタリアに次いで懸念されているポルトガルの経済破綻を回避する有効な手立てとなるだろう。
上は糸カボチャ、下はサクランボのジャムと陶器の入れ物のセット。カボチャは判るが、下の容器の蓋は微妙な形。
民族衣装に使われていたコットン生地で作ったパソコンバッグ。ダサ可愛い。
# by caldoverde | 2011-11-07 21:32 | 話題の店 | Comments(8)
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