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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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テージョ河アート散歩 その3 エキスポ編

 以外に早く小春日和の日曜が来た。今度はエキスポ地区まで自転車で行き、朝日の昇るテージョ河や水辺に集う野鳥を見たいと思い立ち、前日は6時半と6時45分に目覚ましをセットしたが、ベッドから出たのは7時で家を出たのは7時半、すでに日は昇った後だった。危険な日曜ドライバーが起きださないうちに、早いところ自転車に乗らなくては。アパートから地下鉄サン・セバスチャン駅までは楽々の下り坂で、そこからオリエント駅までは自転車を地下鉄に乗せる。消費カロリーほとんど0のずぼらサイクリングである。




エキスポ地区から伸びるヴァスコ・ダ・ガマ橋。
1998年開通、長さ17km。


 リスボンの風景と言えば一般的に思い浮かべるのは、サン・ジョルジェ城やカテドラルの周りをびっしり取り囲む古い家並み、下町を走るチンチン電車、「消臭力」のあのCMのイメージだろうが、実はSF映画の背景にそのまま使えそうな、モダン建築の集積した場所もある。1998年にリスボン万博の会場となったエキスポ地区だ。この年に私はポルトガルに住むようになり、万博にも2度ほど行ったが、日陰を作る並木もないだだっ広い会場を、何百メートルも歩いてパビリオンを移動し、炎天下の中長い列をなして入館を待つのは本当にうんざりした。もう2度と来たくないと思った。
 しかし14年後の現在は緑も多くなり、川沿いの遊歩道もだいぶ整備され、散歩やジョギング、サイクリングはかなり快適になった。そして万博終了後も生き残った建物は、空と水という広大なスケールの自然の中で、その独創的なデザインと素材の可能性を追求した人工美を際立たせている。

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万博当時に作られた弓状のヴァスコ・ダ・ガマ・タワーの前に、最近ホテルが開業。帆に風をはらませて出航する船のよう。

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ポルトガル国鉄・リスボン地下鉄オリエント駅。スペインの世界的建築家カラトラバの作。ポルトガル人には夏は暑く冬は寒いと不評。

 どの建物も、プロジェクトの時点ですでに工期の大幅な延長や予算オーバーが見込まれていたんじゃないかと想像する。事実、誰もが1998年に無事に万博が開かれるのを危ぶんでいた。とんがり帽子の高級マンションは、万博と同時に完売を予想していたのだろうが、その後もだらだらと工事は続いていた。
 美しさを追求するあまり、全然実用的じゃない建物も結構ある。オリエント駅のホームの白い林のような優美な屋根は、夏は灼熱の太陽を、冬は冷たい雨を、時には吹き荒れる風を列車を待つ乗客に受け止めさせる。世界的な建築家アルヴァロ・シザ設計の薄いコンクリート板を布のように吊り下げた建物の下で、私はどうも休む気になれない。面白い凹凸のついたビルは携帯電話会社のオフィスだが、なんか無駄なような…

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赤い鉄のオブジェの右側の豪華客船を思わせるマンションは各戸2階あるメゾネット形式。左はヴァスコ・ダ・ガマ・ショッピングセンター
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ポルトガルの生んだ世界的建築家アルヴァロ・シザによるポルトガルパビリオン。この屋根、ほんとに大丈夫?


 しかし、建物が巨大な野外彫刻だと考えると、一見無駄に思える空間や装飾の中に、ゆとり、ユーモア、清潔感、緊張感、躍動感、静謐さといったものが見て取れ、経済面ばかりを追求したコンクリートや洗面所を思わせるタイルを使った20世紀半ばの建物よりはよっぽど楽しめる。
 エキスポ地区は20世紀末のポルトガルの遺産として、未来に受け継ぐことができるだろうか。
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凹凸のついたヴォーダフォンの社屋。紅白の柱は水族館の広告塔。
しかしマンボウはもういない。

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テージョ河にはいろんな鳥がやって来る。ソリハシセイタカシギ。
Commented by ひとみん at 2012-12-03 19:20 x
このあたりは、市内と違って近代的ですよね。リスボンにいたころは、ときどきウォーキングに行っていました。
Commented by caldoverde at 2012-12-04 05:16
エキスポ地区は少し歩くと昔の工場地帯の名残がまだあって、川の浅瀬には色んな野鳥が見られて面白いですね。でも住むとしたら、昔ながらのバールやカフェや古い教会があった方がいいなあ。何気なく覗いた扉の奥には家具や靴の職人の工房があったり、商品がほとんどデッドストックみたいなお店のあるところ。
Commented by おっちゃん at 2012-12-04 05:22 x
ポルトガルには風水なんてのは、ないでしょうからね。日本や中国だとビルの角が運気を下げるとか、気にする建築家いるかもね。
Commented by caldoverde at 2012-12-04 05:43
実は風水関係の本はありまして、昔日本語を教えていた建築家も風水を取り入れていると言ってましたが、なんちゃってでしょうね。鬼門に玄関、窓が全部北向きの家、尖った三角形の土地に建てた建物、とんでもない傾斜地にへばりついた家など、風水的どころか建築基準法的に大丈夫かという物件多し!でも建物の角は丸くカーブしているものが多いです。
by caldoverde | 2012-12-03 10:22 | カルチャー | Comments(4)