メルカード・ルネサンス
2013年 11月 30日
リスボンの各地区には市場(メルカード)があるが、近年は大型ショッピングセンターの中のハイパーマーケットや、私の住むアパートの隣のピンゴ・ドーセなど全国的に展開しているスーパーに押されて、かなり寂しい状況だ。櫛の歯が抜け落ちるように業者が撤退し、品ぞろえも貧弱で、値段もスーパーと大差ないのであれば、誰が午前中しか営業していない市場に買い物に行くだろうか。我がカンポ・デ・オリーク地区の市場も住み始めたころに比べるとかなり寂れてしまったことは否めない。
ところが2013年の夏以来改装工事を行い、ようやく最近リニューアルを終えたばかりのカンポ・デ・オリーク市場に行ってみたら、えらいことになっていた。
市場の中央がイートインコーナーになっていて、その周辺がその場で作って売る軽食屋の出店になっている。ショッピングセンターによくあるマックとかケンタッキーではない。ピザもパスタもない。ほとんどオーセンティックなメイド・イン・ポルトガルもんばっかりである。例外は寿司だが、市場直送として許そう。
夜は、これまた手ぶらで近所からやってきた風の人々が、ワインやコーヒーを飲みながら談笑している。今はインターネットやケーブルテレビの普及で家に引きこもる人たちが増えたが、昔リスボンでは夜の11時、12時まで散歩したり、外でコーヒーを飲んだりするのは普通だった。基本的にポルトガル人のレジャーとは人と話すことなのではないかと思う。今日はこれが美味しいよ、味見してごらん、などと勧められ、釣られて買ったりおまけしてもらったりと、売り手と買い手の交流自体が楽しいのだ。そしてそこにやって来る近所の人たちとたわいないことを話すのが好きなのだ。たとえ親しい人がそこにいなくても、そんなざわめきを聞きながらぶらぶら歩くのは愉しい。
昔から出店している魚屋、肉屋、八百屋がそのまま継続しているのもうれしいが、市場の営業時間が夜まで延長され、業者によっては午後も営業を続けているのが良い。スーパーの買い物は、時間帯によっては忍耐と寛容が要求されるのだが、市場の買物は長い列の中でイライラしながら待つことはまずない。
カンポ・デ・オリーク市場は伝統的な商業形態を踏襲しながら若い世代のアイディアやニーズも取り込み成功した良い例であろう。この賑わいが続けば、バルセロナの市場のようにリスボン観光の目玉の一つとなるに違いない。市電28番で終点のプラゼーレス墓地で降りたら、その少し手前のサント・コンデスターベル教会そばの市場に行くべきだ。ぜひ地元の人たちと一緒に市場の軽食を楽しんでほしい。
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