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by caldoverde
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巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督死す

世界最高齢の映画監督、マノエル・ド・オリヴェイラが、4月2日、ポルトで死去した。106歳。昨年まで制作を続け、生涯に残した映画は70本以上に及ぶ。この日のTVニュースはずっとこの偉大な監督の業績をたたえ続けいる。
オリヴェイラ監督の独特のスタイルは、国内外の評論家に高く評価されている。日本でも「芸術映画」専門の独立系映画館で特集されたり、NHKの衛星放送でも放映されたので、インテリな映画好きの間では知名度は高いだろう。では、ポルトガル国内での人気はどうだったのだろうか。
巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督死す_a0103335_7205167.jpg
「アブラハム渓谷」

新作が発表されるとリスボンの1、2の映画館で長くて3週間上映される程度で、とても大ヒットとは言えない。ポルトガル人でさえ、オリヴェイラ監督の映画は退屈だ、という人が多い。私も何本か見たが、動きの極端に少ない画面で主人公のモノローグが延々10分も続く演出に、イライラするか爆睡するかのどちらかだった。リアリズムとはちょっと違う様式美というか、演劇的な要素が多分にあり、また文学作品や史実などを独自に解釈した作品が多いので、教養のない私にはさっぱり面白くないのだった。それでも映像の美しさは抜群だ。



しかし一般大衆受けするような「解りやすい」映画もある。初期の「ドウロ河」「アニキ・ボボ」などは、イタリアのネオ・リアリズモの影響を受け、ポルトの庶民の生活を力強く、愛情を込めて描いている。



オリヴェイラ監督はポルトのブルジョアの家庭に生まれ、若い頃はスポーツ万能で、カーレースに出たり飛行機を操縦したり、棒高跳びの選手でもあった。俳優としてポルトガルの喜劇映画にも出演している。ヴィム・ヴェンダース監督の「リスボン・ストーリー」ではチャップリンの真似をして軽やかな足さばきを披露しているが、この時すでに80歳を超えている。



リスボンのアルファマ地区を舞台にした「階段通りの人々」では、しみったれた、しかしどこか憎めない小市民の姿を描く。リアルなポルトガル人の生活や内面をバラしてしまったこの作品は、ある人には不快に感じたようだ。これも解りやすい作品。



一般的な商業映画にはない、ゆったりしたテンポ、暗示的な描写を多用した映像美、詩を読むようなセリフの言い回しなど、独特の世界を築き上げたオリヴェイラ監督。その作品はポルトガルのみならず、世界の映画芸術における宝となるだろう。
Commented by Moreia at 2015-04-08 10:38 x
とうとう逝っちゃいましたねえ、メストレ。「映画は見る人によって感じ方が違うんだから、いまさら評価なんか気にしてないよ」って、超越してましたもん。葬式でジョン・マルコヴィッチがボロ泣きしてましたね。でもこれから、若い監督達が雨後の筍のように伸びてくれるような気がします。アマリアの死後もそうでした。
Commented by caldoverde at 2015-04-08 19:42
ポルトガル映画は、採算度外視の小難しい、変に前衛的な作品か、TVドラマの焼き直しみたいなものが多いという印象です。カメラの技術は良いのですが、話がつまらない。俳優だけで客が呼べる大スターがいないのもネック。華がないんですよね。でも小品佳作は作れると思います。若い人に頑張ってほしい。
by caldoverde | 2015-04-03 06:34 | カルチャー | Comments(2)