国民的飲み物スモール
2015年 11月 20日
飲食店ではよくコーヒーや清涼飲料水、ビールの会社の広告のついた什器が使われている。コーヒーカップや、薄っぺらい紙ナプキンを入れる箱などは、飲料メーカーから卸先の飲食店に無償で提供される非売品だそうだ。
近所のおじさん2人がやっている小さなカフェは、ポルトガルの清涼飲料水Sumolのロゴの入った、フォルクスワーゲンのミニバスの形をしたナプキン入れを使っている。ちゃんと車輪も付いている。可愛い!駄目元で、一つ売ってくれないかと頼んでみた。するとおじさんは、売りはしないが、今度業者が来たら聞いてみると答えた。欲しがったのは私だけではなく、すでに2人のお客さんに譲ったそうだ。その時は余分な数があったのだが、今はお店で使っているものが全てて、譲れる分が無いとのこと。
それ以来、私はおじさんが忘れない程度の間隔で、コーヒーを飲みに行き、2回に1ぺんは、バスは手に入った?とさり気なく尋ねるようにした。おじさんは、忘れちゃいないから、とは言うものの、私が消えると多分忘れていたんだと思う。5〜6回目に尋ねたら、たまたま他に客がいなかったせいか、私のしつこさに嫌気がさしたのか(私自身はしつこいと思われるのが嫌なのだが)、おじさんはカウンターの上のバス型ナプキン入れを取り上げると中の紙を抜いて、ささっとパンを包む紙袋に入れて私に渡した。常々買うからと言っていたので、10€置こうとしたが、受け取ってくれなかった。
最近リスボンでは屋台が大はやりで、このフォルクスワーゲンのミニバスを改造した屋台も時々見かける。若い人たちがやっているお店や屋台は、古い家具や車を再利用した、レトロな感覚のものが増えている。先日エキスポ地区でヴィンテージ・フェアがあり、年代物の家具やバイク、ラジオ、古着、そしてフォルクスワーゲンのミニバスが販売されていた。40〜50年前のブラウン管テレビのような丸っこい温かみのある形のものが、今新鮮に映る。
ところでゲットしたミニバスに付けられたロゴマークのSumolは、アメリカのコカコーラと並ぶ?ポルトガルの代表的な清涼飲料水で、爽やかなグリーンの容器に、オレンジ、パイナップル、パッションフルーツ、レモンの4種類の味、軽い口当たりの炭酸入り。かのイタリアの文学者タブッキの小説「レクイエム」の中にも出てくる由緒正しい飲み物だ。
1954年以来親しまれてきた国民的飲み物のCMは、サーフィンやスケボーに乗った若者を映しただけの、安直な印象があったが、今年のは面白い。
ポルトガルにはビールならサグレスかスーパーボック、ミネラルウォーターならルーゾか炭酸水のアグア・ダス・ペドラス、ソフトドリンクならこのスモールがある。果物を絞った生ジュースも美味しい。更にマデイラ島やアソーレス諸島にはそれぞれご当地の飲み物がある。バドワイザーやコカコーラも悪くないけど、せっかく来たなら地産品をどうぞ。