歴史村を訪ねて ② イダーニャ・ア・ヴェーリャ
2015年 12月 23日
翌日はモンサントの宿の人に9時にタクシーを手配してもらい、イダーニャ・ア・ヴェーリャに行った。日本のガイドブックには載っていないが、ユネスコ世界遺産への登録を目指している古い村である。ローマ帝国時代に集落が造られ、西ゴート族、アラブ人、レコンキスタ、と古代から中世にかけてのイベリア半島の民族の衰亡史がこの小さな村でも綴られ、色んな時代の重層的な遺構と、農業を営む人々の日常が共存している。
古い桑の木のある広場には村に一つしかないカフェがあり、小学生の兄弟が村のじいさん達にコーヒーやワインを出すのを手伝っていた。広場には人間だけでなく犬や猫も集まってくる。リンゴや梨を積んだ果物の移動販売のトラックも来る。
ぶらぶら歩いていると中年の男に店と呼ぶにはあまりにも普通の家に呼び込まれ、ヤギと羊のミックスのチーズとビスケットを買うことになった。特別価格にするからと必死に営業されるも、財布には50€札1枚しかなく、タクシーや路線バスのお金は確保しなくてはいけない。小さい方のチーズ10€とビスケット5€で計15€。残り35€からタクシー代やバス代を払うとギリギリ。リスボンではキャッシュレスでもOKだが、ATMのない田舎はやはり現金が必要だ。
村を囲む城壁の上に鉄製の遊歩道が架けられ、ローマ時代の墓碑を展示するミュージアムが設けられ、昔のオリーブオイル製造所が再現され、廃墟となっている屋敷はホテルに改装されるプロジェクトが進行中で、世界遺産に向けた準備が着々と進んでいる様に見える。オフシーズンは空き家が目立ちゴーストタウン化しつつあるモンサントに比べると、イダーニャはまだ普通の人々の暮らしが残っているようだ。村の共同パン釜で焼かれるオリーブオイルのパンを買いたかったが、日曜日のためか焼く人はいなかった。村の周りは古いオリーブの木、牛の鳴き声の聞こえてくる牧場、ローマ時代の橋の掛かった小川など、のどかな田舎の風景が広がる。モンサントのような奇観はないが、絵になる村だ。
2時間もあれば村は十分に見て回れるので、11時頃にまた村に迎えに来るようタクシーに頼んだ。モンサントの先にあるペーニャ・ガルシアの村にも行ってみたかったが、手持ちの現金が少なくなったので、モンサントで降りてカードの使えるレストランで昼食をとる。昨日観光案内所で紹介され、タクシーの運転手も勧める「オ・クルゼイロ」で今度こそキノコを食べるのだ!モダンな建物の窓からは素晴らしい眺望が楽しめ、値段も比較的手頃だ。日曜日は山は霧に包まれ、景色は幽玄な墨絵のようでこれはまた別の美しさである。
メインはポークのヒレ肉のソテー、キノコ添え。きれいな焼き目をつけたジューシーなヒレ肉の上にこんもりと盛られたキノコは、さっきのマッシュルームとはまた違った香りだ。山で採れたキノコだろうか?でも嗅いだことのある臭いだ。以前リスボンのイタリアンレストランで食べたポルチーニ茸に似ているなあ…。給仕のお兄さんに、これは何というキノコですかと聞いたら、袋に内容物の名前が書いてあるので調べればわかりますと。この辺の山で採れたものではなく冷凍ものだった。でも美味しいし、そんなに高くないので良しとしよう。
モンサントで一番美味しい飲み物は水道水だと思う。村のあちこちに泉が湧いており、宿の風呂場の蛇口からは勢いよく水が出る。飲んでみるとまろやかで甘い!市販のミネラルウォーターよりもはるかに美味。レストランでワインとともに水道水も持ってきてもらえないかと聞いたら、困った様子。要はミネラルウォーターを買って下さいということだ。だったらお金を払ってもいいから水道水が飲みたい。今度来る時は空のペットボトルを持参しお土産にしよう。