亀の手(ペルセベス)
2007年 04月 08日
さて亀の手が盛られた皿が運ばれてくる。勇気を出して、ざらっとしたしわだらけの黒い腕を片手でつまむ。そしてもう片方の手で爪の部分をぐぎっと折る。このとき生きのいいのはギャアッと叫びながら最後の足掻きで汁をびゅっと出すので驚かないように。そして爪が取れると切り口にはこれまた不気味なものがうごめいている。蝕手の短いイソギンチャクのような中身である。これを今度は自分の爪でちぎれないようにそおっと引っ張り出す。これまた海のものにありがちなぬるっとした触感だ。まだ生きていればこの蝕手があなたの指先にちゅーと吸い付いてくるだろう。上手く引っ張り出すと、中身がびろーんと出てくる。これを口に放り込む。ゴムのような弾力のある歯ごたえ、広がる磯の香り。新鮮なものは口の中でかみちぎっても動いている。
一つ食べるとさっきまであんなに不気味だったものが、なんと素晴らしい、美しいものに変わっている。最初は遠慮して小さめのものを恐る恐る選んだのに、次には一番でかいやつはどれか探している。小皿にはうず高く爪やゴム管が積みあがる。もう可哀想なほど小さいものしか残っていない。こんなに小さいのに食べちゃってごめんね、と心の中で謝りながら貪欲にも細い中身を慎重に引っ張り出す。もう十分食べたはずなのに、今度はもっと太くて大きいのが食べたいと人間の欲望はきりがない。その欲望を辛うじて押しとどめているのは値段だ。いくらか忘れたが結構高いものです。
※なお記述には誇張した部分もあります。
母親がコメントするのを恥ずかしがっているので、
私が代わりに失礼します。
興味深い内容ばかりで、
親子ともども大変楽しく読ませて頂きました!
今後の更新も楽しみにしています!!
今度ウィンドウズから匂いがわかるコンピュータソフトが発売されるそうですから、ぜひインストールして、香りだけでも味わってください。
普段はこんな美味しいものばかり食べてるわけではありません。
仙台にもポルトガル料理の店が出来るといいですね。