黒豚の秘密
2007年 04月 29日
スペインから直線距離で30kmの位置にあるエストレモスは、緑の大海原にぽつんと浮かぶ白い小島のような、典型的なアレンテージョの小さな町である。丘はぐるりと城壁に囲まれ、てっぺんに今はホテルとなっている城があり、その周りに白い壁の小さな家が肩を寄せ合う。車と人がやっとすれ違えるほどの狭い道、レースのカーテンのかかった小さな窓、木の扉に付けられた手の形のノッカー、ベランダに下げられた鳥かご、広場で立ち話する老人たち。
時が止まったかのような錯覚に陥るこの町で豪勢な食事をしようと言うのなら、古城ホテルのポザーダのレストランかその隣の有名なアレンテージョ料理店だろうが、美味い黒豚を食べるなら別に格式ばったところでなくても良い。友人の現地ガイドによると、この町で一番旨い郷土料理店は昔酒蔵だった居酒屋だそうである。町の中心の大きな広場から一本奥に入った路地にその店「アデガ・ド・イザイアス」はある。全く飾り気のない外観は余程気をつけないと通り過ぎてしまいそうだが、営業が始まれば店先に炭火焼のグリルを出して、香ばしい煙に燻されながら、むさ苦しいお兄さんが汗を拭き拭き肉を焼いているからわかるだろう。薄暗い店内の奥には大きなワイン樽が横たわっている。無骨な木のテーブルにベンチ。昼間からぐいぐいワインをあけているおじさんたち。ワインは言うまでもなく自家製である。
注文するのは、SECRETO DO PORCO PRETO 黒豚のシークレットと言う名前の料理だ。いったい何が秘密なのかドキドキしながら待つと、案の定肩透かしを食わされる。要するに豚肉の薄切りをただ焼いたものだ。ところが食べてみると、これがとろけるような、微かに甘みのある黒豚の極上霜降り肉なのだ。マグロで言うと大トロである。赤身の中に脂肪が細いすじ状に入り込んでいて、切ると溶けた脂がじわあ~とにじみ出てくる。もう太っても良い、コレステロール値がどうなろうと構わないという気持ちにさせる。いや、この赤ワインがコレステロールと戦ってくれるはずだ。健康のために大いに飲もう。食堂で無料の水をサービスするときに使うようなコップになみなみ注いだアレンテージョワインがこれまた旨い。
リスボンにもアレンテージョ料理店はたくさんあるし、普通のレストランでもこの黒豚の焼肉を出しているところは結構あるので、もはや「黒豚の秘密」は秘密ではない。しかし、この田舎町で食べる、この炭で焼いた黒豚がとりわけ美味しく感じるのは、きっと肉を焼くお兄さんのカン(勘・汗)が隠し味になり、それがこの店の味の秘密となっているからに違いない。
エストレモスの中央広場には市場があり、その中に腸詰を売る店がある。ここで黒豚の、生食できるチョリソを買い、向かいの八百屋で羊のチーズとオリーブも買い、市場の前にある建物にあるお菓子屋でそこで作っているお菓子を買い、お土産にする。家に着いたら近所のスーパーでアレンテージョのワインを仕入れ、パン屋で拳骨のような形のアレンテージョタイプのパンをゲットし、我が家で再びアレンテージョの晩餐を楽しむ。
これはリスボンの近所のレストランの「黒豚の秘密」。ちょっと硬かった。香ばしくジューシーに焼くのは難しい。でもこの店の付け合せの菜の花の炒め物は絶品で、私はこれが食べたくて時々この店に足を運ぶ。
シソだけど、私も栽培してみましたが、次第に味が変わってしまうんですよミントっぽく。土のせいだと思います。三つ葉も味がだんだん変わってしまいました。土や水が違うから同じ風味が育たないのかしらね~。
シソをポルトガルで栽培するのは難しいんですね。でも最近はリスボンでもしいたけやなめこ、えのきだけもデパートで売られているので、誰か作ってくれないかなあ・・・