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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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緑汁と緑酒

 ヴェルディ川崎のヴェルディとはイタリア語で緑の意味だそうだが、ポルトガル語も同様。ポルトガルを代表するスープといえばカルド・ヴェルデ。直訳すると緑汁。青汁を想像してはいけない。はるかに色合いが美しくしかも旨い。材料はジャガイモ、玉ねぎ、オリーブオイル、塩コショウ、ニンニクのきいたチョリソの輪切り、そして濃い緑色のキャベツ。このキャベツは何と言う種類なのか、茎が1メートルほど伸び、先端に差し渡し30cm位の大きな葉っぱをバサバサとつけた不思議な植物である。伸びきったブロッコリーの様でもあり、日本ではケールと呼ばれている青菜の仲間かもしれない。この葉っぱを幅1ミリ位の千切りにしたものが袋詰めされ、カルド・ヴェルデ用として市場で売られている。
緑汁と緑酒_a0103335_538017.jpg

 ベースになるスープは、ほとんどのポルトガルのスープと作り方は共通で、ジャガイモと玉ねぎを茹でてやわらかくなったところにオリーブオイルを注ぎ、ミキサーでガーとかき回す。そして塩コショウで味を調え、うきみの千切りキャベツ、チョリソを加えて煮込む。伝統的には薄く切ったブロアというとうもろこしのパンを添える。クリーム色のポタージュスープの中に細い青菜の千切りがたくさん入っていて、その真ん中に赤いチョリソが一切れ浮かぶ、彩りの良い、温まるスープだ。日本人にも人気がある。どこか味噌汁に共通する味がするからか、青菜を海藻だと思っている人もよくいる。調理の段階でもう十分にオリーブオイルは使われているにもかかわらず、ポルトガル人の中には、スープの表面が緑の膜で覆われるほど更にオリーブオイルを加えて食べる人もいる。これで完璧に「緑のスープ」になるわけである。

 この緑のスープはもともとポルトガル北部のミーニョ地方の郷土料理だった。この地方では緑のワイン、ヴィーニョ・ヴェルデが作られている。ついでにこの地方のビーチはコスタ・ヴェルデ(緑の海岸)と呼ばれている。日本のように湿潤な気候で山は緑で覆われているので、緑がミーニョ地方の枕詞になっている。

 この緑のワインには、矛盾するようだが赤と白がある。緑とは、若いと言う意味での緑であり、完熟前の若いブドウで作るからだ。スーパーやレストランにある緑ワインはほとんどが白ブドウから作る白のヴィーニョ・ヴェルデ。比較的低アルコール(9~11度)の軽いワインで、爽やかな酸味があり冷やすと美味しい。軽い発泡性があり、物によってはシャンペンのようにシュワッと勢いよく泡が出るものもあるが、中にはほとんどガスを感じないものもある。炭酸の強いものは後からガスを加えている。
 
 レストランによっては樽出し生ワインタイプのヴィーニョ・ヴェルデを置いているところもある。昔、一人でポルトガルを旅していたとき、ヴィーニョ・ヴェルデとは関係ないアレンテージョ地方のエルヴァスで「ヴィーニョ・ヴェルデ」と言う名前のレストランを見つけた。何を食べたのかはよく覚えていないが、この店の看板である樽出し緑ワインが美味しかったことを覚えている。お相伴してくれたのは自転車でバルセロナからポルトガルにやってきた日本人の青年だった。佐川急便で働いてお金を貯め、スペインに住むいとこの結婚式に出席するついでにイベリア半島を数ヶ月間旅しているということだった。豪快に食べ、飲み、風のように去っていったこの若者は緑のワインのように爽やかで、風間トオルに似ていた(ような気がする)それ以来佐川急便のトラックを見ると胸がときめくようになった。

 赤のヴィーニョ・ヴェルデを産地でないリスボンで飲むには、ミーニョ地方の郷土レストランを探す。動物園近くのメルセデス・ベンツのディーラーの隣にある大衆食堂の主人がミーニョ出身らしく、インテリアはヴィアナ・ド・カステロ名産の可愛い刺繍のテーブルクロスを使い、メニューも以前紹介した八目ウナギのリゾットとか、ロジョンイスという豚肉やレバーをヴィーニョ・ヴェルデで煮たものなどミーニョの郷土料理をフィーチャーしている。この店のヴィーニョ・ヴェルデの赤は、主人の実家か親戚が作っている自家製らしく、ラベルのない怪しいビンに入っており、酸味が強く、やはり少しガスが入っている。ガラスの足つきグラスでなく、陶器の湯飲み茶碗のような器で飲む。いかにもどぶろくっぽいオリの沈殿したワインであるが、なかなかいける。本場ミーニョ地方で飲む赤ヴィーニョ・ヴェルデはもっと美味しいらしい。

 ミーニョ地方のヴィアナ・ド・カステロでは、8月20日前後に「ノッサ・セニョーラ・ダ・アゴニア祭」というお祭りがある。この時期にはヴィアナ・ド・カステロの女性は赤ちゃんからおばちゃんまで独特の民族衣装に身を包んで町をパレードし、広場で民族舞踊を踊る。ポルトガルで最も美しい祭りのひとつなので(特にカメラオヤジには)一生に一度はぜひ見ていただきたい。
Commented by おっちゃん at 2007-05-21 08:01 x
ポルトガルの料理には郷土色がありますね。日本も地方によって特色があるのですが、昨今のグルメブームで紹介されるとすぐどこかで真似されて、もう本来どこの料理かわからないようになってしまいます。無国籍化しちゃうんですね。ポルトガルの料理も日本人なんかが沢山行くといいように利用されてしまいそうで、今くらいのあまり日本観光客が行かないところでいいのかなとも思ってしまいますね。
Commented by caldoverde at 2007-05-21 16:06
本屋には地方別の料理の本がけっこうありますよ。ポルトガル料理の基本は家庭料理で、一般家庭のおばあちゃん、お母さんの作ったもののほうがそこいらのレストランよりずっと美味しいことが多いです。でもポルトガルのレストランのシェフはかなりの割合で女性です。要するに自分の家で作っているものを売っているんですね。
by caldoverde | 2007-05-21 05:52 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(2)