石焼ステーキ
2007年 07月 02日
まな板より小さめの厚みのある木の板の上に約15cm四方の熱く焼いた石が置かれ、その上に肉の塊がどーんと乗っかっている。もちろんじゅーという食欲をそそる騒音とともに。板のふちにはマヨネーズや塩の入った小さな器が添えられている。ゆっくり食べるのが身上のポルトガル料理であるが、レアのステーキが好きな人にとっては早く食べなければという焦燥感をかき立てられるものだ。何度に熱されているのか知らないが、肉がどんどん焼け焦げていく。あまり加熱すると肉が硬くなってしまう、でも付け合せのポテトも食べたいし、ガス台のように火が調節できないし、と心ははやる。実はそんなに焦らなくても良い。石は冷めていくから肉が真っ黒に炭化することはない。石の温度が低くなったら店の人にまた石を焼いてもらえばいいのだ。それに肉はかなりの厚みがあるので、表面が焦げても中は血の滴るレア状態である。
NA PEDRA とは「石の上」という意味だ。肉の種類がこの前に記される。多いのはNACO NA PEDRAでナコとは塊肉のことで普通は牛肉である。鹿の場合はVEADO, ブラジル(風)の牛ならPICANHA である。ピカーニャは牛の腰肉でブラジル料理ではとてもポピュラーな部位で、日本ではイチボと呼ばれる。
リスボンの飲食店街のバイロ・アルト地区でこのピカーニャの石焼肉を食べた。長さ20㎝、幅7㎝、厚み1㎝位はありそうな大きな肉のスライスが3枚来た。日本人ならごはんと味噌汁と野菜が付いていれば1枚で十分満足できる量である。なのに3枚!!!しかもふちの一方は幅1㎝の脂身だ。私にメタボ症候群になれというのか。なら受けて立とうじゃないの。1枚目を灼熱の石の上に載せるとじゅうううと勢いよく音が炸裂し、もうもうと煙が上がる。脂肪がはじけ飛び、思わず体をかわす。早くも表面が焦げている。慌ててナイフで切って口に入れる。あちちち。赤ワインで口を冷ます。うっ、旨い…。連れは脂肪の少ないナコの石焼を選んだ。こちらもあっさりして美味しいが、脂肪がたっぷり乗ったピカーニャに軍配が上がった。帯状になった脂身まで食べれば1枚でもカロリー超過は確実である。付け合せはお約束のフライドポテト。ピッチャーに入ったワインが進む。 でも1枚半で限界だった。太く、短く人生を楽しみたい人はぜひどうぞ。旅行中に1,2回食べたって寿命に影響はないでしょう。
もうひとつ石焼肉の美味しい店は、アモレイラスショッピングセンターから近い住宅街にある Casa dos Passarinhos カーザ・ドス・パサリーニョス というレストランです。