ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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カテゴリ:スープ・前菜・酒肴( 7 )

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 いつもコメントを寄せてくれるMoreiaさんの誘いで、リスボンの観光スポットのど真ん中、市電28番の走るコンセイサン通り8番のポルトガルチーズ専門店「ケイジャリア・ナショナル」に行ってみた。
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 ショーケースには全国から集められた、大きさも値段も色も様々なチーズたちが並ぶ。店内にはボルダロ・ピニェイロの陶器や手作りジャムなども置いてある。壁には田舎の羊飼いのおじさんたちが被るハンチングや麦わら帽子。カントリー風の可愛い店である。
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 持ち帰りだけでなく数種類のチーズを試食できるプラトーもあり、アルファマやバイシャを散歩する途中、チーズとワインでお洒落な軽い食事をするのもいい。
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 濃い黄色のアミノ酸風味豊かなアソーレスチーズ。赤いパプリカでアクセントを付けたチーズ、とろけるようなクリーミイな羊のチーズ、独特のテクスチャーとシャープな味わいの山羊のチーズ。どれも個性豊かな面々だ。
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 昔「明治屋」で賞味期限が迫りセールになったチーズと、シャトームートンだか有名な銘柄のフランスワインを買い、合わせてみたところ、口の中でチーズとワインが融合し、しかもお互いに化学変化を起こしたように数倍美味しくなってびっくりしたことがあった。ワインとチーズの相性について書かれた本によると、このような素晴らしい味わいが生じる組合せを「マリアージュ(結婚)」と呼ぶのだそうな。数式に表すと1+1=3みたいな。
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 ではポルトガルにはこんな最高のカップルはあるのだろうか?ポルトガルワインは値段から見ればフランスワインに引けを取らない品質だと思うし、チーズも牛、羊、山羊、ミックスと乳の種類は様々で、地方ごと、いや村ごとに個性的なチーズがある。しかし、その組合せに関してウンチクを語るポルトガル人を私は知らない。

 ワインもチーズもそれぞれ独立して美味いけど、一緒にするとどちらも主張が強くて、互いに自分の方が旨いと譲らない、喧嘩ばっかりしている夫婦のようだ。そこで仲を取り持つのがモチモチのパン。この3つがあれば相性などどうでも良くなる。
 いや、三角関係がもっとも安定した組合せなのか?
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by caldoverde | 2014-01-17 06:49 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(5)

豆腐チーズ

 ポルトガルからの輸入食品がどんなに普及したとしても、多分日本では食べられないものに生チーズがある。ケイジョ・フレスコ、直訳するとフレッシュチーズという名のチーズと、リケイジョンというカテージチーズみたいなものの2種類ある。2つのチーズとも醗酵臭はなく、塩味のミルクが固まったような、淡白な味である。

 ケイジョ・フレスコは直径5cmほどの小さな円筒形のカップに入っており、滑らかな絹ごし豆腐のような舌触り。脂肪分の多いもの、中くらいのもの、少な目のものの3種類ある。ほとんどが牛乳だが、まれに山羊や羊の乳から作られるものもある。このチーズは、よくレストランで前菜に出される。日本人の中にはスプーンを使いチーズをカップからすくって食べようとなさる方もいらっしゃるが、プッチンプリンの要領でカップをひっくり返して、お皿の上に出してフォークとナイフでいただくのが正しい。ポルトガル人は塩と胡椒をふって食べる。見た目も舌触りも豆腐そっくりなのでわさびをのせて醤油をかけてもいけそう。

 リケイジョンは直径10cmほどで、ケイジョ・フレスコのようなプラスチックの容器に入ったもの、紙に包まれてるもの、小さなざる状の入れ物に入っているものなど包装の形態は様々である。食感は木綿豆腐か水分の多いおからの様な感じである。脂肪分は少ない。これも牛乳のほかに山羊乳、羊乳のものがある。リケイジョンのかぼちゃジャム添えは近所のレストランのデザートメニューだ。ポルトガル最高峰エストレーラ山系のふもとセイアという町から取り寄せた羊の生チーズにオレンジ色のかぼちゃのジャムをかけたものだ。チーズの軽い塩味がジャムの甘みを引き立て、ミルクの優しい風味と調和する。チーズもジャムもスーパーで買ったものとは味が違う。たぶん大工場製ではなく家内制手工業によるものなのだろう。凝りに凝って作られたデコラティヴなデザートにも引けを取らないおいしさだ。これは近所のワインバーのおつまみのリケイジョンのトマトジャム添え。盛り付けがおしゃれだ。
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 暑くて火を使う料理をする気が起きないとき、私はこんなズボラ料理を作る。イタリア料理のサラダによく登場するルッコラにゴマだれをあえ、真ん中に山羊のケイジョ・フレスコをでーんとおいて、その上にイチジクのジャムをかける。ルッコラはゴマのような香りがするので当然ゴマとよく合う。ゴマだれはすりゴマに醤油、砂糖、みりんを適当に合わせる。あればくるみか松の実を添えたい。前菜とデザートを兼ねた甘いサラダで、冷やした白ワインとともに食す。
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 生チーズを使ったケイジャーダというお菓子はポルトガル各地にある。有名なのはシントラのケイジャーダで、ガイドブックにもよく載っている。しかし私が好きなのはエヴォラのケイジャーダである。シントラのはチーズの味や香りより、圧倒的にシナモンの香りが勝っている。それにすごく甘い。京都の八橋の好きな方には勧める。一方エヴォラのほうはマドレーヌのようなしっとりした生地にほんのりミルクの香りがして、チーズケーキらしい味がする。エヴォラのケイジャーダには2種類あって、ふちが正円のプリンをひっくり返したような形のはケイジョ・フレスコを使い、ふちが花のようにでこぼこのある型で焼いたのはリケイジョンを使っている。エヴォラのガイドさんによるとケイジョ・フレスコを使ったものはこってりして、花形のリケイジョンのはあっさりしているということだ。シントラもエヴォラもユネスコの世界遺産の町である。美しさもお菓子の美味しさも優劣つけがたい。この2つの町を訪れたなら、ぜひともケイジャーダを食べ比べてください。
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by caldoverde | 2007-07-13 07:42 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(0)
「カラコイス(カタツムリ)あります」リスボンのバールやレストランに時々でんでん虫のポスターが貼られている。初めの頃はポルトガルにもエスカルゴがあるんだと考えていた。ブドウの葉っぱで育てた、小さめのサザエくらいの貝に香草を利かせたバターを詰めて、薫り高いワインで蒸し焼きにした高級料理がここでも食べられるのかと思っていた。

 田舎とはいえヨーロッパに来たからには西洋料理のエッセンスを味わってみなければ、という意気込みと、まさか日本の梅雨時によく出没する、葉っぱの陰にへばりついたねばねばした気味の悪いあの軟体動物とは別種だろうという漠然とした思い込みが、私に「カラコイス」を注文させた。場所はリスボン、アルファマ地区のカテドラルの近くの何の特徴もないバールであった。
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 生ビールとともに「カラコイス」がやってきた。コーヒーメーカーの社名の入ったコーヒーカップの受け皿にこんもりと積み上げられた「カラコイス」はでんでん虫そのものだった。せめて、ホッキ貝くらいの大きさの身が入った大型のものだろうと言う期待は見事に覆され、指の先ほどの可愛いカタツムリだ。
 しかも、童謡に歌われているように「ツノ出せ、槍出せ、目玉出せ」の生前のお姿そのままの状態に茹で上がっている…これは完全に予想外だった。カタツムリも釜茹でにされるときは角や目は引っ込めるだろうと何の根拠もなく信じていた。なのに、ぴょーんと伸びた先にちっちゃな目玉がついている!こ、怖い。
 爪楊枝が何本か添えられている。これで身をつつき出すのだ。可哀そうなのを堪え、折れやすい爪楊枝で何とかほじくり出すと、黒っぽい奥のほうの身がくるんと丸まって出てくる。殻から出された哀れな裸のカタツムリ、これがまた気持ち悪い。
 注文したからにはちゃんと食べてあげなくては成仏できまい。自分も無益な殺生をしてしまうことになる、と勇気を振り絞って食べた。ひとつ食べればだいぶ恐怖心は薄らぐ。なるべく間をおかず、必死でカタツムリの殻から身を取り出しては口に放り込む作業に没頭した。食べているうちに味も感じるようになった。一心不乱にカタツムリと格闘し、小さな受け皿に盛られた全ての殻を空けたのは約1時間後だった。心の底から安堵を感じた。
 後で友人にこのことを話すと、カタツムリの中には阿鼻叫喚さながら口を開け、歯まで見えているものもあったという、友人のそのまた友人の「カラコイス」体験談を語ってくれた。そんなことを事前に聞いていたら注文しなかっただろう。

 要は文化の違い、何を食べ物と見るかの違いである。日本人がイナゴを食べるようなものである。イナゴの佃煮にはちゃんと目があり、ひげがある。カタツムリも然り。ポルトガル人にとってはカタツムリが目を出していようがいまいが味に変わりはないのだ。稲を食い荒らす害虫のイナゴを蛋白源として利用した日本人と同様、ポルトガル人も畑の作物を食い荒らすカタツムリを食べたら一石二鳥であると考えたのだろう。コインブラ郊外の野原に異常発生しているカタツムリを見たことがある。そこかしこの稲のような細長い草の茎に何十個もびっしりとカタツムリが鈴なりになっている。ひょっとして枝葉もあったのをカタツムリがすっかり食べ尽くしたのかも知れない。これだけの数がいれば食用にと考えるのも無理のないことである。

 カタツムリを調理するには、数日前から小麦粉を食べさせ、お腹のものをだしてきれいにする。そして余分なものを排出したカタツムリは唐辛子やニンニク、月桂樹などとともに茹でられて、ビールのつまみになる。ちょっとピリッとしていて形を見なければ美味しい。手持ち無沙汰なときとか、店のテレビでサッカーを見るときとか、できるだけ長居をしたいときに注文するとよい。
 めったにお目にかからないがカタツムリを豆と一緒に煮込んだフェイジョアーダ・デ・カラコイスという料理もある。これもまた食べるのに時間のかかりそうなメニューである。一人で食べる姿を想像するとなんだか侘しいけど、複数で食べると性格を占ったりできそうで面白いかもしれない。面倒なカタツムリに手をつけない人、カタツムリを選別する人、豆だけ拾って食べる人、他のものと同時進行で食べる人、他の人に殻をとってもらう人等、食べ方によって性格がうかがい知れそうだ。付き合って間もないカップルのデートのメニューにいかがでしょう。
 もし、カップルがカタツムリを食べていたら、チュウチュウと耳障りな音が聞こえてくるかもしれない。こんなところでまで仲が良いことを見せつけなくたっていいのに、と腹を立てちゃいけない。彼らはカタツムリの殻の奥の身を吸い取っているのだ。それが上品なマナーなのかどうかは知らないが。
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by caldoverde | 2007-05-27 01:20 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(11)

緑汁と緑酒

 ヴェルディ川崎のヴェルディとはイタリア語で緑の意味だそうだが、ポルトガル語も同様。ポルトガルを代表するスープといえばカルド・ヴェルデ。直訳すると緑汁。青汁を想像してはいけない。はるかに色合いが美しくしかも旨い。材料はジャガイモ、玉ねぎ、オリーブオイル、塩コショウ、ニンニクのきいたチョリソの輪切り、そして濃い緑色のキャベツ。このキャベツは何と言う種類なのか、茎が1メートルほど伸び、先端に差し渡し30cm位の大きな葉っぱをバサバサとつけた不思議な植物である。伸びきったブロッコリーの様でもあり、日本ではケールと呼ばれている青菜の仲間かもしれない。この葉っぱを幅1ミリ位の千切りにしたものが袋詰めされ、カルド・ヴェルデ用として市場で売られている。
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 ベースになるスープは、ほとんどのポルトガルのスープと作り方は共通で、ジャガイモと玉ねぎを茹でてやわらかくなったところにオリーブオイルを注ぎ、ミキサーでガーとかき回す。そして塩コショウで味を調え、うきみの千切りキャベツ、チョリソを加えて煮込む。伝統的には薄く切ったブロアというとうもろこしのパンを添える。クリーム色のポタージュスープの中に細い青菜の千切りがたくさん入っていて、その真ん中に赤いチョリソが一切れ浮かぶ、彩りの良い、温まるスープだ。日本人にも人気がある。どこか味噌汁に共通する味がするからか、青菜を海藻だと思っている人もよくいる。調理の段階でもう十分にオリーブオイルは使われているにもかかわらず、ポルトガル人の中には、スープの表面が緑の膜で覆われるほど更にオリーブオイルを加えて食べる人もいる。これで完璧に「緑のスープ」になるわけである。

 この緑のスープはもともとポルトガル北部のミーニョ地方の郷土料理だった。この地方では緑のワイン、ヴィーニョ・ヴェルデが作られている。ついでにこの地方のビーチはコスタ・ヴェルデ(緑の海岸)と呼ばれている。日本のように湿潤な気候で山は緑で覆われているので、緑がミーニョ地方の枕詞になっている。

 この緑のワインには、矛盾するようだが赤と白がある。緑とは、若いと言う意味での緑であり、完熟前の若いブドウで作るからだ。スーパーやレストランにある緑ワインはほとんどが白ブドウから作る白のヴィーニョ・ヴェルデ。比較的低アルコール(9~11度)の軽いワインで、爽やかな酸味があり冷やすと美味しい。軽い発泡性があり、物によってはシャンペンのようにシュワッと勢いよく泡が出るものもあるが、中にはほとんどガスを感じないものもある。炭酸の強いものは後からガスを加えている。
 
 レストランによっては樽出し生ワインタイプのヴィーニョ・ヴェルデを置いているところもある。昔、一人でポルトガルを旅していたとき、ヴィーニョ・ヴェルデとは関係ないアレンテージョ地方のエルヴァスで「ヴィーニョ・ヴェルデ」と言う名前のレストランを見つけた。何を食べたのかはよく覚えていないが、この店の看板である樽出し緑ワインが美味しかったことを覚えている。お相伴してくれたのは自転車でバルセロナからポルトガルにやってきた日本人の青年だった。佐川急便で働いてお金を貯め、スペインに住むいとこの結婚式に出席するついでにイベリア半島を数ヶ月間旅しているということだった。豪快に食べ、飲み、風のように去っていったこの若者は緑のワインのように爽やかで、風間トオルに似ていた(ような気がする)それ以来佐川急便のトラックを見ると胸がときめくようになった。

 赤のヴィーニョ・ヴェルデを産地でないリスボンで飲むには、ミーニョ地方の郷土レストランを探す。動物園近くのメルセデス・ベンツのディーラーの隣にある大衆食堂の主人がミーニョ出身らしく、インテリアはヴィアナ・ド・カステロ名産の可愛い刺繍のテーブルクロスを使い、メニューも以前紹介した八目ウナギのリゾットとか、ロジョンイスという豚肉やレバーをヴィーニョ・ヴェルデで煮たものなどミーニョの郷土料理をフィーチャーしている。この店のヴィーニョ・ヴェルデの赤は、主人の実家か親戚が作っている自家製らしく、ラベルのない怪しいビンに入っており、酸味が強く、やはり少しガスが入っている。ガラスの足つきグラスでなく、陶器の湯飲み茶碗のような器で飲む。いかにもどぶろくっぽいオリの沈殿したワインであるが、なかなかいける。本場ミーニョ地方で飲む赤ヴィーニョ・ヴェルデはもっと美味しいらしい。

 ミーニョ地方のヴィアナ・ド・カステロでは、8月20日前後に「ノッサ・セニョーラ・ダ・アゴニア祭」というお祭りがある。この時期にはヴィアナ・ド・カステロの女性は赤ちゃんからおばちゃんまで独特の民族衣装に身を包んで町をパレードし、広場で民族舞踊を踊る。ポルトガルで最も美しい祭りのひとつなので(特にカメラオヤジには)一生に一度はぜひ見ていただきたい。
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by caldoverde | 2007-05-21 05:52 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(2)
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エストレモス、ポザーダの塔から見た景色

 アレンテージョ地方の料理というと、旨いものまたは貧しいものという両極端のイメージがあるらしい。確かにこの地方はポルトガルで最も貧しい地方と言われ、気候は穏やかなようで夏は40度を越える気温となり、慢性的な水不足に悩まされている。土地はやせており、灌漑設備もまだ十分ではないようで、生産性は低く、農作物の種類は限定される。日本式の狭い面積に手間隙かけて様々な作物を育てる集約型農業とはだいぶ違う。だから、この土地の人々は、限られた食材を大事に無駄なく利用し、美味しくて腹持ちのする料理を考案し、生活してきたのだろう。

 アレンテージョ地方のパンは崩れかかった雪だるまのような、巨人の拳骨のような、丸いパンの上にさらに突起が突き出た独特の形をしている。皮は硬く、バリッとしているが、中身はモチモチと弾力があり目の詰まった、食べごたえのあるパンだ。マルバォンという城壁に囲まれた中世の面影を残す村には昔ながらのパン窯で焼くパン屋がある。焼きたてのほかほかの大きなパンを買い、ペンションでパンにバター、チーズ、ワインという超シンプルかつ極上のディナーを取った。煎餅のように硬い皮は香ばしく、小麦本来の味を楽しめるが、あごの弱い人、歯の悪い人には辛い。モチモチの中身だけ食べて空洞にしたパンをさてどうしよう。捨ててはいけない。アレンテージョの郷土料理には、硬いコチコチになったパンも上等な、美味しい料理に生まれ変わらせるレシピがあるのだ。

 その中の1つに、日本のお茶漬けに匹敵する、簡単で旨いソパ・アレンテジャーナ(アレンテージョ風スープ)がある。ほとんど包丁を持ったことのない男性でも子供でも作れるメニューなので、ポルトガルの味を日本で試していただけるように、ここに作り方を紹介する。

材料(分量は全て適当)
●パンの薄切り
(フランスパンなど歯ごたえのあるもの。ふにゃふにゃの食パンは向かない)
●卵
●塩(天然塩)
●オリーブオイル(ヴァージンオイルなど良質のもの)
●ニンニク
●生のコリアンダーの葉
作り方
1、鍋に湯を沸かし、落とし卵を作る。
2、スープ皿に適当に切ったパンを並べる。
3、ニンニク、コリアンダーをみじん切りにする。
4、スープ皿に好みの量のオリーブオイル、塩を入れる。
5、みじん切りにしたニンニク、コリアンダーも好みの量をスープ皿に入れる。
6、卵が好みの硬さに茹で上がったら、茹でたお湯とともにスープ皿に入れる。
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はい、できあがり。これは昔2ヶ月ほど住んだコインブラの下宿屋の料理上手のおばさん直伝のレシピなのだ。この下宿屋には偶然にもポルトガルレストランを開きたいという夢を持つ仙台の友人夫婦も滞在していた。えっ、スープストックは要らないの?せめてコンソメスープの素は使わないの?と疑問を感じる向きもあろう。我々三人は、スープは単なる塩水なのにこんなに美味しいものが出来るのか、と感心したのを覚えている。ものの本によるとこのスープには干鱈の戻し汁を使うと書いてあるものもある。普通は捨ててしまうものもリサイクルしようという先人の知恵なのだろう。でもこのスープを作るためにわざわざポルトガルから干鱈を輸入する必要はない。水道水に、食塩じゃない天然の塩、ちょっと奮発してヴァージンオイル、エスニック食品を扱う店でコリアンダーを買って、作ってみてください。
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by caldoverde | 2007-05-01 07:39 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(4)
 ポルトガル独自のファストフードにスープ専門店がある。ラーメンどんぶり大の器によそったスープがメインで、それにパンに揚げ物またはキッシュかサラダ、飲み物を組み合わせた簡単な食事を出すチェーン店がどのショッピングセンターにも必ずある。スープは日替わりと定番が5,6種類、安くてお腹いっぱいになること請け合い。

 スープによってはパンやサイドメニューの必要ないものがある。それはソパ・ダ・ペドラ(石のスープ)と呼ばれるものである。文字通り石がごろごろ入っていて、胃がズシーンと重くなり、しばらくは動けなくなる代物だ。
 石は美味しい石がたくさん取れることで有名なリバテージョ地方産がほとんどであるが、アレンテージョ地方では特産の良質のピンクの大理石をふんだんに使った石のスープを売り物にしているところもある。北部ミーニョ地方では上品な灰色の御影石が多く、同地方の典型的なスープのカルド・ヴェルデと双璧をなしている。ドウロ河上流ではブドウ畑に見られる黒っぽい片岩という石が使われ、この地方の名産のハムやソーセージと絶妙のコンビを組んでいる。南部では鉄分を多く含んだ赤っぽい石が豊富で、トマト味によく調和する。

 昔貧しかったポルトガル人は、道端に落ちている石ころも貴重な食材として工夫し、美味しいスープを作りそれを主食として生活してきた。大航海時代には、どんな荒地に漂着しようが、その地の石で生き延び、あのような人類の偉業を達成したのだ。ポルトガルに来たならば、その地方ならではの石のスープを注文しよう。スープをいくらかき回しても石が1個も見つからない場合は、責任者にクレームを付けるべきだ。石を持って来い!と大声で叱りつけよう。そしたら石のつぶてがあなたの頭に飛んでくるかもしれない。
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黒い粘板岩、赤い砂岩、灰色の花崗岩、白い石灰岩など、各地方の様々な石を使った石のスープ

 …冗談です。石のスープには普通は石は入っていません。
 この名前の由来には有名な伝説がある。一人の托鉢僧がある貧しい村に着いた。彼は家々を回って食べ物を恵んでくれるよう頼んだが誰一人食べ物を分けてくれず、仕方なく彼は道に落ちていた小石を拾い、さてこの石でスープを作ることにするかと独り言を言う。それを聞いた村の女が好奇心を持ち、彼に鍋を貸す。托鉢僧は鍋に湯を沸かし、小石を入れて煮立てる。彼は味見をし、うん、なかなかいい味だ、だがちょっと甘いな、少し塩をいただけんかねと訊ねた。女は塩くらいなら構わないと思い分けてやった。坊さんは、しかし何かが足りないな、そうだ奥さん、豆を2,3個もらえんかね。と頼む。また味見し、ふん、だいぶ良くなったが、コクが足りないな、もし豚の脂身があったらなあと坊さんがつぶやく。女はベーコンの切れ端を与える。ほう、かなりいい味だ、でも彩りが足りないなあ、菜っ葉の切れ端があればなあ、赤みが足りないから人参の尻尾があるとなあ、と次々と材料をせしめて、しまいには素晴らしく美味しい実沢山のスープが出来上がったということだ。
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 と言う訳で、石のスープは、赤豆、キャベツ、人参、豚肉、牛肉、チョリソ、人参、マカロニなど色んなものが入っていてそれ自体でひとつの食事になり得る、優れて栄養価の高いスープである。力仕事をしている人向けの食べ物である。ただしチェーン店のものは塩気が多いので高血圧の人は毎日取らないほうが良いかもしれない。その他にはキャベツの仲間の青菜の千切りとチョリソを入れたカルド・ヴェルデやら、色んな野菜が入って彩りのきれいな野菜のクリームスープやら、ポルトガル人が病気のときに食べる米やバスタの入ったチキンスープであるカンジャ(患者?)やら、海老蟹を使ったシーフードスープやら様々な種類のスープがある。
 スープは専門店やレストラン以外でも、カフェやバールの昼のメニューに一、二種類のスープは必ず登場し、ダイエット中の若い女性はよくパンとスープだけの昼ごはんを取っている。でも彼女たちは食後のデザートは欠かさない。効果あるのか?
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by caldoverde | 2007-04-13 21:40 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(4)

スープの話 その1

 ポルトガルのレストランでは余程の健啖家でなければ、いわゆるフルコースを頼む必要はない。全部食べようものなら胃が破裂して死んでしまう。まず、席に着くとパンとバター、オリーブ、生ハム、チーズ、その店得意の前菜が出される。場合によってはこれだけで満腹してしまう。
 例えばパンにしても、カスカスの軽いカルカッサという丸いパンならそんなに腹は膨れないが、とうもろこしで作ったブロアや、もっちりしたマフラ地方やアレンテージョ地方のパンは結構ズンとくる。しかも美味しいときている。バターにも普通の塩味のほかに香草ニンニク入りのがあるし、イワシやツナ、海老のパテが小さなブラスチックの容器に入っているのを見たら、まだ食べたことがない人なら好奇心で手をつけてしまうだろう。チーズだって豆腐のようなケイジョ・フレスコは生ものなので日本ではまず食べられない。(写真)
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 今ここで食べなければ一生縁がないかもしれない。ガーゼの鉢巻を巻いたアゼイタンやセーラ・ダ・エストレーラのチーズは加熱しなくても中がとろとろのフォンデュー状態で、これをパンに付けて食べたら、もうメインは要らないくらいだ。

 追い討ちをかけるようにニンニクと香草で味付けしたオリーブ・海老の塩茹で・タコのサラダ・蟹味噌のカクテルソース・豚の耳のサラダ・ソラマメのサラダ・赤ピーマンのマリネ・イワシの南蛮漬け・イベリコ豚の生ハムと次から次へと色んなものがやって来る。もう泣き笑いである。あ、どのレストランでもこんなのが全部出てくるわけではないですよ。普通はこの中の何個か、でも店によってはこの何倍かの種類の前菜を常備しているところもある。
    
 だから、形式に従って、前菜、スープ、魚、肉、デザート、コーヒーに赤ワイン、白ワイン、食前酒、食後酒を全部摂取したら、日本人ならその日ばかりか翌日の必要カロリーまで十分満たしているはずだ。それどころかきっと消化不良で眠れぬ夜を過ごすであろう。少なくとも私はそうだ。ポルトガル人も皆が皆、底なしの胃袋を持っているわけではないので、大抵は飲み物と魚か肉料理を1品頼み、足りなければ後からスープを頼むという変則的な注文をする人もいる。

 ところが私が補足的な位置づけに追いやってしまったスープが、実は侮れない美味しさなのである。ポルトガルのスープは多くがポタージュタイプであるが、粉やバターを使わない、野菜ベースのヘルシーなスープである。基本はジャガイモとたまねぎ。これを茹でて軟らかくなったらオリーブオイルを加えてミキサーにかける。ミキサーはカップに移す必要のないハンドミキサーで、鍋に突っ込んでガーっと数秒。そうすると簡単に滑らかなポタージュになる。塩コショウで味付けし、具にほうれん草や、クレソン、菜の花、キャベツを入れて、はいできあがり。ベースはジャガイモ、たまねぎの他にポロ葱、人参、かぼちゃ、豆、蕪、トマト、栗など。コクを与えるためにコンソメや魚介類のだしを使う場合もあるが、良質のオリーブオイルと良質の塩だけでかなり美味しい。具はミキサーにかける前に少し取っておいた野菜や豆、チョリソ、肉、魚、海老、パスタなど無限の組み合わせがある。
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by caldoverde | 2007-04-13 06:21 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(0)