ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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カテゴリ:肉料理( 26 )

傘とイワシと仔豚で乾杯

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最近アゲダという町が日本で有名になっているらしい。夏の間の商店街が傘のアーケードで彩られる「傘祭り」が行われ、TVや雑誌で紹介されて「地球の歩き方」にまで載るようになり、今年の夏はこの祭りとコインブラ、ナザレ、オビドスを1日で周る個人向けのツアーが登場し、ポルトガルに居ながらにして初めてアゲダという地名を知った次第である。

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「傘祭り」は現地ではAgitAgueda(アゲダ揚げた、のようなネーミング)と称し、特に7月は傘に加えて様々なストリートパフォーマンスが繰り広げられる。8月は動きのあるイベントは少ないものの、アンブレラに合わせてベンチや街灯も虹色にペイントされた歩行者天国に、若い日本人女性は大喜びである。昔若い女性だった私もストリートの可愛らしさに心躍るが、それよりも心惹かれたのは、通りの入り口にあるカフェの看板であった。傘やイワシや仔豚の形をしたお菓子の写真が店に張り出されている。

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こわもてのおじさんと可愛いお菓子

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傘のクッキー

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同じに見えますがアジとイワシ。中身がアーモンドクリームと糸かぼちゃジャムの違い。

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仔豚の形のレイタンパイ

コインブラからアゲダに向かう途中にメアリャーダという町がある。ここは仔豚の丸焼き「レイタン」で有名で、メインストリートは両側にずらりとレイタン専門店が並ぶ仔豚街道だ。町の入り口のロータリーには、仔豚の彫刻や串刺しにした仔豚を釜に入れて焼く職人を描いたアズレージョのパネルもある。またこの地域はバイラーダというワインの産地でもある。重厚な赤ワインやキレの良い白ワインもあるが、有名なのはスパークリングワイン(エスプマンテ)。辛口、甘口、中辛、白だけでなく赤やロゼもある。街道のキノコ型のコルク栓のオブジェはこの地方が誇る美酒エスプマンテをシンボルしている。

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どうだ‼︎

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付け合わせはポテチとサラダ。
残念ながらエスプマンテのグラスワインはないみたい。

パリッと香ばしく焼けた皮、甘みのあるとろけるような脂肪、柔らかくジューシーな肉、ピリッと胡椒のきいたソースに、爽やかに弾ける香り高い発泡ワインが絡み合い、至福のハーモニーを奏でる。コインブラ、ルーゾ、ブサコ、アゲダの辺りに行ったら、ちょっと足を伸ばしてメアリャーダの仔豚街道でレイタンとバイラーダのエスプマンテをぜひ。大きな専門店は(多分生きた)仔豚の加工から調理まで一貫して自社で行う。広い駐車場が一杯になっている店ならば、間違いないだろう。

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by caldoverde | 2016-09-02 08:36 | 肉料理 | Comments(2)

ポルトの暑(厚)い夏

猛暑というか激暑というか、バリバリに焼けるような真夏のポルトガルでは、各地で火事が相次いでいる。山火事に加え、カステロ・デ・ヴィーデのサマーフェスティバルの駐車場で400台以上の車が焼けてしまったという、街に住む人にとっても他人事でないケースもある。

それでもリスボンは、内陸に比べれば海や河が側にあり、かなり気温が上がっていても吹く風が心地よい。しかしさすがに33度ともなると冷房のあるところに避難したくなる。そうだ、北に行くんだった。ポルトならリスボンより3度は涼しいはずだ。ところがその日はリスボンを凌ぐ39度という予想最高気温。一体どうなっているのやら…

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フェレイラ・ボルジェス市場のテラスからエンリケ航海王子の銅像を眺める

「最も良いローコスト旅行先」の上位に入り、昨年辺りからかなり観光客が増えているとは聞いていたが、久々のポルトは見たことがないほどの観光客でごった返していた。リベイラ地区のドウロ河に面したいかにも外国人が喜びそうな場所は避けて、一本入った薄暗い通りの大衆食堂で食べようにも、通り抜けるのに苦労するほど人で溢れかえっていた。河沿いで食べるのは諦め、少し上にある赤い鉄とガラスでできたフェレイラ・ボルジェス市場に飲食店があるはずだと思いついた。市場の上階は工場を改装したような面白いインテリアのレストランになっていたが、その日は全て予約が入っているということだった。

外のバールも同じレストランの経営で、風が吹いて中よりも涼しいからそこに行けと促され、不承不承バルコニーに設けられた、ガラス張りのバールに移動し、ビールと軽いもので済まそうと思った。どうせ大したものはなかろうと全く期待していなかったが、先客が注文したピザをチラッとみると、なかなか美味しそうだ。でもポルトでなぜピザを食べなくちゃいけないのか。ポルトにはトリパスをはじめ、美味くてボリュームのある郷土料理がいっぱいあるのに。

時間もないので直ぐに出来上がりそうな「プレゴ・ノ・パン」を注文した。プレゴは豚肉サンドのビファナのいとこというか、焼いた牛肉を挟んだサンドイッチだ。シンプルなプレゴとトリフソースのプレゴがあり、高級な感じがするが1€位しか値段の違わないトリフソースの方を頼んだ。7,5€というとファストフードにしては高い。観光地だからこんなものだろうと期待せずに待っていると、何と…

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パンの下にも牛肉が隠れているので、肉は見た目の3倍です。厚さは2cm位

プレゴの肉といえば、牛肉を叩いて伸ばしたような薄いものだと思っていたら、厚みのたっぷりあるステーキと言って良いほど立派なのが出てきた。肉の焼き加減は表面はこんがり、中はうっすら血のにじむミディアム。ルッコラがたっぷり添えてあって、彩りも良い。パンはスカスカしたカルカッサではなく、かみごたえのあるもっちりしたバゲットタイプ。半分に切ってあるが、手にとって頬張れそうにない大きさだ。おまけに肉に隠れてハムとチーズも挟んである。ボリューム満点だ。これで7,5€なら高くない。さすがヨーロッパ随一のローコストディスティネーション、ポルトはポルトガルの大阪、くいだおれの街だ。

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by caldoverde | 2016-08-09 02:55 | 肉料理 | Comments(6)

貧乏人食堂

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前菜のミニサイズのタラコロッケは揚げたての熱々

その店には看板がなく、顧客の間では貧乏人の食堂と呼ばれている。7€でパン、ドリンク、メインデッシュ、デザート、コーヒーとコースが食べられ、味も良いので、近隣の市営住宅に住む庶民や外回りの会社員でいつも賑わっているそうだ。この木曜日はここ数年平日になっていた宗教的な祭日がまた休日に戻ったので、店が営業しているかどうかをお得意さまのBさんご夫妻に確認してもらった上に、リスボンの郊外にあるこの店まで車を出していただいた。
カーボヴェルデ人のオーナーとその奥さん(何代目かの)のシェフによる家族経営のこの店は、炭火焼が美味しい。4人でそれぞれ1種類ずつ頼み、皆でシェアした。そろそろ旬のイワシもあったが、この店で特に美味しいのは豚の頰肉なので、ほっぺたを中心に頼んだら、豚肉ばかりになった。

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クミンの香りがアクセントの豚頬

豚肉の頰肉は煮たものが多いけど、ここでは食べやすく開いて焼いてある。


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レバー嫌いの方にもお勧めのイスカス

昔、イスカスというものが何なのか知らずに頼んだら、油の中にどっぷり浸った巨大なレバーが出てきてがっかりした。実はレバーのあの食感と臭いが苦手だった。しかしBさんはここのは美味しいから、と言うので騙されたつもりで食べたら、本当に美味しかった。薄切りにし良く血抜きをして焼いてあるので、いけ好かないと思っていたイスカスをちょっと見直した。


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こんがり香ばしく焼けたピアノ

私はピアノを頼んだ。骨つきのあばら肉がピアノの鍵盤に似ているからピアノなのだろう。1本づつ切り離し、両手で持ってかぶりついて食べるのでピアノではなくハーモニカだ。私の歯では肉がすっかり骨からこそげ取れないのが悔しい。


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これも骨までしゃぶりたい美味しさ

黒豚のポークチョップもボリュームたっぷりでコテコテの美味しさ。脂の多い部位だが、黒豚は脂肪に甘みがあるので、適度な塩気が味を引き締め旨さ倍増。付け合わせのご飯やフライドポテトもいい味出している。流行っている食堂はポテトが美味しいのだが、冷凍ではなく生のじゃがいもを使うか否かによるらしい。

メインで十分にお腹が膨れるので、デザートが別会計なら端折るところだが、せっかくのセットメニューなので、ビスケットケーキとプリンを注文。
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何の観光名所もない、住民もレストランのオーナーもアフリカ系移民ばかりという団地の中にある店だが、リーズナブルな値段と味は隣まちの住民も引き寄せる。リスボンから車で行ってもお財布は痩せずにお腹がいっぱいになる貧乏人食堂だが、タクシーの運転手にはどう説明すればいいのだろうか?ドライバーは安くてうまい店をよく知っているので、業界では案外有名な店なのかもしれない。


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by caldoverde | 2016-05-27 04:44 | 肉料理 | Comments(3)

豚もん屋で一杯

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中央の今にも崩れ落ちそうな小さな建物が会員制クラブ

近所に謎の立ち飲み屋がある。店名を記す看板はなく、何時でも開いていて、所在無さげな親父たちが昼から一杯引っ掛けている。さえない店だが、安いに違いない。ある日そこでグラスのワインを飲もうとしたら、「ここは会員だけだ」と言われ、たまげた。
ボトルのワインを買うまでもなく、ちょっと飲みたいだけの時、家まで数mしか離れていないこの店は、極めて理想的な店なのだが、会員でないとダメなのか。こんなショボい店が一体何の会員専用なのか??

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ところがその変な立ち飲み屋の数10m先に、お洒落なタスカ(居酒屋)がオープンした。名前はPIGMEUという。ピグメウとはポルトガル語でピグミー族だが、分解すると「私の豚」という意味になる。この店名が政治的に正しいかどうか疑問であるが、メニューが豚肉料理だけというのが売りである。レストランを紹介するサイトによると、ポルトガル初の「豚もん屋」(porcaria)である。
ポルトガル語では、お菓子屋はpastelaria、魚屋はpeixaria、文具屋はpapelaria、という風に、名詞にariaをつけると、何々専門店という意味になる言葉が多い。ところが豚のporcoにariaをつけた単語 porcaria は、(豚のような)下らないもの、汚いものを意味する。しかしユーモアのあるオーナーは「豚の店」という解釈を与え、国内初の豚専門店 porcaria と称している。ポルカリア、と人々がいう時は必ず侮蔑や嫌悪の感情が含まれているが、カンポ・デ・オリーク地区に関しては、好意を持って受け止められる言葉になるかも。
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「豚もん屋」は、謎の立ち飲み屋よりも若々しくシンプルで清潔な印象だ。紙のテーブルクロスの模様は可愛いどんぐり模様。そう、イベリコ豚の餌となるどんぐりである。女性一人でも、非会員でもOK。グラスワインは2€から、前菜は3€から。夜小腹が空いた時、ちょっとだけ飲みたい時に丁度良い。
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生ハムとヤギのチーズのサラダ。

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可愛いサイズの豚の頬肉のコロッケ。

この店のメインディシュは、豚肉を挟んだサンドイッチ。数時間低温でじっくり調理したロース肉のスライスや、レイタン(子豚の丸焼き)肉、上等な生ハム等、中身は豚肉がメインだが、一つだけベジタリアン用のものもある。サラダやフライドポテトなどの付け合せと飲み物が付くので、軽い食事にぴったり。

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近所には、おじさん達に人気のニンニクのピリッと効いた美味しい豚サンド(ビファナ)の店があるが、この豚もん屋は、ポルトガルの伝統をしっかり受け継ぎながらも、スマートでヘルシーなメニューとリーズナブルな値段、親しみやすい店づくりで、若者や女性の共感を得られるだろう。



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by caldoverde | 2015-06-12 02:05 | 肉料理 | Comments(7)

砂肝と肉ロール

引越しを機に台所に憧れのオーブンを設置したのに、生来怠け者の私は滅多に使う事がない。一人分の食事を作ろうとしたら、材料費が外食の値段を上回ることがしばしばで、しかも一度に食べきれず、2〜3日同じメニューになるので飽きてしまう。だから、よほど気合を入れないと料理できなくなってしまった。おにぎり、そうめん、うどんの類は、お金もかからずいくら食べても飽きないのだが…

面倒な時は、アパートの近くにあるカフェで軽い食事をする。特にすご〜くうまいというわけでもないが、朝は7:00から夜は22:00まで開いていて、コップで赤ワインやヴィーニョ・ヴェルデを飲みながら、無料wifiを使ってネットサーフィンをしたり、TVでサッカーの試合を観たりと極めて便利な店である。
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多分ワイン・トマト・玉ねぎなどで煮込んだ砂肝。コリコリ感があとを引く

時々無性にこの店の砂肝が食べたくなる。冷たいビールやヴィーニョ・ヴェルデをグイッと、または赤ワインをちびちびやりながら、ポルトガルの大衆新聞「コレイオ・ダ・マニャン」の肉色の写真が満載の広告ページを慌ててめくり飛ばし、爪楊枝で砂肝をつつくと気分はすっかりオヤジである。

あまり食欲のない時は、白身魚のフライか、揚げ物と飲み物で済ます。2€ちょっとである。
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ハムにひき肉をのせて巻き込み、オーブンで焼いたものと思われる。ミートローフですね

昼定食は日替わりで2種類あり、今日は肉ロールとスパゲッティボロネーズソースだった。きっとスパゲッティは昭和の喫茶店のスパゲッティミートソースに似たようなものだろうな、と思い、肉ロールにした。漠然とロールキャベツを想像していたが、名前の通り肉を肉で巻いたものだ。しかもミートソースがかかっている。味はかなり濃い。付け合わせのフライドポテトやライスを食べるまいと思ってもダメだった。隣のガテン系のおじさん達も同じものを食べている。働く人には力がつきそうだが、私には肉がつきそうだ。赤ワインと肉ロールとコーヒーで4.95€だった。満腹した私は5€札を出し、気前よく「釣りは取っといてくれ。」と店を出た。私はまた質実共に太っ腹になった。
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by caldoverde | 2014-10-02 22:32 | 肉料理 | Comments(10)

豚マメ(腎臓)

 ビトックを看板メニューにしている大衆食堂「オ・ビトック」(「美徳屋」と私が命名)の前を通りかかったら、本日のおすすめに「腎臓のグリル」というものがあった。私は特にホルモン好きでもなく、ましてやレバーは嫌いだが、一生に一度くらい豚の腎臓を試してもいいかなという考えがふと頭の中をよぎった。値段も6ユーロ程度で、もし不味かったとしても腹立ちは3日でおさまるだろう。
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 大きなソラマメの形をした腎臓は、元はどんな色をしていたのか知らないが、程よく焦げ目がつき、何となくうまそうだ。ソースはなく、味付けは塩のみで、好みでレモンを絞る。切ると均質なきめの細かい組織で、硬い筋などは見当たらない。噛むと私の嫌いなレバーの食感に似ている。一瞬ふっと古い納豆のような匂いを感じたが、すぐに無くなった。腎臓だという先入観がそのような感覚をもたらしたのかもしれない。塩焼きなのであっさりとしている。レモンのスライスだけではもの足りず、胡椒を振りかけた。できれば「エバラ焼肉のたれ」が欲しい。
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 ホルモン好き、レバー好きな方ならこの腎臓ステーキも気に入るだろう。しかし私には何かソースを添えるか、下味を付けて焼けば、更に美味しく食べ易くなると思われた。次に私が豚マメを食べる時は焼肉のたれを持参するつもりである。
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by caldoverde | 2013-06-06 14:17 | 肉料理 | Comments(4)

風邪にはステーキ 2

 風邪にやられた先週は、これまでの人生で最もステーキを食べた一週間だった。おかげでどの店のステーキが美味しいかリーズナブルか少々リサーチできた。やはり最初に食べた近所のステーキ専門店「レイ・ドス・ビッフス」の肉が一番柔らかく、上等の肉を使っているようだ。
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 また同じく近所にある大衆食堂のビトックはコストパフォーマンスが抜群で、味も悪くない。約7ユーロでステーキ、卵、キャベツ、フライドポテト、ご飯と全部付いてくる。この店はその名も「オ・ビトック」と言い、この目玉焼き付ステーキはこの店の定番である。ソースも味が良い。ハウスワインとコーヒーも頼んで10ユーロでお釣りが来る。
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 ファドハウスの「ティンパナス」のステーキもなかなか。たっぷりニンニクを使った「ポルトガル風」である。でも私がこの店の食べ物で一番好きなのは、青菜の炒め物だ。以前仕事でよく行っていた頃は、菜の花の炒めものだけ頼んでいた。

 家と同じ通りにあるグリル専門店「ヨーロッパ」の焼き魚は良かったが、肉はどうだろうか。「ヨーロッパ風ステーキ、胡椒ソース」をミディアムで注文したが、硬い。肉の部位によるのだろうが、筋があって噛み切れない部分があった。給仕が普通のナイフをノコギリナイフに替えた時点でヤバイ予感がした。また端はレアというか火の通っていない部分があった。ステーキ屋のステーキと2ユーロくらいしか違わないのなら、ステーキ屋に行けばよかったと少し後悔。でもポルトガル人はこのような噛みごたえのある肉を好むのかもしれない。
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 一週間居座り続ける風邪にとどめを刺すべく、最後のステーキを食べに行ったのは、エストレーラ大聖堂に近い「オ・ラブラドール」という肉屋兼業の店だ。隣が肉屋なので肉の見立てには間違いあるまいと見込んだ。日替わりのスープはポルトガル人が風邪をひいたとき飲む「患者」もとい「カンジャ」というチキンスープ。細く裂いた鶏肉と小さなパスタが入ったコンソメタイプのスープだ。
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 ステーキは「ラブラドール風」、シンプルに塩だけで味付けした肉は嵩があり、表面には香ばしく焼き目がついていて、中はジワッっと赤い肉汁のしみ出すいい焼き加減だ。「レイ・ドス・ビッフス」よりは固めだが、弾力があって噛む毎に滋味の出るタイプ。約10ユーロ。
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 ということで、肉質はステーキ専門店、次いで肉屋兼業の店が良いが、値段ではビトックが圧倒的に他を制圧している、という結果が出た。しかし、アソーレスレストランで食べたトカゲステーキとサンタレンのグルメ祭りでご馳走になった北部のミランダ牛のステーキを凌駕するものはない。いつか岩塩だけで味付けした炭火焼ステーキを産地のミランダ・デ・ドウロで食べたいものだ。でももうしばらくは風邪もステーキもたくさんだ。
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by caldoverde | 2013-02-18 08:37 | 肉料理 | Comments(4)

風邪にはステーキ

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 風邪をひいて仕事を3本キャンセルした。元はといえば全て階下のカフェのせいである。アパートに1昼夜響く低周波音でこの1年半はまともに熟睡できた日はない。対策として、まずソファで本を読んだりDVDを見たりして眠気を催させ、その勢いでベッドに潜り込むのが習慣になった。しかしそのままソファで明け方までトロトロすることもあり、先日ついうたた寝して身体を冷やしてしまい、こんな結果になった。全てはカフェが悪い。今週は珍しく仕事が入っている週で、この先こんな時期がいつ来るか分からない。絶対に休めない、そんな時に限って風邪や花粉症で声が出なくなったりするのである。
 風邪による損失は仕事の他に病院代、5-6種類の薬代、ビタミンCや喉飴などの健康食品、風邪に良さそうな食料品代、洟をかむティッシュ代、湯たんぽの水代、沸かす電気代など多岐にわたる。なんともない時には不要な出費ばかりだ。
 早く治さなければと、あらゆる民間療法をネットで調べて試しても魔法のような効果を持つものはない。
 ひとつだけ気になりながらまだ試していなかった方法を今日は実行してみようと思いたち、雪だるまの様に着ぶくれして、家から歩いてすぐのステーキ専門店に出かけた。風邪をひいたら牛肉という情報(ガセネタ?)に従って。
 その名もRei dos Bifes(ステーキの王様)というレストランは日曜日も営業していて、赤いクロスに赤い革張り(人口皮革だが)地域の店にしては高級感のある内装である。
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 ステーキはソースと肉の切り方によって多様な種類がある。私は風邪を治すためにニンニクをたっぷり使った「ア・ポルトゲーザ(ポルトガル風)」を選んだ。他にもコーヒーソースやチーズソース、三種の胡椒ソースなどがあり、どれも美味しそうだ。メニューにはそれぞれの味付けについて2種類の値段がついている。安いのはVazia(薄切り)高いのはLombo(厚切り)で5ユーロの差がある。ポルトガルのビーフは赤身が主で、加熱しすぎるととゴムの様に硬くなるので、厚みのある肉をレアかミディアムで焼くのが一番美味しい。当然ロンボを注文した。
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 粒のニンニクを山と盛り、なめらかなソースのかかったステーキは、安食堂のてんこ盛りに慣れた私には一瞬こじんまりと見えた。しかしナイフを入れるとスッと切れる感触、薔薇色の切り口、口に入れて噛んだ柔らかな歯ごたえは、やはり専門店として良質の素材を使っているのだろうと納得させるものがある。昔肉を食べなかった私は妹に肉のどんなところが美味いのか尋ねたところ、「歯ごたえだ」と答えた。なるほどその通りである。
 もの足りない場合は目玉焼きやライスを追加できる。ポテトやライスをソースにからめて食べると結構お腹が膨らむ。初めは小さいと思ったステーキも6分目ほど食べると次第に満腹感がやってきた。
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 デザートはラズベリーのムース。ラズベリーの甘い香りと種のプチプチ感を生かした珍しいスイーツだ。これに生のラズベリーやミントの葉っぱを飾るなど、見た目に何か一工夫あるともっと高級感が出て味も違ってくると思う。

 鼻が効かない状態で食べて美味しく感じるなら、健康な時に食べるともっともっと旨いに違いない。しかし15ユーロのステーキなど、病気や目出度い事がある等、特殊な機会にしか食べられない。今回はたまたま風邪と私の誕生日が重なったのである。いや、常日頃ステーキを食べていれば風邪に負けない医者いらずの体質になれるのか?少なくともプラシーボ効果はありそうだ。
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by caldoverde | 2013-02-11 01:18 | 肉料理 | Comments(9)

アリェイラの栗添え

 今年の5月の中旬のリスボンはいつもより早くジャカランダの花が咲き始め、気温は35度まで達した。こんな日はそうめんやざるそばしか作る気が起きないし、またこれが最高にうまい。しかし毎日麺類ばかりではビタミンやたんぱく質が不足し、夏バテを誘引する。夏が来る前にバテてしまってはしょうがない。私の住む極小アパートでは臭いや煙が充満して作る気の起きない焼肉や焼き魚、揚げ物などを摂って体力を補給しなければと考え、近所をぶらぶら散歩しながら適当な飲食店を物色した。

 自宅から数本先の通りに昔からあって昔から変らずこれからも変わるまいと思われる店が目に留まった。いつ通りかかってもあまり入る気の起こらなかったその店が妙に気になったのは、その日のお勧めの中に「アリェイラの栗添え」というメニューがあったからである。アリェイラというのはこのブログの初めの頃登場したポルトガルの腸詰の一種で、多くのレストランの一番安い肉料理だ。しかし大抵目玉焼きと青菜の炒め物とフライドポテトが付け合せについてきて、安い割には非常に充実感を味わえるメニューである。ところがその店のアリェイラは珍しく栗が付け合せになっている。どんなものか好奇心がむらむらと湧き、確かめずにはいられなくなった。
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 「大喰い」という名のその食堂は、週末の昼過ぎだと言うのにスカスカだったが、「予約席」の札が置かれたテーブルもあるので、なじみの客もいるのだろう。そのうちにパラパラと人が入ってきた。一人の男性客は親しげに給仕と握手し挨拶をしていた。若い男女のグループもいるが、やはり男性が多い。たしかに女性一人では入りづらい店名だ。スタッフはテーブル係も厨房も男性である。皆腹が出ている。先ほど給仕と握手していた客も若いのにメタボ体型だ。
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 十年を越えるポルトガル生活で幾度も食べたアリェイラだが、今日は初めての「アリェイラの栗添え」だ。ゆっくりと赤ワインを飲みながら店の内部を鑑賞しつつ、料理の到着を待った。今までこの店に入りづらかったのは店名のせいばかりではなく、内装にも起因していた。なんか落ち着かない模様のタイルには、誰かの家族の写真と子供が描いたような絵と賞状みたいなもんがぎっしりと飾ってある。黒い床と黒い家具と黒いテーブルクロス。その上に白い紙のテーブルクロスと天井から煌々照らす蛍光灯。明るいのか暗いのかさっぱり判らない。店の中は見通しが良すぎて、会話も筒抜けだ。デート向けではない。女性はもっとムードのある店が好きだ。「大喰い」というレストランに誘われて告白されても成功率は低いだろう。
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 ついに待望の「アリェイラの栗添え」が来た。待望は失望に変わった。料理は名前どおりのものだったが、それ以上のものでもなかった。私はただのアリェイラではない何かを期待していたのであるが・・・許せないのは青菜の炒め物がなかったことだ。これでは脂肪と炭水化物だけではないか。ビタミンはどうしてくれるのだ。栗は好きなので全部食べたが、フライドポテトは残し、あらためて青菜の炒め物を注文した。
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 それにしてもなぜあの暑い日に揚げ物と栗なのか、料理人のセンスを疑う。店のインテリアのセンスも疑う。そしてそのような日にそのような店でそのようなものを食べる自分の感覚も大いに疑う。
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by caldoverde | 2010-05-26 10:32 | 肉料理 | Comments(7)

ミーニョの豚の血粥

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世界遺産ギマランイスの旧市街。ブラガからバスで40分

 今年のヴァレンタインデーも誰とも約束がないので、ひとり北部ミーニョ地方のブラガの格安のホテルに一泊し、世界遺産の町ギマランイスに出かけた。ブラガには美味しい鴨ステーキフォアグラ添えのあるお気に入りのレストランがあるのだが、今年の二月十四日はあいにく日曜日で休業、しかも小さな町なので日曜日に開けるレストランも限られている。しかし、私は抜かりなく下調べをし、駅前のビジネスホテルでスーパーで買ったサンドイッチを一人で頬張る様な惨めなヴァレンタインデーは回避できた(?) ひと気のない日曜の夜の地方都市の、小さな広場に灯ったそのレストランの看板は、夜の暗い海をただよう船がはるか沖に見出す灯台の光のように、私を暖かく勇気付けた。入るとそこはやはり楽しそうに語らう家族連れや、幸せそうなカップルであらかた埋まり、こんな夜に女一人で食べに来る客はポルトガル人であれ外国人であれ、私ぐらいであった。
 色気より食い気の私は、ひるむことなく折角ここまで来たのだから、北の名物を食べなくてはと意気込んでメニューを開くと、そこにもまた「ヴァレンタインデー 特別メニュー」なんてものがある。けっ。で、ラブラブのカップルはどんなロマンチックなものを食べているのかというと、てんこ盛りの「コジード・ア・ポルトゲーザ」とかワラジみたいなステーキに小山のフライドポテトである。そう、ここは超ベタなポルトガル料理店なのだ。しかも田舎はリスボンよりも二~三割盛りがいい。見つめあう男女の体格も立派である。
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ミーニョ地方の地酒といったら何と言ってもヴィーニョ・ヴェルデ(緑のワイン)特に赤は地元ならでは

 私はミーニョ地方の郷土料理「ロジョンイス、パパス・デ・サラブーリョ添え」を選んだ。ロジョンイスはワインに漬け込んだ豚肉やレバーをオリーブオイルで揚げたもので、レバーが好きではない私は単体ではまず頼まないものであるが、付け合せのパパス・デ・サラブーリョにいたく惹かれたのだ。パパス・デ・サラブーリョは豚の血を使ったどろどろのお粥みたいなものである。

 そう書いただけで眉をひそめる人も多いことだろう。しかし、これをどうしても食べてみたくさせる本がある。アントニオ・タブッキの「レクイエム」という小説だ。主人公が詩人のフェルナンド・ペッソーアに導かれて白昼夢のようなリスボンをあちこち歩き回る話だ。その中に、気持ち悪くも旨そうにサラブーリョの作り方を詳しく説明している部分があり、非常に興味がそそられた。この小説を読んで以来サラブーリョというものを一度食べてみたいものだと願っていた。しかし、リスボンでサラブーリョをメニューに出している店はほとんどない。十年位前、コインブラ大学でサマーコースを受けていた時、町の食堂の昼定食にサラブーリョがあるのを発見したが、既に売り切れていた。その時一緒にいたのは、タブッキの作品からペッソーアに興味を持ち、ポルトガル語の翻訳家になった知人であった。二人は同時に「サラブーリョ!」と叫び、同時に落胆したのだった。

 数年後、別の友人とミーニョの奥にあるポザーダ・サンタ・マリア・ド・ボウロに泊まった。中世の修道院をポルトガル屈指の建築家ソウト・モウラが手を加えた素晴らしいホテルで、大きな煙突のある昔の厨房を改装したダイニングで夕食をとった。そこで遂にパパス・デ・サラブーリョを食することができた。外見は粘りのある汁粉の様でどす黒い色をしている。怪我をして血をなめた時のあの血生臭さは断じてないが、チョリソに使う独特の香辛料(クミンかパプリカ)の香りが感じられる濃厚なスープである。しかし食べてみると味は以外とマイルドであった。それ以降はしばらくお目にかかることのなかった幻のパパス・デ・サラブーリョだが、時を経て再びかの地で会うことになった。

 まずメインのロジョンイスが登場。ごろんごろんと切った豚肉とワインに漬けたレバーがどお~んとやって来た。見た途端げっぷが出そうなすごい量だ。
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 そして目的のパパス・デ・サラブーリョが土鍋の中でぐつぐつと音を立てながらやって来た。この店のパパスはいかにも血を使ったような暗褐色ではなく、トウモロコシのポタージュのような淡い色あいである。かなり粘りのある粥状で、スプーンですくうと、繊維状に煮崩れた肉がたっぷり入っているのがわかる。舌触りはあくまでどろ~りと濃厚で滑らか。
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 別皿に取り分け上品に盛り付けようと試みたが、逆にこの食べ物をご存知のない方々にとっては、よからぬ連想をさせてしまいそうなヤバイ画像となってしまった。食欲を無くした方にはお詫びしたい。でもサラブーリョの名誉のために言っておこう。料理は見かけじゃない、味なのだと。
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by caldoverde | 2010-03-04 07:19 | 肉料理 | Comments(8)