ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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<   2007年 05月 ( 7 )   > この月の画像一覧

「カラコイス(カタツムリ)あります」リスボンのバールやレストランに時々でんでん虫のポスターが貼られている。初めの頃はポルトガルにもエスカルゴがあるんだと考えていた。ブドウの葉っぱで育てた、小さめのサザエくらいの貝に香草を利かせたバターを詰めて、薫り高いワインで蒸し焼きにした高級料理がここでも食べられるのかと思っていた。

 田舎とはいえヨーロッパに来たからには西洋料理のエッセンスを味わってみなければ、という意気込みと、まさか日本の梅雨時によく出没する、葉っぱの陰にへばりついたねばねばした気味の悪いあの軟体動物とは別種だろうという漠然とした思い込みが、私に「カラコイス」を注文させた。場所はリスボン、アルファマ地区のカテドラルの近くの何の特徴もないバールであった。
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 生ビールとともに「カラコイス」がやってきた。コーヒーメーカーの社名の入ったコーヒーカップの受け皿にこんもりと積み上げられた「カラコイス」はでんでん虫そのものだった。せめて、ホッキ貝くらいの大きさの身が入った大型のものだろうと言う期待は見事に覆され、指の先ほどの可愛いカタツムリだ。
 しかも、童謡に歌われているように「ツノ出せ、槍出せ、目玉出せ」の生前のお姿そのままの状態に茹で上がっている…これは完全に予想外だった。カタツムリも釜茹でにされるときは角や目は引っ込めるだろうと何の根拠もなく信じていた。なのに、ぴょーんと伸びた先にちっちゃな目玉がついている!こ、怖い。
 爪楊枝が何本か添えられている。これで身をつつき出すのだ。可哀そうなのを堪え、折れやすい爪楊枝で何とかほじくり出すと、黒っぽい奥のほうの身がくるんと丸まって出てくる。殻から出された哀れな裸のカタツムリ、これがまた気持ち悪い。
 注文したからにはちゃんと食べてあげなくては成仏できまい。自分も無益な殺生をしてしまうことになる、と勇気を振り絞って食べた。ひとつ食べればだいぶ恐怖心は薄らぐ。なるべく間をおかず、必死でカタツムリの殻から身を取り出しては口に放り込む作業に没頭した。食べているうちに味も感じるようになった。一心不乱にカタツムリと格闘し、小さな受け皿に盛られた全ての殻を空けたのは約1時間後だった。心の底から安堵を感じた。
 後で友人にこのことを話すと、カタツムリの中には阿鼻叫喚さながら口を開け、歯まで見えているものもあったという、友人のそのまた友人の「カラコイス」体験談を語ってくれた。そんなことを事前に聞いていたら注文しなかっただろう。

 要は文化の違い、何を食べ物と見るかの違いである。日本人がイナゴを食べるようなものである。イナゴの佃煮にはちゃんと目があり、ひげがある。カタツムリも然り。ポルトガル人にとってはカタツムリが目を出していようがいまいが味に変わりはないのだ。稲を食い荒らす害虫のイナゴを蛋白源として利用した日本人と同様、ポルトガル人も畑の作物を食い荒らすカタツムリを食べたら一石二鳥であると考えたのだろう。コインブラ郊外の野原に異常発生しているカタツムリを見たことがある。そこかしこの稲のような細長い草の茎に何十個もびっしりとカタツムリが鈴なりになっている。ひょっとして枝葉もあったのをカタツムリがすっかり食べ尽くしたのかも知れない。これだけの数がいれば食用にと考えるのも無理のないことである。

 カタツムリを調理するには、数日前から小麦粉を食べさせ、お腹のものをだしてきれいにする。そして余分なものを排出したカタツムリは唐辛子やニンニク、月桂樹などとともに茹でられて、ビールのつまみになる。ちょっとピリッとしていて形を見なければ美味しい。手持ち無沙汰なときとか、店のテレビでサッカーを見るときとか、できるだけ長居をしたいときに注文するとよい。
 めったにお目にかからないがカタツムリを豆と一緒に煮込んだフェイジョアーダ・デ・カラコイスという料理もある。これもまた食べるのに時間のかかりそうなメニューである。一人で食べる姿を想像するとなんだか侘しいけど、複数で食べると性格を占ったりできそうで面白いかもしれない。面倒なカタツムリに手をつけない人、カタツムリを選別する人、豆だけ拾って食べる人、他のものと同時進行で食べる人、他の人に殻をとってもらう人等、食べ方によって性格がうかがい知れそうだ。付き合って間もないカップルのデートのメニューにいかがでしょう。
 もし、カップルがカタツムリを食べていたら、チュウチュウと耳障りな音が聞こえてくるかもしれない。こんなところでまで仲が良いことを見せつけなくたっていいのに、と腹を立てちゃいけない。彼らはカタツムリの殻の奥の身を吸い取っているのだ。それが上品なマナーなのかどうかは知らないが。
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by caldoverde | 2007-05-27 01:20 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(11)
民族衣装の女性たちが働くフンシャルの市場
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 リスボンから飛行機で1時間40分のマデイラ諸島は亜熱帯なので、大陸のポルトガルにない食べ物がある。市場にある果物の種類は豊富でしかも大きい。リスボンで売られているチェリモアは女性の握りこぶし程の小さいものであるが、マデイラでは男性が両手の親指と中指で輪を作った位の大きさのもある。バナナは可愛い小粒のマデイラバナナもあれば、太いサツマイモのようなりんごバナナもある。熟してなかったせいもあるだろうが、しゃきっとした歯ざわりの、甘味が少ない、酸味の多いバナナで値段はなんと1本約400円!普通のバナナなら10本ついてるものが2房買える。りんごパインだか、バナナマラクジャーとかいう名前の不思議な果物もある。パイナップルもこの島の特産だ。
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緑のとうもろこしのようなものがバナナマラクジャー(?)右下の松かさのようなものはチェリモヤ
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 海産物で楽しみにしていたのが、笠のような形のラパ貝。ポルトガル人にマデイラでラパスを食べたと言うと、たいてい目を細め遠いまなざしをして恍惚とした微笑を浮かべ「う~ん」と嘆声をあげる。浅いフライパンにニンニクをきかせたバターで焼かれた笠貝がじゅうじゅう音を立てながら運ばれてくる。弾力のある身を噛むとバターとニンニクと磯の香りが渾然一体となって、口の中に広がる。口の中の熱さを冷ますために飲むビールの旨さ!貝をひっくり返すと表面に海苔のような海藻がびっしりくっついている。これが磯の味をいや増す役割を果たしているに違いない。店の従業員が推すマデイラ名物のパン、ボーロ・デ・カコは、焼きたてのホカホカで香草とニンニクバターが塗られている。そのまま食べてもモチモチしておいしいが、貝を食べた後のフライパンに残ったバターをつけて食べるとこれまた涙が出るほど旨い!パンをもうひとつ頼んで貝のエキスを全て摂取したいという誘惑に駆られたのだった。
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これはアソーレス料理店で食べたラパス。香草バターが使われている。

 マデイラには世界遺産の月桂樹の原生林がある。月桂樹の枝に刺した牛肉のバーベキューも名物料理の一つである。ほんのり月桂樹の香りが移った肉はジューシーで柔らかくとても美味しい。ところが外国人がマデイラでキャンプをしてその辺の月桂樹の枝を取ってバーベキューをして食べたところ食中毒を起こすという事故があった。彼らは毒のある木を月桂樹と間違えて使ってしまったのだろう。注意である。
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by caldoverde | 2007-05-21 17:33 | ポルトガルの旅 | Comments(2)

緑汁と緑酒

 ヴェルディ川崎のヴェルディとはイタリア語で緑の意味だそうだが、ポルトガル語も同様。ポルトガルを代表するスープといえばカルド・ヴェルデ。直訳すると緑汁。青汁を想像してはいけない。はるかに色合いが美しくしかも旨い。材料はジャガイモ、玉ねぎ、オリーブオイル、塩コショウ、ニンニクのきいたチョリソの輪切り、そして濃い緑色のキャベツ。このキャベツは何と言う種類なのか、茎が1メートルほど伸び、先端に差し渡し30cm位の大きな葉っぱをバサバサとつけた不思議な植物である。伸びきったブロッコリーの様でもあり、日本ではケールと呼ばれている青菜の仲間かもしれない。この葉っぱを幅1ミリ位の千切りにしたものが袋詰めされ、カルド・ヴェルデ用として市場で売られている。
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 ベースになるスープは、ほとんどのポルトガルのスープと作り方は共通で、ジャガイモと玉ねぎを茹でてやわらかくなったところにオリーブオイルを注ぎ、ミキサーでガーとかき回す。そして塩コショウで味を調え、うきみの千切りキャベツ、チョリソを加えて煮込む。伝統的には薄く切ったブロアというとうもろこしのパンを添える。クリーム色のポタージュスープの中に細い青菜の千切りがたくさん入っていて、その真ん中に赤いチョリソが一切れ浮かぶ、彩りの良い、温まるスープだ。日本人にも人気がある。どこか味噌汁に共通する味がするからか、青菜を海藻だと思っている人もよくいる。調理の段階でもう十分にオリーブオイルは使われているにもかかわらず、ポルトガル人の中には、スープの表面が緑の膜で覆われるほど更にオリーブオイルを加えて食べる人もいる。これで完璧に「緑のスープ」になるわけである。

 この緑のスープはもともとポルトガル北部のミーニョ地方の郷土料理だった。この地方では緑のワイン、ヴィーニョ・ヴェルデが作られている。ついでにこの地方のビーチはコスタ・ヴェルデ(緑の海岸)と呼ばれている。日本のように湿潤な気候で山は緑で覆われているので、緑がミーニョ地方の枕詞になっている。

 この緑のワインには、矛盾するようだが赤と白がある。緑とは、若いと言う意味での緑であり、完熟前の若いブドウで作るからだ。スーパーやレストランにある緑ワインはほとんどが白ブドウから作る白のヴィーニョ・ヴェルデ。比較的低アルコール(9~11度)の軽いワインで、爽やかな酸味があり冷やすと美味しい。軽い発泡性があり、物によってはシャンペンのようにシュワッと勢いよく泡が出るものもあるが、中にはほとんどガスを感じないものもある。炭酸の強いものは後からガスを加えている。
 
 レストランによっては樽出し生ワインタイプのヴィーニョ・ヴェルデを置いているところもある。昔、一人でポルトガルを旅していたとき、ヴィーニョ・ヴェルデとは関係ないアレンテージョ地方のエルヴァスで「ヴィーニョ・ヴェルデ」と言う名前のレストランを見つけた。何を食べたのかはよく覚えていないが、この店の看板である樽出し緑ワインが美味しかったことを覚えている。お相伴してくれたのは自転車でバルセロナからポルトガルにやってきた日本人の青年だった。佐川急便で働いてお金を貯め、スペインに住むいとこの結婚式に出席するついでにイベリア半島を数ヶ月間旅しているということだった。豪快に食べ、飲み、風のように去っていったこの若者は緑のワインのように爽やかで、風間トオルに似ていた(ような気がする)それ以来佐川急便のトラックを見ると胸がときめくようになった。

 赤のヴィーニョ・ヴェルデを産地でないリスボンで飲むには、ミーニョ地方の郷土レストランを探す。動物園近くのメルセデス・ベンツのディーラーの隣にある大衆食堂の主人がミーニョ出身らしく、インテリアはヴィアナ・ド・カステロ名産の可愛い刺繍のテーブルクロスを使い、メニューも以前紹介した八目ウナギのリゾットとか、ロジョンイスという豚肉やレバーをヴィーニョ・ヴェルデで煮たものなどミーニョの郷土料理をフィーチャーしている。この店のヴィーニョ・ヴェルデの赤は、主人の実家か親戚が作っている自家製らしく、ラベルのない怪しいビンに入っており、酸味が強く、やはり少しガスが入っている。ガラスの足つきグラスでなく、陶器の湯飲み茶碗のような器で飲む。いかにもどぶろくっぽいオリの沈殿したワインであるが、なかなかいける。本場ミーニョ地方で飲む赤ヴィーニョ・ヴェルデはもっと美味しいらしい。

 ミーニョ地方のヴィアナ・ド・カステロでは、8月20日前後に「ノッサ・セニョーラ・ダ・アゴニア祭」というお祭りがある。この時期にはヴィアナ・ド・カステロの女性は赤ちゃんからおばちゃんまで独特の民族衣装に身を包んで町をパレードし、広場で民族舞踊を踊る。ポルトガルで最も美しい祭りのひとつなので(特にカメラオヤジには)一生に一度はぜひ見ていただきたい。
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by caldoverde | 2007-05-21 05:52 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(2)

ウツボバーガー

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 ポルトガル南部、アルガルベ地方は今や国際リゾート地として、ホテルやマンションが林立し、英語が幅を利かせ、ポルトガル語の話せない人間が「パブ」と称する飲み屋で働いているという。(すいません、私英語が話せないもんで)田舎くさい、素朴なポルトガルの好きな私にとってはあまり魅力的なところではない。それでも大西洋と地中海を結ぶ位置にあるこの地は、魚介類が豊富で食べ物に関してはまだ伝統的なものが残っているようだ。イワシはやはりアルガルベものが旨いそうだ。リスボンの日本料理店はこの地方の卸屋さんからマグロを買っている。

 このアルガルベ地方はポルトガル建国後もしばらくアラブ人が留まり抗戦していた土地で、アラブの影響が色濃く残っているという。アラブ人はヨーロッパに米や砂糖、様々な果物等の農作物を伝えた。そのひとつにアーモンドがある。1月になると桜に良く似た、淡いピンクの花を咲かせる。
 伝説によると、昔この地方を治めていたアラブ人の王様が、ヨーロッパの北国から王妃を迎えた。ところがこの美しい海と温暖な気候のアルガルベにやってきた王妃はなぜか日に日に元気を失くしていく。心配した王が理由を尋ねたところ、王妃は、自分の故郷で見られた雪がここには降らなくて寂しいと言うのだ。いくら権勢を誇る王といえどもアルガルベに雪を降らすことはできない。しかし王は一計を案じ、冬の間に王宮の庭にアーモンドの木を植えさせた。そして春先のある日、王妃を高い塔の窓辺に呼び、下を見るように言った。見下ろした庭には雪が降ったように一面に白いアーモンドの花が満開となっていた。そして王妃は健康を取り戻し、幸せに暮らしたという。

 そんな美しい伝説のある美しい花を愛でながら飲食するという習慣はポルトガルにはない。どんな見事な満開の時期でも、アーモンドの木の周りにはビニールシートやロープは見当たらない。カラオケの音もない、静かなお花見が独占できる。真に花の美しさを愛する人はぜひポルトガル、アルガルベ地方にどうぞ。アーモンド林がリゾートマンションに変わってしまう前に。

 そのアーモンドを使ったお菓子が、マジパンである。和菓子のねりきりのような、粘土状の柔らかいアーモンドの粉で作ったペーストに色をつけて野菜や果物をかたどった可愛いお菓子で、見るだけで楽しい。ポルトガル人も器用じゃないか(失礼)と感心するものも。マジパン菓子は、アーモンドの甘いリキュール、アマルギーニャとともに遠い国から嫁いできた王妃の心を和ませたに違いない。
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 さて、そんな雅な話から、本題の食いしん坊な話題に戻る。アルガルベに住んでいた日本人の知人に教えてもらったこの地方の名物は、ウツボである。あの蛇のように長く、白黒まだら模様の、凶暴な顔をしたグロテスクな魚である。水族館やドキュメンタリー番組で見る、岩の下に隠れながら餌になる魚を虎視眈々と狙っている、醜い魚である。ぎざぎざの鋭い歯はダイバーや漁師の指も噛みちぎってしまう恐ろしい魚である。勇猛果敢なアルガルベの漁師たちはそんな危険な魚と格闘し、勝利した(たまたま魚網に引っかかっただけなのかもしれないが)そして凱旋の旗を揚げた。クリーニング店で使う針金ハンガーに広げられ、潮風になびいているのは、ウツボの開きだ!ぺらぺらのほとんど皮1枚の薄さになったウツボの干物を油で揚げて、パンに挟んで食べるのがアルガルベ名物ウツボバーガーである。中身のウツボのてんぷらは、よく駄菓子屋で売っているイカ天みたいな感じだった。味はイカ天ほど濃くないので、とんかつソースなどをつけて食べるともっと旨いと思う。

 この地方の有名な料理は、細長いマテ貝のリゾットである。一般的なシーフード、タコ、アンコウのリゾットはトマト味だが、アルガルベのある町で食べたマテ貝のリゾットは珍しく白っぽい色ですごく美味しかった。バターを使うのか店の人に聞いたら、バターは全く使っておりません、オリーブオイルだけですという回答だった。それでもどこか乳製品の存在を感じさせる香りと味がある。それがマテ貝の旨味なのか?もう一度食べたいが、残念なことにどの町の何と言う名前のレストランか覚えていない。幻の味である。リスボンの闘牛場の地下にマデイラに本社のあるスーパーが開店し、そこにマテ貝も売っているので、そのうち自分で再現しようと思う。

 またまた超簡単なアルガルベ料理のレシピを紹介する。ティボルナという。材料:焼きたてのパン、オリーブオイル、ニンニク、塩の花。作り方①ニンニクを皮がついたままつぶす。②皿に、オリーブオイル、つぶしたニンニク、塩の花を入れる。③手でちぎった熱々の焼き立てパンを②に浸して食べる。簡単でしょ。でも美味しさは材料の質に大きく左右される。
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by caldoverde | 2007-05-10 19:30 | シーフード | Comments(5)

たこづくし

 子供のころ何かの本で、西洋人はイカやタコは、うろこがないためだか、その奇怪な容貌のせいかで、悪魔の魚といって食べないという話を読んだ。ところが、日本にとって最初に出会った西洋人たるポルトガル人はイカやタコが大好きではないか。きっと400年前長崎や堺に住んでいた南蛮人たちは、タコ焼きやイカのぽっぽ焼きが大好きだったに違いない。(もしその頃あればの話だが)ひょっとすると、ポルトガル人がイカタコ食を日本に導入したと言う可能性は…多分ないだろう。イカタコが好きなのは共通しているが、味付けにはほとんど共通点がないからだ。
 
 日本では、タコは刺身、酢の物、たこ焼き、おでんの種。イカなら刺身、焼き物、煮物、てんぷら、干物、イカ飯、塩辛などが代表的な調理法だろう。
 一方ポルトガルでは、タコは茹ダコ、オーブン焼き、ワイン煮、トマト煮、てんぷら、サラダ、リゾット。イカなら炭火焼、オーブン焼き、トマト煮、カルデイラーダ(鍋物)、白いんげん豆と煮たもの、イカの詰め物、てんぷらなど調理法の多彩さにおいては日本に負けていない。味付けも日本はほとんど醤油味であるが、それに対してポルトガルはあっさり系塩味、地中海系オリーブ・トマト味、濃厚系ワイン味など多様である。イカやタコの種類も日本同様何種類かある。ポルトガルには独創的なイカタコ料理があるなあと感心したものだ。
 
 ポルトの有名なレストラン「トリペイロ」で日本人ツアーのグループがとった食事は、タコのてんぷらだった。一口大に切らずに、20cmくらいの足を丸ごと揚げたてんぷらを見て、顎の筋肉がこわばっていくのを感じたが、食べてみてびっくり、意外なほどに柔らかい。ツアーの人たちは皆、どうしたらタコがこんなに柔らかくなるのか知りたがった。店の人によると、かなり念入りに下ごしらえをするということだ。圧力鍋で煮るとき、より柔らかくなるように玉ねぎを一緒に入れるとか、茹でる前か後に棒でボコボコたたくとか、さらに衣をつけて揚げる前に牛乳に浸しておくとか、色んなコツがある。それを聞いて家でタコ天を作るのは諦めた。
 同じくポルトのリベイラ地区のある店でのツアーのメニューはタコのシチューだった。オリーブオイルたっぷりのトマト風味のソースで長いままのタコの足を煮込んだものである。これも柔らかくて美味しいと評判だった。
 ポルトガルツアーのメニューによく登場するのが、タコのリゾット。シーフードリゾットと並んで、最も日本人の好みに合ったポルトガルの食べ物の1つだろう。
 バールのつまみやレストランの前菜に時々タコのサラダが出される。細かく切ったタコにピーマン、トマト、玉ねぎ、コリアンダーなどを混ぜた彩の良いサラダである。
 写真は以前に紹介したアソーレスレストランで友人が食べたタコのワイン煮。見かけどおり、かなり強いタコの風味。パンの薄切りが添えてある。ごはんだったら何杯もお代わりできそう。
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 ここで、笑える?メニューを2つ。昼飯を食べるサラリーマンやOLでにぎわうリスボンのカフェで、スーツにネクタイ姿もりりしい男性がペンと受話器をナイフとフォークに持ち替えて食べていたものは、どこからか「たこで~す。」と間抜けな声が聞こえてきそうな、おっきな1本の茹でたタコの足だった。太さが5cm、長さは30cmはありそうな、足の先がくるんと渦巻き状に丸まった特大タコの足を、きりりとしたダークスーツに身を包んだビジネスマンがまじめな顔をして食べている。タコの他にはごろんと茹でたジャガイモが2個、ただそれだけ。男性の生真面目な外見やエレガントな物腰と、身も蓋もないような料理とのギャップがものすごく可笑しかった。
 もうひとつは、友人がアソーレス観光のプロモーションで食べたと言う信じられないイカタコ料理。イカの詰め物は日本でもポルトガルでもおなじみの料理で、詰めるものは米、自分の足、野菜やハム・ベーコンなど様々であるが、なんとこのプロモーションで出されたアソーレスのイカの詰め物にはタコが入っていたそうだ!いったいどんな発想なんだ?じゃあ、タコの頭にイカを詰めたものは存在するのか?ううむ、やはり彼氏を調達してアソーレスに行く必要が生じてきた。
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by caldoverde | 2007-05-08 00:00 | シーフード | Comments(4)

ブラガの鴨料理

 ポルトガルは北のほうが食べ物は美味しいと言われている。食材が豊富なためだろうか。
 肉なら、内陸のスペイン国境に近いトラス・オス・モンテス地方にはミランダ牛、海岸寄りのミーニョ地方にはバロザン牛という銘柄牛がある。ある日リスボンのスーパーでバロザン牛の角切りを買ってビーフシチューを作った。たち落としお買い得品みたいな安い肉だったが、煮込んでも硬くならず、おいしく出来上がった。ミランダ牛は、テレビのニュースでミランダ・ド・ドウロという町のあるレストランの様子が放映されているのを見て以来、ぜひ現地で食べたいものだと夢見ている。分厚い牛肉の塊に荒塩をまぶし、薪の火であぶった豪快なステーキである。インタビューを受けていたポルトガル人は、リスボンで食べるものとはぜんぜん比較にならないと言っていた。

 魚なら、内陸なら鱒の腹に生ハムを詰めて焼いたもの。海に近い川なら八目うなぎのリゾット。これはポルトガルで一番高価な魚である。味は一番旨いかと言うとそうかな?であるが。海岸なら新鮮な魚にタコやイカ。鱈料理もリスボンよりバリエーションが多い。
 
 料理法もリスボンに比べるとやや手間のかかった、料理と呼べるものが多い。だってリスボンの料理は基本的には煮るか焼くだけ。よく言えば素材の味を生かし、悪く言えば技巧がない。入念な下ごしらえや複雑な調合の必要ないものばっかりで、こんなもん自分でも作れると思わせるような食べ物が多い。それに比べ北はブラガンサの栗を詰めた雉のグリル、ポルトのゼ・ド・ピポさん風鱈料理、そしてブラガの鴨のフィレ・フォアグラ添え。どれも自分では作るのが難しくて、美味で、ボリューム満点で、しかも安い!

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 これがブラガの鴨料理。ブラガのカテドラルの裏にある、その昔修道院で作られていた伝統的なレシピを再現したという郷土料理レストランである。一皿にてんこ盛りに色んなものが入って確か15ユーロだった。この料理は同じ店で2回食べた。
 まず中央にきれいなロゼ色の鴨の肉の薄切りが山と積まれ、その上にでかいフォアグラが気前よく乗っかっている。鴨葱ならぬ、鴨が自分の肝を背負って来るのである。左にあるのは松の実を飾ったアップルパイ。これだけでひとつのデザートになる。時計回りに、鴨に付き物のオレンジの輪切りが添えられ、その隣には香草の効いたフライドトマト、マッシュルームの炒め物に、ボイルした人参やブロッコリー。ぱらっと炊いたおこげのついた香ばしいバターライス。そしてほんのり焼き色をつけたじゃがいも。盛り付けは、これでもポルトガル料理にしてはかなり良い方(笑)。朝食を抜いてお腹を空かせ、前菜やパンには手をつけなかったにもかかわらず、皿を全部平らげることは出来なかった。この地方のワインのハーフボトルと食後のコーヒーで、何と20ユーロでおつりが来た。

 このレストランの名前は、デ・ボウロという。ブラガから30分ほど路線バスで走った山の中に、サンタ・マリア・デ・ボウロ修道院という12世紀のシトー派修道会の建てた修道院があり、多分この修道院にちなんだ名前だろう。この修道院は現在ポザーダ(ホテル)になっている。古城や修道院を改装したポザーダはお化けが出そうだと敬遠する人もいるが、このポザーダは灰色の石造りの謹厳な外見からは想像がつかないような、モダンな、おしゃれな内装なのだ。改装を手がけたのはポルトガルの世界的建築家、アルヴァロ・シザ・ヴィエイラとソウト・モウラ。廊下は広々として光があふれ、窓からはジェレース山地の清浄な風景が楽しめ、客室はシンプルでクリーンなデザインで、見も心も洗われるようなホテルである。
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by caldoverde | 2007-05-03 18:06 | 肉料理 | Comments(6)
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エストレモス、ポザーダの塔から見た景色

 アレンテージョ地方の料理というと、旨いものまたは貧しいものという両極端のイメージがあるらしい。確かにこの地方はポルトガルで最も貧しい地方と言われ、気候は穏やかなようで夏は40度を越える気温となり、慢性的な水不足に悩まされている。土地はやせており、灌漑設備もまだ十分ではないようで、生産性は低く、農作物の種類は限定される。日本式の狭い面積に手間隙かけて様々な作物を育てる集約型農業とはだいぶ違う。だから、この土地の人々は、限られた食材を大事に無駄なく利用し、美味しくて腹持ちのする料理を考案し、生活してきたのだろう。

 アレンテージョ地方のパンは崩れかかった雪だるまのような、巨人の拳骨のような、丸いパンの上にさらに突起が突き出た独特の形をしている。皮は硬く、バリッとしているが、中身はモチモチと弾力があり目の詰まった、食べごたえのあるパンだ。マルバォンという城壁に囲まれた中世の面影を残す村には昔ながらのパン窯で焼くパン屋がある。焼きたてのほかほかの大きなパンを買い、ペンションでパンにバター、チーズ、ワインという超シンプルかつ極上のディナーを取った。煎餅のように硬い皮は香ばしく、小麦本来の味を楽しめるが、あごの弱い人、歯の悪い人には辛い。モチモチの中身だけ食べて空洞にしたパンをさてどうしよう。捨ててはいけない。アレンテージョの郷土料理には、硬いコチコチになったパンも上等な、美味しい料理に生まれ変わらせるレシピがあるのだ。

 その中の1つに、日本のお茶漬けに匹敵する、簡単で旨いソパ・アレンテジャーナ(アレンテージョ風スープ)がある。ほとんど包丁を持ったことのない男性でも子供でも作れるメニューなので、ポルトガルの味を日本で試していただけるように、ここに作り方を紹介する。

材料(分量は全て適当)
●パンの薄切り
(フランスパンなど歯ごたえのあるもの。ふにゃふにゃの食パンは向かない)
●卵
●塩(天然塩)
●オリーブオイル(ヴァージンオイルなど良質のもの)
●ニンニク
●生のコリアンダーの葉
作り方
1、鍋に湯を沸かし、落とし卵を作る。
2、スープ皿に適当に切ったパンを並べる。
3、ニンニク、コリアンダーをみじん切りにする。
4、スープ皿に好みの量のオリーブオイル、塩を入れる。
5、みじん切りにしたニンニク、コリアンダーも好みの量をスープ皿に入れる。
6、卵が好みの硬さに茹で上がったら、茹でたお湯とともにスープ皿に入れる。
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はい、できあがり。これは昔2ヶ月ほど住んだコインブラの下宿屋の料理上手のおばさん直伝のレシピなのだ。この下宿屋には偶然にもポルトガルレストランを開きたいという夢を持つ仙台の友人夫婦も滞在していた。えっ、スープストックは要らないの?せめてコンソメスープの素は使わないの?と疑問を感じる向きもあろう。我々三人は、スープは単なる塩水なのにこんなに美味しいものが出来るのか、と感心したのを覚えている。ものの本によるとこのスープには干鱈の戻し汁を使うと書いてあるものもある。普通は捨ててしまうものもリサイクルしようという先人の知恵なのだろう。でもこのスープを作るためにわざわざポルトガルから干鱈を輸入する必要はない。水道水に、食塩じゃない天然の塩、ちょっと奮発してヴァージンオイル、エスニック食品を扱う店でコリアンダーを買って、作ってみてください。
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by caldoverde | 2007-05-01 07:39 | スープ・前菜・酒肴 | Comments(4)