ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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女性運転士が運転する市電とアールヌーボー調の20世紀初頭の建物
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 私の住んでいるところはリスボンの中心からやや西のほうにあるカンポ・デ・オリークという住宅地である。100年ほど前から開発され、中産階級の人たちが多く住むところだそうだ。ピンクや黄色の中層アパートがびっちりくっつき合って建てられ、建物の1階が店舗や事務所になっているのは典型的なリスボンの町並みだが、ケヤキ並木があり、観光客に人気の市電28番のターミナルがあり、アールヌーボー、アールデコ調の装飾のあるカフェやアパートがあり、近くには白亜のバロック様式の教会エストレーラ大聖堂と20世紀ポストモダン建築の代表作アモレイラス・ショッピングセンターがあり、ありとあらゆる種類の店がそろっていて、住んで便利、散歩して楽しいところである。ただし、犬の糞が多いのと家賃が高いのが難である。

 無数のカフェやレストランがあり、特徴を述べるのが困難な平凡な店もあれば、がんばって差別化を図っている店もある。その中に最近新聞でサクセスストーリーとして紹介された店がある。その名を「世界一美味しいチョコレートケーキ」という。ふざけた名前のその店は市場の向かい側のアパートの1階に数年前にオープンした。建物の角の小さなスペースに椅子とテーブルが2組ほど、そしてケーキを入れるガラスケースがあるだけの小さな店である。

 どんなものか、この名前を見て好奇心で食べに来たのは私だけではあるまい。ところが開店ほやほやの店には、なんと私の他に、遠路はるばる日本からやって来た3人のお客さんもいたのだ。この辺は住宅地なので市電の外は観光客がカメラをぶら下げて歩いているのを見ることはめったにない。強いて興味ある場所をあげれば、文学が好きな人には詩人のペッソーアの記念館とか、タブッキの「レクイエム」に出てくるプラゼーレス墓地とかそんなところか。日本のガイドブックでカンポ・デ・オリーク地区に言及しているものはないだろう。

 ところが、世界一美味しいという噂がもう日本でも広まっているのか、日本人の男性1人と女性2人がすでにこの開店したてのカフェにいる。日本人客第1号になるという私の野望はついえた。無念さを隠し、3人に声をかけると、そのご一行はなんと有名なカステラ屋の社長さんとそのお嬢さん、そして通訳の日系ブラジル人の女性であった。近いうちにポルトガル菓子の喫茶店を新宿のカステラ屋の上に開くので、その研究視察のためにポルトガルに来ているとのことであった。この「世界一美味しい」店のシェフとは外国で行われたお菓子のコンペで知り合ったそうだ。
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 さて問題の「世界一美味しいチョコレートケーキ」であるが、外観は何の飾りもなく表面をチョコで覆っただけのプレーンなものである。有名なウィーンのザッハトルテのようにつやつやの滑らかな磁器を思わせるような仕上げではなく、いかにもポルトガルのお菓子らしく、田舎の楽焼の陶器のような、飾り気のない無骨な様子である。この外観で世界一は難しいと思われる。

 ケーキのコーティングは、パリパリの硬いチョコではなく、とろりと流れるようなチョコレートシロップ。中身はチョコムースとメレンゲが交互に重なっている。台もメレンゲでできている。粗野な外観であるが、実は大変崩れやすい繊細なものである。ふんわりと泡を包んだ、ビロードのように滑らかなムース、サクサクと軽いタッチのメレンゲ、それぞれの層は異なった舌触りが楽しめるが、いずれも瞬く間に口の中で溶けていく。ノーマルとブラックの2種類あり、ノーマルは柔らかなミルクチョコレートのまったり味で、ブラックは濃厚なこってり味である。材料はフランス製の最良の製菓用チョコレートを使っているのだそうだ。しかも粉を使っていない。真のチョコレート好きにはたまらないだろう。

 でも私にとっては何か足りないような気がする。日本の洋菓子は必ず香り付けに洋酒を使うが、ポルトガルの菓子は酒をほとんど使わない。サヴァランでさえ、砂糖のシロップだけで肝心のラム酒は使っていないのでは?と思われる。この「世界一美味しいチョコレートケーキ」もチョコ自体の香りのみで勝負している。それはそれでいいのだが、隠し味にほんのちょっとチョコを引き立てるリキュールかブランデーを加えると良いのだがな・・・と砂糖、ならぬ左党の私は感じる。

 そんなわけで、「世界一美味しいチョコレートケーキ」は私の評価ではポルトガルでは上位十位の中に入るかもしれないが、1位かどうかはちと微妙。そして世界中のチョコレートケーキの中でトップに位置するのは、やはり日本の菓子職人の作るケーキではなかろうか。

 この大胆不敵なネーミングは、すでに長年レストランや厨房用品店を経営しているオーナーが、初めは冗談だったが、一度聞いたら絶対忘れないインパクトがあるということに気づきこの名前にしたそうだ。目論見は当たり、今ではこの小さい店での小売ばかりでなく、沢山のレストランにチョコケーキを卸している。クリスマスにはホールのケーキの注文に追われ、そして最近ブラジルのサン・パウロにも支店を出した。

 ところで開店当時、視察に来ていたカステラ屋さんは後にポルトガル菓子店を開き、私も立ち寄ったことがある。パステル・デ・ナタなどはかなりオリジナルに近く、味もなかなか良かったが、残念ながら閉店してしまった。
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by caldoverde | 2007-08-30 22:44 | お菓子・カフェ | Comments(4)
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 リスボンのロシオ広場の北側は国立劇場が占めているが、その劇場に向かって右側の角の帽子店の陰にサクランボのリキュール、ジンジーニャ専門のバーがある。店の広さは1坪位だろうか、カウンターがあり、おじさんが「コン?セン?」と客に聞き、毛むくじゃらの太い腕で小さなコップに甘ーいルビー色の酒を注いでくれる。コンとはコン・フルッタ(果実入り)センは(果実無し)と言う意味である。コンを頼むと何個かサクランボが入る。店の周辺では小さなコップを手にした地元の人や観光客がこの強い甘い酒を愛おしそうに飲んでいる。
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 このジンジーニャで有名なのは、中世の城壁の村、オビドスである。リスボンから車で1時間半ほど、田園の中に浮かぶひょっこりひょうたん島のような形の丘はぐるりと城壁に囲まれ、その中に青や黄色の縁取りのある白い家が肩を寄せ合い、壁や窓辺にはバラ、ベゴニヤ、ブーゲンビリアの花々が彩を添える、ポルトガル屈指の美しい可愛らしい村である。この地方は果物の栽培が盛んで、また良質のサクランボが取れるのでサクランボのリキュールが名物になっている。村のメインストリートには土産物屋やバールが並び、様々な瓶に入ったジンジーニャが売られている。
 もうひとつの名物、というか、この村が観光の目玉として力を入れているのはチョコレートである。秋にチョコレート祭りなるイベントが行われ、チョコでできた彫刻のコンクールが開かれ、チョコレート菓子を売る屋台がずらりと並び、村はチョコの香りでいっぱいになる。そのチョコとサクランボのリキュールを合体させた私のような甘辛両党人間にとって夢のような物がオビドスには2つある。ひとつは小さなチョコのコップに注いだジンジーニャ。あま~いリキュールを飲んだ後のコップはそのまま食べられる。もうひとつはチョコレートを溶かし込んだジンジーニャである。一見普通のジンジーニャと同じような瓶に入っているが、瓶は黒くて中身は見えない。コップに注ぐとココアのような液体がトロ~と出てくる。薫り高いカカオとサクランボの味と香りが一体となった、ものすごくリッチなリキュールである。アルコール度数も高いので、男性が女性を落としたい時、食事の最後にこのリキュールを勧めたら成功率が高まるのではないだろうか。一瓶を数日で空けてしまった私には無効だが。

 先日旅行したアソーレス諸島には牛乳のリキュールがある。白ワインのような色の牛乳リキュールは確かに芳醇なミルクの香りがして、健康的なイメージの牛乳と、大人の嗜好品であり飲みすぎると悪酔いするリキュールとの融合が意表をつく。黒豚のふるさと、アレンテージョ地方には豚の餌のどんぐりのリキュールがある。飲むのは人間様である。ポルトガル最南部のアルガルベ地方ではアーモンドのリキュール、アマルギーニャが造られている。中央部のベイラ地方は数種類のナチュラルハーブを原材料としたリコール・ベイランというお酒がある。いずれも甘ったるく、アルコール度数が高い。

 辛い食後酒としては、アグアルデンテと呼ばれる焼酎がある。バールでおじさんが小さなブランデーグラスで飲んでいる無色透明の酒だ。食後のコーヒーと一緒にこの焼酎を頼む人もよくいる。消化に良いのだそうだ。安くて、臭くて、ブームになる以前の日本の焼酎のように酔うことが目的で飲まれるような酒で、たいして旨いものではない。チョリッソを焼くときに楕円形のチョリッソ皿にアルコール代わりにこの焼酎を注いで火をつける。ところがオークの樽で熟成された琥珀色の古いアグアルデンテ(アグアルデンテ・ヴェーリャ)は、ブランデーのような芳醇な香りと味で、良い物はとても高価だ。最も高級なものは、ミーニョ地方のヴィーニョ・ヴェルデ(緑ワイン)から作られるアグアルデンテだそうだ。

 ポルトガルの食後酒には、世界的に有名なポートワインの外にも地方独特のものが色々あるので、ポルトガルを旅行したら宿泊しているホテルのバーで、その土地のお酒を注文してみては。酩酊しても迷子になったり、行き倒れになる心配がない。私はアソーレスのホテルのバーで牛乳と桑の実のリキュールを飲んだ。それぞれ1杯1ユーロ50セントであった。
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by caldoverde | 2007-08-27 03:46 | 酒・ワイン | Comments(8)

レトロ食品

 リスボンの地下鉄バイシャ・シアード駅周辺にはエルメスやカルチェなどのブランド店、創業100年の老舗、ベネトンやディーゼルなどの若者向けブティックが集中する。20世紀を代表する詩人ペッソーアの銅像と一緒に写真を撮る観光客たちで賑わう、カフェ・ブラジレイラ。その斜め向かいには、日本で言うと丸善のような書店、ベルトランがある。そのベルトラン書店のすぐ前の角を右に曲がった奥に、UMA CASA PORTUGUESA (ポルトガルの家) という店がある。一歩中に入ると、たちまち数十年前にタイムスリップしたような懐かしさを覚える。古びた木製のカウンターや棚の中に並ぶのは、かつてポルトガルで生産されて国民に愛されてきた日用雑貨が復刻されたものだ。粗雑な印刷、古臭いデザイン、なんともいえない素朴さというか、だささ。それが妙に新鮮だ。駄菓子屋で売っていたような紙のおもちゃや色鉛筆。アールデコ調の包装紙に包まれた石鹸。ブリキ製の調理道具。とぼけた味わいのあるものばかりで、見飽きない。その中に昔ながらのパッケージの食品が何点かある。今はスーパーには大メーカーや輸入品の大量生産されたものしか置かれていないが、かつて地域の食料品店には、このような家内制手工業的な製品が並んでいたのだろう。

 パッケージの面白さに惹かれつい買ってしまったのは、米の粉である。この絵の子供はどう見たって食べるのを嫌がって、泣きべそをかいている。なのにテーブルに上がりこんだ猫はうまそうにカップに入っているものをなめ、犬はテーブルに前足をかけて羨ましそうに、よだれを流さんばかりに舌を出している。箱の側面を読むと、米の粉は子供の食事に最適、との自薦の言葉が書かれており、反対側には水か牛乳で溶いて8分ほど火にかける、と食べ方が書いてある。日本のお粥みたいなものだろうが、レシピを読む限り、確かにうまそうだとは思えない。バターとか砂糖が入ればポルトガルの子供も少しは我慢して食べるかもしれない。私も買ってはみたもののどうやって食べようか考えた。米の粉なら上新粉だから、すあまを作ろうと思いついた。1回目は粉の粒々が残って失敗したが、2回目は熱湯で溶いて加熱した後手でよくこねたので、何とか似たものになった
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 同じメーカーの製品に、片栗粉があった。これも同じデザイナーがパッケージをデザインしたものに違いない。こちらの子供はずるがしこそうな笑みを浮かべ肩越しに振り返り、食べている皿とスプーンを体で隠すようにしている。箱の側面には、この片栗粉はオランダの良質なジャガイモから抽出した、と書いてある。子供の服装や、風車はオランダをイメージしたものらしい。大事そうに、誰にも取られまいと皿をしっかりと持った子供のしぐさから、片栗粉のほうが上新粉より子供に人気があるのだろうと推測できる。食べ方は上新粉と同じである。

 この2つの箱をデザインした人は、子供の頃さんざん上新粉や片栗粉のお粥を食べさせられたに違いない。その嗜好が如実にイラストに反映している。それにしてもポルトガルの絵画は昔から、宗教画にせよ、アズレージョ(タイル画)にせよ、このような商業美術にせよ、なんだかデッサンや遠近法が狂っているものが多い。子供の手や、犬の足など相当怪しい。子供の座っている椅子はいったいどんな構造なのか気になる。子供の顔や腕はふっくらとしているのに、胴はまるで1枚の紙か布切れのようにボリュームを感じない。Zellyのロゴマークの上が結構大きく開いているのは浮世絵の影響を受けた大胆な空間処理なのか。風車が立って船が浮かぶオランダの風景の前景が、びりびりに破けたようになっているが、何を表したものだろう。と見れば見るほど疑問がわく。

 月末になるとよくお世話になるのが魚の缶詰類である。スーパーにはイワシやツナ、イカやタコを加工した小さな缶詰めが並ぶ。安いものは50セント程度。ちゃんと箱に入ったものもある。このポルトガルハウスで買ったのは、缶を包装紙で包んださばのトマト煮の缶詰である。これも包装紙に惹かれた。派手な黄色の地に赤の、猫が舌なめずりをしている絵だ。これは美味しそうである。この缶詰メーカーは、今でも人の手で1個1個缶を包装しているそうだ。だからスーパーで売っているものより若干高い。手間ひまかかっているにもかかわらず、チープ感あふれる楽しいパッケージだ。しかし、猫に豪華な写真入キャットフードとこのさば缶を見せたらまっしぐらに駆けていくのはもちろんキャットフードのほうだろう。ポルトガルは本当に宣伝が下手だなあ。
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by caldoverde | 2007-08-22 18:11 | 話題の店 | Comments(10)
 ポルトガルを旅行するときは英語で書かれたガイドブックを参考にすることが多い。ポルトガル語による詳細な案内書は非常に少ない。例えばポルトガル語のガイドやサイトでここに行くにはどんな交通手段があるか調べようとすると、国道○号線をどこ方面に向かって進む。としか書いていない。国民全員が車を持っているという前提で書かれている。私のように車どころか免許も持たない人をはなから対象にしていない。ところが外国語で書かれた本はバックパッカー向けのものが多いので、駅やバスターミナルは町のどの辺にあり、1日に何本この方面の便がある、と言うふうにとても実用的に書かれている。ホテルの情報も五ツ星から素泊まり専用の安宿まで範囲は広く、コストパフォーマンスのいいところははっきりと勧めている。無駄なお金は払いたくないという実利的な精神が反映されている。しかしレストランの評価は疑問に思うことが時々ある。アメリカ人もイギリス人もグルメとは思えないし、英語のガイドブックで美味しいと書いてあるのは本当に信用できるんだろうか?

 ポンタ・デルガーダの中心部を歩くと色んなレストランがある。何か珍しいもの、土地のものが食べたいとも思うが、ここはリスボンで食べたトカゲステーキの本場でもあるので、とりあえずガイドブックの推薦する、地元のステーキのうまい店人気投票で1位を獲得したという店に行ってみることにした。ところが店は満員で入り口に立って待っている人たちがいる。同じ本を読んできたのか、大部分は英米系の人たちである。仕方ないので向かいのレストランを覗くとまだ席があるし、メニューに変わったものがあるので、こちらに入ることにした。

 アソーレスの食べ物は基本的には大陸のポルトガルと料理の仕方などは変わりないが、材料が違う。特に魚はリスボンでは聞いたことや見たことがないようなものが多い。向かいの店の本日の魚料理のリストに、私の心をがっちり捉えたメニューがあった。Caldeirada de Congro 穴子のシチューである。穴子!寿司ネタで一番好きなのは穴子である。穴子のないポルトガルの寿司屋なんて私には価値がない。穴子巻きや穴子丼や穴子のてんぷらを知らないで日本料理を語るポルトガル人はかわいそうだ。そう思っていたら実は今回ポルトガルにも穴子があることを初めて確認した。しかしリスボンのレストランでは見たことがない。ポルトガル人は穴子のうまさを知らない。穴子のとろけるような舌触り、淡白な味に思いをはせ、期待に胸を膨らませながら、穴子のシチューとアソーレスのピコ島産の白ワインを注文した。
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 シチューが運ばれてきた。あ、穴子はいったいどれなんだ?この魚の切り身が??皿には輪切りにしたジャガイモが数枚重なり、その隣に芋よりも大きな差し渡し15cm厚さ1cmくらいの白身魚の輪切りが無造作によそわれている。穴子と言えばウナギより小ぶりの、細長い魚と心得ていたが、この切り身から想像するに、長さが2mぐらいある巨大穴子ではないかと思われる。なりが大きいと味も大味になるのではと不安もよぎったが、あら、意外と美味しい。身は淡白でくせがなく、柔らかくて骨も少ない。日本の穴子同様、とても上品だ。トマト味のブイヤベースにもとてもよく合う。芋なんかいらないからもっと穴子が食べたい。しかし残念ながら穴子の切り身は1枚だけだった。勇気を出してお替りを頼めばよかった。でも芋を食べずに魚だけもっとよこせと言うのははしたない。ピコ島の辛口白ワインがとてもよく合う。ガイドブックに載っている店の影に隠れた存在のレストランであったが、他にもウツボのフライとか、最近捕れなくなって値段が上がっているという小魚のフライとか食指をそそるものがあった。

 翌日、今度こそステーキが評判の店に行こうと早めにレストランに着いたら、休業日であった。仕方がないので他の店を探すことにした。見覚えのある名前の店があった。これもガイドブックに載っていた店である。では一応信用できるだろう。地元牛のステーキ、Lagartoを注文した。16ユーロと高いので、またそれほど食べられないと思ったので、半人前の小さいのにしてくれるよう頼んだ。付け合せはフライドポテトではなくブロッコリをお願いした。
 ところが、残念ながらこの店ははずれであった。肉は不味くはないが硬い。切るのにかなり力が入った。焼き加減はミディアム・レアだが、肉を切った断面の色が良くない。黒っぽい赤色で生きの悪そうな色なのだ。もっと良くないのは、付け合せのブロッコリがいつ茹でたのかわからないような、新鮮さの全く感じらないものだったことだ。野菜でビタミンを補給するのは諦めた。正直言ってこれなら、危険を冒して飛行機でサン・ミゲル島まで来るまでもなく、リスボンのアソーレスレストランで食べたほうがよっぽど美味しい。値段も変わらない。参考までに、リスボンで食べたトカゲステーキ(4月20日の日記)と、この写真を比較して見てほしい。英語のガイドブックのレストラン情報はあまり当てにならないと感じた次第である。
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by caldoverde | 2007-08-19 06:43 | ポルトガルの旅 | Comments(6)
 先にせっかくの温泉にお菓子とかみやげ物がないと不満を述べたが、実はフルナスには温泉鍋の他にもう1つ名物がある。それはホットケーキに似た、ボーロ・レヴェードというほんのり甘いパンである。卵やバターや牛乳を混ぜた小麦粉の種を小さなフライパンで焼く。何日か日持ちがし、そのままでもおやつになり、暖めてバターやジャムをつけたり、ハムやチーズを挟んでも美味しい。ホテルの朝食にもクロワッサンや食パンとともに4つに切ったボーロ・レヴェードが並んでいた。ホテルの近くにこのパンケーキの製造販売所がある。焼きたてという張り紙に心は乱れたが、何しろ昼に食べた温泉鍋がまだ胃の中に滞留してとてもそれ以上の食べ物は受け付けられない。もし、一旦焼き立てを買ってしまったなら、その場で食べずにはいられないだろう。そうすると必死で消化活動を行っている胃に更に負担を強いることになる。楽しみにしている温泉プールも気持ちが悪くなって入れなくなる恐れがあるので、残念だが見なかったことにした。このボーロ・レヴェードはリスボンのデパートで結構な値段で売られている。食べたくなったら少々お金を払えばいつでも入手できる。
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 翌日フルナスからポンタ・デルガーダ方面行きのバスに乗り、途中ヴィラ・フランカ・デ・カンポという海沿いの町で下車した。小さな町だが最初のアソーレス州都で貿易港だった。観光に力を入れていて、海洋センターなる施設では鯨ウォッチングの遊覧船の受付や、潜水道具の貸し出しをしている。海岸から数百メートルのところに馬蹄型の典型的な火山の噴火でできた小島がある。緑で覆われた、可愛い島だ。飛行機からも見えたこの島は、自然保護区域になっているが、港からボートで行くことができる。30人ほどの観光客が列を成し、中にはもう水着姿の人もいる。馬蹄型の島の中央は天然の海水プールを形成し、海水浴やダイビングに格好の地となっているのだ。何も知らずに来た私は水着の入ったバッグを観光案内所に預けてきてしまった。しかし水着を着たにしても、太目の体型より、畑から引っこ抜いた大根のような白い肌をさらすほうがかなり格好悪いことに気が付いた。Tシャツに長ズボン、帽子にリュックサックと言う典型的日本人観光客スタイルがここでは相当の厚着で浮いている上に、自分以外は全員白人なのに、皆こんがりと黄金色に焼けている。こちらでも皮膚がんになりやすいから直射日光下の日焼けは程々に、と注意を促してはいるものの、欧米では夏の小麦色の肌はステイタス、というのはあながち嘘ではないんだなと実感した次第である。
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 昨日の温泉鍋の余韻がまだ残っていて昼になっても空腹にならず、小島見物の後は町をぶらぶら歩き町立博物館を見学した。博物館を出る際、職員にケイジャーダはどこで買えるのか尋ねた。リスボンで購入した英語のアソーレスのガイドブックによると、ここの名物はケイジャーダ・ド・カンポ。ケイジャーダとはチーズを使ったお菓子で、エヴォラ、シントラ、マデイラなど各地に様々なバージョンのケイジャーダがあるが、サン・ミゲル島のヴィラ・フランカ・ド・カンポにも有名なケイジャーダがあるそうだ。海洋センターのすぐそばに小さな工場兼即売所がひっそりとある。お菓子は15日ほど持つそうで、6個入りの箱詰めとその場で食べるため一個をバラで買った。それほどお腹は空いていなくても甘いものは別腹だ。包み紙を開くと粉砂糖で白く覆われた小さなパイが現れる。大口を開けてぱくつくとパリッとしたパイの生地が香ばしく、中身は豊かなバターやミルクの香りのする白餡のようなフィリング。この瞬間、上に挙げた三つの町を抜いて、私の中のお菓子ランキングではヴィラ・フランカ・ド・カンポのケイジャーダが堂々の1位に輝いたのであった。
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by caldoverde | 2007-08-19 06:13 | ポルトガルの旅 | Comments(4)
テーラ・ノストラ・ガーデンホテルに隣接する素晴らしい庭園
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 食べ物以外のアソーレスの大きな魅力といったら、何と言っても温泉だ。ポンタ・デルガーダからバスで1時間40分ほどのフルナスという町には、そばにカルデラ湖があり、湖のほとりに湧く温泉の熱を利用して島民が鍋物を作ることで有名だ。また温泉の水を利用した大きなプールと素晴らしい庭園を持つテーラ・ノストラ・ガーデンホテルも名高い。普段はなるだけ安いペンションに泊まる私もたまには贅沢しようと、このテーラ・ノストラ・ガーデンホテルに1泊することにした。このために15年位前に買って一度も公衆の面前で着たことのないセパレーツの水着も用意してきた。

 早めにホテルに着いたので、荷物を預け、湖に行く道を聞き、散歩に出かけた。日本の温泉町のように町中には小さな川がいくつか流れ、中には黄褐色の水の川もある。町のメインストリートから外れて、農道に入ると牛や畑の世話をしている人を2、3人見かけた以外はほとんど人も車も来ない。途中から舗装されていない細い山道に入り、草木の雫に足を湿らせながら坂道を登って急に下り坂になると、下のほうには車が往来する舗装道路がある。降りると目の前に青緑色の湖が広がっていた。

 ところが何だか雰囲気が物々しい。ヨーロッパやポルトガルの観光客が次々レンタカーや自分の車でやって来るが、一般車や観光客に匹敵する数のパトカーや警官がいる。消防車まで出動している。白い湯気の立つ温泉鍋の現場のはるか手前でロープが張られ、通行が規制されている。殺人事件でもあったのだろうか。よく見ると、反射板とかカメラを支えている人たちがいる。映画かTVの撮影が行われているらしい。事情のわからない私やフランス人、ドイツ人観光客に対し、お巡りさんが3〜4人ずつロープのそばにやって来ては、見て宜しいと許可を与えている。私はポルトガル人の俳優はどうでもいい。温泉で鍋物を作るところが見たくて道なき道を苦労して歩いてきたのに、目前で目的は達成できなかった。せめて来た記念にフルナスの名前入りの温泉饅頭とか温泉卵でも買ってやろうと思ったが、移動販売車のカフェにあるのはポルトガルのどこのスーパーにもあるメーカーもののアイス、チョコ、ドーナツばかり。それにしてもポルトガル人は商売気がない。

 移動販売車の止まっている辺りには穴のたくさん開いている泥のくぼみがあって、そこからも湯気が立っている。近づくと硫黄のにおいがし、地面に触ると暖かい。耳を澄ますとごうごうと水音がする。これは温泉だ!懐かしさで胸いっぱいになった。湖の周辺にはレストランもなさそうなので、今度は車の通る道を歩いて町まで戻った。曲がりくねった山道の両側にはアジサイの花が沢山咲いていてとても綺麗だ。しかし前後から車がビュンビュンやって来る。歩道がないのでその度に体をアジサイの植え込みに傾けなくてはいけない。人気のない農道と車の来る街道とどっちが安全かというと何とも言えない。

 2キロほど歩いて町に着くと、レストランの看板を見つけた。名前は Aguas Quentes(お湯)。いかにも温泉鍋がありそうな店名なので早速入った。開店したばかりの正午頃だったせいか、お客は私のほかに1組のカップルのみ。メニューを開くと、ビンゴ!Cozido nas Caldeiras(温泉鍋) 1人前と2人前がある。1人前11ユーロとハウスワインの赤を頼んだ。腹を膨らまさないようにパンには手を付けず我慢した。そのうちにどんどん家族連れがやってきた。ポルトガル人も多い。有名な店なのかもしれない。
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 ステンレスの楕円皿に盛られたコジードがやって来た。思わず絶句した。これが一人前だろうか。全部食べろというのは拷問に等しい。別皿にご飯も付いている。小山となっている煮物を隠すかのように大きな青菜が覆いかぶさって、それを除けると下からソーセージや牛・豚・鶏肉の塊、大きなジャガイモ、半分に切ったキャベツ、人参がごろごろ出てくる。私は腸詰が好きなのでまず赤いチョリソから始めた。ピリッと辛くて、うまい!この鮮やかな色はアソーレス料理によく使われる大きな赤い唐辛子の色なのだろう。次に材料のうまみをたっぷり吸ったキャベツ。野菜の甘みと肉のコク、ソーセージに使われている香辛料が渾然一体となって、複雑なハーモニーを醸し出す。コラーゲンたっぷりのぷるんぷるんした豚足。ねっとりしたジャガイモ、柔らかい骨付き若鶏モモ肉、スパイシーなブラッドソーセージ、甘い人参、パサパサになるまで茹でられた牛肉、ウニャッとした腸詰ファリニェイラを交互に切っては食べ、食べてはワインを飲み、と口と胃は休む暇がない。5分の3は食べたところでギブアップ。牛のように胃が4つあれば全部平らげたかったところだ。リスボンで食べるコジードもうまいけれど、温泉の熱でじっくり7時間かけて調理するというフルナスの温泉コジードは今まで食べたコジードの中で最も美味だった。

 その後が大変だった。満腹の状態ではプールに入れないので、庭園を散歩して少しでもカロリーの消化に努めたが、胃がもたれて苦しかった。ホテルの宿泊客が食事を取り始める8時ごろようやく腹も落ちついてきたので、そろそろプールに行こうと水着を着てみたが、鏡に映った己の姿にショックを受けた。しかしプールにはナイスバデーの若い女性もいるけど、温泉だから爺婆も多いので、その中間(からやや爺婆寄り)の私などに誰も気に止めることはないだろうと信じつつ、水着デビューを果たした。直径が30メートルもあろうかと思われる円形のプールはオレンジジュースと濃い緑茶を混ぜたような不気味な色の水をたたえ、プールの壁にはぬるっとした藻が生えていて気持ち悪いが、なんとなく効きそうな湯である。しかも透明度がほとんどないので湯に入っている間、体は見えない。水着姿を恥じる必要は無かった。滝に打たれたり歩いたり泳いだりしながら1時間半ほど久々の温泉を楽しんだ。
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by caldoverde | 2007-08-16 06:20 | ポルトガルの旅 | Comments(2)
セッテ・シダーデス村の小さな教会。アソーレスの石畳や建物は溶岩が固まって出来た黒い石で作られている。
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 リスボンのアソーレス料理店で数回食事をして以来、アソーレス諸島(の食べ物)に対する興味は高まり、ついに一緒に行くべき恋人の出現も待たず、単身アソーレスに乗り込む決心を固めた。インターネットで航空券とホテルを手配し、8月初旬4泊5日のサン・ミゲル島への旅に出たのであった。アソーレス諸島は9つの島があり、できれば他の島にも行きたかったのだが、ポルトガルの国内線は格安国際線よりはるかに高く、今回は1番大きなサン・ミゲル島だけにとどめた。

 航空会社は、行きはポルトガル航空TAP、帰りはTAPとアソーレス国際航空SATAとの共同運航便である。本国とアソーレスとの時差は1時間、リスボンから州都ポンタ・デルガーダまで正味1時間20分の空の旅である。最近リスボン空港に国内線専用の第二ターミナルが出来た。プレハブに毛が生えたような安普請で、カフェが1つと航空会社の切符売り場があるだけのわびしいターミナルである。飛行機がちゃんと発着してくれれば別に良いのだが、ひそかに恐れていたことが起こった。わざわざタクシーを使って早めに空港に着いたにもかかわらず、乗るべき便が1時間遅れの出発と言うではないか。
 先日テレビで、ポルトガルのサッカーチームがポルトからリスボンに移動する際、TAPの飛行機に乗るはずだったのを結局バスで移動したというニュースが報道された。どうも飛行機が遅れたのに業を煮やして選手たちはバスを使うことにしたらしい。そういえば仕事で空港に行くと出発や到着が遅れているのはTAPが多いような気がする。私が実際にTAPの飛行機に乗ったのはほんの数回に過ぎないが、確かに何か緊張感が足りないような仕事ぶりだった。出発時間を過ぎているのに、搭乗が始まらない、乗務員も飛行機に乗り込んでいない、というような調子であった。今回大々的にニュースに取り上げられたので少しは時間を守るようになったかと思いきや、相変わらずであった。

 とりあえず飛行機は飛び立った。軽食もサービスされた。別に期待はしていなかったが、ほんの少しローカル色が感じられた。メニューはサンドイッチとヨーグルトに飲み物である。サンドイッチは表面にゴマを振った香ばしいコッペパンに、甘くジューシーなパイナップルとあっさりとしているが味わいのある焼き豚を挟んだものだ。材料はそれぞれ美味しい。が、この三つを同時に咀嚼すると、それほどでもない。パンはパイナップルの水分を吸収してべちゃっとなっている。豚肉はパイナップルの甘味に負けている。材料をバラして別々に食べたほうが美味いと思う。アソーレスはパイナップルの産地なので、こんなところで地方色を出そうとしたのかもしれないが…ヨーグルトもアソーレス産の牛乳を使ったものであった。味はともかく路線の特色を出そうとしている点は評価できる。
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 島が近づいてきた。切り立った海岸線、緑に覆われた山、火山の噴火で出来たカルデラ湖、白い家並み、空から見るサン・ミゲル島は息をのむような美しさである。海沿いの原っぱのようなポンタ・デルガーダ空港に到着。飛行機は私たちの乗ったTAPのエアバスのほかに、プロペラ機が1台のみ。タラップを降りる際、猫をケージに入れて連れていたおばさんが「動物がいるのに何で遅れたのか」と抗議していた。人間だけなら誰も文句は言わなかっただろう。スタッフは「この飛行機はカラカスから来たので」と答えていた。よく飛んだものだとヒヤッとした。
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by caldoverde | 2007-08-15 08:25 | ポルトガルの旅 | Comments(1)