ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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クリスマスのお菓子

 11月になると街にはジングルベルが鳴り、テレビではおもちゃ屋の宣伝がかまびすしく、スーパーではレジのそばにラッピング用の包み紙とリボンが用意され、カフェやお菓子屋にはクリスマス菓子が並び始める。日本ではクリスマスケーキを食べるのは12月24日だけの家庭が大部分だろうが、こちらでは11月からクリスマス菓子やチョコやドライフルーツ、ナッツの類がこれでもかこれでもかとスーパーの店先に山積みに並べられる。
 ポルトガル人と結婚した日本人はクリスマス休暇の間、配偶者の実家で毎日このようなものを食べさせられ地獄のようだと嘆く人もいる。こんな時しみじみと一人で良かったと感じるが、一人ではあのお菓子を買っても全部は食えないと思うとしみじみと一人の悲哀を覚える。
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 そのクリスマスの寂しさを生唾とともにぐっと飲み込ませるものは、ボーロ・レイ(王様のお菓子)である。巨大なドーナツ型の、ブリオッシュのような甘いパンの上に、色とりどりのドライフルーツをちりばめたものだ。以前は直径が30cmもあるような大きなものばかりだったように思うが、最近は直径10cmくらいのミニサイズも出てきた。パン生地の中に1つソラマメが入っている。昔は小さな人形だったそうだ。切り分けてこれを引いた人は次のボーロ・レイを買うという面白い習慣がある。ところが子供が豆を喉に詰まらせる事故が起こったため、ある年ソラマメを入れるのが禁止された。しかしまた復活したらしい。私はソラマメを引いたことがないので本当に入っているのかどうかは知らないが、こんなくじ運なら無くて良かった。

 ボーロ・レイの本体は卵や砂糖を使ったどっしりとした黄色い生地だ。日本のふわふわのスポンジケーキの密度の5倍くらいはありそうだ。一切れ食べると結構ズシンと来る。華やかな色のドライフルーツは王様の冠の宝石をイメージしているそうだ。実はドライフルーツはそんなに美味しいものではない。見ようによっては毒々しいし色が違っても味が同じものもある。好きじゃない人もいるに違いない。

 そんな消費者のニーズを遅まきながら取り入れて、数年前からボーロ・ライーニャ(王妃のお菓子)なるものも登場した。私がポルトガルに来た頃はこのボーロ・ライーニャは見たことがなかったので、最近の発明だと思う。王妃の冠はずっと地味で、アーモンドや胡桃、松の実などナッツ類が使われている。私はドライフルーツよりナッツのほうが好きなので、王妃のお菓子を買いたいといつも思うのだが、まだミニサイズがない。サンタクロースにボーロ・ライーニャを半分食べてくれる彼氏をプレゼントしてくださいとお願いしなくては。
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by caldoverde | 2007-11-28 22:31 | お菓子・カフェ | Comments(6)
 数年前に日本で「エッグタルト」なるポルトガル菓子がブームになった。どうもパステル・デ・ナタのことらしい。大手パンメーカーのエッグタルトと銘打ったお菓子をコンビニで見つけ食べてみたが、ポルトガルのパステル・デ・ナタとは全く別物であった。まず、生地が違う。タルト台はぱりぱりのパイ生地でなくてはならぬのに、何だかぼそぼそしたビスケットの出来損ないみたいな生地だ。詰めるものはカスタードクリームであるが、偽エッグタルトは工業的に作られたクリームの素みたいなもので出来ていて、卵や牛乳の味がしない。そして一口食べた途端、添加物の味が感じられた。日本のコンビニの菓子を食べ慣れていた頃は別に気にならなかったが、ポルトガルに来てカフェで毎日その日に作ったお菓子を食べるようになったら、添加物に敏感になったのだ。
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 さて美味しいエッグタルト、もといパステル・デ・ナタを食べるのなら、やはりジェロニモス修道院のそばのパステイス・デ・ベレンを挙げざるを得ない。名物にうまいものなしと言うけれど、この元祖の店はその俗説を一蹴する。パステル・デ・ナタはどこのカフェにも100%の確率でおいてあるが、ここのは全然違う。まず、ものすごい数を売るので常に焼きたてが食べられる。次に材料が本物である。この店のカスタードクリームはちゃんと卵や牛乳の味がして、変なバニラの香料などを使っていない。そして比較的甘さ控えめである。甘味を補強するために粉砂糖が別に用意されている。しつこくない甘さなので1人で2個くらいは食べられる。このパステイス・デ・ベレンのパステイス・デ・ベレン(店とお菓子の名前は同じ)を食べる前は、その辺のエッグタルトでも十分いけると思っていたが、ここの焼きたてを食べると、もう他では食べられない。許せるのは割と高めのレストランでデザートに出す自家製のパステル・デ・ナタだけである。

 この店はもともとジェロニモス修道院で作られるお菓子に使うシナモンや砂糖を扱う食料品店だった。ところが19世紀に大部分の修道院が政府によって解散させられ、多くの修道士が俗世間に戻って行った。このパステイス・デ・ベレンの創業者も還俗した修道士の一人で、この食料品店で細々とお菓子を作って売っていた。彼は製法を秘密にしていたが、死ぬ間際にユダヤ人の恩人にレシピを伝えた。そのユダヤ人はこのお菓子のパテントを取り、他の店でまねされないようにレシピは門外不出とした。今でも3人のシェフだけが伝統の製法の秘密を守っているそうだ。もともとこういうタイプのパイ菓子はあったのかもしれないが、この修道院製のはとりわけ美味かったのだろう。カフェの数ほどパステル・デ・ナタはあれど、同じ味のものはない。

 パステイス・デ・ベレンの店内はいつも大勢の観光客と地元の人であふれかえっている。カウンターには沢山の人が列を作っているが、どういう順番でアテンドされるのかよくわからない。とにかくじっと辛抱していればいつかは自分の番が来る。実際に並んでみるとわかるが、とにかく非効率的である。もっと効率的に客をさばけば売り上げも倍になるのにと素人ながら考えてしまう。従業員は別に沢山売ったからって給料が上がるわけじゃないだろうし、経営者はもうこれ以上儲けなくてもいいと思っているのかもしれない。お菓子の値段は毎年のように上がって現在は85セント。それでもアズレージョの素晴らしい店内でコーヒーとこのパステイス・デ・ベレンを食べても2ユーロからおつりが来るのは安い。
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 他の店のパステル・デ・ナタはパステイス・デ・ベレンもどきまたは亜流とみなし、手を出さない私ではあるが、別物と考えてたまに買ってしまうのが、シントラの「ピリキータ」という菓子屋のパステル・デ・ナタ。「ピリキータ」はケイジャーダというチーズを使ったお菓子で有名であるが、その以外にも気になるものがいくつかある。で、ここのパステイス・デ・ナタは2種類あり、1つはプレーンなもの、もう1つはチョコクリームと黄身クリームでデコレーションしてあるものだ。デコナタのパイ生地はパリッではなく、ふにゃっとして、中のカスタードクリームはプリンのように固まっている。上にのった二種類のクリームはコテコテで甘い。正統派パステイス・デ・ベレンから観ると邪道である。でも疲れたとき、空腹を我慢できないとき、これ1つで元気は120%回復する。
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by caldoverde | 2007-11-18 00:55 | お菓子・カフェ | Comments(8)

網タイツをはいた豚

 「ワインの腸詰」(4月7日の日記)を食べた大衆食堂には時々変わったものが登場する。先日は「黒豚のほっぺたの詰め物」という字面からはどんなものか全く想像のつかないものが「本日のおすすめ」であった。食堂の入り口に近い席に陣取っていたOLが食べていたものは、今までに見たことのない、大いに興味をそそる形状を有していた。野球か軟式テニスのボール程の大きさの塊が網状のものに包まれている。これこそが「黒豚のほっぺたの詰め物」であった。好奇心が加速度をいや増す。もうこれは注文するしかない。店のお姉さんに中身は何ですかと尋ねると、今聞いてきますと厨房のほうに行き、付け合せのサラダは持ってきたが答えは持ってこなかった。今度は店の主人に尋ねた。今聞いてきますと厨房のほうに行き、ワインを持ってきたが明確な答えは持ってこなかった。レストランの責任者としての体面を保とうと努力している様子は感じられたが、窮地に追い詰められた彼の回答は「とにかく何かが入っていて美味い」というものであった。主人も従業員も何で出来ているのか判らないものを客に出す店である。運を天に任せるしかない。ワインの味もこの店では運である。ある日は酸っぱくてある日は甘い。この日はたまたま当たりであった。
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 さて黒豚のほっぺたが来た。1人前2個でサラダの他にご飯とじゃがいもが付いている。じゃがいもをよく見ると、さいの目に切ったフライドポテトとそれより大きめに切った煮ころがしのような味付けの芋の2種類が混じっている。どちらかが別の料理に使った余りのリサイクルでなければ、珍しい趣向である。しかし何と言っても目を奪われるのは網に包まれた豚肉である。網タイツをはいた足はありふれているが、網タイツをはいた豚のほっぺたは珍しい。網をナイフで切ろうとすると結構しぶとい。なかなか切れない。ひょっとするとこの網は手の込んだ料理に使われる網状の脂肪ではないかという考えも頭に浮かんだが、この値段とこの手ごたえでは有り得ないと打ち消した。
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ナイロンだか木綿だか知らないが網が肉に食い込んでナイフできれいに外すのが難しい。面倒になって半分に割ると肉の中から葱が出てきた。ポルトガルの葱は美味いので別に文句はない。何なのか判らない中身の材料の1つは判明した。黒豚の頬肉は脂肪が少なくて比較的あっさりとしている。外側の味付けは濃い目で醤油で煮たチャーシューに共通するものがあるが、詰め物の葱が塩味を緩和し甘味を添える。少し塩辛いのでサラダやご飯やポテトが進み、ワインがより甘く感じられる。肉は少ないように思えるが、食べるのに時間がかかり、また味も濃い目で付け合せやワインが進んでしまうので結構満腹する。

 この「黒豚のほっぺた」は例えるならば、以前登場したワインの腸詰とオヤジハウスワイン夫婦の娘で、年頃になり網タイツなどでおしゃれして、父親に擦り寄って甘えている。ところが母親同様センスが良くない。化粧は真っ黒のガングロである。芋やご飯をもりもり食べるが、いくら食べても足りない。親父はでれでれと甘くなり娘の言うがまま芋やご飯を与え続ける。娘はそのうち網タイツから肉がはちきれそうになり、しまいには母親のような腸詰おばさんに変身しまうのだ。そんなポルトガルの家族ドラマを想像させるある日の昼食であった。
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by caldoverde | 2007-11-16 03:00 | 肉料理 | Comments(4)