ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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アンゴラ料理

 かつてポルトガルはアフリカに広大な植民地を持っていた。そのひとつ、アンゴラの料理を食べさせる店が、リスボンのアルカンタラ地区にある。4月25日橋のたもとのこの地区は以前は工場や倉庫が立ち並ぶ労働者の町だった。今は古い工場が高級なコンドミニアムに変身したり、川沿いの赤レンガ倉庫はしゃれたレストランやバーに改装され、週末は若者たちで明け方まで賑わうウォーターフロント(ドッカスと呼ばれている)になったりと変貌著しいところであるが、まだ下町の面影も残っている。アンゴラ領事館のある真新しいレジデンスの向かいには、昔の倉庫か工場だったのか、何件か飲食店の入った煤けた建物がある。

 この建物の中に入り口がことさら安っぽくて、汚い字で書きなぐったメニューの紙を張っているレストランがある。名前をモアンバという。名前の感じからして、ひょっとして椅子代わりに椰子の繊維で編んだござが敷かれていて、怪しげな動物の置物やおどろおどろしい仮面が飾ってあり、BGMはアフリカの奥地の村祭りの太鼓がどんどこどんどこ鳴り響いて、派手な民族衣装を着けたスリーサイズ100・65・100のミスアフリカがぶりぶりヒップを振りながら給仕しているのではと思いきや、意外に内装はごく普通のポルトガル料理店ですっきり清潔な雰囲気である。アフリカらしいものといえば地味なアフリカの風景を描いた絵や、人の顔や動物を彫った木彫のレリーフぐらいで、シマウマ模様の家具などはない。

 客は私と友人の漫画家ヤマザキマリさん(ブログ「モーレツ・ポルトガル暮らし」参照)を除いては全員ポルトガル人、それも比較的身なりのいい年配の人が多い。何も知らずに入ったら、アフリカ飯屋とは誰も思わないだろう。それでもウェイターはやはりアフリカ系の人で、今どき珍しい70年代風アフロヘアのお兄さんだった。

 客用のメニューも読みにくい手書きの文字で書かれている。おなじみのポルトガル料理もあるが、ここは絶対珍しいアンゴラ料理を食べるべきだ。ところが何と読むのか、どういうものなのかほとんど判らない。店名のモアンバというのは料理の名前で、鶏肉を使ったもの、カルルというのは魚を使ったものであるらしい。この二品を注文することにした。

 私は普段料理を待つ間は、お腹を膨らませないためにパンには手を出さないようにしているが、この日は別であった。小皿の上にはチーズやバターの他に見慣れない小さな瓶詰めがある。ピーナツと唐辛子をすりつぶして練ったものらしい。香ばしいピーナツバターに唐辛子がピリッとアクセントを利かせている。アフリカのピーナツ味噌はパンに付けたら何個でもいけそうだ。

 70年代ソウルシンガー風ウェイターが最初に運んできた2つの皿の1つは黄色いかたまり、もうひとつは半透明の灰色のかたまりだった。両方ともキャベツ位のかさがある。黄色いほうはとうもろこしの粉、灰色のほうはマンジョッカ芋の粉を練ったものだそうだ。イタリア生活の長いヤマザキさんはすぐ黄色をポレンタと同じものだと気がついた。マンジョッカの方はくずもちのような粘りと弾力があって、黒蜜をかけたらうまそうだ。どちらも味はついていない。
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 そして土鍋が運ばれてきた。鮮やかな赤いとろみのある汁に白身魚の切り身、そしてオクラが入っている。カルルという料理である。ポルトガルの干鱈よりも硬く干し上げた魚と、生鱈に幾分塩をした甘塩鱈のような塩梅の魚の2種類が使われている。赤いスープには干した魚からだしがでて美味である。いかにも辛そうな色をしているが、実はほとんど辛くなく、好みで唐辛子オイルを加える。スープのとろみはたっぷり入ったオクラのネバネバから由来するものだろう。これを付け合せのポレンタやマンジョッカくずもちにかけて食べると、いくらでも食べられる。とは言えメインの魚の煮込みだけ食べてもお腹いっぱいになる量である。

 次に鶏肉の煮込み料理、モアンバが来た。これも土鍋に入った赤いシチューである。かなりの大きさのぶつ切りの鶏肉がごろんと数切れ、普通の人ならこれだけで十分満足できる。味は基本的に魚の煮込みと同じだが幾分あっさりしている。これにもオクラとホウレンソウのような青菜が入っていて、赤と緑の鮮やかなコントラストがまた食欲をそそるのだ。しかしこの量は2人の日本人女性の胃に余るものだった。私たちは半分残ったモアンバやカルル、ポレンタ、くずもちをテイクアウェイできないか交渉したが、店に持ち帰り用の容器がないということで断念した。

 モアンバもカルルも汁だけをポレンタやくずもちにかけると何杯でもお代わりができる。きっと昔の王様や酋長は魚や肉のいいとこだけ食べて、家臣はオクラや青菜をポレンタとともにいただき、下々の者は汁だけをマンジョッカのくずもちにかけてお腹を膨らませ、辛い労働に耐えていたのではないだろうか。アフリカ系のスポーツ選手のあの体力と粘りは、黒人歌手の伸びのある歌声は、先祖代々食してきたこのようなネバネバ系の食べ物から培われたものかもしれない。

このマンジョッカにきな粉と黒蜜をかけて食べたい
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by caldoverde | 2008-02-17 04:51 | インターナショナル料理 | Comments(4)
 2月14日は日本中の男性が期待と不安で迎える日である。今年はチョコレートがもらえるだろうか、もし誰もくれなかったら女房や子供に白い目で見られる。彼女から義理でないチョコレートをもらったら、今度は3月14日のお返しを考えなければいけない。ヴィトンの財布をねだられたりしないだろうか・・・
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あるお菓子屋さんのヴァレンタイデー用ケーキ。すっぽりマジパンで覆われている。こんなものをもらっても困るかも 

 さてカトリックの国ポルトガルではこの日は「恋人の日」と呼ばれている。聖ヴァレンタイン?ああそう言えばそんな人がいたような気がするね、くらいの認識じゃないだろうか。2人のためのロマンチックなホテルやレストラン、ヴァレンタインデーの贈り物の特集を組んでいる雑誌もあるけど、それほど盛り上がりはない。町に出ても、特にチョコレートが山積みになっている訳でもなく、静かなものである。だいたい義理で好きでもない職場の上司や同僚にチョコを配るという話をすれば、大抵怪訝そうな顔をされる。恋人のいるポルトガル人は、もし気がつけば、この日に何かプレゼントするだろうが、別に女性から男性に贈るものとは限らないし、品物もチョコとは限らない。女性用のバッグや財布、香水を売っているところにはやはりハートのディスプレーが飾られ、下着屋には赤や黒のセクシーなランジェリーが並ぶが、それでも狂乱と言っていい位の日本のヴァレンタインデー商戦に比べるとささやかなもんである。

 リスボン唯一のデパート、エル・コルテ・イングレスを覗いてみると、0階正面玄関のショーウィンドウには「2月14日はヴァレンタインデー」というPOPがガラスに貼り付けてはいるものの、特にその日のために買わなくてはいけないような気にさせるようなものはない。普通の春物の洋服を着たマネキンが並んでいるだけだ。その前の特設コーナーにはなぜかパソコンとプリンターが売られている。全く恋人とは関係ない。デパ地下にはいくらなんでも何かあるだろうと思い、地階に降りた。スーパーマーケットの入り口でようやくヴァレンタインデー用ハート型チョコを売っている小さなコーナーがあったが、お客さんは誰もいなかった。ふ~んこんなもんかと少々拍子抜けした。自分のために珍しいチョコを買おうと思っていたが、独り者にとっては全く購買意欲のそそらない貧弱な品揃えである。

 スーパーの酒売り場はどうかしらと思って行くと、さすがに2月14日用のワインが試飲販売されていた。ピンクのラベルのその名も「SEXY」と言うアレンテージョワインである。私にとってSEXYという言葉とアレンテージョのイメージは全く結びつかないものである。これが甘ったるいポートワインだったらまだ共感できる。でもコルク林の下に豚や羊が群れる牧歌的な大田舎がセクシーね・・・べっとりとしたショッキングピンクに白抜きの英単語のラベル。あまりうまそうには思えない。赤とロゼがあり、試飲のマネキンさんによるとロゼは日本で賞を取ったということである。試しに両方飲んでみたが、2006年赤のほうは特にこれといった特徴は感じられなかった。賞をとったロゼは辛口で軽い感じなので、日本人の味覚に合ったのだろう。私はワインは好きだが、余程うまいか不味いかでないと微妙な違いは判らないのであまり信用しないでほしい。別の店で2005年の赤のSEXYハーフボトルを見つけたので買ってみた。ひょっとして14日に突然誰かが告白してくるとも限らない。そのときのためにまだ封は切らないでおこう。で、何事もなく14日が過ぎたら、近所の友達と話の種に飲むつもりである。
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 そういえば以前日本料理店でバイトしていた頃、やはりヴァレンタインデーはカップルの予約でいっぱいになったが、いつも来る常連さんではなく、初めて日本食を食べる若者が殆どであった。慣れない手つきで箸を握り、あるいはナイフとフォークで、醤油の付けすぎでバラバラに崩れかけた寿司を一生懸命食べるポルトガルの若者たち。この日のために奮発してポルトガル料理の値段の倍はする日本料理店に来た彼らは恋人のハートを掴んだのだろうか。
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by caldoverde | 2008-02-15 06:41 | 酒・ワイン | Comments(1)