ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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とろけるチーズパン

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 80年代ポストモダンの奇抜なビル、アモレイラスショッピングセンターの裏手には古い住宅が並ぶカンポリーデ地区。そこにはバスが通る道に気になる店が何軒かある。特に黄色い丸いパンを手で二つに割っている大きな宣伝写真の貼ってあるレストラン件バール。パンの生地がびよ~んと伸びていて、いかにこの小さなパンがフレッシュで弾力に富み粘りがあるかアピールしている。そして隣の写真には可愛い籠にこの丸いパンが山と盛られている。
 こんな看板のお店にはきっと学校帰りの女子高生が群がっているはずだと確信して中に入ると、つまみなしでコップワインを飲むリタイヤ組、現場から抜け出してベーコンをつまみに立ってビールを飲む作業員風の中年男性、サッカー新聞を片手にテレビの試合を見る若い衆など、完全に男の世界であった。カウンターの中の人も看板娘ではなく、濃い顔のお兄さんである。
 顔なじみ同士がサッカーの話かなんかで盛り上がっていたところに不意に怪しい東洋人の女が入ってきたので、なんとなく一瞬空気が張り詰めたのを感じたが、「ポン・デ・ケージョください」と自分たちにわかる言葉を発したので、彼らの関心はすぐにサッカーに引き戻された。もし私が美貌の持ち主であったら、もう2,3秒は関心を引き付けておくことができたのだが。幸いなことに私も彼らには関心はなかった。私の関心は只ひたすら、表の張り紙に書いてある「中身入りポン・デ・ケージョ」であった。

 看板のは普通タイプの何も入っていないものだが、この店のポン・デ・ケージョには何かが入っているのもあるらしい。早速中身入りのポン・デ・ケージョを頼んだ。カウンターの中には家庭用のオーブントースターがあり、その中に丸いパンがぎっしり並んでいる。嬉しい焼き立てだ。お兄さんは熱そうに1個のポン・デ・ケージョを取り出してトースターの横にある機械のようなものの下にそれを置き、その機械のハンドルを押し下げると、管がぶすっとパンに突き刺さり何かがパンに注入された。パン生地にあんを入れて焼くのではなく、後から入れるのであった。
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 熱いところをふうふう吹きながら食べると、モチモチの生地からとろけるチーズがあふれ出してくる。チーズが練りこんである生地の中身は別の種類のチーズだった。予想していたことではあったが、予想を超えたおいしさだった。初めてのときはコーヒーと一緒に食べたが、おじさんたちが飲んでいるグラスワインが旨そうだったので、次の日はワインとともに頼んだ。今度はビールとベーコンも注文しようと思う。サッカー新聞も持参すれば常連さんの仲間に入れてもらえるかもしれないが、私はサッカーには疎いので、タイガースファンに巨人の話題を振ってしまうような危険もあるので、それはやめることにした。
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 カウンターを見ると看板のポン・デ・ケージョのほかにも美味そうなものがあるではないか。ごろっとした塊のままのベーコン。太いチョリッソ。黒いソーセージ。そのようなオヤジ系食品の隣に、白と黒の小さなボールがバットの中にたくさん並んでいる。黒い方はブリガデイロと呼ばれるポルトガルではポピュラーな手作りのチョコボール。白いのはホワイトチョコのブリガデイロかと思ったら、ココナッツをコンデンスミルクか何かで固めたもので、食べると甘いココナッツミルクと牛乳の風味が口いっぱいに広がる。女の子の大好きな味だ。濃いエスプレッソコーヒーにぴったりだが、アグアルデンテと呼ばれるポルトガルの焼酎も合うに違いない。とするとこの店はやはり女子高生よりも男性御用達になってしまう宿命なのだ。
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中身は週替わり、今週はチョコレート
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by caldoverde | 2008-03-17 10:04 | ファストフード | Comments(9)
 オードブル三皿、魚二皿、肉二皿を五人でシェアしたいと注文すると、黒服は一瞬動揺の色を見せた。普通のポルトガル料理店では一皿の盛りが大きいので何人かで取り分けても問題ない。しかしこの店でそのような注文をする客はいないらしい。一人一皿を前提に作られているようだ(当たり前だが。)
 皿が運ばれてくるたびに(妙齢のと言うか、いいお年の)女五人はきれい~、可愛い~、おいしそ~とジャニーズが来たような喜びようである。ポルトガル料理のイメージを覆す、デリケートで、複雑なものばかりである。
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 遠目に見るとイクラのようなこれはスモークサーモンのタルタル、ポーチドエッグ添え。サーモンの下に何かあったような気がするが・・・
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 洋ナシみたいな形のパイは中身がフォアグラと鴨肉という贅沢な前菜。添え物の野菜も只者ではなかったと思う。
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 千切り大根様のものは歯ざわりシャキッとしたりんご。でも中身が思い出せない・・・

 オードブルにこんなに気合が入っているなら、メインはさぞかし趣向を凝らしたものであろうと期待はもう沸騰寸前。

 まず魚料理2品。
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 次に肉料理2品。
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 最後にデザート。

 どんな料理なのかもっと詳しく説明しろという声が聞こえてくる。私もそのご要望にぜひお答えしたい。ところが実は、これらが何なのか後から写真を見てもよく思い出せない。確かなのはどれも素晴らしく美味しかったという事実だ。私はボケてしまったのだろうか?いや、もともと天然だからこれ以上ボケるとは思いたくない。

 めいめいの皿はそれほど量がない。どれか一皿で満足するポルトガル人は32.4%位と思われる。これは一人の客が、オードブル、魚、肉を一皿づつ食べて満腹する量ではないだろうか。小食な人ならオードブルに、魚か肉のどちらか一品でちょうど良い、そんな量である。

 また野菜やパスタなど全く違うプロセスや素材で作られたものが、単に肉魚の添え物ではなく、両者が一体となってひとつのハーモニーをかもし出す、またはコントラストを引き出す重要な構成要素となるべく、高度な計算(多分)に基づいて料理されている。良く言えば素材の味を生かす、悪く言えば煮るか焼くかのどっちかという単純な調理法が一般的なポルトガル料理とは発想を異にしている。ポルトガル料理を貶めているわけではないが、少々技巧が足りないのも事実である。しかし見ただけでそれが何であるか分かるという長所がある。一方この店の料理は複雑すぎて、これは何かしら?どうやって作るのか?と判じて楽しむようにできている。

 凝ってはいるが量は多くないこの4皿を5人で分けた結果、一人当たりの魚や肉は私にとっては味見程度のものであった。口いっぱいに頬張って一皿全部一人で食べないことには何をどんな風に料理したものか私には判らない。色々なものを少しづつゆっくり食べてそれなりに満腹した。でも家では絶対再現できないような洗練された料理ばかりなので、ちょびっとだけではそれが何なのか分析できないのよ、私は。

 ふと「江戸で一番粋だと言われていた男が蕎麦を食べるとき、つゆは蕎麦の先っぽにほんのちょっぴりつけて食べていた。それが粋とされていたからだ。彼が死ぬときこの世に思い残したことは、一度でいいから蕎麦をどっぷりとつゆに浸して食べることであった」という落語を思い出した。私の心境に重なるものがある。

 そんな訳で、材料や味はご想像にお任せ。いつかまたこのお店によそいきを着て男性にエスコートされて一皿丸ごと食べに来てみたい。お会計はそちら持ちで。
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by caldoverde | 2008-03-12 05:23 | インターナショナル料理 | Comments(3)
 ポルトガルを離れる知人の送別会は、グルメのお友達ご推薦のカイス・ド・ソドレにあるお洒落なレストラン「ヴィルグラ」で行われた。国鉄カイス・ド・ソドレ駅南側のテージョ河沿いにフェリー乗り場があり、そこから河と駅のホームの間の車1台が通れるほどの狭い道を少し歩くと、倉庫を改造したレストランが何軒かある。外側はのっぺりした白い壁で、付近の建物はスプレーで落書きされている。何の変哲もない外観だが、中に入ると思わずへえ~と感心してしまった。入り口にはウェイティングバーがあり、高級ワインやシャンパンが並んでいる。その奥には、テージョ河に面した側は巨大なガラス張りになっていて河と対岸の町のパノラマを臨む開放的な空間に、シンプルで品の良いテーブルや椅子が並ぶダイニングが広がる。大きな壁はテンポラリーな展覧会が行われるようで、ソフトフォーカスの女性のヌード写真の連作が飾られている。ポル飯屋らしからぬ洗練さである。
 
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 後から入ってくる客の様子も、私が行くような店の客層とは明らかに違う、ハイソ感漂う人々である。友達から譲りうけた1チャンネルしか写らないテレビを持つ私にはどこの誰だか知らないけれど、誰もが知っている有名人だったのかもしれない。給仕もジャケットにネクタイを締めており、ノーネクタイのワイシャツに黒の化繊のズボンという普通のポルトガルのボーイさんとは一線を画している。普通のボーイさんは店から制服を貸与されるが、この店の人は、アルマーニとまではいかなくても、BOSSのようなところで自分が選んだ服を着ているようだ。この日私はたまたま仕事用の服で行ったからまだ良かったものの、いつものように10年前に買った混紡のセーターにシワだらけの綿パンツという格好だったら、給仕の引き立て役になっていた。

 メニューの種類は前菜が5種類、肉、魚がそれぞれ3~4種類ほどと、これも普通のレストランに比べるとかなり少ない。きっと向かいのリヴェイラ市場でシェフが見立てた素材によってその日のメニューが決まるのだろう。席に着くとポルトガルのレストランでは例外的なミネラルウォーターのサービスがあり、パンが運ばれてくる。ここではミニサイズのコッペパンと小さな皿に入ったオリーヴオイルであったが、パンは手で持つと思わず「あちち」と驚くほど焼きたてである。オリーヴオイルはヒスイのようにきれいな緑色で、そういえばメニューにどこどこ産ヴァージンオイルとか書いてあった。これだけで口がよだれでいっぱいになる。

 そして小さな皿に入ったお通しがやってきた。丸い、アイスクリームのようなものに、薄く黄色いせんべいみたいなものが突き立っている。「何とかチーズのムースでございます。」と黒服が説明した。スプーンですくい口に入れると淡雪のようにふわふわと溶けていく。それでいてチーズのコクや塩気がしっかりと効いている。ポルトガルでは前菜のチーズというとうまいけど臭い古漬けのようなもの、でなければ豆腐のようなケージョ・フレスコと相場は決まっているが、このような形のチーズを食べたのは初めてだった。飾りのせんべい状のものは卵の黄身ではないかと思う。
 
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 お通しはそれだけではなかった。今度は四角い皿に一口サイズのオードブルが3種盛り合わせてある。薄切りのパンにテリーヌをのせたカナッペ、レンゲのような入れ物に盛った小さなタコのサラダ、リキュールやウィスキーを飲むようなミニグラスに入ったアスパラガスのスープ。盛り付けも味付けもポルトガル料理にしてはこじゃれたものばかり。
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 その日の会食は女性ばかり5人であったが、めいめい1皿ずつ頼むのではなく、前菜から3品、魚、肉から各2皿選び、シェアすることにした。少しずつ色んなものを食べてみたいという女の欲求である。
 その間ソムリエに料理にあうワイン赤と白を一本づつ選んでもらった。スーツをびしっと着た若いソムリエがこれまたポルトガル人には珍しく(失礼)エレガントで格好良いのである。この店を推奨したグルメのお友達によると、ワインのチョイスがとても良いということである。この先数ヶ月は贅沢できないという覚悟と、普段飲んでいる安ワインとソムリエの選ぶワインの差はどのようなものだろうかという期待に胸の鼓動は高まる。初めに白が来た。一口飲んで「うっ・・・もう後戻りできない」とつぶやいた。こんなうまいものを呑んでしまった後は、味の記憶が薄れるまで当分の間、近所のスーパーでワインを買うのはやめようと思った。
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by caldoverde | 2008-03-10 00:29 | インターナショナル料理 | Comments(5)

復活祭のパン

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 ポルトガルのいたるところにあるカフェやパステラリア(菓子パン屋)では、まだ暗い早朝はタクシーの運転手が眠気覚ましのコーヒーを飲み、朝は出勤前のサラリーマンやOLがカフェオレにチーズやハムを挟んだ丸パンの朝飯をかっ込み,9時過ぎから11半時ごろはリタイアしたおじさんやおばさんたちがおしゃべりや新聞読みに没頭し、12時過ぎから昼定食を食べに来る付近の会社員や住民で賑わい、午後は授業を終えた高校生や大学生がおやつを食べながら宿題をし、夕方は労働者が仕事の仕上げ前に軽く腹ごしらえし、夕飯がそろそろ始まるという夜7時半前後にようやく客も少なくなり店じまい、という1日中フル回転の商売である。中には夜11時までやっている店もあり、自宅で夕食をとった後、近所のカフェでコーヒーを飲みにいく人も多い。店のテレビのサッカーの試合を見て歓声を上げ、ため息をつく人たち、カウンターで従業員と世間話を交わす人たちなど、それぞれコーヒーを傍らに楽しんでいる。日曜日は家族連れがカフェにやってきて遅い朝食をとる。日曜日は主婦も休むのだ。

 どの店もカウンターのガラスケースに置いているものはだいたい同じ。甘い菓子パンと、サルガードス(しょっぱいもの)と呼ばれるコロッケやてんぷら、チキンパイなどビールのつまみ系スナックが20種類くらいあり、店によって種類や数は異なる。しかし日本のように季節限定ものや新製品が月ごとに登場することはまずない。10年前も20年前も、いや50年前も多分同じものが並んでいたのだろうと想像がつく。

 飲食施設のない、主に食事用のパンを売るパン屋もある。朝早くから客がやってきては丸いパンのたくさん入ったビニール袋を提げて店から出てくる。昔はカルカッサという軽いスカスカのパンは1個数円(1桁)という安さだったが、やれ石油の値上げだ、小麦の高騰だと、パンの値段の上昇はとどまることを知らない。食料自給率の低いポルトガルは国内消費をまかなうほどの小麦は生産されていない。それなのに、なぜかポルトガルのパンは美味い。
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ジャパンというスーパーの隣がパステラリア「リド」

 地下鉄アロイオス駅を降りると、マゼランの銅像の建つチリ広場に出る。このあたりは洗練とか最先端という形容とはだいぶかけ離れた、日本で言えば昭和テイストの昔っぽい庶民的な店が集まり、道行く人々はほとんどおじいちゃんおばあちゃんばっかりという老人パワー炸裂の街である。そのリスボンの巣鴨のベーカリー兼カフェ「リド」は、思わず生唾を飲み込ませるパンの数々が私を誘惑し、店に引き込み、その日予定していた献立をキャンセルさせてしまうのだ。

 この店のパンで一番気に入っているのはブドウパンである。卵を使ったほんのり甘いブリオッシュのような生地。これだけでも美味いのに、干しブドウがこれでもかこれでもかと入っている。これを薄く切って、カマンベールチーズや、ロックフォールチーズ、または白カビ青カビが合体したブレス・ブルーというチーズなどを乗せて、ワインと食べるとパンの甘さにチーズの塩気と独特の香りが交じり合い、官能的なとも言えるような佳肴となる。
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 もうひとつ買わずにいられないのが、巨大ポン・デ・ケージョ。日本でもおなじみになったブラジル生まれのおやつパンはポルトガルでも人気がある。粉チーズを混ぜたでんぷん質の粉で作ったモチモチの食感のこのパンは、普通は一口サイズなのだが、この店のは中華饅頭くらいの大きさで、緊急の食欲にすばやく対応してくれる。買って店から出るやいなや歩きながら頬張ってしまう。ポルトガルではいい年をした大人も歩きながらものを食べる人が多いので、私も羞恥心が麻痺しつつある。
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 そろそろ復活祭の季節。移動祝祭日なので、何月何日なのかはさっぱりわからないが、パン屋やお菓子屋に殻付きゆで卵入りのパン、フォラール・デ・パスコアが登場するともう春だと実感する。大きいものだと4つの卵が練りこまれている。表面はジャムか何かで照りが付けられている。生地はどっしりと目が詰まっていて、ほんのり甘く、香草で香りが付けられている。
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 他にも北部名物の角切り腸詰めがごろごろ入った黄色い大きなパン、コッペパンの中に薄切りチョリソを詰めて焼いたチョリソパンなどそれだけで食事になりそうなボリュームたっぷりのパンがショーウィンドウに並ぶ。
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 食事を作るのが面倒になったときは、焼きたてのパンにポルトガルのエキストラ・ヴァージン・オリーヴオイルをつけて食べる。オイルに皮ごとつぶしたニンニクを入れてもよい。ポルトガルのオリーヴオイルはイタリアのものよりもはるかに美味しいと、イタリア料理のエッセー漫画を連載中のリスボン在住の漫画家ヤマザキさんは太鼓判を押している。うまいパンにうまいオリーヴオイル、そしてうまいワイン。ポルトガルはほんとに良いところだ。
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by caldoverde | 2008-03-08 00:56 | パン・ご飯 | Comments(5)