ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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<   2008年 07月 ( 8 )   > この月の画像一覧

  三日間宿泊したアングラ・ド・エロイズモは島の南海岸の真ん中にある。ちょうどその対極、島の北側の中央にはビスコイトという小さな村がある。ここには島随一のワイナリーと自然の海岸線を生かした海水プールがある。また小さな漁港もある。漁港あるところには美味いレストランあり。しかもワインの産地でもある。のんびりとバスに揺られ、島の反対側まで行ってワイナリーでワインの試飲をした後、魚でも食べようと出かけた。
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  バスは村の公民館の前で止まった。中には郵便局と観光局もあり、一人の女性が両方の業務を兼任している。親切な女性職員は村の見所、帰りのバスの時刻、レストランなどを教えてくれた。
  公民館の向かいにはワインミュージアムはこちらという看板が立っている。かつてテルセイラ島のヴェルデーリョワインは国外に輸出するほど隆盛を誇ったが、ブドウ栽培やワイン醸造に関わる労働力が激減し、今はこの家族経営のワイナリーでの直売と一部のレストランに卸す程度のわずかな生産量しかない。作られているのは主に白ワイン。アソーレスでは土壌の関係で、ボディのある赤ワインの生産には向いておらず、その代わり辛口の良い白ワインが作られる。

ヴェルデーリョワインを造るブドウ畑。冷たい風を避ける石垣で細かく区切られている。
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  ビスコイトとはビスケットの語源でもある。もともとは2度焼きという意味だ。大航海時代、船乗りたちは食料に保存に耐える2回焼いた硬いパン(ビスコイト)を積み込んだ。2回焼くのでパンは黒焦げに近い石のように硬いものになり、ポルトガル人が訪れた土地では、現地人からあいつらは石を食う変な人間だと思われた。ビスコイトの海岸は溶岩が固まった黒いギザギザの石でできた荒々しい磯である。まるで2回焼いたように黒いのでビスコイトと呼ばれるようになったそうだ。この磯にはいくつも岩で囲まれた水溜りが出来るので、底にコンクリートを敷き、歩道を整備して天然プールが作られた。洗面所や脱衣室、バールもあり、駐車場も完備しているこの海水浴場は地元の人にも人気が高い。付近には別荘とおぼしき立派な家もある。
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  観光局のお姉さんとワイナリーの主人が推薦するレストランは「オ・ペドロ」というタスカ(居酒屋)風の店で、店の主人が獲った魚を出すという。食べたのはボカ・ネグラ(黒い口)という名の魚である。キンキとか赤魚のような魚で味も赤魚系、美味である。出来ればサラダのオリーブオイルが魚にかからないように皿を別にしてほしい。魚+オリーブオイルの組み合わせは悪くないけれど、たまには塩だけで食べたい。白いご飯があれば尚良い。ボカ・ネグラはしょうゆ味で煮付けたり、一夜干しにしたり、粕漬けにしたり、味噌仕立ての鍋にしてもうまいに違いない。ポルトガルでは焼き物以外はカルデイラーダ(トマト味の魚介シチュー)くらいしか料理の種類がないのは残念だ。
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by caldoverde | 2008-07-31 10:25 | ポルトガルの旅 | Comments(4)
アングラの市場。左端がウツボ
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  昨年のアソーレス旅行の日記(8月19日)に寄せられたMOREIAさんのコメントの中に、かの島々ではクラカスという巨大フジツボのシチューなるものがあるという情報を頂き、今回の旅行ではフジツボを食べるのが目的のひとつとなった。ところがアングラ・ド・エロイズモのレストランのメニューを覗いてもそれらしきものは見当たらない。泊まったペンションのおじさんにクラカスはどこで食べられるのか尋ねたところ、アングラから少し離れたサン・マテウスという漁港のレストランにあるという。英語のガイドブックにも載っているアデガ・サン・マテウスという店だ。アングラの人が知っているのなら悪くないだろう。バスに乗ってサン・マテウスを目指した。

立派なガレージと犬小屋
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  街の中心から離れると小さなビーチやリゾートホテルが2つ3つほどあり、その後は街道沿いに凝った1戸建ての住宅が続く。集落には白壁に思い思いの色で縁取った庶民の家が肩を寄せ合う。黒い溶岩の固まった磯ではときおり釣を楽しむ家族の姿が見える。そのうちにやや大きめの集落に近づくと、クレーンが岩を動かす作業をしている小さな湾があり、漁船が10隻ほど泊まっている。そばには教会もある。目指す店は、この教会の向かい側にある。内部がブルーのアズレージョ張りの典型的なポルトガルの居酒屋(タスカ)では、開店まもなく入ったにも関わらず、すでに5,6人のおじさんたちがビールを片手に盛り上がっていた。その後に漁師風の若い男性、熟年夫婦など地元の人たちがやってきた。

魚の仕分けをする漁師さん
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  果たしてメニューにお目当てのフジツボはあるだろうか…ありました! 前菜部門にCRACAS(1個55セント/65セント)とある。この値段の違いは大きさに拠るのだろうか。どのくらいの大きさかは見当が付かないので、とりあえず2個頼んだ。前菜にはLAPAS(カサガイ)もあり、これも捨てがたい。マデイラ島でラパスを食べたときはパンで殻に残った汁を吸い取って食べたくらい美味しかった。1人前では前菜としては多いので半人前にしてもらった。

  メインデイッシュのメニューには聞いたことのない魚の名前が並ぶ中、知っているものがあった。MOREIA(うつぼ)である。私の駄文に時々コメントを書いていただく貴重な読者の方のハンドルネームでもあるこの魚は、ルイ・ヴィトン模様の海蛇のような姿で、その外見だけで拒絶反応を起こし絶対に食べたくないと断言する人までいる。ところがローマ帝国を舞台にした漫画を執筆中のヤマザキマリさんによると、古代ローマ人はこの魚を非常に好み、金持ちはウツボを自宅の池に飼い、名前やアクセサリーまで与えて可愛がって食べたそうだ。こげ茶に金の花模様のような皮はなめして装飾品に使い、それが後にあのフランスの有名ブランドのモノグラムが生まれるきっかけとなったのである(嘘ですが。)
  フジツボ、カサガイ、ウツボのアソーレス名物トリオでこの日の昼飯は決まった。

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  まずフジツボ。直径4cmくらいで殻には海藻がびっしり生えている。金属の耳かきのような小さな楊枝が添えられ、これで中身をかき出す。かき出した身はびっくりするほど…小さい。小さいけど、海の旨みが濃縮された、牡蠣を圧縮したような味だ。殻の中に汁が残っていて、貝をつまんで顔を天井に向け汁を飲み干したかったが、周りの目が気になって止めた。

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  今度はカサガイが鉄板に載せられて来た。赤いピーマンとニンニクが効果的なアクセントになっている。身はそれほど熱々でなく、大きいのは半生であったが、バターやオリーブオイルの存在を感じさせず、貝本来のあっさりした味を生かした日本人好みの調理法ともいえる。上品にフォークとナイフで身だけをはずして食べた。ところが食べ終わって私のフライパンが下げられた後ふと見ると、別のテーブルの客が手でカサガイの殻を口に持っていきチュッと汁を吸いながら貝を食べているではないか。ああくやしい。私の貝殻を戻してくれえ。フジツボの汁も飲み干すべきだった。

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  メインのウツボが来た。黄金色にからっと揚げたウツボは柔らかく適度な脂肪の感じられる白身魚である。いかにも精がつきそうな、ウナギ系の味である。でもウナギのような泥臭さは全くなく、小骨も除いてあるので食べやすい。レモンでさっぱりといただく。皮の内側はゼラチン質で噛むとニチャニチャと弾力があって、なんとも言えない独特の食感だ。古代コーマ人は特にこの部分を特に嗜好したそうだ。こってりしているので好き嫌いが分かれるだろう。日本式にタレをつけて蒲焼にすると美味いと思う。
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by caldoverde | 2008-07-27 02:15 | ポルトガルの旅 | Comments(3)

お菓子図鑑

  デザインを学んだリスボンの2人の若者ペドロとリタのユニットPEDRITAが、パステラリア(お菓子屋)で売られている半分ホームメイド半分マスプロダクトのお菓子の図鑑 FABRICO PRÒPRIO を出版した。ポルトガルのどのお菓子屋にもある、気取らない大衆的な焼き菓子を、美しい写真とレイアウトで、原材料を中心とする簡単なレシピとともに紹介したもので、歴史的なカフェ、日本のカステラに関するコラム、エッグタルトことパステル・デ・ナタの地球規模の拡散など興味深い記事もちりばめた、待望の本である。
左のお菓子は「風車」という名前。確かにそうだ。
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  日本では食べ物を扱う店なら商品のそばに名前と金額が誰にでもわかりやすく表示されている。ところがポルトガルのお菓子屋は何もない。ガラスケースの中にお菓子を並べてあるだけ。私は10年ポルトガルに住んでも未だに、あれください、これくださいと指示代名詞を使って買っている。しかしお菓子には銘々名前がある。店のどこかにA4の紙にタイプライターの文字の大きさで印刷された値段表がある。大抵カウンターの奥の壁とか目立たないところに貼られ、文字も小さすぎて読めないし、写真やイラストがあるわけでもないので、毎日のようにコーヒーを飲みお菓子を食べても、何と言う名前のものなのかほとんど知らなかったのだ。この本によって、初めて名前と顔が一致した。
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  この本は普通の本屋には売っていない。リスボンでは以前紹介したレトロ食品を売っている雑貨屋 A VIDA PORTUGUESA (8月22日の日記、www.avidaportuguesa.com 参照)やコメルシオ広場のリスボンのツーリストインフォメーションにあるやや高級なレストラン TERREIRO DO PAÇO、同じくコメルシオ広場の、郵便局の角を曲がった先にあるみやげ物店 ARTESANATO DO TEJO などで扱っている。もしくはインターネットのホームページhttp://fabricoproprio.netで通信販売している。本は店頭で買えば34,90ユーロ、パステラリアでお菓子を持ち帰るときに使う包装紙のようなデザインの紙で包まれている。ポルトガル語と英語で表記されているので、甘いものが好きなポルトガル語を勉強している方には必携の本だ。
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by caldoverde | 2008-07-26 01:57 | お菓子・カフェ | Comments(5)
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  去年の夏はアソーレス諸島の最も大きな島、サン・ミゲル島を訪れた。3泊4日で珍しいものを食べ、温泉に入り、素晴らしい庭園を散策し、カルデラ湖をいくつも見、ボートで小島に渡ってと魅力の尽きないところだった。車の運転免許やダイビングやトレッキングの心得があったならば、なおいっそう楽しめただろう。実はアソーレス諸島は旅行業界で行われた世界で最も魅力的なデスティネーションを選ぶアンケートで堂々の2位を獲得した、今や知る人ぞ知る、おしゃれな行き先なのだ。

  アソーレス諸島には全部で9つもの島があり、私はそのうちのひとつを訪れたに過ぎない。次回は世界遺産の町アングラ・ド・エロイズモのあるテルセイラ島と決めていたが、実際に行くかどうかは考えていなかった。たまたまインターネットで航空券の値段を比較しているうちに本気になって、一番安い、しかも早朝や夜でもなく時間が十分活用できるような時刻の切符をいつの間にか予約していた。出発の4日前のことである。宿は向こうに着いたら観光案内所で問い合わせるつもりで、リュックひとつに着替えを詰め込んで出かけた。夏でも本土よりも気温が低く曇りの日の多いアソーレス諸島なので、一応軽い長袖のニットと帽子を用意した。結局は使わなかったが水着も入れた。ガイドブックは去年もお世話になった英語のBradt社のAZORESのテルセイラ島のページだけコピーし携帯した。

  空港からアングラ・ド・エロイズモまでは高速道路で20分、料金は15ユーロだった。リスボンの倍である。運転手に高いと言うだけ言ってみたら、空港からアングラまでは定額だということである。アングラはユネスコ世界遺産に指定されている古都にもかかわらず、第一印象は何とかランドとでも名づけたくなるテーマパークみたいな所だ、というのが正直な感想である。去年行ったサン・ミゲル島は白壁に溶岩が固まってできた黒い石の縁取りで、シンブルで力強いモノトーンの建物がほとんどであるのに、ここは17世紀の教会だろうが18世紀の宮殿だろうが派手なコントラストの色でカラフルに塗られている。恐らくポルトガル一派手な町だ。この島の人たちは独特の色彩感覚を持っているのだろうか。
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  テルセイラ島での最初の昼食はシシャーロスという小魚の唐揚げだった。リスボンではカラパウジーニョ(小鯵)やペティンガ(小さなイワシ)の唐揚げはよく食べられるが、これは多分アソーレスにしかないだろう。形は小鰺に似ているが、鯵のようにうろこがバリバリせず柔らかくて、身は青魚特有の臭みがなくとても美味しい。よく揚げてあるので尻尾や骨も食べられる。頭は残そうかと思ったがカルシウム補給にと食べてみたら、あら意外、魚の頭は苦いと思いきや、からっと揚げたシシャーロスの頭は香ばしく甘味さえ感じて一番美味い部位であった。昔はいくらでも獲れたので貧しい人々は毎日のようにこの魚の唐揚げを食べていたというが、今は天文学的に値段が上がったそうだ。それでも私が食べたこのシシャーロスは大衆的なバールの今日のお勧めで4,8ユーロほどだった。
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by caldoverde | 2008-07-24 22:29 | ポルトガルの旅 | Comments(3)

にこごりサンド

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 その店はチリ広場のそば地下鉄アロイオス駅の階段を上るとすぐに現れる。交差点の角の小さな小さな店である。通りに面したガラスの中には、吊り下げられた生ハムや仔豚の丸焼きの下に色んな種類のサンドイッチがうず高く積み上げられている。立ち食い蕎麦屋のようにカウンターだけの店内では労働者風の男たちがビールやワインを飲んでいる。通るたびに気になっていたが、お客さんはガテン系のごついお兄さんたちが多くて、私のような上品な女性が一人で入るのはどうも憚られる。
 ところが私をはるかに上回る気品の持ち主のお友達が、この店はサンドイッチとコップのワインがおいしいのよと教えてくれた。彼女がカウンターでおっさんたちと一緒にコップのワインを飲み、サンドイッチを頬張る姿は想像し難いが、ウインドウに山積みになっているサンドイッチはどれも味が良いと想像できる。現場で働く人たちが来るのだから量的にも満足のいくものに違いない。一人では恥ずかしいので、私の2倍ほどエレガントな(購入したての掃除用バケツを持っていたため2倍に割引)同僚を誘って、ついにこの立ち食いオヤジバールに足を踏み入れた。
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上のサンドは肉と野菜が入っていて栄養的にもバランスがいいかも。
下は卵焼きのサンド。

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 サンドイッチの種類は生ハム、仔豚の丸焼き、ツナ、パタニスカス(鱈のかき揚げ)、卵焼きなど。どれも食指をそそるが、どうせなら変わったものをと私はトレズモス、同僚はモンゴウイカのフライのサンドを選んだ。
モンゴウイカはchoco(ショコ)と言う。チョコレートと間違えぬよう。
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 トレズモスとは、豚肉の切れ端を寄せ集めて固めたようなハムの1種。スーパーのハムコーナーの、真っ赤な口紅でお化粧したようなチョリソや生ハムのスライスが並ぶケースの中に、ひっそりと隅のほうに地味な薄茶色の塊があり、断面に得体の知れないものが化石のような独特の模様を作っているのがトレズモスである。華やかさに欠けるのでスライスされておらず、リクエストしないと切ってもらえない。私も食べたことがなかったのでトレズモスがどんなものか知るのに、いい機会だ。
これがトレズモス
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 このお店はただ単に、早さや安さばかりでなく、実はカロリーや素材のコンビネーションにも気を配るこだわりの店なのではないかという気がしてきた。なぜかと言うと、私の食べたトレズモスサンドのパンは結構固い田舎風のもっちりしたものであるのに対し、同僚のモンゴウイカサンドはスカスカの軽いカルカッサというパンが使われていた。彼女によると中身がフライであるにも関わらずギトギトしなくて美味しかったということである。それはパンがフライの脂分を適度に吸収し、脂っこさを感じさせなかったのではないだろうか。一方トレズモスの方は、のしイカのような歯ごたえと風味があるので、パンもそれに負けないかみ締めるほどにおいしさを感じる弾力のあるものを選んだと考えられる。

 コップのワインがおいしいと聞いていたのでこれもはずすことが出来ない。赤ワインを注文すると、フレスカ(冷えたもの)かナチュラル(常温)かと尋ねられ、一瞬「へ?」と聞き返した。赤ワインを冷やすとは不思議に思ったが、その日はやや暑かったのと好奇心から、冷たい赤ワインを頼んだ。冷えた赤ワインのビンは冷蔵庫の中に保管されているが、常温の赤ワインはカウンターの後ろの壁に据付けられた樽の蛇口から注がれる。もっともこの樽には2つ蛇口があって片方からは赤ワイン、片方からは白ワインが出るようになっているので、本ものの樽出しというわけでもないのだろうが、生ビール同様とても美味そうに見える。味は若くて軽いヴィーニョ・ヴェルデタイプなので、冷えた赤ワインもこれまたおつである。生まれはミーニョ地方ではなく、近郊のリバテージョ直送と樽に記されている。それで安くて美味いのだ。

 1坪ちょっとくらいのこの小さな店ではフルコース取るのも可能である。スープ、メインのサンドイッチ、デザート、飲み物はワインやビール、コーヒー、消化を助ける焼酎アグアルデンテ。この日はサンドイッチとワインのみで2ユーロでお釣りが来た。この近辺にはこのようなポルトガルの伝統的なファストフード店がいくつかある。東京の下町のような庶民パワーを感じるチリ広場である。
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by caldoverde | 2008-07-13 00:11 | ファストフード | Comments(9)
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 リスボンの旧万博会場にある国際見本市パビリオン(FIL)では7月初旬に恒例の手工芸見本市(FIA)が開催される。ポルトガル全国各地の工芸品の展示、即売が行われ、職人さんの実演も行われる。日によっては地方の民謡や踊りも披露され、とても楽しい催し物だ。

ウクレレの元祖、カバキーニョという楽器を作る職人
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  しかし、ポルトガルに来て以来毎年見ている私としては、だんだん質・量ともに落ちていくのを感じざるをえない。1990年代までのポルトガルはまだマニュファクチャーの国で、手作りの面白いものがたくさんあり、日常生活の中で大いに活躍していたように思う。EUに加盟してからは急速に伝統的な小規模の軽工業は消滅していき、工芸品も観光客向けの土産物として細々と生き残っている感がある。生活に必要な道具は安価な大量生産品や輸入品に取って代わり、手作りのものは趣味の装飾品になってしまったのは残念だ。

  また趣味の装飾品としては、芸術品の域に達するような高い水準のものが少ないのがポルトガルの工芸品の特徴である。良く言えば素朴な、はっきりいえば素人臭いものが多い。そこが面白いと言えば面白いのだが・・・中には小学生の工作かと見まごうものもある。

中央の悪魔の人形は人間国宝級の有名な作家の作品。その前の鬼のお面はいったい?
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これも工芸家の作品。脱力・・・
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 そんなわけで、最近はポルトガルの工芸を主とした第一パビリオンよりも、世界の手工芸品を集めた第二パビリオンの方が人気がある。アジアや中近東のバザールに紛れ込んだような喧騒の中、エキゾチックな置物や衣類、アクセサリーを探す人達でいっぱいだ。
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  会場は広い。どちらのパビリオンも隅から隅まで見るにはかなり時間がかかる。一通り見終わった頃には足が棒になり、お腹もぺこぺこになる。そこで第3パビリオンの登場である。ここは世界の工芸品の続きがあり、そして残りは食べ物コーナーになっている。レストランが何店か出張して店を開き、屋台村のように様々な種類の出店が登場する。大部分は毎年出店するお馴染みのメンバーである。リスボン近郊アゼイタンやオビドスのお菓子、セーラ・ダ・エストレーラのチーズ、アレンテージョのハム・ソーセージが大勢を占める。
卵の黄身で作った伝統菓子
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大きなチーズの中身をすくってパンに塗ったくる豪快なハムチーズサンド。
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  生ハムやチーズを挟んだサンドイッチを売る店は多いが、一軒だけ焼きたての巨大なハムパンを置いている店があった。長さ約30cm幅が20cm厚みが7cmくらいのパンの切り口は、ピンクのハムと朱赤のチョリッソと黄色いパンの層が交互に重なり、その間から白いチーズがとろ~と溶けてあふれ出している。口の中にじわ~と唾液が湧いてくる。これはもう買わずにはいられない。赤ワインも飲まない訳にはいかない。パンは量り売りで1切れ4,60ユーロ、ワインは1,50ユーロ、結構高くつく。もっともセーラ・ダ・エストレーラチーズや生ハムは元々高いので仕方がない。隣に座っていた年配の婦人は常温のハムチーズサンドを食べていたが、私のハムパンのとろけるチーズを見て、彼女は店員に温めてくれるよう頼んでいた。
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by caldoverde | 2008-07-08 08:34 | カルチャー | Comments(7)

尼僧の腹、修道士の頭

 近所のカフェに行ったところ、見慣れないお菓子があった。「尼僧の腹」という意味ありげな名前の半月型のパイ状のお菓子で、表面は蜂蜜かジャムで照りがつけてあり、卵とアーモンドと砂糖で作られた餡状のものが入っている。相当甘いことを覚悟し、苦いビッカ(エスプレッソコーヒー)を一緒に頼んだ。親切なカフェのおじさんは食べやすいように半分に切ってくれた。食べてみるとパイ皮はさくさくではなくぽくぽくしている。皮も餡も予想したほど甘くなく、乾燥した黄身餡饅頭といった味わいである。緑茶に合いそうだ。
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 それにしてもなぜ尼僧の腹なのだろうか。その謎は本屋で見つけた「修道院のお菓子」という本でいくらか解明された。昔、修道院では1日当たり6000カロリーにも達する食事が摂られていたそうだ。卵は1日3個、修道院長は4個まで食べることが許された。1日に飲むワインは1人1,5リットル。道理で昔の漫画で描かれる修道士たちは丸々と太っていたわけである。尼さんのお腹は妊婦のごとく大きく膨らんでいたのだろう(実際に王様の子供を宿した尼僧もいた。) 修道院起源のお菓子は大量の卵黄と砂糖が基本である。それにアーモンドの粉や、ジラというかぼちゃのジャムが加わる。香り付けは圧倒的にシナモンが多い。禁欲的なイメージとはうらはらに修道士たちはどんどん太り、虫歯になり、結果、短命であった。私が食べた「尼僧の腹」はダイエット中の尼さんだったようだ。

 尼僧のお腹があるなら、頭のてっぺんを河童のように丸く剃った修道士の頭を連想させるお菓子もある。リスボンのカテドラルのすぐそばの聖アントニオの生家があったとされる場所に同聖人を祀った教会がある。リスボン生まれでイタリアのパドヴァで活躍したこの聖人はポルトガルの人々にとても人気がある。アルファマ地区の古い民家には幼子イエスを抱いた聖アントニオのアズレージョが貼り付けられている。お土産屋には漫画化されたユーモラスな姿の、葬儀屋には美化された見目麗しい聖アントニオをかたどった人形が見られる。
 聖アントニオは紛失物と結婚という切実な願いを聞き届ける聖人なので、教会内には常に熱心に祈りをささげる信者の姿が見られる。異教徒に効果があるかどうかは疑わしいので、せめて聖人にちなんだお菓子を食べてご利益の一分も与ることにしよう。
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 カテドラルや聖アントニオ教会から少し下ったところにカフェがある。そこには聖アントニオのお菓子なるものが売られている。干しブドウの入ったほんのり甘いブリオッシュ生地の丸いパンのてっぺんには修道士の刈り込んだ髪の毛のようなリング状の飾りがあって、その中はジャムで照りがつけられ、周辺にアーモンドのスライスを散らしている。
右が聖アントニオ、左が神様
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 修道女、聖人とくれば、つぎは神様。ポルトガルのどのカフェにもあるパォン・デ・デウス(神様のパン)は丸いパンの上にココナッツをのせて焼いたもので、見た目は日本のメロンパンに似ている。おやつ系菓子パンかと思っていたら、ポルトガル人はこのパンにハムやスライスチーズを挟んで軽い食事にする。名前の由来は知らない。

 このカフェには、今の子供や若い人たちの好みには合わないような、修道院のお菓子の流れを汲んだまっ黄色いデザートも何種類か置いている。従業員はこの道何十年という雰囲気のおじさんたちで、日本ならお寺や神社のそばにある昔ながらの饅頭や団子を売っている頑固職人の店といったところ。雰囲気はゆるいが。
これ一個で卵黄3個は使っていそうなプリン
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材料は卵黄とシロップそして多分オレンジ

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by caldoverde | 2008-07-03 18:06 | お菓子・カフェ | Comments(5)

グルメショップ

サンタ・アポロニア駅の向かいにある、倉庫を改造したグルメショップ。中にはカフェがありテージョ河を見ながらお茶や食事が楽しめる。
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 最近リスボンではグルメの店と称するお高い食品を売る店があちこちにできた。誰々さんの作る有機野菜とか、どこどこ農場の一番絞りのオリーブオイルだとか、修道院手作りのリキュールとか、トリュフ入り何ちゃらとか、置物としてもおしゃれな、しかし容量の少ない容器に入った様々な食品が、こぎれいにディスプレーされている。落としたりしないよう気をつけて値段を見ると、驚いて取り落としそうになる。ヨーグルト位の大きさのビンに入った調味料や果物や野菜の加工品が安食堂の昼定食なみの値段である。ワインはコンクールで賞を取ったというシールや何年ものという数字が光を放っているような、なんやら偉そうなものばかりである。ちょっと気の利いたお土産にいいが、義理土産には予算オーバー、重量オーバーは必至である。中身よりも入れ物のほうが重いものが多い。

カンポ・デ・オリーク地区の、臭いチーズや腸詰を売っていたパッとしない乾物屋さんが、ワインバーを兼ねたおしゃれなグルメの店に新装開店。黒板のメニューを書いた人はなかなか絵心がある。
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 ダイエットの理由からほとんど使わないが、実はバターが大好きだ。どのスーパーにもあるポルトガル産、特にアソーレス産のバターは十分においしいが、グルメショップにある手作り羊乳のバターが気になる。高いといっても3ユーロ程度だから私にも手が出せる値段ではあるが、生ものなので賞味期限がある。200グラム入りのバターを賞味期限までに使い切れるかどうか自信がない。がんばって消費すれば確実に体重が増える。どうしよう・・・

 ポルトガルの塩はまろやかでおいしいと評判である。しかしスーパーで売っている1キロ袋ではお土産に持って帰るのには辛い。料理の好きな人には可愛いビンや小さな麻袋に入った塩の華、胡椒やハーブを混ぜたミックスソルト、使うたびに挽く大きな結晶の岩塩などを贈ると喜ばれるはずだ。
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 ポルトガルのチョコレートのメーカーを教えてくださいとよく聞かれるが、私が知っているのは北の方に本社があるレジーナという会社のみで、しかもリスボンではクリスマスや復活祭など特別な期間しかお目にかかれない。グルメショップなら少々お高いが、ポルトガルの手作り高級チョコレートが見つかるだろう。また昔植民地だったアフリカのサントメ・プリンシペ共和国産のチョコレートもある。ほとんど産業らしいものがない貧しい島国サントメの唯一の名産品、これは本国以外ではポルトガルでしか売っていないのでは。

 混ぜ物なしの100%天然の蜂蜜も種類は豊富で、花によって色や香りが違う。蜂蜜の中に松の実やクルミを入れたもの、蜂の巣をそのまま入れたものなど見るだけでも楽しい。ジャムもトマトやかぼちゃ、人参などの野菜やメロンなどいっぷう変わった原材料のものがある。

若干の日本食もあり。「医食同源」と書いてある蕎麦やうどん。でも「めんつゆ」がないとね。
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 グルメショップは空腹の時に入ってはいけない。たまたまお金が入った時に行っても行けない。何だか判っているものは美味しそうに見えるし、何だか判らないものは好奇心で手を出してしまう。例えば珍しいチーズを買ったとすると、それに合うワインが必須となる。お店の人は知識が豊富だから、いいワインをアドバイスしてくれる。チーズだけでは寂しいのでもう何種類かつまみも欲しくなる。生ハム、オリーブ、魚の缶詰、キノコのビン詰め。そこらのものとどう違うのか丁寧に説明してくれる。それらをのせるクラッカーも要る。お口直しのチョコやクッキーも、というふうに芋づる式に買うものが増え、カードで支払うことになる。
 こういうお店はここでしか手に入らないから、という確固とした目的と必然性があって行くのが正しい。私は堅実なので宝くじが当たったあかつきに買うべき食品のリストを作成するためだけに、グルメショップを利用する。
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by caldoverde | 2008-07-01 01:02 | 話題の店 | Comments(7)