ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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  テルセイラ島の滞在も今日で最後である。残念ながらこの日も天気は良くない。宿はアングラからプライア・ダ・ヴィトリアに移した。プライア・ダ・ヴィトリアの魅力はビーチとヨットハーバーなので、曇りの日は厚化粧を取ったスッピンの女性のように魅力が半減する。もちろん素顔が美しい女性もいるのだが、アングラ・ド・エロイズモのように派手な化粧の下にも古い文化遺産が豊富にあるわけではないので名所旧跡めぐりも出来ず、北ヨーロッパ系の老人たちが元気に寒中水泳?を楽しむ人気の少ないビーチやほとんど誰も来ない丘の上の展望台を散歩するぐらいしかない。11時のアングラ行きバスに乗って途中下車して昼ご飯を食べてから、プライアに戻り空港に行くことにした。

  去年も使った英語のガイドブックによると、アングラとプライアの間にあるサン・セバスチャンという村にはアソーレス諸島でベストのレストランがあるらしい。風車を改造した小さな建物で、最高の魚や肉の炭火焼を出し、ワインリストも著者が知る限り島で最も充実したものを揃えていると絶賛している。郷土料理のアルカトラやデザートも素晴らしいと褒めちぎっている。そんなに言うのなら話のタネになるものがあるだろうと、その「オズ・モイーニョス(風車)」というレストランを目指した。

  バスはいくつかの集落を通り過ぎ、20分ほどで村と呼べるほどの規模に達するところに着いた。小さいながらもゴシック様式の教会とこの島特有の派手に塗られた小礼拝堂のある広場でバスは止まり、私も降りた。ゴシック教会の中に何人か入って行くので、ミサでも行われているのかと思ったら、内部では壁画の修復が行われていた。中世の面影を残す平面的な表現ながら力強い線描による宗教画で、ポルトガルでは珍しい、価値のあるものに見受けられた。剥がされた部分も再現されたら素晴らしいものになるだろう。これでひとまず名所旧跡を見る欲求は満たされた。残るは食の欲求を満たすことである。実はペンションで朝食をとったので、腹はそれほど空いてはなかったが、安宿だけあって非常に不味いハムとセロファンに包まれたスライスチーズを食べてしまったので、口直しの必要があった。
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  広場から海に向って降りる道の途中に、白壁のところどころに黒い石が塗り込められた典型的なアソーレス風の、家にしてはかなり小さな変形的な建物がレストラン「オズ・モーニョス」だ。入り口には昔の役割をしのばせる粉を受ける箱や碾き臼があり、調度品は田舎風のアンティークで統一され、なかなかいい雰囲気である。メニューは覚悟していたほど高くない。最後の日はタコか牛肉の煮込みを食べたいと思っていたが、この店にはタコがないのでアルカトラというテルセイラ島の郷土料理を食べることにした。確かリスボンのアソーレスレストレンでアルカトラを食べたときは、牛肉が崩れるほど柔らかく煮たシチュー様のものだったと記憶している。ここでも当然コクのあるビーフシチューが出てくるものだと期待した。
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  鉄製の3本足の付いた伝統的な鍋がテーブルにやってきた。入れ物も昔風の凝ったものだと感心しながらお玉にたっぷりとシチューをすくい、皿によそったつもりであった。
  皿に現れたのは、煮詰めたキャベツの味噌汁のようなものであった。しばらくキャベツを食べてなかったので、その柔らかな甘味は懐かしく心と体に染み入っていく。キャベツの芯に近い白い部分にまで牛肉のスープの滋味がたっぷり含まれている。野菜と肉の旨みが見事に融合している。
  まず1杯目はキャベツとスープを味わい、2杯目は肉である。今度は注意してなるべく鍋のそこからお玉をすくって皿にあけた。キャベツはより細かくなっている。たまに豆も見える。それで味が複雑なんだと納得しながら肉を捜したが、1本の赤い糸状のものがフォークに引っかかっただけであった。これは煮込んで繊維状にほぐれた牛肉だ。
  では肉はいったいどこに?スープの中にすっかり溶けてしまったのだろうか?3杯目は何度もお玉をかき回して鍋のそこにあるものをすっかりさらったが、やはりキャベツしか引っかかってこない。確かにスープは濃度があっておいしいけど、バスに乗ってわざわざやって来てこれだけかよ~と心の中で叫んだ。

  いやもしかすると野菜と肉を一緒に煮込んで、出すのは別々かもしれないぞという考えが浮かんだ。もう少し待ってみよう。三本足の鍋が下げられた後、少したつとゆでじゃがいもの皿と、素焼きのどんぶり鉢がやって来た。鉢には透明な、液状の脂肪とおぼしき黄金色のスープの中にごろんとした肉の塊が入っている。これこそがテルセイラ島名物料理のアルカトラであった。そしてスライスされた甘いパンが運ばれてきた。そういえばリスボンのアソーレスレストランの支配人がアルカトラには甘いパンを添えると言っていたのを思い出した。こんなに色々来るのなら、さっきのキャベツスープは加減して食べるんだった。しっかりと弾力を残しながら崩れるほど柔らかく煮たビーフ、ほくほくねっとりしたじゃがいも、そして脂をさっぱりさせ肉の味を引き立たせる甘いパン、永久運動を引き起こしそうな組み合わせである。
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  食後はデザートが入る余地もなく、コーヒーだけを注文し精算を頼んだ。レシートを見ると、アルカトラの上に「しゅうとめのスープ」1ユーロ50セント也とある。あのキャベツのスープはアルカトラの1部ではなく、独立した別物だったのだ。チーズやオリーブと同じ、前菜の1種だったのだ。店の女の子は何も言わずにテーブルに置いていったので、私はアルカトラと思い込んで食べてしまった。まあ、大げさに言えばだまされた。しかし実際美味かったし、それほど高くはないので許すことにしよう。
  それにしてもなぜ「しゅうとめのスープ」などという変な名前が付いているのだろう。しゅうとめは腹の膨れる安いキャべツのスープを最初に出して嫁があまり肉を食べないように仕向けたのだろうか。
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by caldoverde | 2008-08-05 14:27 | ポルトガルの旅 | Comments(6)
テルセイラ島独特の飴細工で作られた闘牛
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 アソーレス諸島の中で特にテルセイラ島は闘牛の盛んなところである。テルセイラの闘牛には、闘牛場で牛と馬と人が戦う普通の闘牛と、道に牛を放して人が牛と一緒に走るスペインのパンプローナ式の闘牛(トウラーダ・ア・コルダ)の2種類ある。コルダとは綱のことで、5人ほどの男性が牛につけたロープを引いて牛の方向転換をしたり暴走を牽制するので、パンプローナのように死者が出ることはない(と思う。)アングラ滞在の3日目は市内でトウラーダ・ア・コルダが行われるので、走るのが大嫌いな臆病者の私も珍しいもの見たさで、町外れの闘牛会場に出かけた。

 闘牛が行われる場所近くになるとこの町にこんなに人がいたのかと思うくらい集まっている。ポップコーンや菓子を売る若者の威勢のいい掛け声、ビールを片手にアドレナリンを上昇させる男たち、昔はワシも牛の前を走って、寸でのところであの塀に駆け上って牛は塀に激突したんじゃよと自慢話をする老人たち、民家のベランダにはその家で一番きれいなベッドカバーを掛け、意識して?肩や胸が開いた服を着た女たちが始まるのを待ち、祝祭気分が盛り上がっている。沿道の住民は牛の衝突や見物人の侵入を防ぐため、ベランダや玄関の周りを板で囲っている。

 花火がパンパンと鳴り雰囲気が一瞬張り詰め、ざわめきのトーンが変わり、人々は後ずさりし始めた。広場の方を向いていた人々は、広場に背を向けて走り出した。さあ、闘牛の始まりだ。私は沿道の何段か階段を上った玄関のたたきの様なところで高みの見物のつもりだったが、そこは牛が来るぞと地元の人に注意されたので、その辺のお宅の鉄柵の土台のコンクリート塀によじ登り、鉄柵にしがみついた。よく見ると付近には女はほとんどいない。波のように人々が前進しては後退する。牛は広場や何本かの通りをあちこち引き回されているようだ。中央の広場では度胸のある若者が傘やケープで牛をけしかけている。私のいる道を牛が駆けてきた。牛の周りを大勢の男たちが走り、少しでも牛が方向を変える兆しを見せると、わき道にそれてひょっと高いところに飛び移ったり、クモの子を散らすようにちりぢり逃げたり、牛も怖いが、半ばパニック状態の人間も怖い。この牛はあまり闘争意欲が無かったようで、坂道の途中でスピードを落とし、止まって戻っていった。むしろ一緒に走る人たちの方が興奮して、人間にぶつかった方が危ないのではという気もした。

 アングラの町の写真店やみやげ物店ではこの闘牛を撮影したDVDが売られている。もういい年のおじさんが牛に立ち向かって角でつつかれているところが繰り返し流されている。トウラーダ・ア・コルダは島の様々な場所、砂浜でも行われる。観光局の闘牛予定表には事故については一切責任を持ちませんと書いてある。大人も子供も沸き立つ大きな鬼ごっこだ。YouTubeで TOURADA TERCEIRAのキーワードで検索すると映像が見られる。
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 トウラーダ・ア・コルダは6時半ごろから2時間続く。安全な場所でさわりだけ見て今夜はステーキを食べようと心に決め街に戻った。ヨットハーバーを見下ろすホテルのレストラン「ベイラ・マール」で年配の給仕が勧めるベイラ・マール風ビーフを食べた。出てきたのは、ビトックと呼ばれるポルトガルのどの食堂にもある、目玉焼きを乗せたステーキで、特色といえばコーンが添えてあるくらい。これが自慢料理か?と一瞬思ったが、目玉焼きと肉の間には丸ごと潰して炒めたニンニクがこれでもかというくらい入っていて、しかもピリッと唐辛子のきいた赤いソースがたっぷりかかっている。甘いとうもろこしがニンニクやソースの辛さを和らげる。フライドポテトもさくっと揚がっていて、肉汁と唐辛子の混じったソースに浸して食べると止められない。いつもはカロリーを警戒しフライドポテトには手をつけない主義だがこの日はタブーを破ってしまった。それにしても日の丸の旗を立てたくなるようなこの盛り付け、どうにかならないものだろうか。
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by caldoverde | 2008-08-02 00:38 | ポルトガルの旅 | Comments(10)