ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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マテ貝のリゾット

 近所の市場を覗いたら、丸々太った鯖が目に入り、鯖の味噌煮でも作ろうかと考えた。おばさんが鯖の重さを量り頭や内臓を取ってくれる間、不意に鯖の並んでいるそばにマテ貝があるのに気が付いた。最初から見えていれば鯖など買わず(1匹4ユーロ以上した)即座にマテ貝を買っていたのだが。子供の頃から眼鏡をかけている私は視界が異常に狭く、すぐ目の前にいる知人に気がつかずに、挨拶もせず通り過ぎるといった失敗は数知れない。
 長さ約10cmのマテ貝が20本ほどゴムで束ねられて、白いべろを出している。まだ生きている。デパートでマテ貝を見たが真空パックで包装された死んだもので、値段も高かった。この近所の市場でマテ貝を見るのは、というか貝類が売られているのはめったにない。値段は8ユーロ。かなりの予算オーバーとなるが、この機を逃したら自分の人生でマテ貝を食べるチャンスはもう二度と巡って来ないかもと思うと、既にさばかれ返品不可能となった鯖とともにマテ貝も買ってしまった。
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 私はマテ貝を日本で食べたことがない。初めて食べたのはアルガルヴェのどこかでマテ貝のリゾットを食べたときだった。どの町の何と言うレストランか思い出す手がかりは全く失ってしまったが、上品なあの味は忘れがたい。お米のクリーミーな舌触り、貝の歯ごたえ、日本料理にも通じる旨みのあるスープの味、そしてかすかなコリアンダーの香り。私が食べたポルトガルの米料理のベスト3は、漁師町のシーフードリゾット、北部の鴨の炊き込みご飯、そしてこの南部のマテ貝のリゾットである。もう一度食べたいものだと常々思っていたが、リスボンでこの料理をメニューに入れているレストランを見たことがない。となるとアルガルヴェに行くか自分で作るしかない。
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 インターネットでマテ貝のリゾット(arroz de lingueirão)のレシピを調べると色んな作り方があるが、私がたった一度食べてとても美味かったのは、トマトを使わない白いシンプルなリゾットだった。それに一番近いと思われるレシピを参照し、幻の味の再現にチャレンジした。

1、マテ貝をゆでる。
 砂出しをしたマテ貝を洗い、水を張った鍋に入れて火にかけゆでる。ゆで汁は米を煮るためにとっておく。
2、玉ねぎ、ニンニクをみじん切りにしてオリーブオイルで炒める。
 リゾットに限らずほとんどのポルトガル料理の基本中の基本で欠かせないもの。透明になる まで炒める。香りづけに月桂樹の葉も加える。
3、殻から出したマテ貝を加えて炒め、貝のゆで汁、白ワインを加え、米も入れて煮る。割合は米1に対し水分3くらい。米の硬さはお好みで。
4、塩で味を調え、仕上げにコリアンダーの葉を散らす。

 店で食べたリゾットの貝は小さく切られていたが、家で作るときは気前良く長いまま使う。ゆでると殻よりも大きくなって食べ応えがある。日本では殻つきのまま焼いたり、天ぷらやヌタにしたり色々な食べ方があるようだが、リゾットにして食べるのは、多分ポルトガルのアルガルヴェ地方だけだろう。自分で作ったマテ貝のリゾットはプロの味には及ばないが、貝をふんだんに使って贅沢感が味わえた。
オリーブオイルとニンニクで炒めただけでも美味い。
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 アルガルヴェには他にも独特の魚介料理がある。有名なカタプラーナはリスボンでも食べられるが、ウツボのフライのサンドイッチや、ツブ貝と豆の煮物などは現地に行かないと味わえない。ポルトガルで一番美味しいイワシはアルガルベ産だそうだ。アルガルヴェでは観光客向けのピザやハンバーガーなど無視して、地元の漁師を捕まえてどこの店が美味いか聞いてみよう。
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by caldoverde | 2008-11-28 08:31 | シーフード | Comments(7)

修道院菓子博覧会

 11月も半ばとは思えないうららかな日曜日、私と近所に住む漫画家のヤマザキマリさん(ブログhttp://moretsu.exblog.jp/)はリスボンからバスで2時間ほどのアルコバサに出かけた。ここには中世ポルトガルの悲恋物語の主人公ペドロ王とその恋人イネスのお墓があるサンタ・マリア修道院(世界遺産)があるが、また甘いものでも有名である。修道院の伝統を汲んだ卵の黄身たっぷりのお菓子を売るポルトガル屈指の菓子店があり、毎年11月には「修道院菓子博覧会」なる催しがこのサンタ・マリア修道院で開かれる。会期の四日間は修道院の冷たい石の部屋は黄色いお菓子で埋まり、いつもは静謐な回廊は家族連れの楽しそうなさざめき、そして熱気と興奮に満たされる。私とヤマザキさんが訪れたこの日は最終日であった。
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 以前も書いたが、ポルトガルのお菓子の多くは修道院で作られていたものがルーツである。ケーキやクッキーに欠かせない小麦粉や砂糖の他に、修道士の僧服やシーツの糊付けに使われた大量の卵白の副産物である卵黄、大航海時代以来アジアから輸入されてきたシナモン、イスラム支配時代にもたらされたアーモンドが主な原料である。特に卵黄の使い方は半端ではない。一口サイズのお菓子に卵の黄身二個分は使われているだろう。卵アレルギーの人やコレステロール値の高い人にとって禁断のイベントだ。にもかかわらず会場は血糖値の高そうな人たちで賑わっている。
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 お菓子の中には生の卵黄を使ったどろどろのものもある。日本でも卵かけご飯を好む人は多いけれど、ポルトガル人は砂糖をどっさり入れた卵の黄身をそのままスプーンですくって食べるのだろうか?サルモネラ菌は大丈夫なのだろうか?
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 例外的に白身と砂糖だけで作ったメレンゲ菓子もあるが、大きさは尋常でない。メレンゲの中に真ッ黄色い黄身クリームを仕込んだものがやっぱりある。白身と黄身を分けそれぞれから別のものを作って後から組み合わせたハンバーガー状のお菓子もある。
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 九州にはその昔南蛮人が伝えた鶏卵そうめんという銘菓がある。本家本元のポルトガルには糸状卵黄菓子の実に様々なバージョンがある。
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 鶏卵そうめんを最中の皮のようなオブラートで葉巻状に巻いてあるのは「尼僧の喉」というお菓子。この店のはアルコバサの伝統的な織物の模様をプリントしたオブラートで巻いてある。
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 日本では鯛の形のらくがんや練り物が引き菓子に使われるが、ポルトガルもそうなのか、マジパンで作った大きな尾頭付きが出展されていた。
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 アーモンドと砂糖とシナモンの練り物を腸に詰めた甘いソーセージ。色も形もねっとりとした食感も、ファリニェイラというポルトガルの腸詰にそっくり。
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 カステラの先祖とされるパン・デ・ロー。程よく焦げた表面から生焼けの生地が噴出し、クリーミーさを強調している。
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 かりんとうの元祖のような揚げ菓子、コクスランはクリスマスの時期に盛んに食べられる。奥にはおなじみのエッグタルト。
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 全国から出品された伝統菓子のコンクールも行われる。受賞した店やお菓子は売れ行きが良い。「尼僧の腹」も1等をとったものはこんな洗練された姿である。
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 全国から何百何十種類というお菓子が一同に会したとは言え、味はほとんど同じである。それでも心から嬉しそうな、そして怖いくらいに真剣な人々の表情に、ポルトガル人の伝統菓子に対する愛着と嗜好がひしひしと感じられる。私と漫画家のヤマザキさんは「天使のほっぺ」というどら焼きほどの大きさのパンケーキをシロップに漬けたお菓子を食べてKOされた。舌が痺れ、胸がやける。渋いお茶や漬物が欲しい。しば漬けや沢庵があったらもうひとつくらい…いや無理だ。
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by caldoverde | 2008-11-17 07:26 | お菓子・カフェ | Comments(9)
 町内に突如不思議な店が出現した。入り口に大きな丸いサボテンが門番よろしく構えている。中を覗くと黒い壁にはバロック風のゴージャスな彫りの入った額縁入りの鏡が掛けられ、同じくバロック風の銀色に塗られたフレームに黒いビロードの布が貼ってある椅子が置かれている。奥はやはり黒と白と金茶を基調としたインテリアで、天井からシャンデリアが下がり、上等そうな白いクロスは優雅なドレープを作りテーブルからすべり落ちている。入り口のガラスに貼られたお品書きは、どこの料理なのか聞いたことのないものばかりである。値段は昼のメニューのせいか意外と高くはない。客は誰もいない。いくらドアが開けられて中が見えても、この雰囲気は気軽に入っていけるものではない。黒いドレスを着た美輪明宏が出てきそうだ。私はこの店をひそかに「レストラン黒蜥蜴」と名づけた。
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 大抵の店は一人で入れる私であるが、この店はどうも一人では入りづらい。階下のスーパーに行くときやごみ出しに着る普段着ではかなり違和感を生じるインテリアだ。距離的には家のそばのごみ集積所から数十メートルしか離れていないのに、外出用の服に着替え、宝石を着けなくてはならない。美容院に行き、普段はしない化粧も必要だ。ハイヒールを履くので黒塗りのハイヤーを呼ばないと。そんな面倒を避けるためには一緒に普段着で入れる連れが欲しい。ようやく乗ってくれる友達が現れ、私達は徒歩でこの店に赴いた。

 席に着くと黒地に白と金茶で印刷された紙が渡された。この店の場所や連絡先、メニューを紹介したパンフレットである。店名をCartaz e Iguaria(ポスターとご馳走)という。それによるとこの店の三本柱はアレンテージョ料理、新インターナショナル料理、ルーマニアの伝統料理である。このシックなインテリアに田舎料理の代表格のアレンテージョ料理は全くのミスマッチだが、夜の部で出されるフランス料理っぽいインターナショナル料理にイメージを合わせているのだろう。そうであれば、夜はやはり宝石とハイヒールが必要となるかも。

 しかし幸いなことに昼はアレンテージョ料理とともに、ポルトガルと同じかそれ以上に田舎と思われるルーマニアの料理がメインなので、そのような気遣いは不要であろう。ランチは珍しいルーマニア料理を味わうことにしよう。そしてルーマニア料理と江戸川乱歩風インテリアがマッチするのか判断するのだ。ルーマニアと言えばかのドラキュラ伯爵の伝説の地ではないか。するとこの黒い内装は吸血鬼ドラキュラをイメージしたものなのか?
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 まずパンとともにバターと何かペースト状のものが出された。このペーストは見た目も味も、もろみ味噌にそっくりだ。腸詰(多分ファリニェイラ)とチーズを混ぜたものだそうだ。とうもろこしのパンに付けるとパンのうす甘い味ともろみの塩辛さがとてもよく合う。バターもただのバターではなく、ケッパーを混ぜたものである。

 前菜はルーマニア産のヤギのチーズにフェンネルの葉を混ぜたものを詰めて焼いたスタッフドトマト。一皿に三つで結構なボリュームがある。

 メインはひとつがルーマニア風とんかつ。とんかつといっても衣は天ぷらに近い。これにマッシュルームの入った濃厚なソースがかかっている。付け合せはマッシュポテト。
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 もうひとつはルーマニア風ロールキャべツ。俵型ではなく、三角に巻いてある。また、生キャベツではなく、ドイツのザワークラウトのような酸っぱいキャベツで巻いてある。具は挽肉と米、付け合せは黄色いとうもろこしの粉を練ったポレンタ。
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 どちらの皿にも赤いパプリカの粉と香草で彩を添えている。味は懐かしの日本の洋食といった趣で、ポルトガル料理が日本人の口に合うのとはまた別の意味で、日本人の味覚に合った料理と言える。とんかつのマッシュルームソースは正に日本でよく使われるあのソースの味である。酸味のあるキャベツは柔らかくさっぱりして肉の脂っこさを感じさせない。付け合せのマッシュポテトやポレンタは、ポルトガル料理のフライドポテトや丸ごとゆでたじゃがいもよりも胃に優しくて、ご飯やおかゆに近いものがある。肉も魚も野菜もそのままの姿でどーんとやって来て、何にでもオリーブオイルを使うポルトガル料理のほうがワイルドだ。

 しかし、もしかするとこの店のアレンテージョ料理は普通のポルトガル食堂とは一線を画し、この内装に相応しい洗練された味と盛り付けなのかもしれない。こっちも気になるし、夜の新フランス風料理もどんなものか知りたいし…この変なお店がもっと繁盛し(この日の客は私たちともう一組)、私が盛装して誰かにエスコートされて再来できるような日が来るまで、存続することを願っている。
www.cartazdiguarias.com
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 食事が済んで地下にあるトイレに入ると、ここもまた凝っていて、黒い石の壁に金の唐草の額の鏡、大理石の洗面台、そしてトイレットペーパーは…真っ黒!用を済ませて洗面所から出れば、重たそうなビロードのカーテンの向こうにはルージュのような真っ赤な皮のソファーが!やはり美輪明宏か黒いマントのドラキュラが出てきそうな舞台装置であった。
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by caldoverde | 2008-11-06 19:35 | インターナショナル料理 | Comments(4)