ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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チョコレートの王子様

 リスボンの情報誌に最近変わったチョコレート屋が開店したという記事が掲載された。ゴディバのような世界中どこでも買える高級チョコレートではなくて、超希少なサントメ・プリンシベ産のチョコなのだそうだ。サントメとはアフリカ大陸の大西洋側の豆粒のような小さな島国である。サントメ(聖トメ)島とプリンシペ(王子)島という主な2つの島からなり、旧ポルトガル領で世界の最貧国のひとつである。主な産業はカカオ。このサントメ産のカカオだけを使ったこだわりの店が、プリンシペ・レアル(皇太子)公園のそばの坂道にオープンした。

このあたりは古いきれいな建物と骨董屋が多い
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 1坪ちょっとくらいの小さな店だが、入り口に小さなラグビーボールのようなカカオの実が飾ってあるのですぐ判る。ガラスケースの中のチョコレートは何か工業材料のような、平べったくてでこぼこしたタブレット状になっている。手作りと言った場合、熟練の職人技を駆使したものか、または素人が作った素朴だが味わいのあるものと言う意味合いで使われることが多いだろうが、ここまで来ると、原始的な道具とメソッドを使った、ほとんど考古学的に再現されたチョコレートといった趣きである。
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 オレンジ入り、生姜入り、カカオ%かは忘れたがとにかく純度の高いものと何種類かある。いずれもミルクは使っていない。真のチョコレート好きのためのチョコレートだ。店ではホットチョコレートも飲める。私はスペイン式のドロッとしたココアが大好きなのだがあの甘さが胃に重い。この店のは粘りが少なくさらっとしているが、深い香りとコクがある。昔は薬としても用いられていたというチョコレートの原点のようなピュアなココアだ。体がぽかぽか温まり、胃も元気になるような気がした。
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 1種類だけ中にラムレーズン入りの高級一粒チョコレートのようなものがある。そのレーズンはカカオの実の中の白い部分を発酵させたブランデーに漬けたもので、そのブランデーは古い資料を基に再現した貴重なものだそうだ。非常に美味しく文字通り有難いものである。

理科の実験室のようなそっけない店内
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 店の美しいお姉さんはそれぞれの商品に関してとても熱心に説明してくれるので、ココアを飲んだだけで帰る勇気がなくなり、生姜とオレンジのチョコを各1枚、ラムレーズンのチョコを3個買うことにした。重さを量りココアと合計した金額は、有名な高級チョコレートに匹敵するお値段だった。そのときは予定外の散財をしてしまったと後悔したのだが、1週間ほど経てこの文を書いているうち、サントメチョコの少し粉っぽい舌触り、ほろ苦さ、そして高貴な香りが口の中の感触として突如蘇った。今まで食べたブランドもんのチョコの味、あれはカカオではなく、クリームやナッツやフルーツや洋酒の味だったのだ。

右端の85番がチョコの店。典型的なリスボンの町並み。
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 はるか遠いアフリカの島国からやってきた混ぜ物のない本物のチョコレート。サントメ・プリンシペのチョコは正にチョコのプリンシペ、王子様である。私のような倹約中の食いしんぼだけでなく、世界中のお金持ちグルメから注目され、サントメ・プリンシペ民主共和国の国民がポルトガルに出稼ぎに来なくても十分生活できるようになるといいのだが。
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by caldoverde | 2008-12-23 03:01 | お菓子・カフェ | Comments(10)
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 不況だ不況だと言われているが、アパートの下のスーパーはいつものように人で一杯だし、デパートやショッピングセンターはクリスマスプレゼントを買う人でごった返しているし、とりあえず、今日も世の中は普通に動いている。でもやっぱり景気悪いのかなと感じるのは、以前あった店が他のオーナーに変わっていたり、別の業種になっていたりするのを見るときである。最近も仕事でお客さんとよく行っていたバイロ・アルトのファドレストランが閉店という知らせを聞いた。

 リスボンの夜の観光といえばやはりファドを置いて他にない。スペインにフラメンコ、イタリアにカンツォーネ、ブラジルにサンバ、そしてポルトガルにファド。ファドレストランは食事をしながらショウを楽しめる。レストランは8時ごろから開くが、ショウが始まるのはだいたい9時から9時半の間である。旅行会社の主催するツアーに参加すれば、ちょうど食事がひと段落ついたころショウが始まる。たまにファドを聴きに来たら、踊りが出てきたとおっしゃるお客様がいるが、ファドとともに民族舞踊をプログラムに入れている店も多い。私は正直言ってファドだけだと飽きるし、暗くなるので、明るいフォークダンスで気分転換できるほうが好きだ。リスボンに来たなら、ファドの入門編として食事もドリンクも、歌も踊りもあるファド・ディナーショウに参加してみてはいかが。日本人客の多い店なら、「暗いはしけ」が登場する確率も高くなる。ただし、いつも必ず聞けるわけではない。なぜなら・・・



 日本ではアマリア・ロドリゲスの歌であまりにも有名な「暗いはしけ」は、元々はブラジルの歌だ。メロディーもリズムもファドらしくない。しかし、アマリア・ロドリゲスはポルトガルのものにしてしまった。いや、アマリアのものにしてしまったというべきか。朗々と響き渡る美声、感情移入しすぎて時には歌いながら涙を流すほど豊かな表現力は比類がない。この曲を歌うなら、未だに人々の記憶に残るあの名唱と比較されるのを覚悟しなければならない。また私のような素人が聴いてもかなり難しい曲だとわかる。ファド歌手の誰もが「暗いはしけ」をレパートリーにしている訳ではない。

 場末の酒場で人生に疲れた女が酒とタバコで潰したしゃがれ声を張り上げるイメージのあるファドを、芸術にまで昇華させた偉大な歌手は1999年に亡くなった。アマリアのお墓はアルファマの泥棒市の立つサンタ・エングラシア教会にある。件の閉店となったファドレストランでもアマリアは歌っていたことがあったそうで、店内には彼女の最も美しい時期のポートレートのアズレージョがあった。

 12月初めからアマリア・ロドリゲスの伝記映画がポルトガル全国で上映されている。アマリアの経歴やポルトガルの時代背景を知らないとややわかりにくく、評論家の意見は厳しいが、アマリアを演じた無名の女優さんは口パクながら迫真の演技である。日本でも公開されるといいのだが。


 食べ物の登場するファドというと、私はほんの数曲しか知らないのでこれしか思いつかない。
「ポルトガルの家」Casa Portuguesa という曲で、ポルトガルの家には貧しさの中に喜びがある、愛とパンとワインとカルド・ヴェルデさえあれば・・・と歌っている。不景気だろうが、師走の寒風が吹こうが、この一汁一菜?があれば体もココロも懐も温まる。愛があれば尚可である。
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by caldoverde | 2008-12-13 08:58 | カルチャー | Comments(7)