ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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鮫のスープ

 延々とコルク林の続くアレンテージョ地方の郷土料理と言えば、やはり黒豚を筆頭とした肉料理ばかりと思われがちであるが、意外なことに魚料理もある。世界遺産の町エヴォラの魚市場を覗いたら、ギザギザの歯をむき出したジョーズの頭が売られていた。人間の頭ほどもあるグロテスクな三角形の頭はどんな料理になるのか想像がつかないが、小さな鮫はこの地方の名物のソパ・デ・カサォン(鮫のスープ)に使われる。海など背伸びしても見えない大平原の小さな村にさえ、この鮫のスープをお勧め料理にしているその名もソパ・デ・カサォンというレストランがあった。

 リスボンからテージョ河を越えた対岸のアラビダ半島の南にある港町セトゥーバルには日曜も営業している魚市場があり、そこで小さな鮫カサォンが売られているのを見たことがある。アレンテージョのレストランで供される鮫はこの港からやってくるのだろうか。今でこそ高速道路が発達して内陸でも新鮮な食物が簡単に入手できるようになったが、つい20年ぐらい前の南ポルトガルは曲がりくねった狭い国道やのろくさした鉄道だけだった。港から何時間もかけて運ばれた魚の鮮度は大丈夫だったんだろうかという疑問が湧くが、鮫は腐りにくい魚で日本でも昔から山間部で食べられてきた、ということで納得。

 鮫は淡白な白身で小骨はなく、大きい骨も軟骨で子供やお年寄りにも食べやすい。アレンテージョ料理はコリアンダーやポエージョという香草をよく使う。どちらも独特の香りで肉の臭みをカモフラージュする。この鮫のスープもたっぷりと香草を使う。鮮度が落ちた魚も香草を使うことによって美味しく食べられるように工夫したのかもしれない。また鮫のスープには必ず酢を使う。これもにおい消しのためなのだろうか。しかしそれほど酢の味は感じない。ホワイトシチューをゆるくしたようなマイルドな味である。そしてこの地方のスープやシチューに欠かせないのはパン。それも硬くなったパンの方がいい。でなければ揚げてカチカチにする。皿や鍋にパンを敷いてその上からスープやシチューを注いでテーブルに運ばれる。

 それではポルトガルの女性シェフによる鮫のスープの実演を動画で。材料はオリーブオイル、ニンニク、コリアンダー、塩、鮫、水、小麦粉、酢、固いパン。



 ダイナミックだ。分量も時間もほとんど適宜、といった感じである。レポーターが引っ張り出してきたのは巨大なコルク容器で、これに暖かい食べ物や冷たい飲み物を入れると適温が保たれるという元祖ランチジャーである。アレンテージョの土産物屋にこれの小さいものが売られている。

 リスボンのホテルの最上階の眺めの良いレストランで食べた鮫料理は更にデリケートな味であった。鮫の肉はとても柔らかくて口の中でとろけるようだ。新鮮で魚臭さがまったく感じられない。ソースのコリアンダーも控えめで、コリアンダー嫌いの人でも美味しく食べられるはずである。でもこの盛り付け、やっぱりポルトガル、かなあ。
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by caldoverde | 2009-02-27 09:32 | シーフード | Comments(6)

ポルトガル人とカフェ

 先の日記で「グロッソ」という名前のお菓子について書いたが、実は重大な間違いがあることが発覚した。速やかにとは言えないが(知ってから三日後に書いている)訂正してお詫びする次第である。正しい名前は「ニーニョ(鳥の巣)」と言う。どう見たってこれは鳥の巣だ。それ以外に考えられない。いかにして私はninhoをgrossoなどと聞き違えたのだろうか。どなたかこのカフェで「グロッソ下さい。」と注文しては店の人に「はあ?」と何度も聞き返され、目的を達成することができなかったのではないかと心配している。
グロッソ改めニーニョと申します。
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 私も三日前よほど「グロッソ下さい。」と注文するところを一抹の不安と言うか、何か私を制止する直感みたいなのものが働き、おじさんに「これ下さい。」と頼んだ後「これは何と言う名前ですか。」と確認した。そうしたら「に~にょ」とにちゃにちゃした答えが返ってきた。「へ?」「に~にょ」「へ?」「に~にょ」と押し問答が繰り返され、見かねた隣のご婦人が私に「ほら、鳥が卵を産むあれよ。」と教えてくれた。おじさんは紙切れにninhoと書いてこの訳の分らぬ東洋人の女に渡してくれた。私は親切なこの二人に日本人の特技であるごまかし笑いを最大限に振りまいた。
我輩はお菓子である。名前は知らない。
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 ポルトガルに住むようになって10年でこの始末、何とかしなくては。それでも最近は集中すればポルトガル人の会話をなんとか傍受できるようになった。しかし気を緩めると雑音にしか聞こえない。ブラジルポルトガル語から入った私にとってヨーロッパのポルトガル語は東北弁のような訛りの聞き取りにくい言葉である。日本には初級ブラジルポルトガル語の教材は沢山あるのだが、中級以上の、そしてポルトガルのポルトガル語を対象にした教材は少ない。先日近所の本屋でCD付きのポルトガル語のテキストを購入した。これが結構面白い。CDは一般の人々がノーマルスピードで自分の体験や意見を述べたもので、日常生活においてよく話題になるようなテーマが取り上げられている。中にはポルトガルに住んでいる外国人の文法上あやしいスピーチもあって興味深い。まるでカフェで普通の人々にインタビューしているようだ。
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左がCD付きポルトガル語教材「PORTUGUES em DIRECTO」 Helena Lemos著 出版社www.lider.pt 右の「CUIDADO COM A LINGUA」www.oficinadolivro.ptはTVのポルトガル語の語源やことわざなどをテーマにした5分間番組を収録し、活字化したもの。生きたポルトガル語を学びたい方は参考になると思う。

 カフェで人々はどんなことについて話しているのだろう。仕事、恋愛、政治、サッカー、故郷、子供、趣味。カフェはわずか50~60セントのコーヒーで時間と空間を提供してくれる。ランチタイムを除けば1時間や2時間読書しても、パソコンを使って仕事や勉強をしてもほとんど誰も咎めない。有名人であっても特別気を使われたり干渉されることはない。先日は私が映画を見るためによく行くリスボンのごく一般的なショッピングセンター内のカフェでポルトガルの首相が軽食をとっているのに遭遇した。総理大臣も映画を見に来たのだろうか。ジョゼ・ソクラテス首相は離婚しているが数年間お付き合いしている女性がいて、最近彼女と一緒にいる写真が週刊誌の表紙になったのであるが、その日は恋人と友人の女性と三人で特に人目憚ることもなくお茶していた。店の人も他のお客さんも知ってか知らずか、無関心な様子であった。
外国では「アルマーニのスーツの似合う首相」と言う評価あり。この黒いジャンパーもアルマーニかな。
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 ポルトガルにいれば、誰かとコミュニケーションをとりたいとき、逆に一人になりたいとき、勉強や仕事に集中したいとき、逆にリラックスしたいとき、甘いものが大好きな人に、逆に苦手な人に、カフェはすぐ傍にある。年末のニュースで、コメルシオ広場のアーケードで雨露をしのぐホームレスに、売れ残ったお菓子やパンを届けるカフェの経営者の家族の姿が映し出された。30代半ばの主人と奥さん、二人の子供たちはお店が終わるとお菓子の入ったプラスチックの箱を抱えてコメルシオ広場に通う。不況の真っ只中、工場の閉鎖や大量解雇のニュースが連日のように報道される今日この頃であるが、どんなに苦しくてもポルトガル人の心を温めるカフェがなくなることはないだろう。
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これは例のカフェにある「鹿の蹄」と言うお菓子。シロップに浸したスポンジの周りを黄身クリームで覆い、側面はココナッツをまぶし、上部にシナモンで一筋の線を描く。
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by caldoverde | 2009-02-05 21:11 | お菓子・カフェ | Comments(12)