ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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<   2009年 06月 ( 3 )   > この月の画像一覧

黴寺の鶏雑炊

 私を含めたやまとなでしこ三人が、先日鴨を食べたあの店で夕食を取ることになった。鴨のオレンジ煮込みが美味だったので、また今日もあるかしらと期待しながら、夕方の買物や家路を急ぐ人々で賑わうチリ広場付近で待ち合わせをした。ところが鴨になったのは私たちのほうだった。

 少し遅れてやってきた友人を見つけて、もう一人の友達がスタスタと人を追い抜くように先に進み、小さな交差点のあたりで二人が出会ったところ、地面にカラカラーンと何か小さな金属ケースみたいなのものが転がり、私が一瞬それに気をとられている間、先に歩いていた友達は雄たけびをあげながら自分の財布を掴んでいた。何事かと思ったら、彼女の周りに二,三人外国人風の男たちがいて、その中の一人が彼女のポシェットから財布を盗ったのだ。なんと彼女は果敢にも反射的に携帯電話で泥棒の頭にパンチを食らわせ、泥棒は折角盗った財布を落とし、それをすかさず持ち主が奪い返したのだ。被害にあった友人によると、犯人は二人か三人組でそのうちの一人が彼女のジーンズの裾を掴んでパタパタと動かして気をそらせ、別の一人がポシェットから財布を抜き取るという手口だ。彼女は足フェチの新手の変態か?と思ったそうである。地面に落ちた金属缶もまた小道具のひとつだったかもしれない。

 幸い友達に実害はなかった。実害のあったのは携帯で殴られた泥棒のほうだった。標的は三人のうちで一番ぼおっとしている私でも不思議ではなかったが、金は持ってなさそうだと判断したのだろう。プロの泥棒は大金(ポルトガルでは百ユーロ=13000円でも大金)を持ち歩く獲物を嗅ぎわけるもので、私も近所の漫画家ヤマザキさんもそんなときに限って被害にあっている。ポシェットの斜め掛けは狙われやすい。ウエストポーチも然り。半ズボンのももの部分についているポケットから大金を盗られたという旅行客もいた。そんなところにお金をしまうのもどうかしているが。私はそのうちダミーのポシェットや空の財布を持って市電28番に乗り、自ら鴨となってスリの手口を研究したいと思っている。

 残念なことにその日はあの美味しい鴨のオレンジ煮はなく、いつでもどこにでもあるような平凡なメニューだった。こんなときは選ぶのに時間がかかる。いつでも食べられるけどめったにあるいは絶対に頼まないものもあるのだ。初めから好きでないもの、もう既に味がわかっているもの、以前食べたことがあるが美味しくなかったものなど。鴨になりそこねたというか食べそこねた三人は、やや仕方なくという感じで、モンゴウイカのグリル、小鰺の唐揚げ、鶏雑炊を頼んだ。
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玉葱のみじん切りの下にモンゴウイカが隠れている。プリッとしてとても美味しかった。

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カリカリ、熱々の小鰺の唐揚げはビールにぴったり。

 モンゴウイカと小鰺はアレルギーやよほどの魚嫌いでない限り、日本人には一般受けのする無難なメニューといえよう。しかし鶏雑炊を積極的に選択する日本人は非常に少ないと思われる。どんな料理か知らずに注文した日本人は料理がテーブルに運ばれてきた瞬間100%後悔するだろう。

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・・・こりゃ後悔するわ

 ARROZ DE CABIDELA DE GALINHA(略してカビデラ)は米をぶつ切りにした鶏肉や内蔵とともに血とワインで煮込んだどす黒いどろどろの料理である。ヤツメウナギのリゾット並に見た目が悪い。血が凝固しないように酢を加え、その酢の風味がリゾットの味の特徴にもなっている。それに加えて赤ワイン、北部なら特産の赤のヴィーニョ・ヴェルデを使って煮込むので更に酸味が増す。この酸味が好きか嫌いかでもこの料理に対する評価が違ってくる。酸っぱい料理が好きな人には美味しく、酸味が苦手な人には好まれない。でも全く酸味がないと味にメリハリがなくなって、ギトギトと油っこさが前面に押し出されるだろう。私はこの鶏雑炊はちょっと酸っぱめのほうが美味しいと思う。
 鴨の煮込みが美味しかったこの店の鶏雑炊は期待にたがわず、前回同様味が見た目よりもはるかに勝る出来栄えだった。ほどよく酸味を利かせながら肉のうまみを十分に吸ったご飯、しっかり下味をつけて柔らかく煮たコクのある鶏肉。十何年か前に食べた鶏雑炊がいまいちで、それきり外では食べたことがないという友達も舌鼓を打っていた。
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あなたはこの三つの料理の中からどれを選びますか?

 ポルトガルでは日本の飲食店の醤油と同様にテーブルにはオリーブオイルとビネガーが付きもの。ない場合はお店の人に頼めばすぐ持ってきてくれる。鶏雑炊の酸味が足りなければビネガーで酸味を補充することもできる。今はポルトガルの法律によって、飲食店で使われるテーブル用のビネガーやオリーブオイルは、他の容器に詰め替えてはだめで、メーカーのラベルのついた瓶のまま出さなくてはならない。容器に入れ替えて古い油や酢を新しいものと混ぜることにより鮮度や品質を落とさないためだろう。美味しいビネガーやオイルに出会ったら、ラベルのブランド名をメモして後でスーパーで同じメーカーのものを探すとよい。
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by caldoverde | 2009-06-30 03:31 | パン・ご飯 | Comments(11)

鴨がオレンジ背負って

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 美味しい中華料理店は、中国系のお客さんが多いか少ないかで判断できる。中国人のグループが何組も食事していたら、そこは美味しい可能性が高い。ただし一組だけだとその店の従業員かもしれないので、何とも言えない。行く度に必ず何組か中国人のお客さんの入っている、比較的安くて美味しい店が、チリ広場の近くにある。飲茶系の小皿料理が豊富で、北京ダックやイセエビのチリソースなど本格的な料理も手ごろな値段である。北京ダックは皮だけでなく肉も美味しい。頼めば鴨チャーハンにしてくれる。

 ポルトガルの鴨料理といえばアロース・デ・パト(鴨飯)。ちゃんと作ると結構面倒な料理だからか、リスボンで定番メニューにしているレストランは少ない。今まで食べて美味しかった鴨料理はヴィゼウの鴨飯ブラガの鴨ステーキフォアグラ添え。このブラガのお店は最近ポルトガル版ミシュランに掲載された。値段は15ユーロくらいだったが、もしリスボンで食べたら20ユーロ以上するだろう。

  北部に行かないと鴨は食べられないのかと思っていたら、地元に美味しい鴨料理を出すポルトガル食堂があった。魚どころかウサギや仔豚も自ら解体し調理するスーパーグルメコメンテーターMOREIAさんお勧めの家庭料理レストランで、場所はあの安うま北京ダックの中華屋のあるチリ広場からほど近い、賑やかな通りから一歩入ったところにある。

 その日は月曜なのであまり魚は期待せずにメニューを開いたところ、本日のお勧めに鴨飯と鴨のオレンジソースが筆頭に挙がっていた。珍しく鴨料理が二品、しかもフランス料理みたいな洒落たもんがという意外さと、チキン並みの値段の安さに惹かれ、私とMOREIAさんはこのオレンジ鴨一人前を二人でシェアすることにした。

  オレンジ果汁にワインやブランデーを加えて煮詰めたソースを皿にのばし、その上には刺身のように薄く切った鴨肉が扇状に盛り付けられて、外側は焦げ目がついて中はロゼの絶妙な焼き加減を見せている…という映像を頭に思い浮かべながら待った。が、「鴨のオレンジソース」はてんこ盛り伝統的ポルトガル料理だった。肉料理にお約束のフライドポテト、そしてチョリソやベーコンの小片の混じった鴨抜き鴨飯のようなピラフがどっさり添えられている。ご飯とポテトにの中に鴨の腿肉が埋もれ、オレンジの薄切りが無造作に添えてある。

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 ところがナイフを入れるとたちまち肉が骨から外れる柔らかさ。あらかじめ揚げて脂肪を落としたのかしつこさがない。肉は臭みがなくしっかりと下味がついている。鴨はグリルではなく煮込んだものらしい。鴨の肉汁が染みたポテトやご飯がまた旨い。もうちょっとご飯が香り良く炊けていて、ポテトに肉汁がたっぷりかかっていたら、一人で全部平らげる危険があった。

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 隣の家族が注文した鴨飯を見ると、楕円のキャセロールに盛られた炊き込みご飯の上には裂いた鴨肉が小山になっている。正統派(?)鴨飯は表面に卵黄を塗りチョリッソやベーコンを飾りオーブンで焼くので、鴨肉はご飯の中に隠れて表からは見えない。ひょっとするとこのお店の鴨飯とオレンジ鴨は元は同じもので、形を変えただけなのかも知れない。調理を簡略化してこのようなコストパフォーマンスを実現したのだろう。
 見た目は想像していたものからかけ離れていたとは言え、味は見た目以上、値段は想像以下だったので鴨がネギを背負って来た如く十分満足であった。
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by caldoverde | 2009-06-17 21:41 | 肉料理 | Comments(4)

ジャカランダより団子

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アルファマのサン・ヴィセンテ・デ・フォーラ教会とジャカランダ 

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 例年はリスボンでは五月の半ばから六月の初旬が一番見ごろのジャカランダは、今年は温暖化のせいか少し早めに咲き始め、六月九日現在花をつけている木はわずかになった。世界三大花木のひとつに挙げられるほど、満開のジャカランダは美しい。フリージアのような形のリラ色の花が房になって咲く姿は、遠目には藤色の桜かと思うくらいである。花は色あせぬまま地面に落ちて薄紫の木陰を作る。
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 日本人ならジャカランダ前線を予報したり、川の堤に植えてお花見の名所にしたり、ジャカランダ園などを作り入場料を取って見せるはず。
 ところがジャカランダがどんなに見事に咲いていようが、ポルトガル人が、①口をあけて呆然と花に見とれていたり、②写真を撮っていたり、③団体で訪れたり、④満開の木の下で弁当を食べ酒を飲んでいる姿は全く見られない。私は特に花を愛でる風流人ではないが、ジャカランダの花が咲けば必ず①②は行う。③は仕事でする場合がある。④は乗ってくれる仲間を探す前に花が終ってしまう。ポルトガルは花の名前を覚えたり、花を見にどこかに出かけたりするような人の割合は少ないと思う。だからポルトガル人に花の名前を尋ねても無駄である。
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 ジャカランダの花が散ってもののあはれを感じるポルトガル人はいるだろうか。むしろ、さあ夏がやってくる、海だ、バカンスだと意気込む人のほうが多いと思う。ジャカランダをイメージしたお菓子や飲み物、料理があるだろうかと思ったが、こんなところにある訳がないだろうと断定し、探す努力もしなかった。せめてジャカランダを見ながらコーヒーを飲んだり食事の出来る場所でもリサーチしておけばよかったが、つい行きつけの店にいってしまう。そうしているうちに花がほとんど散ってしまった。

 来年はセレブを招待し初夏の園遊会を催し、参加者は薄紫のものを着用、ジャカランダの咲く庭でお汁粉を食べ、はらはらと花の散る木の下でシソの葉で巻いたおにぎりを頬張り、夜桜ならぬ夜ジャカランダを見ながら紫色のカクテルを賞味するという企画を思いついた。ただし参加者は酔っ払って全裸にならないように注意すること。
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by caldoverde | 2009-06-10 07:54 | 動植物 | Comments(5)