ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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<   2009年 07月 ( 5 )   > この月の画像一覧

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 ファイアル島の中心は火山の噴火口がくぼ地になっているカルデラだ。頂上近くの展望台までは車で行くことができる。そこで降りて人しか通れぬ細いトンネルをくぐり抜けると、いきなり巨大な緑のすり鉢の淵に立っている。いつも雲のかかった山頂のくぼ地は湿気が多く、様々な苔のような植物で覆われている。よく見ると底には更に小さな火山の噴火口がある。雨の多い時期にはくぼ地は湖になり、小さな火山は小島になる。箱庭のような世界だ。山の斜面を走る道にはアジサイの生垣が続き、また杉林もたくさんあり、通り過ぎるたび爽やかな香りがする。
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 タクシーでオルタから景色のきれいな所を随所立ち寄りながら島の中央のカルデラに登り、その後カペリーニョス火山でタクシーを降りて観光し、2時間後また火山に戻ったタクシーでピコ島行きのフェリーの出る港に行き終点、という島の南半分を巡るツアーは正味3時間、70ユーロだった。

 ピコ島から折り返しのフェリーが港に着くと、下船する客、乗船する客、出迎えや見送りの人たちで賑やかになったが、日本人は見当たらない。それなのに誰かが私の名を呼んでいる。振り向くと以前一緒に仕事をしたことがあるポルトガル人のガイドだった。彼女はピコ島から来る便でファイアル島に降り立ったところであった。こんな大西洋のど真ん中で知り合いに会うなんて世の中は狭い。

 ピコ島とファイアル島の間はわずか7キロ、30分ほどの船旅だ。フェリーが着くマダレーナは、教会を中心に伝統的な建物がちまちま並ぶ典型的なポルトガルの小さな村だ。港にはやはり鯨見物のボート屋が軒を連ねている。さて、港に着いたは良いが、泊まるところを未だ決めていない。フェリーの待合室の隣にある観光局で、個人の家を旅人に提供するゲストハウスのリストをもらい、一番部屋数の多い家に電話をかけてみた。部屋はあり、なんと次のフェリーが来る時間に車で迎えに来てくれるという。たぶん港で私のように寝る所を決めずにやって来た人たち相手の営業も兼ねてだろうが、ポルトガルにしては珍しいサービスの良さだ。
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 築200年の住宅を最近改装したというゲストハウスは、前は海とファイアル島、後ろは富士山ならぬピコ山を望む素晴らしい環境の中にある。建物はきれいに塗り直され、室内は松の木をふんだんに使った温かみのあるインテリアである。バス・トイレは共同だがシャワーではなく大きなバスタブ付き。朝食も付いている。1泊40ユーロだが、連泊すると2泊目から35ユーロになるというので2泊することにした。村の中心からは少し離れてはいるが、途中こんな小さな村に似つかわしくない駐車場つきショッピングセンターがある。ファイアル島ではとんと見なかったスーパーである。よく見るとゲストハウスの周囲には、比較的新しい立派な住宅が多い。オルタの町に比べるとリッチな感じがする。この島はお金持ちの別荘が多いのだろうか、それとも外国で働いて財を成した移民が故郷に錦を飾っているのだろうか。
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 その日の夜はガイドブックに載っていた、マダレーナのワイン組合の隣にあるレストランで夕食をとった。この辺にしかない珍しいものをと期待したのだが、残念ながらそれほど目新しいものはなかった。「クエ」や「スズキ」など、定番の魚ばかりだ。しかし前菜にリスボンではアソーレスレストランでしかお目にかかれない「ラパス(カサガイ)」があったので、それを半人前頼み、メインはステーキにした。
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 ファイアル島とピコ島のどのレストランでもお通しに必ず出てくるのが、ピコ島のチーズ。これは非常に美味しい。私のランキングではポルトガルのチーズの中で2番目に美味い。中は淡い黄色で、匂いはそれほど強くない。弾力があってしかもクリーミー、軽い酸味のあるマイルドな味わいで、チーズ嫌いの人にもたぶん大丈夫。テルセイラ島の強烈な古漬けの匂いのするチーズとは全く違う個性である。
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by caldoverde | 2009-07-29 07:40 | ポルトガルの旅 | Comments(3)
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 午後からは天気もやや回復し、オルタの町の観光スポットを訪ね歩いた。オルタはテルセイラ島のアングラ・ド・エロイズモと同じように、噴火で出来た半島がぴょこっと飛び出している。欠けた輪のような形の小山で、島と皮一枚でつながっている。つながっている首のところにかつての鯨の加工工場、現在は海洋センターとなっている建物がある。
 アソーレスはかつて捕鯨基地だったが、30年ほど前にポルトガル政府が捕鯨を禁止した後は、ホエールウオッチングを観光の目玉として前面に押し出し、欧米からの観光客を獲得することに成功した。私は外国人と鯨で議論するのは避けたいし、確実に鯨が見られるか疑わしいのでホエールウオッチングボートには乗らなかった。
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 しかしポルトガル人がどのように鯨を捕まえどのように利用していたのかは幾分興味があったので、海洋センターに行ってみた。ピム湾に引き上げられた鯨は、頭を化粧品に、脂肪を石鹸に、骨は工芸品に、肉はなんと畑の肥料に加工されていたそうだ。ああ、もったいない。ポルトガル人にとって鯨肉は硬くて不味かった。ま、他に美味しい牛や豚や羊がいるので、無理に鯨を食わなくても良かったのかもしれないが。
 かつて鯨の血で赤く染まったピム湾は、今では穏やかな海水浴場になっている。ファイアル島では珍しいベージュ色の砂浜だ。

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 世界中のヨットが集うマリーナは、寄港記念にヨットマンが描いたカラフルな絵で彩られ、白いマストの林の向こうからピコ島が見える。港の近くには有名な「ピーターズ・カフェ・スポーツ」があり、観光客がビールを飲みながら歓談している。二階はスクリームショウという、鯨の骨に精巧な絵をかいた工芸品を展示する小さな美術館がある。高さ10cmほどの鯨の牙?にアソーレスの人々の生活を描いたもの、精巧な小さな彫刻など興味深いものが並んでいる。カフェの隣には同じ名前のギフトショップがあって、ここのTシャツはいいよと友達に教えてもらった。確かにデザインは可愛いし値段も手ごろだ。ただし鯨の骨細工はとても高い。
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 そのほか市内で興味深いところというと修道院の中にあるオルタ市立博物館。ここには珍しいイチジク細工のコレクションがある。私も初めてそのような工芸品の存在を知った。この島で生まれた人物がイチジクの枝の中身の白い部分を使って非常に精巧な船の模型や建物、人物や植物のミニチュアを作り、その作品のいくつかは万博で賞をとった。髪の毛とほとんど同じ太さのロープや網、紙のように薄い植物の葉1枚1枚が再現された、気の遠くなるような根気の要る仕事だ。博物館は撮影禁止なので、どんなものかお見せできないのが残念。

 モダンな州議会議事堂も見学ができる。若い女性が建物を案内し、一般的な質問にも答えてくれる。建物のデザインや材質、議会室のカーペットや絵画は全てアソーレスの地理、歴史、文化を表しているのだそうだ。当然島の間には経済格差があるだろうと思い、テルセイラ島に比べるとファイアル島はちょっと沈んでますね、と正直な感想を述べると、彼女は、テルセイラの人はアソーレス一陽気で、建物もあんなに派手で、闘牛や祭りも盛んなのです、と答えた。もしかすると彼女はファイアル島出身かもしれないので、ここがなぜうらぶれた感じがするのか突っ込むのは遠慮してしまった。

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 それはおそらく火山の噴火の影響だろう。1957年から58年にかけてファイアル島西部は活発な火山活動に見舞われた。海の中から蒸気が噴き上がり火山が現れ、溶岩が流れ、火山灰が降り注いだ。付近の集落は灰に埋もれ、家も農地も失った人々は故郷を捨ててアメリカやカナダに移住した。この噴火によってファイアル島は島民の数が半減し、以来失われた人口を回復することはなかった。
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 その自然の驚異をまざまざと見せてくれるのが、島の西端のカペリーニョス火山。ほとんどが緑に覆われたファイアル島の先端に、黒い砂丘が突如出現したような、巨大な鯨が陸に揚がったような、とてつもなくシュールな風景である。火山灰の小山のそばには砂に半分埋もれた灯台の廃墟が残っている。実はこの下に火山センターがあり、地球の誕生から大陸の形成、なぜアソーレスには火山が多いかなど説明する映写室や展示室があって、非常に興味深い。もちろんカペリーニョス火山の誕生も克明に記録されている。不幸中の幸い、この噴火による死者はなかったそうだ。
 財産を全て失い、生きるために故郷を後にしたアソーレスの人々は、大航海時代、荒波を漕ぎ出し未知の土地を目指した勇敢なポルトガルの船乗りのDNAを確実に受け継いでいる。
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by caldoverde | 2009-07-27 07:21 | ポルトガルの旅 | Comments(3)
  あんなに美しいピコ島を拝むことができたのだから、翌日も良い天気になるだろうという漠然とした信頼は、明け方の激しい雨音によって打ち砕かれた。アソーレス諸島はいつでも曇り時々晴れ、所によってにわか雨と何でもありの天気であるが、出発前にインターネットで私が滞在する週の予報を見ると珍しくオール晴れ。傘は持たず代わりに軽くて小さくたためるナイロンのパーカを用意し、機内は寒いかもしれないと考えて長袖のTシャツを着て出かけ、リスボンで常用する薄いTシャツばかりを着替えに持っていった。ところがやはりアソーレスはリスボンより気温が低い。何か1枚カーディガンのようなものを持って来るべきであった。
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  昨日はくっきりと二等辺三角形の稜線を見せていたピコ島は雨雲に隠れて全く見えない。このような日は博物館などインドア系の観光に焦点を絞らざるを得ないが、傘なしでは出歩く気も起きないので、まずはあまり濡れずにすむ宿の隣の市場をのぞく。マデイラ島の華やかで活気に満ちた市場に比べると、なんともしょぼい市場だ。野菜や果物の品揃えは、リスボンの小さな八百屋よりも貧弱だ。魚部門はひとつの業者しか店を出していない。リスボンでもおなじみの太刀魚やペスカーダ、クエ、鯛の仲間が2,3種類、去年テルセイラ島で食べた、のどぐろという赤い魚にウツボ、ロカスというカサゴの仲間らしい鮮やかな赤い体に金色の目を持つ体長40cmほどの魚が売られていたが、寂しい品揃えだ。ここは島で、島の主要な産業といえば漁業ではないのか?唯一の魚屋の奥さんに、市場はいつもこんなんですか?と訪ねると、そうよ、という答えだった。
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  それにしてもあの大きなカサゴは美味しそうだった。宿にキッチンがあったら買って料理するところであった。私は魚をさばくのは全くだめだが、ポルトガル流なら出来る。煮立ったお湯に塩を入れ魚を茹でて、オリーブオイルをかけて食えばいいのだ。でも出来れば炭火焼が食べたい。カサゴの炭火焼を食べさせてくれるレストランはないだろうかと、付近のレストランを覗いてみたが、どこにもROCAZをメニューに入れているところはなかった。なければ何か変わったものがあればいいのだが、リスボンでも食べられるCHERNE(クエ)ばかりで、特に食指をそそるものがない。地元の人たちで賑わう安くて美味い大衆食堂だったら理想的なのだが、町にいくつもない飲食店はどこも暇そうな活気のない様子で、私のハートをがっちりと掴むような魅惑的な店はなかった。

  結局、空港から乗ったタクシーの運転手が「値段を問わないのなら」と言いながら推薦したBARÃO PALACE というレストランに行ってみた。町はずれの黒い海岸のすぐそばにある田舎の結婚式場みたいな建物である。ここがオルタで一番いいレストランだそうだ。昼はビュッフェ形式で前菜、肉料理、魚料理が数種類あり、好きなものを自分で取って食べる。品数は歓声をあげるほど多くないけれど、悪くなさそうだ。
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  まず前菜。ファイアル島名物素揚げの里芋と鱈のコロッケ。スープもある。
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  サラダのビュッフェにはトマトのサラダやグリーンサラダのほかに、鱈とヒヨコマメのサラダ、白身魚とグリーンピースのサラダ、ツナとマカロニと桃缶のサラダなどボリュームのあるものが。前菜の食べすぎに注意!
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  肉料理は豚の骨付きあばら肉、アレンテージョ風のミガスを添えた豚ロース、プラムと粒胡椒をアクセントにした豚ヒレと豚肉ばかり選んだ。他に鶏か羊もあったと思うが、美味しそうだったのはこの三つの豚肉料理だった。
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  魚はマグロのグリル、鱈の玉葱ソース、赤魚のフライ、クエ?にカニソースをかけたもの。どれもそこそこ美味しい。一番美味しかったのは鱈の玉葱ソース。鱈料理はポルトガル全国で食べられるが、ほんとに美味しいものに出会うことはめったにない。赤魚はもっと大きく切って欲しかった。オリーブオイルがちょっとしつこい。逆にマグロはあっさりしすぎなので、テリヤキソースが欲しいところ。白身魚にのっている赤いものはカニカマかと思ったら、本物のカニでした。
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 食事はデザートをとるためにある。プリン4種、チーズケーキ1種。チーズケーキはなんとなくチーズケーキの素を使用している感じなので敬遠し、プリンに的を絞る。
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 チェリーが飾られているのはココナッツプリン、奥はアーモンドプリン。
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  手前はフィラデルフィアクリームチーズ・プリン(こちらの方がたぶんチーズケーキらしい味)、黒っぽいのは郷土色たっぷりの蜂蜜プリンで1日分の糖分・カロリーはおつりがきそう。
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  ビュッフェは食事6,50ユーロ、デザート3ユーロ、コーヒー1ユーロ、一番高いのがワインで7ユーロ、合計17,50ユーロだった。6,50ユーロで食べ放題は安いし、味も良く、眺めも良く、サービスも感じが良い。夕食も食べてみたかったが、次の日の夜まで持ちこたえられるほど食べてしまい、再びこのレストランに訪れるチャンスはなかった。
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by caldoverde | 2009-07-23 18:28 | ポルトガルの旅 | Comments(0)
 二年連続でアソーレス諸島を訪ね、温泉に漬かりたらふく食べた私は、いつしか九つの島全てを征服する野望を抱くようになった。サン・ミゲル島やテルセイラ島にあんなに色んなうまいものがあるのなら、他の島にも珍しい魚やお菓子があるに違いない。ぜひ行って確かめたい。その衝動は5月にインターネットで7月の航空券を購入、しかも5泊6日という、節約中の私にとって長期の旅行になる切符を買ってしまうという暴挙を取らせた。約180ユーロという比較的安い切符を見つけたときは「ラッキー!」とばかり即予約し、宿のことは全く念頭になかった。後から考えたら、まともなホテルに泊ろうと思えば最低1泊80ユーロ、5泊で400ユーロかかるではないか。食事代や島内を移動する交通費も必要だ。旅行会社が扱うパッケージツアーの値段をはるかに越えてしまう。何とか安い宿泊施設を見つけ、浮かした分を食費に充てなくては。たまたまインターネットで1泊25ユーロ(3000円ちょっと)という破格のペンションを見つけたのでとりあえず二泊予約し、それ以降は成り行きで探すことにし、月曜日の朝8時の便でリスボンからファイアル島のオルタに向かった。



噴火口の上に更に小さな山のあるポルトガルの最高峰ピコ。

 高いところもスピードも好きでない私は、当然飛行機は苦手で、座席は基本的に景色の見えない通路側を選ぶ。しかしアソーレスに行くなら絶対窓際に限る。ファイアル島に近づくと、隣のピコ島の勇姿が現れる。日本人なら「あ~たまをく~も~のう~えにだ~し~」と心の中で歌わずにはいられない。この感動的な光景を見るためにオルタ行きの飛行機に乗る価値は十分ある。
 下に見えるファイアル島は様々なトーンの緑で継ぎはぎされたような牧場で覆われ、大地のにきびのような大小の噴火口跡は数え切れない。街道に沿った家並みがおもちゃのように愛らしい。
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 空港からオルタの町までは基本的にタクシー。話好きの女性ドライバーは途中に見える集落や海岸、山を紹介しながら、オルタの街はずれにある1泊25ユーロの安宿に送ってくれた。一応色んな店の並ぶ商店街に面し、そばに市場、薬局、ATM、タクシー乗り場、食料品店、カフェ、レストラン、地場産品を売る店などがあり、まあまあ便利な場所にある。入り口から数十メートルで海、それもピコ島がヨットハーバーに遮られずきれいに見える。街の外に向かって歩けば突き当たりの断崖の下に黒い砂の海水浴場がある。
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黒い砂のコンセイサン海岸から夕日を浴びるピコ島を望む。
まさに赤富士。

 25ユーロの宿は、建物に囲まれた中庭のような空間に、周りの建物の壁を利用して建てた長屋のような部屋が4棟づつ向かい合っている。中央はアジサイの植えられている花壇があり、各部屋の軒下は物干しになっており、宿で使うタオルやシーツが干されている。当然日当たりも風通しも悪く、部屋は梅雨時期の締め切った家のような淀んだかび臭い匂いがする。
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 写真ではキレイに見えるが、家具はいかにも安物の合板製。開いた箪笥の奥が壁の色と同じなのは箪笥の裏側に板は張っていないということだ。毛布もシーツも色あせた相当古いもので、タオルに至っては穴が空いていた。それでもベッドはダブルで、テレビも付いている。洗面所のシャワーはアクリルのドアで仕切られタイルのたたきの付いた、比較的広いシャワー室で、床が洪水になる心配はない。管理人はいつも不在で代わりに気性の荒い猫が番をしている。リュックを背負って地球の歩き方を片手に鉄道やバスで旅をしていた20世紀の若者には上等な宿だが、繊細で潔癖症の平成時代の若者にはお勧めしない。
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 ちょうど昼頃オルタに着いたので、さっそくファイアル島の郷土料理の昼食をとるべく、レストランを探しに通りに出た。宿から50mくらい離れたところに居酒屋風のレストランがあり、そこで島名物の血のソーセージ里芋添えを食べた。といってもリスボンで食べる血のソーセージと味は大差ない。じゃがいもの代わりに揚げた里芋が添えられているところがアソーレス風なのだ。里芋は粘りは無いがほくほくして旨い。しかしあくまで腹を膨らませるための肉のつけ合わせといった位置づけで、独立した里芋料理はないようだ。里芋の煮ころがし、イカと里芋の煮物、豚肉・里芋・千切りのごぼう・人参・大根・糸こんにゃくを味噌仕立てにした豚汁、美味いのになあ~!
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パンはアソーレス特有のとうもろこしから作る平べったいパン。美味しそうだったが腹が膨れるのでパス。
ワインは自家製のハウスワインだが・・・まずい。ビンに入ったワインを飲むんだった。

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by caldoverde | 2009-07-22 04:00 | ポルトガルの旅 | Comments(4)
 いつも通る道の角にある「郵便局」という紛らわしい名の極々平凡なレストランの看板がいつの間にか外されていた。ここもこの不況に持ちこたえる事ができなかったんだと、同じ境遇の我が身も重ね合わせ、ちょっぴりやるせない気持ちになった。ところがいつの間にかその店は黒を基調とした洗練された店構えに改装されていて、通りに面したガラス張りのテラス席から奥をのぞくと、棚には同じ本が何冊も飾られている。表紙の写真の人物はどこから見ても典型的なポルトガルのおっさんという風情の男性である。彼こそ知る人ぞ知る、知らない人は全然知らない、炎の料理人ヴィトル・ソブラルである。私は本屋でよく見るこの料理本によって、おぼろげに彼の顔と名前を思い出せる程度で、実際に彼の料理を食べたことはない。彼はコメルシオ広場の高級店の主任を辞し、私の住むカンポ・デ・オリーク地区に、伝統プラス創作を加味した料理をリーズナブルな値段で提供するこのタスカ(居酒屋)を開いた。その名はタスカ・ダ・エスキーナ(街角の居酒屋)。
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左の赤い建物の一階が新しく出来た有名シェフの店、TASCA DA ESQUINA、左の坂を下るとエストレラ大聖堂。右端のグレーのビルの一階が昔からあるカフェ、CANAS。右奥に進むと市電28番終点プラゼーレス墓地。

 折しも同僚の間で食事会をしようという話が出ていて、早速出来たばかりのその店に行ってみましょうと意見はまとまった。ところが電話で予約しようとしたら、昼は十二時半、夜は八時きっかりの予約しか受け付けていないという返事。それ以外の時刻は、運良く空席があれば入れて、なければ空きが出るまでじっと待てということらしい。案の定私たちが店に着いた土曜日の午後二時は、まだまだ週末の昼食をゆっくり楽しむ客で満員だった。店のお兄さんはあと30分待てば…と言うので、それではその辺のカフェでビールでも飲みながら待ちましょうと一旦引き下がることにした。
 私たちは仕方なくすぐ隣にある、この地区ではほとんど老舗で、タクシーの運転手にも店の名を言えばすぐにわかるようなカフェ兼レストラン「カーナス」に入り、生ビールを飲みながら待った。30分ほど経って再び空席があるかどうか聞きに行ったところ、あと25分ほど待っていただければ…という返事だった。これは飲食店が満席時に予約なしでやってきた客に使う常套句だそうだ。25分後に行けばまた、25分後に席が空くかも知れませんと言われるのは火を見るより明らかであった。

 時間つぶしのために入った「カフェレストラン・カーナス」はポルトガル人が絶対働きたがらない祝日も営業している数少ない店で、ある年の元日は、行きつけのカフェが休みで禁断症状を起こし、香ばしいコーヒーの香りに惹かれて別の縄張りからやって来た蟻のように群がる人々をさばくために、番号札を配布していた。そんな訳で私にとってこの店は、日曜祝日も夜の十一時過ぎまで開いている便利な店という認識はあっても、美味しいから行く、雰囲気が良いから行く、という種類の店ではなかった。

 すぐに出やすいようにレストラン部ではなくカフェコーナーに座った私たちは、生ビールを飲みながら有名シェフの店に空席が出来るのを待っていたのだが、若いギャルソン(ポルトガルのギャルソンはオヤジが多い)はしばらくしてから頼んでいないサラダ付きコロッケをテーブルに持ってきた。いかにもビールと一緒に食べてくださいと言わんばかりのうまそうなコロッケと彩りの美しいサラダの誘惑に負けて、結局コロッケに手をつけ、そしてなし崩し的に食事へと誘導された。まんまとイケメンのギャルソンの策略にかかったのだ。

 それほど期待せずに広げたお品書きには、焼いただけ茹でただけのおなじみポルトガル飯屋のそれとは一線を画した、変ったものばかり。これは食べることに並々ならぬ情熱を傾ける女性五人の好奇心を大いにそそった。しかもその辺の大衆食堂と変わらない値段である。私たちは魚二品、肉二品頼み、味比べをすることにした。
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 小鰺のマリネ、ポテト添え。要するに南蛮漬けであるが、酢漬けの野菜がたっぷり添えられ、味もマイルドでとってもヘルシーな印象。

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 魚とアサリのリゾット。ポルトガルのリゾットにつきもののハーブのコリアンダーと飾りに使われているバジルの香りがきいて美味。

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 ローストビーフのロックフォールチーズソース、アラブライス添え。ローストビーフ(英)+ロックフォールチーズ(仏)アラビアご飯(中近東)という国際料理?好評につきもう一皿追加。

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 ポークのワイン煮込み。こちらは典型的ポルトガル郷土料理だが、付け合せは珍しくフライドポテトではなく、アラブライス(レーズンが入った黄色いご飯…まさかこの値段でサフランは使っていないだろうが)と茹でた青豆で、見た目も栄養的にもバランスが取れている。

 食べるだけでなく飲むのも得意な女性たちは、安いハウスワインを直ちに空にした。見計らったようにギャルソンが別のワインを持ってきた。ラベルが黒に金色で印刷されたなんだか高級そうなやつだ。危うく勧められるがままに開けてしまうところを、寸での所で値段を問い質し19ユーロという返事で我に返ったご一行は、同じ値段で2本は飲めるハウスワインをもう2本追加したのだった。ギャルソンの営業失敗、いや安いワインを数飲ませることに成功か?

 カフェだけあって甘いものは得意分野と見受けられ、デコレーションや味は上々である。
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 チョコレートムース。軽すぎず、こってり過ぎず、絶妙のバランス。カスタードソースも激うま。

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 モロトフ。卵の白身を使ったメレンゲは、たまに卵臭いものがあって私は好きではないが、ここのは本当に美味しい。

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 ポートワインのプリン。こってりねっとりのポルトガル伝統の味。

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 焼きりんご。普通はただ焼いたりんごをゴロッと出すだけだが、皮に砂糖でアイシングしたり、ソースを添えたりと工夫が見られる。

 こんなに色々食べて一人あたり16ユーロちょっとで済んだ。隣の有名シェフの店なら倍はかかっただろう。混んでいたおかげで安くて美味しい店を再発見できた。安く上がったのは、布のテーブルクロスを使ったレストラン部ではなく、テーブルに紙を敷くカフェ席、それもテラスではなく奥の席だったせいもあるだろう。
 それにしてもあのお兄ちゃんは頼みもしないコロッケを持ってきたり、高いワインを持ってきたり、我々日本人に英語で話しかけたりとなかなか商売上手である。満員だから25分後に来てくれという店が隣に出来たおかげで、この「カーナス」も売り上げが増したかもしれない。
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by caldoverde | 2009-07-08 00:53 | 話題の店 | Comments(3)