ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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鱈の三位一体

 先日、地元の人や新しもの好きの若者はいまさら見向きもしないであろう店ばかりで、雑誌用の写真を撮る手伝いをした。店を選ぶ基準は、評価が確定した老舗で二,三年では潰れそうにない店、要するにベタな、おのぼりさんや旅行客が必ず行くようなところである。私もポルトガルに初めて来た頃は一応チェックしたし、現地の友人に招待されたりもしたが、今は自分からは行かない。そんな所ばかりだ。

 そのリストの中にシアードのビヤホール「トリンダーデ」があった。リスボンの人が「トリンダーデ」を絶賛しているのを聞いたことはない。店のアズレージョは素晴らしいが、食べ物は…と言うのが大方の意見である。私も一回か二回行ったことはあったが、あまり印象に残っていない。昔修道院だったという内装の美しさは良く覚えている。トリンダーデとはキリスト教の三位一体のことだ。その荘厳な雰囲気に圧倒され、食べ物の記憶はすっかり消えている。ビールを飲んだだけだったのかも知れないが。
 そんな訳で「トリンダーデ」を紹介するなら、おそらく内装が主役で食べ物は二次的なものになるだろうと予想し、あまり期待はしていなかった。

 給仕が薦めるこの店の名物料理は、鱈のなんとか修道院(Aで始まる…名前を失念)風と鯛のグリルだった。鱈は典型的なポルトガル料理の食材であるが、なんとか修道院とはどこにあるのかもどんな料理かも全く想像のつかない、初めて聞くものだ。メニューの説明によると鱈ととうもろこしのパンを使った料理であるらしいが、食べたことのない人には字面で説明されても良く分らない。

 イメージ写真は、文字から想像したものとはかなりかけ離れ、一般的ポルトガル料理とも一線を画した、彩りの良いきれいなものだ。三層になったケーキのような外観で、上層部はミモザのように鮮やかな黄色のつぶつぶで覆われている。これはとうもろこしのパンを細かく砕いたものだ。二層目は白っぽい鱈の身で、一番下の層は濃い緑色をしており、これはホウレンソウか菜の花を茹でたものであろう。実際に厨房から出てきた料理は、写真ほど色鮮やかではなく、一生懸命がんばってみたものの田舎っぽさの拭えない盛り付けが微笑を誘う。
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 ぽろぽろと崩れるクランブル状のトウモロコシパンには香草のコリアンダーが混じっていて、噛みしめるとなかなか複雑な味わいだ。その中からシコシコした歯ごたえに程よい塩加減の鱈の身が現れ、最後にニンニクを利かし柔らかくソテーした青菜がアクセントを添える。この料理を考案した修道院では、それぞれの素材に神、イエスキリスト、精霊の三位一体(トリンダーデ)を托しありがたくいただいたのだろう。悪くない。でも値段も安くない。確か15ユーロか16ユーロだったと思う。
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 もう一品は黒鯛のグリル。そう聞いただけで、例のステンレスの楕円皿の上に鯛の塩焼きと茹でジャガイモがごろんと転がっている映像が思い浮かんだが、出てきたものは、めったにポルトガルに来ることのない日本の記者の人たちばかりでなく、私までもが歓声をあげるような、ステキな料理だった。トマトと玉葱をオリーブオイルで炒めたソースがたっぷりかかり、付け合せのブロッコリーも鮮やかな緑色(ポルトガルでは変色するまでくたくたに茹でるのが主流)である。レモンスライスやローズマリーの小枝を飾り、なんだか地中海のリゾート地のビストロで出される食べ物のようなこじゃれたものになっているではないか。魚は新鮮で美味しく、皿の底に残ったソースをパンに付けて食べるとこれまた美味い。
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 やはり老舗は伊達に何十年も営業しているわけではない。その日はフランス人の団体も来ていたが、フランス人の厳しい批評にも耐えるように研究しているのかも知れない。しかし一般的なポルトガル人が毎日昼食をとるには厳しい値段だ。その日の定食はせいぜい8ユーロ位でないとこの不況下ではやっていけない。できれば6ユーロ以下が望ましい。てんこ盛りで結構、立派なアズレージョはどうでも良い。而して彼らが「トリンダーデ」を使うのは接待とか外国人を招待するとか特殊な状況のみにならざるを得ない。それでリスボンの人は「トリンダーデ」は観光客用だからというレッテルを貼ってしまったのかも。でも見直してもいい店だと思う。
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by caldoverde | 2009-10-17 05:09 | シーフード | Comments(6)