ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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甘い骨

 お気に入りの近所のカフェが閉店し、店舗は売りに出されていた。特に変わったものやとびきり美味しいものがあるという訳ではなかったが、低い音量でボサノヴァが流れ、雑誌や新聞が置いてあり、店内は明るく清潔で、何よりもブラジル人の奥さんの笑顔と挨拶が気持ち良かった。「事情により急遽帰国します。ご愛顧ありがとうございました。近いうちに別の場所でお会いしましょう」という内容と不動産屋の連絡先が書かれた紙に、学校から帰ったら家には誰も居らず鍵が掛かっているのを見てショックを受けた子どものような気持ちになった。これからいったいどこでコーヒーを飲めば良いのだ。どうやって今日の運勢や映画のプログラムを知ればいいのだ。一体どこの店がコーヒー1杯で1時間以上粘る客を笑顔で迎え入れてくれるのだ。

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3度目の登場、元「グロッソ」こと「鳥の巣」
 半ば呆然と、「グロッソ」もとい「鳥の巣」の置いてある別のカフェに足は向かった。雑誌は置いてないが、道でただで配られる新聞や不動産屋のチラシがある。それに豊富な種類のお菓子がある。若い女の子は無愛想だが、その父親らしいオーナーのおじさんは感じがいい。私の顔を見ると必ず「コーヒーと、あとは?」と勝手にお菓子を食べるものだと決め込んで、お菓子を挟むトングを掴みながら尋ねる。ここで笑顔があるかないかで、売り上げに大きな違いが出ることをポルトガル人はあまり知らない。このおじさんは本能的に知っているが、大部分のポルトガル人の店員はいかにもつまらなそうに接客する。それに比べるとブラジル人の店員は一般的に愛想がいい。閉店したカフェも例外ではなかった。

 そんな訳でここに来るとコーヒーだけにしようと思っても、結局おじさんのソフトな圧力に屈する形でついつい甘いものを頼んでしまうのだ。しかしまた「鳥の巣」のようにそのお菓子自体が強力な磁力を発し、私の目を釘付けにさせ、ダイエットを忘れさせ、財布の中を小銭ばかりに替えてしまう魔法をかけるものもある。今日もそのようなものに出会ってしまった。
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 長さは約15cm。両端は拳骨のように丸くなった細長いシュー。その拳骨から黄色いカスタードクリームが溢れんばかりにぎっしり詰まっているのが見える。粉砂糖が振り掛けられその無骨な形を更に際立たせている。たった1個だけ売られていたこのお菓子の名前を私は思い出すことが出来た。「お菓子図鑑」によるとティビア(頚骨、すねの骨)と言う。
 
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 確かにそのとおりの形をしている。しかし何でまた甘いものに「頚骨」などと言う名前を付けるのか?ならば「骨盤」とか「頭蓋骨」と言う名前のお菓子は存在するのだろうか。

 フォークもナイフも添えられなかったので、中央の長い骨の部分を指で掴むと、カスタードクリームの重みで端の関節の部分がだらりと下がりそうになった。慌てて関節をがぶっとかじると、「うっ、うまい…」また絶句である。久しぶりに日本のカスタードシューに近いものを食べ、懐かしさと美味しさで口の中が一杯だ。しかし簡単に折れ曲がってしまいそうな柔な「頚骨」だ。きっと骨粗鬆症に違いないと思いきや、しっかり中央の骨の中もクリームが入っている。これ1本で小さめのシュークリーム3個分はある。今日の昼食はいつもより遅く、軽いものにしなくてはと決心し、顔についた粉砂糖を払って店を出た。
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by caldoverde | 2009-11-24 07:52 | お菓子・カフェ | Comments(6)

かぼちゃウサギ再び

 11月1日は諸聖人の日というカトリックの祝日で、ポルトガルの善男善女がお墓参りをする日である。その前日の10月31日は、こちらではカーニヴァルや復活祭ほどの盛り上がりはないが、ハロウィンである。最近はスーパーなどではかぼちゃのお化け提灯を飾るところも出てきた。西洋のかぼちゃはなりは大きいが水っぽくてあまり美味くない。スープには使われるが、煮物は無理だ。1個から大量のジャムを作ったところで、食べられる量は知れている。かぼちゃのてんぷらは見たことがないし、お菓子も揚げドーナツのソーニョスぐらいにしか使われない。無駄に大きな西洋かぼちゃ、他にどんな用途があるのだろうか。
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 あったのだ。トマールのレストラン「シコ・エリアス」ではかぼちゃをくり抜いて中にうさぎのシチューを詰め、薪のオーブンでとろとろ煮込む、ユニークなメニューがある。このブログの過去の記事を見て、どうしてもこれを食べてみたいという人が現れた。しかしこの料理は並の胃袋では到底平らげることのできる量ではない。またうさぎの肉はあっさりしているので、これひとつでは飽きる可能性が大だ。大勢で2~3品頼んでシェアした方が断然楽しい。そこで他の人にも声をかけてもらい5人招集し、リスボンから車で約2時間のトマールに出かけた。

 この日注文したのは、うさぎのシチューかぼちゃ詰めのほかに、ヤギのオーブン焼き、鴨料理「パト・コン・ブロア」の3品であった。肉料理ばかりなので、日本人には完食できまいと予想し、私は参加者にお持ち帰り用のタッパーを持参するよう注意を促した。
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 予約の入ったテーブルには既に何種類かのつまみが用意されている。さっき窯から出てきたばかりですと言いたげな黒い炭がちょっぴりついた丸いパン、クルミの入ったオレンジの香りの甘いパン、季節の味の焼き栗、ビアホールの定番つまみのウチワマメ。少量ではあるが、腹の膨れそうなものばかりである。ここでうっかり手を伸ばせば、後の料理が入るスペースが縮小されるのでここはぐっと我慢しなければならない。しかしメインは肉ばかりなので前菜にペティンガス(小イワシの南蛮漬け)を頼んだ。酢と油に漬けた小イワシを皿ごとオーブンに入れて焼いているのがこの店風だ。
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 春の菜の花畑のような爽やかな色合いのパト・コン・ブロアはトウモロコシパンを使った鴨料理である。表面はブロア(とうもろこしパンを顆粒状にしたもの)とクルミと松の実で覆われ、歯ごたえと香ばしさが楽しめる。その下にはジューシーなキャベツの葉と細く割いた鴨肉が隠れている。カリカリとした歯ざわりと木の実の香ばしさ、キャベツの甘みと鴨のコクがそれぞれの個性を主張しながらお互いを引き立てている。
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 いかにもポルトガルの伝統(田舎)料理といったヤギのオーブン焼き。オリーブオイルとにんにくの基本の味付けで色艶良く焼いた肉は濃厚だが臭みがない。肉の旨みを吸収したジャガイモと菜の花の炒め物は後を引く美味しさ。私は肉そのものよりも肉と一緒に焼いたジャガイモや菜っ葉の方が好きである。
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 そしてうさぎのシチュー。厨房からテーブルに運ばれるときは、丸ごとかぼちゃがキャセロールに乗っかってやってくる。そしてテーブルに置かれるとき、かぼちゃのヘタの部分をくり抜いた蓋をはずし、中身のシチューを客に見せるのだ。うさぎの肉を玉葱やマッシュルームと一緒に煮込んだシチューは淡白だが、秋の気配の感じられるしみじみとした味だ。あっさりしているが、何で味付けしているのか分らない微妙で複雑な香りや味がある。かぼちゃの移り香だろうか。
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 やはり五人で三品は多かった。お持ち帰り用タッパーに食べ切れない分を詰め、お土産とした。しかし、デザートは別腹である。かなりの量と甘さを警戒し、二種類のデザートを五人で分けることにした。トマールの郷土菓子でこの店のスペシャリティのファティア・デ・トマールとカスタードクリームの表面を焦がしたレイテ・クリームである。
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 卵の黄身をふわふわに泡立てて蒸し焼きしたスポンジをシロップに浸したトマール郷土菓子の方はあまりの甘さに一口で満足(脱落)した人が続出した。レイテ・クリームは甘さがしつこくなく好評だったが、量が多すぎた。
 ポルトガルの田舎で食べる時は十分に体調を整え、空腹で望もう。食べ物が残ったら恥ずかしがらず、持ち帰りできますか?と聞いてみよう。地球環境のためにも。
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by caldoverde | 2009-11-05 17:50 | 話題の店 | Comments(7)