ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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<   2010年 11月 ( 3 )   > この月の画像一覧

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荒々しい岬に立つ可憐なBROMPTON

 最後の日は全国的に荒れ模様との天気予報だったが、朝のうちはきれいな青空で、ホテルの人もアルガルヴェじゃ降らないよと根拠のない太鼓判を押したので、また自転車でポタリングに出かけた。サグレスの町の中心や港のそばにはたくさんのレストランがあり、1軒1軒なめるようにメニューを確認したが、秋刀魚らしい品書きを見つけることは出来なかった。せっかく遠くまで来たのだから、地元ならではのものを食べたい。しかしどれもリスボンと似たりよったりだった。
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 浜に下りると風は徐々に強まり、太陽は灰色の雲に隠れては時折弱々しく海面を照らした。人けのない砂浜では監視員の青年が黙々とデッキチェアーを直したり、ゴミを拾ったりしていたが、私を見つけて話しかけてきた。何年ぶりかの、人生最後かも知れないナンパである。人のことは言えないが非常に訛ったポルトガル語を話す。彼は私がポルトガル語で答えているのにも関わらず東洋人はポルトガル語を喋るとは思わないらしく、Do you speak English? と尋ねた。英国人の多いこの辺で仕事をしているのだからさぞかし流暢な英語を話すのだろうと思ったら、「きょう、てんきわるい。およぐのだめ。だからYellowのはた。」アンゴラ出身の監視員が発した英語はYellowだけであった。腰が砕けた。
 彼は私が何度も自分は日本人だと言っているのに、中国人は皆マッサージできるからあんたもできるだろうとか、日本では中国語を話すのかとガックリ来るようなことを熱心に質問し続け、遂には初級日本語会話をメモ紙に書かせられた。案の定「愛している」は何と言うか書いてくれと頼まれた。これで東洋人の女をナンパしマッサージしてもらおうという目論見だろうが、彼はかなり飲み込みが悪く、せっかくの授業も一生役に立ちそうにないのは明らかであった。
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 ようやく太陽が現われて海に反射し、面白い写真が撮れそうな雰囲気になっても、アンゴラから来た監視員の兄さんは私を解放してくれない。そのうちに初老の男性が一人海岸にやって来た。この秋の波の高い日に泳ぎに来たようだ。やっと監視員の仕事ができ、私は自由の身になった。良い構図を求め浜の一番端のほうまで歩いていくと、岩にズボンや下着が脱ぎ捨ててあった。先ほどの男性が何も着ずに海水浴をしていた。私が来たのを察してか腰まで水に浸かる深さで波にもまれている。私が長居すれば彼は海から出るに出られず溺れる可能性がある。そうなるとさっきの監視員の兄さんも大変だろうと、残念だが写真を撮るのもそこそこに浜を後にした。
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魚のスープとサグレスビール

 昼は港のそばのいかにも観光客が好みそうな造りのレストランでカタプラナ(ポルトガル風ブイヤベース)を食べようか、あくまで秋刀魚を探そうか迷っていたが、結局、ホテルのおじさんが推薦する町はずれのリーズナブルな店でべズーゴという鯛に似た魚を食べた。昨日のエイほどインパクトはない普通の味だが、あのサグレス岬の老漁師が命がけで釣った魚かもしれないと思うと、ありがたさもひとしおである。
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 サグレス岬が見えるように外のテラス席で食べ、コーヒーも飲み終わる頃、ものすごい雨が降り出した。ポルトガルの天気予報は意外と正確だ。中に入りアマルギーニャというアーモンドのリキュールを飲みながら雨が小止みになるのを待った。アルガルヴェ地方はその昔アラブ人がアーモンドを伝え、春はアーモンドの花、菓子はマジパンの練り切り菓子、酒はアーモンドのリキュールがこの地方の名物となっている。アーモンドの花見をしながら練り切りを食べ、リキュールを飲むなど風流だが、どちらも舌が麻痺しそうなほど甘い。
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ビワの形のマジパン菓子。中にはあんこならぬ鶏卵そうめんが入っている

 雨が小降りになるのを見計らって、ローカルバスでサグレスからラゴスに移動。長距離バスを待つ間ラゴスの町をぶらぶら歩き、アルガルヴェの伝統菓子を売っている店で一休み。マジパン菓子や、鶏卵そうめんを砂糖シロップに漬けて銀紙で包んだ「ドン・ロドリゴ」、キャロブ豆のタルト、イチジクとアーモンドのタルトなど、リスボンでは珍しいお菓子を製造販売している。最後の一切れだったイチジクとアーモンドのタルトは、果物と木の実を細かくして混ぜ押し固め、シナモンでアクセントをつけたもので、どっしりとしているものの天然の果物の甘みはしつこくなく、むしろダイエット中の方にもお勧めしたくなるようなヘルシーな味だった。秋刀魚を食べることはできなかったが、アルガルヴェならではのデザートを食しリスボンに帰ることができて満足した。
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by caldoverde | 2010-11-08 05:37 | ポルトガルの旅 | Comments(5)
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遂にヨーロッパ最南端まで自転車で到達!最後の6kmだけですが

 昨夜のレストランも泊まったホテルも客の姿はほとんど見えず、シーズンオフの観光地の寂寥感がひしひしと伝わるが、秋冬の荒涼たるたたずまいにこそアルガルヴェの本来の魅力があると思う。アフリカからの風に吹きさらされ、石がゴロゴロと転がり、ほとんど耕作不可能な荒地に立ったエンリケ航海王子は、水平線の彼方に、アフリカのどこかにあるはずのキリスト教国を捜し求めていた。
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宿泊客は私を含め3人しかいなかったようだ

 2日目は爽やかな秋空の絶好のポタリング(自転車でぶらぶら散歩する)日和となった。大変な思いをして自転車を持ってきた苦労は報われた。サグレス岬は海面から垂直に切り立ったテーブル状の平らな半島で、起伏はほとんどない。道路はきれいに舗装されていて、観光シーズンが過ぎた10月の終りは交通量も少なく、車からどやされることもなく、非常に走りやすい。しかし国道から分かれたサグレス岬に向かう一本道は粗い石畳なので、街乗り用として作られているブロンプトンには過酷な条件であり、ポルトガルの輪行にはやはりタイヤの太いマウンテンバイクが適している。
 それでも道端の草や海を眺めながらのんびりペダルをこぐのは何と気持ちの良いことか。ちょっと気になるものが視界に入ったら止まって眺めたり、写真を撮ったりしながら、ぶらぶらと海岸や港、住宅地を散歩した。
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枯れた草にはびっしりカタツムリ
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 サグレス岬は地図では爪先立った足のような形をしている。足首の靴下のゴムにあたる部分に古い城壁が残っており、そこから先は入場料を払って入る。城壁の内側の岬には「風のバラ」と呼ばれる羅針盤、教会、火薬庫、エンリケ航海王子の時代に作られた水をくみ上げるための小さな石造りの塔などの古い小さな建物の他に、モダンな建物の売店やカフェ、資料展示館などがある。昔は岬が一つの城砦だったらしいが、岬をぐるりと囲む城壁は海に崩落したのだそうだ。この岬にはエンリケ航海王子が優れた科学者を集め航海学校を作ったという伝説があるが、人が住めるような場所ではなかったので、実際に学校のようなものがあったのはラゴスだったと言われている。
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岬の先端にある謎の建造物の中心には深い穴が金網で塞いであった

 高さが海抜50mに達する断崖絶壁の上はテーブル台地。海岸線は大西洋の荒波が削り、どんどん浸食されていく。現在は周囲をコンクリートの塀で防御しているが、いつかは崩れ落ちることだろう。そして何百年後か何千年後かには岬は小さな島になり、やがて荒波の中に消えてしまうのだろう。

 そう考えただけでザワザワするのに、ここではさらに恐ろしいことが行われている。漁師たちが塀の外の崖っぷちで釣をしている。やっと立っていられるような狭い足場で50メートル下の海面に釣り糸をたれている。もし強い風が吹いたら、大きな魚に引っ張られてバランスを崩したら、すぐそばでカメラを構えている観光客がこっちを向いてくれと頼んだりしたら、私がでっかいくしゃみをしたら、漁師は海の藻屑となる。しかし中には悠然と鼻歌を歌ったり、ワインを飲みながら仕事をしている漁師もいる。
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タバコを吸いながら50m下を覗き込む釣人
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この道何十年の漁師は命綱もつけず崖の淵に立つ
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魚を狙って猫が漁師を襲う?!

 サグレス岬から北西にはサン・ヴィセンテ灯台が見える。海岸線に沿って真っ直ぐに灯台に向かってのびる国道268号線は、とても気持ちのよいサイクリングコース。途中数軒のレストランがあるほかは見晴らしの良い荒野が続く。初夏は可憐なアルメリアの花も秋は茶色のいがぐり坊主。
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 灯台の近くには屋台が並びホットドッグやみやげ物を売っているが、ポルトガルの物産品の店はひとつだけ、それもいつ仕入れたのか判らないような干しアンズや干しイチジクとか、割れそうな器に入った蜂蜜とか、不ぞろいのオレンジとか、どうも買う気の起こらないものばかり並べた屋台だ。売り物の中に干からびたような大きな黒いサヤの豆があったが、これが昨夜食べたデザートの材料のキャロブ豆で、屋台の歯のないおじいさんは豆を一つポキッと折って食べてみろと差し出した。埃っぽい屋台の、洗わない手で差し出された洗われていない豆を食べるのに一瞬躊躇したが、噛むとほんのりと自然の甘みが口に広がった。
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岬のカフェにもキャロブが飾られていた

 サグレス岬を望む小さなビーチのレストランで遅い昼食をとった。エイのニンニク煮とビールを注文した。茹でたエイとジャガイモにたっぷりのニンニクとオリーブオイルで味付けしただけのシンプルな料理だが、エイが新鮮で、淡白でとろりとした味わいがとても上品。軟骨もコリコリとした歯ごたえが楽しい。オリーブオイルがもっと上等だったら更に良かった。
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 日没が近づき、岬の根本にある岩場に囲まれた小さなビーチで夕日を鑑賞した。ヨーロッパの最南端に沈む太陽で黄金に染まる海。古代ローマ人は燃え盛る太陽の火はこの海に落ちて鎮められると考えていた。
 これで昨日のカタキはとった。
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by caldoverde | 2010-11-05 09:28 | ポルトガルの旅 | Comments(6)
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エンリケ航海王子ゆかりの地サグレスは、ローマ時代は世界の果てと考えられていた神聖な場所だった。

 久しぶりに南部のアルガルヴェ地方に行こうと思い立った。数年前サグレス岬で貸し自転車に乗って停車に失敗し2回転んだが、今回は折り畳み自転車を持参しこれでポルトガルの角っこを走破しリベンジを果たす、そしてアルガルヴェでサンマやラパ貝が採れるとの情報を得たのでそれを確認するという重要なミッションを自分自身に課した。また仕事で行く予定もあるので、その下見も兼ねた視察旅行でもある。残念ながら全部自腹である。
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子供用自転車ではありません。愛車のピンクのBROMPTON。

 サグレスまでは、まず電車か長距離バスでラゴスまで行き、そこから路線バスで最南端のサグレスに向かう。長距離の移動は鉄道より安くて時間もそう変わらないバスを使うことが多いが、最果てのサグレスには何となくロマンを感じる鉄道で行こうという気持ちになった。わくわくしながらダイヤを調べ、2日前にリスボンのセッテ・リオス駅でアルガルヴェ行き往復切符を購入した。これが大きな間違いだった。

 10時半にリスボンから電車に乗るとまもなく車掌が改札に来た。彼はxxでバスに乗り換えます、と言っていたようだが、アルガルヴェに入ったらトゥーネスという駅で幹線からローカル線に乗り換えて終点のラゴスまで行くので、そのことを言っているに違いないと自分自身に納得させた。バスと聞こえたのは空耳だろうと。

 リスボンから3つ目の駅セトゥーバルに着いたら、乗客がわらわら降りだした。バスに乗り換え、というのはここでの事だった。アルカサル・ド・スル駅のそばで貨物列車の脱線事故があり、その一つ手前のセトゥ―バルから2駅分バスが代替運行していた。昭和の時代に製造されたのではないかと思うくらい古くて汚いバスだった。1車線の国道を大型トラックに連なるように時速50km位で走る。乗客がなぜ高速を走らないのかと運転手に尋ねると、高速の方が遠くなるという返事だが、怪しいものである。

 グランドラ駅で再び列車に乗り換え。ここで既に予定の到着時間より1時間遅れ。今回は自転車を持って来たので度々の荷物の上げ下ろしにうんざりである。電車がなかなか出発しないので駅員に何時に出るのか聞くと「用意が出来たら」という人を食った返事に呆れた。
 バスも古くて汚かったが、電車も負けていない。リスボンからの電車もそうだったが、窓から景色が見えないくらいガラスが曇っている。窓を掃除することはないのだろう。トイレも昔の日本の国鉄の電車や駅のトイレ並みに汚い。使うと床、便器、衣類のどれかが必ず汚れる構造で作られている。バスから乗り換えた駅のそばのカフェで何か食べてそこのトイレを借りようと思ったのだが、駅員がいつ電車が出るのかも知らないのでは、電車で待機せざるを得ない。一応急行列車なので食堂車があるが、うまくもないサンドイッチなどに普通のカフェの値段の倍払ったあげく、尿意を催し電車のトイレを使うのはまっぴらごめんである。こうなったらうんとお腹を空かせて夜たっぷり食べてやる。
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この日の昼飯は駅の売店で買った生ハム味のポテチ。

 ラゴス行きの各駅停車に乗り換えるトゥーネス駅に着いたのは予定より1時間遅れの3時だった。本来なら5分も待てばラゴス行きの電車に乗り換えることが出来たのに、次のラゴス行は何と2時間後の午後5時である。電車が遅れたら丁寧にお詫びのアナウンスが入り、代わりの電車なりバスなり用意するか、全額払いもどすのが日本だが、ここはポルトガルだ。
 終点のラゴス駅に着いたら帰りの電車の切符をキャンセルし、リスボンへは長距離バスで帰る意思は固まっていたが、腹が立ったのでこのトゥーネス駅でキャンセルの手続きをした。二重に憎たらしいのは払い戻し手数料4.50ユーロを取られたことだ。何もない町の、日に10本ほどしか列車の来ない駅で2時間も無駄に待つ。それでもバールのある駅は特に電車を待っている風でもないご老人達が談笑し、ひと気のない町でささやかな賑わいを見せていた。
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ここにいた人々は誰も電車に乗らなかった。

 ようやく予定より3時間遅れで終点のラゴス駅に着いた。
 ここで重要なことに思い至った。今までなぜ私はバスを好んで使い、鉄道を避けていたのか?地方の鉄道駅は大抵町外れの不便な場所にあり、町の中心まで結構歩いたり、ひどい時はタクシーを呼ばないとどうしようもないものが多いのだ。
 ラゴス駅からサグレス行きバスの発着するターミナルは歩いて5分ほどだが、今回は移動用のバッグに詰めた折りたたみ自転車がある。じゃあ自転車で行けば良いじゃないかと思われるだろうが、このバッグというのが結構かさばるタイプで、小さな、荷台もない我がチャリにつけて運ぶのは不可能だ。初めから往復バスにすべきだったのだ。そうすれば乗換えで移動する必要は全くなかったのだ。13kgの自転車入りバッグを数百メートル引き摺り歩いた後は、腕がしびれていた。

 バスが出発する頃は日没が近づいていた。空が赤く染まり、野山が徐々に暮れなずむ。予定通りに着いていれば、ポルトガルの最南端で海に沈む夕日を観ながら愛を叫んでいるはずであったが、バスに揺られながら心の中で私の夕日を返せ、ポルトガル国鉄の馬鹿、自分の馬鹿と叫んでいた。

 丸1日かけホテルに辿り着いた。朝からまともに食事をしていないので、夕食は豪勢に美味しいものを食べ、恨みを晴らしてくれよう。ホテルのはす向かいのシーフードレストランで、殻にびっしり海藻をつけ身がプックリと大きいラパ貝を前菜にヴィニョ・ヴェルデを飲み、ワラジのようにでかいカジキマグロのステーキを平らげ、デザートはこの地方独特のキャロブという黒い豆で作ったケーキで締めくくり、怒りを鎮火させた。
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コリコリとした歯ごたえ、磯の香りがたっぷりのラパス(笠貝)。
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こってり脂肪ののったカジキマグロにたっぷりオリーブオイルをかけて。
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不気味な黒いキャロブケーキ。あんこと思えば・・・味はいまいち。
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by caldoverde | 2010-11-01 20:47 | ポルトガルの旅 | Comments(5)