ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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どぶろくレストラン

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 友達からアグア・ペを出すところがあるので食べにいかないかとのお誘いを受けた。アグア・ペとは出来たての弱いワインで、秋から初冬にかけての期間限定品だ。11月11日の聖マルティンの日は栗を食べアグア・ペを飲むのがポルトガルの慣わしである。「アグア」は水で「ぺ」は足。なぜこんな名前なのか、昔はブドウを足で踏んでワインを造っていたので、足から出る水=アグア・ペなのだろうか、毛むくじゃらのおっさんの足が踏んで作ったのだろうかなど疑問を持たずに飲めば、瑞々しい乙女のようにピンクの甘く爽やかなワインである。友達によるとアグア・ペは店で売ってはいけない酒だそうだ。個人が自分の楽しみに作って、家族や知り合いの間だけで飲まれる密造酒らしい。しかし小さな食料品店などでは季節になるとラベルのないビンやペットボトルなどにアグア・ペを詰めて売っているようだ。

 そのポルトガル版どぶろくとうまい料理を出すもぐりのレストランは、リスボン郊外のとある街の住宅地のはずれにある。もちろん看板も何もなく、敷地は鉄の塀で囲まれ外から中の様子を見ることはできない。「何時にそっちに行くから、例のものを用意してくれ」などと他人に判らない符牒で連絡を取り合い、門のインターフォンで「山」「川」などと合言葉を使い、警察や税務署や保健所の人間が電柱の陰で見張っていないかをよく確認してから、人に見られないようにささっと入る必要は特にないようだが、紹介してくれた友達からは、絶対他の人を連れて来ないでくれと釘を刺された。なので残念ながらどこにあるのかは明かすことができない。近所には周知の事実なのだろうが、皆見て見ぬふりをしているのだ。
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 塀の中には突然リスボン郊外のこぎれいな住宅地から数百キロワープしたような田舎の風景が出現する。物置小屋の軒先に下がった洗濯物、雑草の生い茂る小さな畑、ごつごつした実をつけているオレンジの木、手製の鳥小屋やウサギ小屋、走り回る犬、そしてこれまた違法建築っぽい小さな家。すだれの下がった勝手口から中に入ると、営業用ガラスケースの中の美味そうな腸詰やチーズ、手製のライスプリンなどがお出迎えする。傍にはアグア・ペを入れたワイン樽が4つほど。食事をする部屋は満席時には3~40人は入れるだろうか、簡素なテーブルと椅子が並ぶ。壁や天井にはいろんな飾り物がつけられ、しっかり飲食店モードになっている。黄ばんだポスターや埃のかかった置物から、相当長いこと営業が続けられていることがうかがえる。
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 ポルトガルの北部で作られる赤い陶器のピッチャーになみなみ入ったアグア・ペは小さなガラスのコップで飲む。イチゴを思わせるフルーティな香りと酸味、軽い炭酸ガスの口当たりが心地よい。アルコール度数は8%で、ヴィーニョ・ヴェルデよりも弱い。次から次へと美味しいペティスコス(小皿料理)がやって来て、若いワインも水のようにぐいぐいとすすむ。
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 細かく波打つように削ぎ切った生ハムとベイラ地方のチーズ。
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 牛もつと白豆を柔らかく煮込んだドブラーダは、まろやかでやさしい味。
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 何で調味したのか濃厚な味の砂肝。これがあればお酒は何杯でもいけそう。
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 たっぷりのオリーブオイルとニンニクをかけた干し鱈の炭火焼は皮も香ばしい。
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 豚のリブの炭火焼。骨までしゃぶれる美味しさ。
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 懐かしのおふくろのチャーハンといった趣の砂肝のピラフ。
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 デザートは庭のオレンジ。見た目は悪いが甘い!

 食事の最後は自家製のアグアルデンテ(焼酎)で締めくくり。
口に含むと焼けるような刺激の中にブドウの甘みがじんわりと広がる。

 食事が済んで外に出ると、車がやって来て60代と思しき3人の男性が降り、塀の中に入っていった。昔からのなじみの客か、それとも役所の幹部が一般人のふりをして査察に来たのか。前者なら良いのだが、と祈らずにはいられない、秘密のレストランであった。
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by caldoverde | 2010-12-13 21:37 | 酒・ワイン | Comments(4)