ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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 いきなり秋が来た。突風と叩きつけるような激しい雨が、やわな折りたたみ傘を開いた途端だめにするポルトガルの秋だ。何もこんな日を選んで遠出しなくてもいいようなものだが、友達から誕生日祝いにもらったスパの利用券の予約が今日なのだ。別の日に変えても良かったのだが、逆にこんな日は人が来ないだろうからゆっくりとサウナやジャグジー風呂を占有できるだろうと、リスボンから電車で30分程のテージョ河の河口の町カスカイスのホテルにあるスパに出かけた。

 カスカイスは19世紀の王様が保養のために御用邸を置いて以来、高級避暑地として発展したポルトガルの葉山である。今は普通のサラリーマンも住んでいるが、海岸沿いにはバブリーなマンションや豪邸が多い。しかし、元々は小さな漁村だったので、旧市街は漁師町の面影もわずかに残っている。
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カスカイス駅からほど近いカーザ・ダ・ペルゴラ(真珠の家)という名のプチホテル

 天気が良ければ、昔はポルトガルのリヴィエラと呼ばれたカスカイス湾から地獄の口を巡って、ギンショ海岸方面に向かう自転車道をサイクリングするつもりだったが、雨が止みそうにないので、まず町の中心部にある二つのミュージアムで雨宿りしてからタクシーでスパに行くことにした。

 一つは海の博物館(ムゼウ・ド・マール)で、19世紀末から20世紀初頭に在位したカルロス1世の業績をたたえた博物館である。カルロス1世は海洋学とマリンスポーツと絵画を愛し、絵の腕前は玄人はだしであったが、政治家としてはいまいちで、暗殺されてしまった。カルロス1世の海洋学への寄与はとりわけリスボンの隣町のアルジェスにあるバスコ・ダ・ガマ水族館という形で残されている。海の博物館ではこの王様とポルトガル海洋学の発展を示す資料の他に、海洋生物の標本、漁民の生活、付近で沈没した難破船、船の模型など、海を軸とした人や町のかかわりを紹介している。

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 もう一つは最近作られた話題のミュージアム、パウラ・レゴ個人美術館(カーザ・ダス・イストリアス・パウラ・レゴ)である。この美術館の建物はポルトガルが世界に誇る建築家のソウト・モウラ氏の設計で、2つのピラミッド状の屋根を持つ赤い建物はとても斬新で美しく、周囲の緑によく映える。
 パウラ・レゴ(Paula Rego)はポルトガルの現代美術を代表する女流画家で、世界で最も高い値が作品につけられる現存作家のひとりである。彼女の絵に登場するのはいかにもポルトガル人らしい体型と顔つきの女性達だ。そのポーズや表情には狂気、残忍、嫉妬、ふてぶてしさ、貪欲さなど諸々の悪意をはらんだただならぬ緊張感が張り詰める。マリー・ローランサンなどとは対極に位置し、好き嫌いがはっきりと分かれるだろう。中には動物を戯人化したユーモラスなものもあるが、どこか毒を含んでいる。
 
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祭壇の形式をとった最新作でテーマは「育児放棄」。グロテスクな人物像と人形を組み合わせ人間の罪を告発している。カトリック教会への批判も見られる。

 この2つのミュージアムは隣り合っており、入場料は無料である。パウラ・レゴ美術館にはカフェがあるので軽い食事もできる。空腹のままスパに行って更に体重を減らそうという計画は当然頓挫した。昼食メニューはチキンのグリルとサーモンのパスタの2種類あったが、ボーイがすごく美味しいですと勧めるチキンとグラスワインを頼んだ。
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ハーブやニンニクでマリネしたチキンはジューシーで香ばしい。いっしょに焼いた皮付きポテトがこれまた美味しい。

 雨はますます激しさを増す。ミュージアムでタクシーを呼んでもらい、車で10分ほどのキンタ・ダ・マリーニャのホテルに行くよう頼んだ。広い松林の中の、ゴルフ場や馬場がそばにある豪華なホテルで、私には場違いな所だ。しかし今日私はお客様だ。スパの受付で、今日3時に予約を入れています、とクーポンを提示したが、受付嬢は怪訝そうな顔で、そのようなお名前は入っておりませんがどちらのホテルですか、と私に尋ねた。よく見るとホテル・キンタ・ダ・マリーニャではなく、ホテル・ヴィヴァ・マリーニャとなっている。名前は似ているが全然違うホテルだった。失礼しました~。幸い間違えたホテルからは歩いて5分であったが、雨の中おちょこになる傘を支えながらの道のりは遠く感じた。
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人間を嘲笑するかのような猫。ミュージアムショップで売っていたチョコレートのパッケージ。
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by caldoverde | 2011-10-27 19:26 | カルチャー | Comments(7)

テージョ河アート散歩

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 リスボンの母なる大河テージョ、その川沿いのカイス・ド・ソドレ駅を起点に河口に向かって伸びる6kmの道は愉しいウォーキング・サイクリングコースとして市民に親しまれている。週末や休日には多くの家族連れ、カップル、個人、犬が散歩やジョギング、釣を楽しみ、私もたまにサイクリングに行く。終点にはベレンの塔、発見のモニュメント、ジェロニモス修道院と有名な建造物が集まっているが、この3点セット以外にもコース沿いには見所は多い。
 10月5日は共和国記念日、ジェロニモス修道院のそばにある大統領官邸ベレン宮殿が一般に無料で公開され、コンサートも行われるということで、愛車のピンクのブロンプトンでベレン宮殿までサイクリングに出かけた。

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 スポーツの前に欠かせないのはエネルギー補給である。(自宅からカイス・ド・ソドレまでは下り坂、川沿いは高低差ゼロなのだが)10月に入っても連日30度の真夏日が続いているので、冷たいものが最高にうまい。バイシャ地区のプラタ通りのコメルシオ広場寄りにあるアイスクリーム屋「フラゴレット」は、イタリアで修行した女性オーナーが作る季節感溢れるフレーバーや独創的な素材・組み合わせのジェラードが豊富で、行く度に新製品に出会う。この日は3種のチョコのジェラードでカロリーは貯金できるほど補充した。

 ポルトガルの青空は何もかも青く染める。赤い4月25日橋もこの通り。
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 4月25日橋のたもとでは現代アートのプロジェクトが開催中で、橋脚をポルトガルのかつての美男美女の巨大な写真が飾る。
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 発見のモニュメントとベレンの塔の間にある日本庭園。西洋人がイメージする「禅」はこんな感じ。
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 普段は外側から見るだけの大統領官邸は、元は18世紀の王様がブラジルで採れた金によって贅の限りを尽くして建てた宮殿。内部は豪華なシャンデリア、絨毯、絵画、彫刻が過剰にならず上品に配されている。
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大統領のデスク。
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 庭はテージョ河を借景にした、素晴らしいフランス式庭園である。
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 遠くからはなんとなく青いものがあるとしか認識できなかったベレン宮殿のテラスのアズレージョは、近づいて観るとポルトガル美術史上最高の珍作だった。
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4番バッター、ヘラクレス登場!
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大見得を切るヘラクレス。
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人食い馬と戦う英雄。しかし手足の関節が脱臼している。
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ポルトガル女性に多い静脈瘤の脚のヴィーナス。
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by caldoverde | 2011-10-09 19:41 | カルチャー | Comments(6)
 名は体を表すというが、ポルトガルのバカリャウ(鱈料理)を食べたことのない人でも、「焼鱈ほぐし身オリーブオイル和え」がどんな食べ物か想像するとしたら、おそらく多くの人々が頭に思い浮かべる映像や味はほぼ同じだろう。
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僕も考えよう。こんなかな?
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 予想は当たりましたか?正にずばりそのものである。ひねりも何も奇をてらったところが皆無なのが、逆に日本人に衝撃を与えると言うか…
 ところがこの料理ともつかない料理こそ、田舎町トマールの更に外れにあるレストランのスペシャリティで、車で遠くからやってくる客が一様に注文する名物料理なのである。
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レストランの隣の畑になっていたザクロ

 このブログによくコメントを寄せてくれるMoreiaさんに誘われて、ご主人の運転する車で平均時速120kmで1時間半ほどリスボンから飛ばして着いた所は、間違ってもガイドブックには載りそうにない、家と畑しかない、教会さえも見当たらない小さな村だった。しかしその村の中にあるレストラン「ペルニーニャ」は知る人ぞ知る、食通ならぬ鱈通のポルトガル人の間で評判の店だった。客の90%以上はこのほぐし鱈にオリーブオイルをぶっかけたものに焼きジャガイモ(これもまたオリーブオイルがたっぷり)を添えただけの料理を食べに来るのである。他にも色々なメニューがあるのに。そんなに美味しいんだろうか?他の店の鱈料理と何が違うのだろうか?私なりに人気の秘密を分析してみると

1、炭火で鱈を焼く香ばしい匂いが店の外にまで流れ、たまらなく食欲をそそる。
2、皮や骨が除かれ、大きすぎず小さすぎず食べやすい大きさに身がほぐされている。
3、オリーブオイルが惜しみなく使われている。オイルは鮮やかな緑色のフルーティなヴァージンオイル。
4、適度な塩加減。塩鱈は切り身のままだと塩抜きの成否が味を大きく左右し、また部位によっては塩気の濃い部分とそうでない部分が生じるが、鱈の身をほぐして混ぜることによってそのような塩味のばらつきが統一されるのではないかと思う。
5、大人数で分け合って食べられる。
6、鱈の嫌いなポルトガル人はほとんどいない。

等の理由が考えられる。
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 香ばしく焼かれた干し鱈は、シコッと歯ごたえが感じられる最小限の大きさまで細かくされ、皮や小骨を取る手間なしにフォークで刺して口の中に放り込める。塩辛すぎもせず、薄塩すぎもせず、いい塩梅の塩加減。ソース代わりのオリーブオイルはパンに付けても美味である。皮ごと焼いた小さなジャガイモにはみじん切りのニンニクがまぶされ、ピリッと刺激を与えて食欲を増進させる。味付けは干し鱈自身の塩分、オリーブオイル、ニンニクのみ。日本の刺身に醤油とわさびだけというミニマムさに迫る単純さである。刺身もこのバカリャウ料理も素材の質のみで勝負している。
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村には樹齢100年に達していそうなオリーブの木がたくさんある

 これがレストランで出す「料理」かと絶句する見かけに反して、食べるとうまいのだ。こんだけのものが、遠くから客を惹きつけてやまないという事実は揺るがない。飽きるほどバカリャウを、喉に骨を引っ掛ける心配をせずに食べたい、というのはポルトガル人全てが抱く共通の夢なのかもしれない。その夢をかなえに来た人々は皆幸せそうな満ち足りた体型をしていた。 
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by caldoverde | 2011-10-01 00:23 | シーフード | Comments(6)