ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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近くにあったマデイラ島

マデイラ島に行ったのは、何年前になるだろうか。真冬にもかかわらず25度の暖かさ、極彩色の花や見たこともない果物で賑わう市場、世界名庭100に選ばれた植物園、谷底にある尼僧たちが隠れた村、山の斜面にへばりついた白い家々を見下ろすケーブルカー、スリルあふれるトボガン(籠ぞり)、魅力に溢れた島だ。食べ物、飲み物も独特だ。この島で私は初めてカサガイを食べた。魚ならマグロと太刀魚。肉だって負けていない。月桂樹に刺したバーベキュー。甘いものなら巨大なチェリモヤや可愛いマデイラバナナ、お菓子はどっしりした黒いサトウキビ蜜のケーキに巾着型のケイジャーダ(チーズケーキ)。スモーキーな香りの甘美なマデイラワインに爽やかでパンチの効いたカクテル、ポンシャ。例によって格安ホテルに宿泊し、移動は路線バスというケチケチ旅行だったが、次回はチャーチルの泊まったホテルで優雅なアフタヌーンティーを楽し…まなくてもいいか。周りがスノッブなイギリス人ばかりだったらなんだか場違いだし。だいいち、飛行機でマデイラ島に行かずとも、歩いて5分のところにマデイラ関係の店が3つもあるんだった。

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30年前、リスボンの新名所になったアモレイラス・ショッピングのビルは周りの景色を一変させた。

すでにオープンして30年も経つ老舗のショッピングセンター、アモレイラスには、オ・マデイレンス(マデイラ島民)というレストランがある。フードコートの一角に派手な合掌造りの民家をデザインした入口があり、中に入ると重厚な木のインテリア。値段も少々高めかも。

しかしシックなアモレイラスショッピングから歩いて5分、かつて工場の労働者たちが住んでいた長屋のひしめくカンポ・デ・オリーク通りに、イーリャ・ダ・マデイラ(マデイラ島)という郷土料理店がある。この通りには私の愛するカーザ・ドス・パッサリーニョス(小鳥の家)や、シーフードレストランなど数店の飲食店が集まり、近所の人々で賑わっていて、しかも私の住むアパートと同じ通りである。マデイラ料理だけでなく、普通のポルトガル料理もあり、そちらの方は値段も手頃だ。14、5年前に2度ほど入ったような記憶があるが、その時は特に変わったものがあるとも気付かず、それっきりになっていた。久々に「マデイラ島」に立ち寄ったのは4月3日の聖金曜日。この日は仕事が長引いてまともな食事が取れなかったので、夜は外食することにした。ところがどの店も休みでお気に入りの「小鳥の家」も閉まっていたが、その並びにある「マデイラ島」がたまたま開いていたので、時を経ての再会となった。

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コリコリです

各テーブルには鉄のカギに串焼きの肉を吊るすバーベキュースタンドがある。奥のテーブルの客も長い串から肉の塊を外してもらっている。私も一瞬香ばしい月桂樹に刺した牛肉を頬張ろうかと思ったが、前菜にカサガイ(ラパス)がある。アソーレス諸島に行った時くらいしか食べられないだろうと思っていたカサガイがこんな身近に!数を尋ねると20個ぐらいという。アソーレスでは50個食べた私だが、リスボンではこれでよしとすべきだ。メインは一口大に切った牛肉を煮込んだマデイラ風ビーフにした。歯ごたえのある貝の身や肉もさることながら、貝殻に残されたエキスやシチューの汁をパンやご飯につけるとより美味い。はじめはフォークでカサガイの身だけを取って食べていたが、手で殻を持って口に持って行き汁ごと食べると、貝を余すことなく味わえることがわかった。マナー的にOKかどうかは不明だが。

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ピカディーニョ(つついて食べる一口大の肉料理) ソースが美味。

マデイラのパンは、ボーロ・デ・カコという嵩のあるホットケーキのような形のモチモチしたもので、焼きたてにニンニク入りバターをつけて食べると非常に美味しい。最近これまたアモレイラスショッピングから歩いて5分程度の、やはりカンポ・デ・オリーク地区のフェレイラ・ボルジェス通りに、ボーロ・デ・カコの専門店がオープンした。カコ・オ・オリジナルというファストフード店は、細く裂いた肉やツナのパテを挟んだもの、ヌテラというチョコクリームを挟んだもの、ソーセージやチーズを巻いて棒状にしたものなど、色々なボーロ・デ・カコを提案している。むっちりと食べ応えのあるマデイラ島のパンは本土のポルトガル人を征服できるだろうか?

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by caldoverde | 2015-04-09 03:23 | 話題の店 | Comments(6)
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島はどこも断崖絶壁。島最大の平地ヴェラスの町を見下ろす

 アソーレス諸島九島のうち、未踏の島はサン・ジョルジェ島のみとなった。ホテルの選択肢の少ないアソーレスであるが、インターネットで検索すると、ピコ島の素晴らしい姿が目前に広がる素敵なホテルがサン・ジョルジェ島にあった。空港からも遠くない。島一番の町のヴェラスの近く でもある。こんな眺めなら、部屋から出ないでぼーっと1日中過ごせるかもしれない。予算オーバーだが、このアパートメントホテルを予約した。
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富士山のようなピコ島。中央右に白い建物が集まっているのが、今回泊まったホテル Cantinho das Buganvilias

 正面にレセプションとレストランやジムのある円形の建物があり、その奥に独立した戸建のアパートメントが10棟程並ぶ。ホテルには屋外プールとジムのプールがあり、また少し歩くと天然の磯のプールもある。屋外プールやレストランからは海峡を挟んでピコ島の勇姿や、湾に広がるヴェラスの町や火山でできた丘が見える。部屋にはキチンが付いており、簡単な料理もできる。リビングにはソファと食事テーブル、広いバスルーム、寝室は2つ、ベッドは4つ。これを一人で使うのはもったいないのは重々承知だが、リスボンのアパートの騒音から一時解放され、大自然の静寂の中で、まだ決着のつかない「快楽」との長期戦に備えて体力を回復するための必要経費と考えよう。
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夕暮れのヴェラスの町を眺めながら飲むビールは最高。つまみは名高いサン・ジョルジェのチーズ

 去年のグラシオーザ島では、経由地のサン・ミゲル島で自転車が積み込まれず、ロストバゲージの手続きをしているうちにタクシーが空港から消えて、ホテルまで歩くはめになった。今回は自転車は置いて来たが、荷物は小型のトランクに詰めたので持ち歩きたくない。早い所タクシーを確保しなければ。アソーレスのタクシーはメーターがなく、空港からどこまでは幾ら、という定額制だ。リスボンよりも高く感じるが、仕方が無い。また実際に車で走ると地図の見かけよりずっと距離があるのがアソーレスである。サン・ジョルジェ島で最初に乗ったタクシーの運転手、ジョゼさんには到着日と翌日、最後の日と3回お世話になった。

 まずホテルに荷物を下ろし、直ぐに島一番の町のヴェラスに向かった。昼時だったので、ジョゼさんにレストランを紹介してもらい、近くで降ろしてもらった。港のそばの広場に面したアソール(アソーレス=鷹)という店だ。何人か町の人に尋ねるといつも筆頭に挙がるレストランである。

 アソーレスに来たら食べるべきものは、カサガイ(ラパス)である。この店では金網にのせて焼くのではなく、お皿にのせてオーブンで焼くようだ。生焼けのもあるが、アワビの刺身ようにコリコリした歯触りで、磯の香りが強い。むしろ新鮮で大きいのは焼かなくても良いくらいだ。
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約40個ありました

 今日のお魚はbagreという赤魚と白身魚の中間のような味で、淡白でありながら旨味がある。ウィキペディアによるとbagreはナマズとなっているが、ヒゲがあるのだろうか。リスボンでは見たことがない。付け合わせのじゃがいもはニンニクと塩で味付けしたモサモサ系の芋で、美味しくて全部食べてしまった。普通は茹でじゃがいもは黄色いねっとり系が多いので珍しい。
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頬の肉も美味しい

 食後は郷土色豊かなチーズプリン。塩気の効いたサン・ジョルジェチーズと、濃厚な黄身プリンを組み合わせた、あまじょっぱい塩羊羹のような異色のデザートである。サン・ジョルジェ島デザートコンクール入賞の盾が店内に飾られており、おそらくこれが表彰されたのであろう、個性的なスイーツだ。
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by caldoverde | 2013-07-05 21:27 | ポルトガルの旅 | Comments(4)
 私のアソーレス諸島全島制覇への旅は残すところあと3島となった。今年はサンタ・マリア島を選んだ。最も南にあり、大陸に近いサンタ・マリア島は週一度リスボンとの直行便がある。他の便はサン・ミゲル島で乗り換えだが毎日3便ある。サン・ミゲルとサンタ・マリア間はわずか30分、乗り継ぎ時間の少ない便を選ぶと離れ小島とはいえリスボンからは比較的アクセスが良い。

 島の地形は西と東で劇的に異なる。空港のある西側は平坦な草原が広がり、東側は森林に覆われた山岳地帯。島の半分を占める平野部は草が黄色く枯れ、崖や切り通しは黄色っぽい地層が現われている。サンタ・マリア島は別名「黄色い島」とも呼ばれている。
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昔はトウモロコシを挽いていた可愛い風車

 空港付近は草原の中に白い長屋のような市営住宅風の家やカマボコ型のトタンで出来た不思議な建物があるばかり。第二次大戦中からベトナム戦争ころまでサンタ・マリア島にはアメリカ軍基地があり、その頃に造られた宿舎なのだろう。タクシーは寂寥感漂う住宅地を通り過ぎ、今度はやや上り坂の、住宅展示場のような立派な家の並ぶ道に入る。そして牛や馬が点々と枯れた草を食む牧場の広がる中に何か収容所のような陰気臭い建物が見えてきた。私が3泊するホテル・コロンボである。一応島の伝統的な建材である玄武岩や赤土を取り入れた外観は、ガイドブックやインターネットで酷評されている。部屋からの眺めは良いが周辺には店も何もない。
 ピコ島に行って以来、アソーレスを自転車で散歩したいという願いがあったので、今回は超過料金を払い愛車のピンクのブロンプトンを飛行機に乗せてきた。ゆるい傾斜の平原の中に立つホテルから島最大の集落ヴィラ・ド・ポルトを移動するのに多少役に立った。
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ホテルの北側の山はいつも雲で覆われている

 島にはホテルと呼ばれる施設は、このコロンボと空港近くのサンタ・マリア・ホテル、ヴィラ・ド・ポルトのメインストリートにあるホテル・プライア・デ・ロボスの3つのみである。交通手段を持たない人は町中のプライア・デ・ロボスに泊まるべきだ。銀行、商店、スーパー、レストラン、バス、タクシー、港、図書館、自然環境センター、旅行代理店は、みなヴィラ・ド・ポルトに集中しているからだ。サンタ・マリア・ホテルは空港からヴィラ・ド・ポルトに向かうシャトルバスが途中立ち寄るが、コロンボの側は通らない。町まで3~40分歩くかタクシーを呼ぶしかない。ホテルを選ぶ時にグーグル地図やグーグルアースで調べたのだが、詳しい映像が出ず、どういう環境にあるのかよくわからないまま内装の写真で選んでしまった。
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一応4★、プール、ジム、ジャグジーあり

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 お天気は所々青空の覗く曇り空、自転車でゆるい下り坂を走るのは爽快だが、帰りは上り坂の向かい風を覚悟しなくてはいけない。ヴィラ・ド・ポルトの街はまっすぐに海に向かって伸びるメインストリートに白壁の低層住宅が肩を寄せ合う、典型的なポルトガル南部の田舎町のつくりである。まず港に下りてフェリーの待合所の観光案内所でパンフレットをもらい、見所や交通機関、レストランについて教えてもらった。つつましい町には豪華な建造物はなく、ゴシックアーチのある古い建物はスーパーに、修道院は町役場にと日常生活の中に歴史は溶けて見えにくくなっている。アソーレスの売りはどちらかというと自然である。この町にも自然環境センターがあり、英語やポルトガル語によるガイドツアーを行う。初々しい女性職員は島の動植物や化石、石の標本を平易に解説し、いろんな地質や化石の見られるトレッキングコースなどを紹介してくれる。
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港にはヨットやスキューバダイビングのクラブ、フェリー乗り場、観光案内所、wifiスポット、カフェがある。

 さてタクシー運転手も観光案内所のおばさんも自然環境センターのお姉さんも推薦する町のレストランは「オス・マリエンセス」である。市場の向かいにあり、美味しくて値段もそう高くないという。いつも参考にする英語のガイドブックには載っていない店で、客は地元の家族連れがほとんどのようだ。大好きなカサガイのグリルと腸詰のフライにヴィーニョ・ヴェルデというつまみと酒だけの晩餐にした。
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腸詰はサン・ミゲル島から来たピリカラ味

 ところが出てきたカサガイの量にたまげた。何かの冗談ではないかと思うほどの数である。しかもカサガイはみな赤い唐辛子ソースがまぶされている。ただの網焼きにレモンだけでも十分美味いものを全部キムチ味にしている。初めの1個2個なら変わった趣向として楽しめるが、だんだん辛さは増していく。白いご飯が欲しい。これは拷問だ。しかし漁師が危険を冒して捕ってきたカサガイを無駄にするのは申し訳ない。最後はもう意地で一気食いだ。殻の数を数えたらちょうど50個だった。島ではカサガイ50個を一人で平らげた女として有名になっていることだろう。
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by caldoverde | 2011-07-28 07:01 | ポルトガルの旅 | Comments(2)
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エンリケ航海王子ゆかりの地サグレスは、ローマ時代は世界の果てと考えられていた神聖な場所だった。

 久しぶりに南部のアルガルヴェ地方に行こうと思い立った。数年前サグレス岬で貸し自転車に乗って停車に失敗し2回転んだが、今回は折り畳み自転車を持参しこれでポルトガルの角っこを走破しリベンジを果たす、そしてアルガルヴェでサンマやラパ貝が採れるとの情報を得たのでそれを確認するという重要なミッションを自分自身に課した。また仕事で行く予定もあるので、その下見も兼ねた視察旅行でもある。残念ながら全部自腹である。
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子供用自転車ではありません。愛車のピンクのBROMPTON。

 サグレスまでは、まず電車か長距離バスでラゴスまで行き、そこから路線バスで最南端のサグレスに向かう。長距離の移動は鉄道より安くて時間もそう変わらないバスを使うことが多いが、最果てのサグレスには何となくロマンを感じる鉄道で行こうという気持ちになった。わくわくしながらダイヤを調べ、2日前にリスボンのセッテ・リオス駅でアルガルヴェ行き往復切符を購入した。これが大きな間違いだった。

 10時半にリスボンから電車に乗るとまもなく車掌が改札に来た。彼はxxでバスに乗り換えます、と言っていたようだが、アルガルヴェに入ったらトゥーネスという駅で幹線からローカル線に乗り換えて終点のラゴスまで行くので、そのことを言っているに違いないと自分自身に納得させた。バスと聞こえたのは空耳だろうと。

 リスボンから3つ目の駅セトゥーバルに着いたら、乗客がわらわら降りだした。バスに乗り換え、というのはここでの事だった。アルカサル・ド・スル駅のそばで貨物列車の脱線事故があり、その一つ手前のセトゥ―バルから2駅分バスが代替運行していた。昭和の時代に製造されたのではないかと思うくらい古くて汚いバスだった。1車線の国道を大型トラックに連なるように時速50km位で走る。乗客がなぜ高速を走らないのかと運転手に尋ねると、高速の方が遠くなるという返事だが、怪しいものである。

 グランドラ駅で再び列車に乗り換え。ここで既に予定の到着時間より1時間遅れ。今回は自転車を持って来たので度々の荷物の上げ下ろしにうんざりである。電車がなかなか出発しないので駅員に何時に出るのか聞くと「用意が出来たら」という人を食った返事に呆れた。
 バスも古くて汚かったが、電車も負けていない。リスボンからの電車もそうだったが、窓から景色が見えないくらいガラスが曇っている。窓を掃除することはないのだろう。トイレも昔の日本の国鉄の電車や駅のトイレ並みに汚い。使うと床、便器、衣類のどれかが必ず汚れる構造で作られている。バスから乗り換えた駅のそばのカフェで何か食べてそこのトイレを借りようと思ったのだが、駅員がいつ電車が出るのかも知らないのでは、電車で待機せざるを得ない。一応急行列車なので食堂車があるが、うまくもないサンドイッチなどに普通のカフェの値段の倍払ったあげく、尿意を催し電車のトイレを使うのはまっぴらごめんである。こうなったらうんとお腹を空かせて夜たっぷり食べてやる。
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この日の昼飯は駅の売店で買った生ハム味のポテチ。

 ラゴス行きの各駅停車に乗り換えるトゥーネス駅に着いたのは予定より1時間遅れの3時だった。本来なら5分も待てばラゴス行きの電車に乗り換えることが出来たのに、次のラゴス行は何と2時間後の午後5時である。電車が遅れたら丁寧にお詫びのアナウンスが入り、代わりの電車なりバスなり用意するか、全額払いもどすのが日本だが、ここはポルトガルだ。
 終点のラゴス駅に着いたら帰りの電車の切符をキャンセルし、リスボンへは長距離バスで帰る意思は固まっていたが、腹が立ったのでこのトゥーネス駅でキャンセルの手続きをした。二重に憎たらしいのは払い戻し手数料4.50ユーロを取られたことだ。何もない町の、日に10本ほどしか列車の来ない駅で2時間も無駄に待つ。それでもバールのある駅は特に電車を待っている風でもないご老人達が談笑し、ひと気のない町でささやかな賑わいを見せていた。
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ここにいた人々は誰も電車に乗らなかった。

 ようやく予定より3時間遅れで終点のラゴス駅に着いた。
 ここで重要なことに思い至った。今までなぜ私はバスを好んで使い、鉄道を避けていたのか?地方の鉄道駅は大抵町外れの不便な場所にあり、町の中心まで結構歩いたり、ひどい時はタクシーを呼ばないとどうしようもないものが多いのだ。
 ラゴス駅からサグレス行きバスの発着するターミナルは歩いて5分ほどだが、今回は移動用のバッグに詰めた折りたたみ自転車がある。じゃあ自転車で行けば良いじゃないかと思われるだろうが、このバッグというのが結構かさばるタイプで、小さな、荷台もない我がチャリにつけて運ぶのは不可能だ。初めから往復バスにすべきだったのだ。そうすれば乗換えで移動する必要は全くなかったのだ。13kgの自転車入りバッグを数百メートル引き摺り歩いた後は、腕がしびれていた。

 バスが出発する頃は日没が近づいていた。空が赤く染まり、野山が徐々に暮れなずむ。予定通りに着いていれば、ポルトガルの最南端で海に沈む夕日を観ながら愛を叫んでいるはずであったが、バスに揺られながら心の中で私の夕日を返せ、ポルトガル国鉄の馬鹿、自分の馬鹿と叫んでいた。

 丸1日かけホテルに辿り着いた。朝からまともに食事をしていないので、夕食は豪勢に美味しいものを食べ、恨みを晴らしてくれよう。ホテルのはす向かいのシーフードレストランで、殻にびっしり海藻をつけ身がプックリと大きいラパ貝を前菜にヴィニョ・ヴェルデを飲み、ワラジのようにでかいカジキマグロのステーキを平らげ、デザートはこの地方独特のキャロブという黒い豆で作ったケーキで締めくくり、怒りを鎮火させた。
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コリコリとした歯ごたえ、磯の香りがたっぷりのラパス(笠貝)。
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こってり脂肪ののったカジキマグロにたっぷりオリーブオイルをかけて。
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不気味な黒いキャロブケーキ。あんこと思えば・・・味はいまいち。
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by caldoverde | 2010-11-01 20:47 | ポルトガルの旅 | Comments(5)
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 ファイアル島の中心は火山の噴火口がくぼ地になっているカルデラだ。頂上近くの展望台までは車で行くことができる。そこで降りて人しか通れぬ細いトンネルをくぐり抜けると、いきなり巨大な緑のすり鉢の淵に立っている。いつも雲のかかった山頂のくぼ地は湿気が多く、様々な苔のような植物で覆われている。よく見ると底には更に小さな火山の噴火口がある。雨の多い時期にはくぼ地は湖になり、小さな火山は小島になる。箱庭のような世界だ。山の斜面を走る道にはアジサイの生垣が続き、また杉林もたくさんあり、通り過ぎるたび爽やかな香りがする。
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 タクシーでオルタから景色のきれいな所を随所立ち寄りながら島の中央のカルデラに登り、その後カペリーニョス火山でタクシーを降りて観光し、2時間後また火山に戻ったタクシーでピコ島行きのフェリーの出る港に行き終点、という島の南半分を巡るツアーは正味3時間、70ユーロだった。

 ピコ島から折り返しのフェリーが港に着くと、下船する客、乗船する客、出迎えや見送りの人たちで賑やかになったが、日本人は見当たらない。それなのに誰かが私の名を呼んでいる。振り向くと以前一緒に仕事をしたことがあるポルトガル人のガイドだった。彼女はピコ島から来る便でファイアル島に降り立ったところであった。こんな大西洋のど真ん中で知り合いに会うなんて世の中は狭い。

 ピコ島とファイアル島の間はわずか7キロ、30分ほどの船旅だ。フェリーが着くマダレーナは、教会を中心に伝統的な建物がちまちま並ぶ典型的なポルトガルの小さな村だ。港にはやはり鯨見物のボート屋が軒を連ねている。さて、港に着いたは良いが、泊まるところを未だ決めていない。フェリーの待合室の隣にある観光局で、個人の家を旅人に提供するゲストハウスのリストをもらい、一番部屋数の多い家に電話をかけてみた。部屋はあり、なんと次のフェリーが来る時間に車で迎えに来てくれるという。たぶん港で私のように寝る所を決めずにやって来た人たち相手の営業も兼ねてだろうが、ポルトガルにしては珍しいサービスの良さだ。
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 築200年の住宅を最近改装したというゲストハウスは、前は海とファイアル島、後ろは富士山ならぬピコ山を望む素晴らしい環境の中にある。建物はきれいに塗り直され、室内は松の木をふんだんに使った温かみのあるインテリアである。バス・トイレは共同だがシャワーではなく大きなバスタブ付き。朝食も付いている。1泊40ユーロだが、連泊すると2泊目から35ユーロになるというので2泊することにした。村の中心からは少し離れてはいるが、途中こんな小さな村に似つかわしくない駐車場つきショッピングセンターがある。ファイアル島ではとんと見なかったスーパーである。よく見るとゲストハウスの周囲には、比較的新しい立派な住宅が多い。オルタの町に比べるとリッチな感じがする。この島はお金持ちの別荘が多いのだろうか、それとも外国で働いて財を成した移民が故郷に錦を飾っているのだろうか。
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 その日の夜はガイドブックに載っていた、マダレーナのワイン組合の隣にあるレストランで夕食をとった。この辺にしかない珍しいものをと期待したのだが、残念ながらそれほど目新しいものはなかった。「クエ」や「スズキ」など、定番の魚ばかりだ。しかし前菜にリスボンではアソーレスレストランでしかお目にかかれない「ラパス(カサガイ)」があったので、それを半人前頼み、メインはステーキにした。
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 ファイアル島とピコ島のどのレストランでもお通しに必ず出てくるのが、ピコ島のチーズ。これは非常に美味しい。私のランキングではポルトガルのチーズの中で2番目に美味い。中は淡い黄色で、匂いはそれほど強くない。弾力があってしかもクリーミー、軽い酸味のあるマイルドな味わいで、チーズ嫌いの人にもたぶん大丈夫。テルセイラ島の強烈な古漬けの匂いのするチーズとは全く違う個性である。
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by caldoverde | 2009-07-29 07:40 | ポルトガルの旅 | Comments(3)
アングラの市場。左端がウツボ
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  昨年のアソーレス旅行の日記(8月19日)に寄せられたMOREIAさんのコメントの中に、かの島々ではクラカスという巨大フジツボのシチューなるものがあるという情報を頂き、今回の旅行ではフジツボを食べるのが目的のひとつとなった。ところがアングラ・ド・エロイズモのレストランのメニューを覗いてもそれらしきものは見当たらない。泊まったペンションのおじさんにクラカスはどこで食べられるのか尋ねたところ、アングラから少し離れたサン・マテウスという漁港のレストランにあるという。英語のガイドブックにも載っているアデガ・サン・マテウスという店だ。アングラの人が知っているのなら悪くないだろう。バスに乗ってサン・マテウスを目指した。

立派なガレージと犬小屋
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  街の中心から離れると小さなビーチやリゾートホテルが2つ3つほどあり、その後は街道沿いに凝った1戸建ての住宅が続く。集落には白壁に思い思いの色で縁取った庶民の家が肩を寄せ合う。黒い溶岩の固まった磯ではときおり釣を楽しむ家族の姿が見える。そのうちにやや大きめの集落に近づくと、クレーンが岩を動かす作業をしている小さな湾があり、漁船が10隻ほど泊まっている。そばには教会もある。目指す店は、この教会の向かい側にある。内部がブルーのアズレージョ張りの典型的なポルトガルの居酒屋(タスカ)では、開店まもなく入ったにも関わらず、すでに5,6人のおじさんたちがビールを片手に盛り上がっていた。その後に漁師風の若い男性、熟年夫婦など地元の人たちがやってきた。

魚の仕分けをする漁師さん
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  果たしてメニューにお目当てのフジツボはあるだろうか…ありました! 前菜部門にCRACAS(1個55セント/65セント)とある。この値段の違いは大きさに拠るのだろうか。どのくらいの大きさかは見当が付かないので、とりあえず2個頼んだ。前菜にはLAPAS(カサガイ)もあり、これも捨てがたい。マデイラ島でラパスを食べたときはパンで殻に残った汁を吸い取って食べたくらい美味しかった。1人前では前菜としては多いので半人前にしてもらった。

  メインデイッシュのメニューには聞いたことのない魚の名前が並ぶ中、知っているものがあった。MOREIA(うつぼ)である。私の駄文に時々コメントを書いていただく貴重な読者の方のハンドルネームでもあるこの魚は、ルイ・ヴィトン模様の海蛇のような姿で、その外見だけで拒絶反応を起こし絶対に食べたくないと断言する人までいる。ところがローマ帝国を舞台にした漫画を執筆中のヤマザキマリさんによると、古代ローマ人はこの魚を非常に好み、金持ちはウツボを自宅の池に飼い、名前やアクセサリーまで与えて可愛がって食べたそうだ。こげ茶に金の花模様のような皮はなめして装飾品に使い、それが後にあのフランスの有名ブランドのモノグラムが生まれるきっかけとなったのである(嘘ですが。)
  フジツボ、カサガイ、ウツボのアソーレス名物トリオでこの日の昼飯は決まった。

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  まずフジツボ。直径4cmくらいで殻には海藻がびっしり生えている。金属の耳かきのような小さな楊枝が添えられ、これで中身をかき出す。かき出した身はびっくりするほど…小さい。小さいけど、海の旨みが濃縮された、牡蠣を圧縮したような味だ。殻の中に汁が残っていて、貝をつまんで顔を天井に向け汁を飲み干したかったが、周りの目が気になって止めた。

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  今度はカサガイが鉄板に載せられて来た。赤いピーマンとニンニクが効果的なアクセントになっている。身はそれほど熱々でなく、大きいのは半生であったが、バターやオリーブオイルの存在を感じさせず、貝本来のあっさりした味を生かした日本人好みの調理法ともいえる。上品にフォークとナイフで身だけをはずして食べた。ところが食べ終わって私のフライパンが下げられた後ふと見ると、別のテーブルの客が手でカサガイの殻を口に持っていきチュッと汁を吸いながら貝を食べているではないか。ああくやしい。私の貝殻を戻してくれえ。フジツボの汁も飲み干すべきだった。

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  メインのウツボが来た。黄金色にからっと揚げたウツボは柔らかく適度な脂肪の感じられる白身魚である。いかにも精がつきそうな、ウナギ系の味である。でもウナギのような泥臭さは全くなく、小骨も除いてあるので食べやすい。レモンでさっぱりといただく。皮の内側はゼラチン質で噛むとニチャニチャと弾力があって、なんとも言えない独特の食感だ。古代コーマ人は特にこの部分を特に嗜好したそうだ。こってりしているので好き嫌いが分かれるだろう。日本式にタレをつけて蒲焼にすると美味いと思う。
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by caldoverde | 2008-07-27 02:15 | ポルトガルの旅 | Comments(3)
民族衣装の女性たちが働くフンシャルの市場
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 リスボンから飛行機で1時間40分のマデイラ諸島は亜熱帯なので、大陸のポルトガルにない食べ物がある。市場にある果物の種類は豊富でしかも大きい。リスボンで売られているチェリモアは女性の握りこぶし程の小さいものであるが、マデイラでは男性が両手の親指と中指で輪を作った位の大きさのもある。バナナは可愛い小粒のマデイラバナナもあれば、太いサツマイモのようなりんごバナナもある。熟してなかったせいもあるだろうが、しゃきっとした歯ざわりの、甘味が少ない、酸味の多いバナナで値段はなんと1本約400円!普通のバナナなら10本ついてるものが2房買える。りんごパインだか、バナナマラクジャーとかいう名前の不思議な果物もある。パイナップルもこの島の特産だ。
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緑のとうもろこしのようなものがバナナマラクジャー(?)右下の松かさのようなものはチェリモヤ
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 海産物で楽しみにしていたのが、笠のような形のラパ貝。ポルトガル人にマデイラでラパスを食べたと言うと、たいてい目を細め遠いまなざしをして恍惚とした微笑を浮かべ「う~ん」と嘆声をあげる。浅いフライパンにニンニクをきかせたバターで焼かれた笠貝がじゅうじゅう音を立てながら運ばれてくる。弾力のある身を噛むとバターとニンニクと磯の香りが渾然一体となって、口の中に広がる。口の中の熱さを冷ますために飲むビールの旨さ!貝をひっくり返すと表面に海苔のような海藻がびっしりくっついている。これが磯の味をいや増す役割を果たしているに違いない。店の従業員が推すマデイラ名物のパン、ボーロ・デ・カコは、焼きたてのホカホカで香草とニンニクバターが塗られている。そのまま食べてもモチモチしておいしいが、貝を食べた後のフライパンに残ったバターをつけて食べるとこれまた涙が出るほど旨い!パンをもうひとつ頼んで貝のエキスを全て摂取したいという誘惑に駆られたのだった。
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これはアソーレス料理店で食べたラパス。香草バターが使われている。

 マデイラには世界遺産の月桂樹の原生林がある。月桂樹の枝に刺した牛肉のバーベキューも名物料理の一つである。ほんのり月桂樹の香りが移った肉はジューシーで柔らかくとても美味しい。ところが外国人がマデイラでキャンプをしてその辺の月桂樹の枝を取ってバーベキューをして食べたところ食中毒を起こすという事故があった。彼らは毒のある木を月桂樹と間違えて使ってしまったのだろう。注意である。
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by caldoverde | 2007-05-21 17:33 | ポルトガルの旅 | Comments(2)