ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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フルナスの朝は、村を環状に囲む山や森に霞がたなびき、まるで日本の山村のようだ。通りに出ると道の奥は特に霧が深く立ち込めている。歩いていくうちにそれは霧ではなく湯気であることに気が付いた。道路のマンホールや排水溝の隙間から白い蒸気が立ち上り、硫黄の臭いが漂う。ついに湯気の大元に行き着いた。そこには黄色がかった白い地面にいくつかの石の輪があって、輪の中からほんわか湯気が立ち上り、あるいは煮えたぎった湯が恐ろしい音と共に噴出する。そばには川が流れ、河原の至る所でもうもう湯気が吹き出している。現地ではカルデイラス(ボイラー)と呼ばれているが、日本なら地獄釜とか地獄谷と名付けられそうな場所だ。怒り狂ったように吹き上げる熱湯の泉の合間に置かれた、中世の城や聖家族やラクダに乗った東方の三博士の書き割りがなんともミスマッチだ。閻魔様や鬼の方が断然似合う。

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昔の湯治場だった小さな建物は、今は温泉に棲息する微生物を紹介する科学館となっている。髪の毛の30分の1の細さの藻のような生物や、100度を超える温泉に存在するバクテリアなどが展示されている。中には地中の350度の高温を生き延びることのできる種もあるそうで、そんなのが人類を襲ったら大変なことになる。微生物センターでは温泉の水を使ったお茶やコーヒーも飲むことができる。

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そのあと、愛車のブロンプトンでフルナス湖畔のサイクリングに出かけた。初めてフルナスにきた時は、紫陽花の綺麗な、しかし車がビュンビュンとばす国道から外れて牧場に入り、そこからぬかるんだ細い登山道を歩いて湖に出たと記憶している。あれから9年、ひょっとして起伏の少ない舗装された遊歩道やサイクリングコースができていないかと期待したが、結局同じ山道を自転車を引いて歩くことになった。峠を越えるとき、別の道から来たイギリス人らしき女性に「ユーアークレイジー」と笑われた。

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しかしその苦労は、フルナス湖畔を自転車で半周し美しい景色を大いに楽しんだことで報われた。以前来た時に温泉の地熱でコジードを作っているのを見たのはここだった。レストランの立て札がつけられた砂山の下で、肉や野菜たちはじんわりと茹でられ互いの味がしみていく。水辺では鴨やガチョウのような鳥が、観光客から売店で販売している餌を貰っている。もう家禽化しているので、こいつらも温泉で茹でたら美味いのでは…と不謹慎ながら思った。

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コジードを作る温泉から湖沿いに5km位先にある、フルナス湖自然保護観察センターを訪れた。近年は牧場が原因の水質の富栄養化や、外来植物の繁殖が問題になっているので、フルナス湖を本来の姿に戻すのがセンターの目標である。観光や農業の振興と自然保護をいかに調和させるかが、アソーレスの大きな課題である。格安航空会社の就航に伴い大幅に観光客が増えたのは良いが、観光開発が自然を破壊しては本末転倒だ。今のうちにアソーレスに行けと警告する旅行サイトもある。ブームになる前に(もうなっているかもしれないが)是非とも訪れるべき場所だ。

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ようやく前日食べたコジードが1日半かかって消化された。夕食は同じ店「Tony's」でカサガイのグリルとアブロテイアという白身の魚のフライを食べた。アブロテイアはサン・ミゲル島ではよく食べられる魚で、鱈系の癖のないあっさりした味だ。飲み物はモランゲイロ(イチゴワイン)。酸味が強く、やや濁った、イチゴの香りのするワインははっきり言ってそんなに美味しいものではないが、地酒ということでアソーレスに来たら一度は飲んでみるのも良いだろう。

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by caldoverde | 2016-12-27 03:40 | ポルトガルの旅 | Comments(0)
テーラ・ノストラ・ガーデンホテルに隣接する素晴らしい庭園
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 食べ物以外のアソーレスの大きな魅力といったら、何と言っても温泉だ。ポンタ・デルガーダからバスで1時間40分ほどのフルナスという町には、そばにカルデラ湖があり、湖のほとりに湧く温泉の熱を利用して島民が鍋物を作ることで有名だ。また温泉の水を利用した大きなプールと素晴らしい庭園を持つテーラ・ノストラ・ガーデンホテルも名高い。普段はなるだけ安いペンションに泊まる私もたまには贅沢しようと、このテーラ・ノストラ・ガーデンホテルに1泊することにした。このために15年位前に買って一度も公衆の面前で着たことのないセパレーツの水着も用意してきた。

 早めにホテルに着いたので、荷物を預け、湖に行く道を聞き、散歩に出かけた。日本の温泉町のように町中には小さな川がいくつか流れ、中には黄褐色の水の川もある。町のメインストリートから外れて、農道に入ると牛や畑の世話をしている人を2、3人見かけた以外はほとんど人も車も来ない。途中から舗装されていない細い山道に入り、草木の雫に足を湿らせながら坂道を登って急に下り坂になると、下のほうには車が往来する舗装道路がある。降りると目の前に青緑色の湖が広がっていた。

 ところが何だか雰囲気が物々しい。ヨーロッパやポルトガルの観光客が次々レンタカーや自分の車でやって来るが、一般車や観光客に匹敵する数のパトカーや警官がいる。消防車まで出動している。白い湯気の立つ温泉鍋の現場のはるか手前でロープが張られ、通行が規制されている。殺人事件でもあったのだろうか。よく見ると、反射板とかカメラを支えている人たちがいる。映画かTVの撮影が行われているらしい。事情のわからない私やフランス人、ドイツ人観光客に対し、お巡りさんが3〜4人ずつロープのそばにやって来ては、見て宜しいと許可を与えている。私はポルトガル人の俳優はどうでもいい。温泉で鍋物を作るところが見たくて道なき道を苦労して歩いてきたのに、目前で目的は達成できなかった。せめて来た記念にフルナスの名前入りの温泉饅頭とか温泉卵でも買ってやろうと思ったが、移動販売車のカフェにあるのはポルトガルのどこのスーパーにもあるメーカーもののアイス、チョコ、ドーナツばかり。それにしてもポルトガル人は商売気がない。

 移動販売車の止まっている辺りには穴のたくさん開いている泥のくぼみがあって、そこからも湯気が立っている。近づくと硫黄のにおいがし、地面に触ると暖かい。耳を澄ますとごうごうと水音がする。これは温泉だ!懐かしさで胸いっぱいになった。湖の周辺にはレストランもなさそうなので、今度は車の通る道を歩いて町まで戻った。曲がりくねった山道の両側にはアジサイの花が沢山咲いていてとても綺麗だ。しかし前後から車がビュンビュンやって来る。歩道がないのでその度に体をアジサイの植え込みに傾けなくてはいけない。人気のない農道と車の来る街道とどっちが安全かというと何とも言えない。

 2キロほど歩いて町に着くと、レストランの看板を見つけた。名前は Aguas Quentes(お湯)。いかにも温泉鍋がありそうな店名なので早速入った。開店したばかりの正午頃だったせいか、お客は私のほかに1組のカップルのみ。メニューを開くと、ビンゴ!Cozido nas Caldeiras(温泉鍋) 1人前と2人前がある。1人前11ユーロとハウスワインの赤を頼んだ。腹を膨らまさないようにパンには手を付けず我慢した。そのうちにどんどん家族連れがやってきた。ポルトガル人も多い。有名な店なのかもしれない。
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 ステンレスの楕円皿に盛られたコジードがやって来た。思わず絶句した。これが一人前だろうか。全部食べろというのは拷問に等しい。別皿にご飯も付いている。小山となっている煮物を隠すかのように大きな青菜が覆いかぶさって、それを除けると下からソーセージや牛・豚・鶏肉の塊、大きなジャガイモ、半分に切ったキャベツ、人参がごろごろ出てくる。私は腸詰が好きなのでまず赤いチョリソから始めた。ピリッと辛くて、うまい!この鮮やかな色はアソーレス料理によく使われる大きな赤い唐辛子の色なのだろう。次に材料のうまみをたっぷり吸ったキャベツ。野菜の甘みと肉のコク、ソーセージに使われている香辛料が渾然一体となって、複雑なハーモニーを醸し出す。コラーゲンたっぷりのぷるんぷるんした豚足。ねっとりしたジャガイモ、柔らかい骨付き若鶏モモ肉、スパイシーなブラッドソーセージ、甘い人参、パサパサになるまで茹でられた牛肉、ウニャッとした腸詰ファリニェイラを交互に切っては食べ、食べてはワインを飲み、と口と胃は休む暇がない。5分の3は食べたところでギブアップ。牛のように胃が4つあれば全部平らげたかったところだ。リスボンで食べるコジードもうまいけれど、温泉の熱でじっくり7時間かけて調理するというフルナスの温泉コジードは今まで食べたコジードの中で最も美味だった。

 その後が大変だった。満腹の状態ではプールに入れないので、庭園を散歩して少しでもカロリーの消化に努めたが、胃がもたれて苦しかった。ホテルの宿泊客が食事を取り始める8時ごろようやく腹も落ちついてきたので、そろそろプールに行こうと水着を着てみたが、鏡に映った己の姿にショックを受けた。しかしプールにはナイスバデーの若い女性もいるけど、温泉だから爺婆も多いので、その中間(からやや爺婆寄り)の私などに誰も気に止めることはないだろうと信じつつ、水着デビューを果たした。直径が30メートルもあろうかと思われる円形のプールはオレンジジュースと濃い緑茶を混ぜたような不気味な色の水をたたえ、プールの壁にはぬるっとした藻が生えていて気持ち悪いが、なんとなく効きそうな湯である。しかも透明度がほとんどないので湯に入っている間、体は見えない。水着姿を恥じる必要は無かった。滝に打たれたり歩いたり泳いだりしながら1時間半ほど久々の温泉を楽しんだ。
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by caldoverde | 2007-08-16 06:20 | ポルトガルの旅 | Comments(2)