ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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リッチな貧乏料理

 二月はあまりツキがなかった。今年もヴァレンタインデーはおひとりさまだった上に、風邪かアレルギーか知らないが喉をやられてしまい、商売道具である声を失った私は失業状態に陥った。天気は良いので気晴らしに外に出たくても、何かの花粉を捕まえて症状が悪化するのではないかという懸念もあり、家にこもる日が続いた。当然食生活も節約モードになり、冷蔵庫の整理に励むこととなった。二日前に炊いたご飯。薬を処方されたために飲めなくなった赤ワイン。一度使ったきりで冷蔵庫の隅に眠ったままの唐辛子ペースト。芽が出てきたニンニク。1個だけ残った玉葱。これらを復活させ、食べて成仏させなくては。

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アソーレスの料理によく使われる唐辛子のペースト

 ご飯はデパートで買ったちょっと高いバレンシア米で、袋のデザインが日本の農協のマークを連想させるのできっとうまいだろうと試しに購入したのだが、日本のお米が真珠ならばこのバレンシア米は玉砂利であった。きっとパエリャにすれば抜群に美味しいのだろうが、白ご飯向きではなかった。
 ワインは、階下のスーパーで、セレクションとかリザーヴとか書いてあるちょっとお高めのワインを集めたフェアを開催しており、その中で一番安い4ユーロ98セント(約450円)のアレンテージョワインを買ったのである。さすがに普段飲む2~3ユーロのものよりはコクがあってうまい。しかし、ビンに3分の2も残したまま2~3日経っているワインはもう酸っぱくなっているだろう。
 たんぱく質は無農薬ものの食品を扱う高めのスーパーで一番安い鶏手羽4本1ユーロ40セント(約130円)を買い、これを唐辛子ペーストとワインに一晩漬け込んだ。

 翌日漬けた鶏手羽を調味液から取り出し、フライパンで焦げ目が付く程度に焼く。もちろん調味液は捨ててはいけない。その傍ら圧力鍋で薄切りにした玉葱とニンニクをオリーブオイルでしんなりするまで炒める。そこに冷や飯を投入し、パラパラにほぐすように混ぜ、さらに鶏手羽もぶち込む。その上から惜しみなくドボドボと赤ワインを注ぎ、残った調味液も加え、びっちり蓋をして強火にかける。圧力鍋がしゅるしゅるうなりながら蒸気を噴出し始める。10~15分ほど鍋を怒らせたままにし、適当なころあいを見て火を止める。すぐに蓋を開けることはできない。待つこと20分位であろうか、圧力が弱まって蒸気が抜けたのを確認して初めて鍋の中身を見ることができる。いったいどうなっているのだろうか、グチャグチャに溶けていないだろうか、黒焦げになっていないだろうか、味はちゃんと付いているだろうか…期待と不安に胸躍らせながらコックをひねり、重い蓋を開けた。そこには…



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 血のような赤いご飯が炊き上がっていた。ワインのかぐわしい匂いが立ち上った。ポルトガル料理のカビデーラよりも色も匂いも良いではないか。塩も何も加えず、唐辛子ペーストとワインと鶏手羽からのダシだけの味付けでものすごくうまい。残りものや安い材料といえども、それなりに良い素材を使ったせいだろうか。鶏手羽を丸ごと煮込むとそれなりにボリューム感も出る。私ってもしかして天才シェフ?と賛同してくれる相手もなく一人で赤ワイン雑炊を二日にわたって食べたのだった。
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by caldoverde | 2011-02-28 23:20 | パン・ご飯 | Comments(10)
 日をおいて再びトマール近郊のレストラン「ア・ルリア」に、季節も終わりに近づきつつあるキノコ、シレルカを食べに行った。メニューはこの前とほぼ同じ、シレルカ入りスクランブルエッグ、焼きシレルカ、サーヴェルのフライ魚卵入りアソルダ添え、焼肉盛り合わせと、ベジタリアンの参加者のために前菜に小鰯のマリネ、メインにタコのオーブン焼きも加えた。今回は焼肉の付け合せとしてアソルダの代わりにシレルカのリゾットを頼んだ。

たっぷり玉葱ののった小鰯のマリネ。元祖南蛮漬け。
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信じられないほど柔らかいタコのオーブン焼き
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 シレルカ関係のメニューで一番美味しいのはこのリゾットだと思う。ふわっとキノコ特有の春の土のような香りが立ち、とろりとクリーミーなリゾットのお米は弾力のある、しかし芯はないポルトガル人好みの炊き上がり。細かく切ったベーコンが隠し味になって、塩味も程よく、お替りの進む味だ。肉や魚がなくても、このリゾットだけでも満足できそうだと思うのは、やはり米が主食の日本人だからだろうか。
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 この日は6人でワイン、デザート、コーヒーも頼んで1人当たりたったの18ユーロだった。レストランの帰りに生のシレルカを分けてもらおうと考えていたが、あまりにも満腹し、このうえ食べ物を持ち帰る気にはならなかった。しかし、夜にこの文章を書いている内に、まだ胃は昼間食べたものを消化中であるにもかかわらず、シレルカのリゾットを好きなだけ食べたいという欲求が湧いてきた。生シレルカを持ち帰っていれば、明日自分で作れるんだった。どうしよう、誰か車を出せる人に頼んでキノコがなくなる前にトマールに行くべきか・・・

 ポルトガルのど田舎にはしばしば、こんなところにこんな店がと思わせるような、味が良くてボリュームたっぷりでしかも安いという、三拍子揃ったレストランがある。そのような店はガイドブックにもミシュランにも載っていないが、ポルトガル人はちゃんと知っている。前に「ア・ルリア」に行ったときは平日で、客の入りもそれほどではなかったが、地元の名士といった雰囲気のお金持ちそうなおじさんたちのグループや、高級車でやってきたスーツ姿の中年夫婦が食べていた。今回は給料が出た後の日曜日だったので、入り口で順番を待つ家族連れがいたり、外の駐車場が満車だったりとかなりの繁盛ぶりを見せていた。不景気にもかかわらず、いや不景気だからこそ、人はますます安くて美味いところを嗅ぎ分ける嗅覚が発達するものだ。
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by caldoverde | 2009-03-30 08:32 | 野菜・果物・キノコ | Comments(3)

マテ貝のリゾット

 近所の市場を覗いたら、丸々太った鯖が目に入り、鯖の味噌煮でも作ろうかと考えた。おばさんが鯖の重さを量り頭や内臓を取ってくれる間、不意に鯖の並んでいるそばにマテ貝があるのに気が付いた。最初から見えていれば鯖など買わず(1匹4ユーロ以上した)即座にマテ貝を買っていたのだが。子供の頃から眼鏡をかけている私は視界が異常に狭く、すぐ目の前にいる知人に気がつかずに、挨拶もせず通り過ぎるといった失敗は数知れない。
 長さ約10cmのマテ貝が20本ほどゴムで束ねられて、白いべろを出している。まだ生きている。デパートでマテ貝を見たが真空パックで包装された死んだもので、値段も高かった。この近所の市場でマテ貝を見るのは、というか貝類が売られているのはめったにない。値段は8ユーロ。かなりの予算オーバーとなるが、この機を逃したら自分の人生でマテ貝を食べるチャンスはもう二度と巡って来ないかもと思うと、既にさばかれ返品不可能となった鯖とともにマテ貝も買ってしまった。
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 私はマテ貝を日本で食べたことがない。初めて食べたのはアルガルヴェのどこかでマテ貝のリゾットを食べたときだった。どの町の何と言うレストランか思い出す手がかりは全く失ってしまったが、上品なあの味は忘れがたい。お米のクリーミーな舌触り、貝の歯ごたえ、日本料理にも通じる旨みのあるスープの味、そしてかすかなコリアンダーの香り。私が食べたポルトガルの米料理のベスト3は、漁師町のシーフードリゾット、北部の鴨の炊き込みご飯、そしてこの南部のマテ貝のリゾットである。もう一度食べたいものだと常々思っていたが、リスボンでこの料理をメニューに入れているレストランを見たことがない。となるとアルガルヴェに行くか自分で作るしかない。
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 インターネットでマテ貝のリゾット(arroz de lingueirão)のレシピを調べると色んな作り方があるが、私がたった一度食べてとても美味かったのは、トマトを使わない白いシンプルなリゾットだった。それに一番近いと思われるレシピを参照し、幻の味の再現にチャレンジした。

1、マテ貝をゆでる。
 砂出しをしたマテ貝を洗い、水を張った鍋に入れて火にかけゆでる。ゆで汁は米を煮るためにとっておく。
2、玉ねぎ、ニンニクをみじん切りにしてオリーブオイルで炒める。
 リゾットに限らずほとんどのポルトガル料理の基本中の基本で欠かせないもの。透明になる まで炒める。香りづけに月桂樹の葉も加える。
3、殻から出したマテ貝を加えて炒め、貝のゆで汁、白ワインを加え、米も入れて煮る。割合は米1に対し水分3くらい。米の硬さはお好みで。
4、塩で味を調え、仕上げにコリアンダーの葉を散らす。

 店で食べたリゾットの貝は小さく切られていたが、家で作るときは気前良く長いまま使う。ゆでると殻よりも大きくなって食べ応えがある。日本では殻つきのまま焼いたり、天ぷらやヌタにしたり色々な食べ方があるようだが、リゾットにして食べるのは、多分ポルトガルのアルガルヴェ地方だけだろう。自分で作ったマテ貝のリゾットはプロの味には及ばないが、貝をふんだんに使って贅沢感が味わえた。
オリーブオイルとニンニクで炒めただけでも美味い。
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 アルガルヴェには他にも独特の魚介料理がある。有名なカタプラーナはリスボンでも食べられるが、ウツボのフライのサンドイッチや、ツブ貝と豆の煮物などは現地に行かないと味わえない。ポルトガルで一番美味しいイワシはアルガルベ産だそうだ。アルガルヴェでは観光客向けのピザやハンバーガーなど無視して、地元の漁師を捕まえてどこの店が美味いか聞いてみよう。
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by caldoverde | 2008-11-28 08:31 | シーフード | Comments(7)

アンコウ(タンボリル)

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 市場やスーパーの鮮魚コーナーにいくと、世の中には自分を凌ぐ容貌の生き物がたくさん存在することを確認し安堵する。ギザギザの歯をむく黒太刀魚、ピカソの絵のような平目系、そしてだらしなく開けた口から内臓が飛び出して、体全体がべったりと潰れたような格好のアンコウ。数ある魚の中でも、とりわけ私に自信を持たせてくれる顔をしているのがこのアンコウである。

 日本ではアンコウは捨てるところがないといわれ、特に肝は美味とされている。私は魚も動物も肝臓は得意ではないので積極的に食べないが、昔ナザレの魚市場でアンコウをさばく人が皮とかヒレと一緒に大きなアン肝を惜しみなくバケツに捨てているのを見て、あ~もったいないと思ったものだ。ところが最近はポルトガル人の間でも、アン肝のおいしさが認知されてきたようである。市場でひっくり返っているアンコウは、腹の真ん中に穴が開けられ、大きな肝を見せびらかしている。アン肝だけを使った料理があるのかどうかは知らないが、ポルトガル料理の人気者アンコウのリゾット(アロース・デ・タンボリル)は(本格的なレシピでは)アン肝を白ワインと混ぜたものを味付けに使う。一般的なレストランでは多分そこまで凝っていないと思うが、ぷりっと弾力のある淡白なアンコウが入ったリゾットは、ポルトガルの米料理の御三家に入れていいと思う。
マッサーダ・デ・タンボリル(アンコウとパスタの煮込み)小さく切ったピンク色のものがアン肝。スープが美味い!
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 他にアンコウの料理というと魚介類のシチューであるカルデイラーダやカタプラーナなど、トマト系の味付けで煮込んだものが主だ。日本風に刺身やしゃぶしゃぶや水炊きにしてもおいしいと思うのだが、日本料理店でも見かけない。でもポルトガルにあって日本になさそうな食べ方は、アンコウのバーベキューである。世界遺産の町シントラから少し離れたところにある田舎風の一軒家のレストラン、クラル・ドス・カペリーノスでは牛肉、豚肉の他にイカや海老、そしてアンコウを野菜とともに炭火で焼いたエスペターダ(串焼き)が名物である。給仕がテーブルにやってきて特殊な台に50cmはありそうな長い金属製串を吊るして、刺された肉、魚、野菜をめいめいの皿にサービスする。表面は香ばしい焦げ目がついて、中身はジューシーな肉や魚の炭火焼は単純にして美味しい。アンコウ本来のあっさりした味が楽しめて、トマト味に飽きた舌には新鮮だ。
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by caldoverde | 2008-05-30 23:29 | シーフード | Comments(8)
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 ポルトガル料理における盛り付けのセンスのなさにはしばしば呆れる。ただ山盛りに盛って量をアピールしただけで、彩りやバランス、器との調和などどうでもいいようだ。逆にこれらの要素が十分配慮された懐石みたいなものは、ポルトガル人には、値段のわりに可食部が少ないと不評を買うであろう。とにかく実質第一だ。腹一杯になることが重要なのだ。
 
 しかしながら食べ物にはそれ自体に食欲をそそる様々な特徴がある。鮮やかな色、香ばしい匂い。立ち上る湯気、じゅっと焼ける音、ふつふつと現れては消えるあぶく。滑らかな表面に反射する光。そのような、味以外のチャームポイントの欠如した食べ物、第一印象で拒絶反応を起こしそうな、見て絶句するような外観の食べ物は世の中に少なからず存在する。そこを何とか取り繕ってお上品に見せるのも料理人の腕なのだが・・・

 もっと見栄えがよければより多くの人に愛されたはずのものに、雑炊系の料理がある。と言っても、日本の旅行会社のツアーメニューの常連である蛸リゾットとかシーフードリゾットはまだ良い。海産物のおじやは彩りが良く、食欲をそそり、味も見た目に一致する。
 問題は鶏肉、うさぎ、八目ウナギを使ったリゾットだ。これらのリゾットは肉や魚のほかにその血も使う。更に味付けに赤ワインも入れる。それがどのような結果を生じるか想像できるだろうか。


・・・こんなです。
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 八目ウナギは採れるところがポルトガルでは三つの河川だけだそうだ。昔は王様しか食べることが許されなかった貴重な魚なので、庶民はクリスマスなどの祝い事には本物の代わりに八目ウナギを模ったケーキを食べた。ひょっとするとこちらのほうが美味いかもしれない。

 昔、その八目ウナギの棲むモンデゴ河流域の小さな村にある「ミシュラン」推奨のとあるレストランで、その店の名物である八目ウナギのリゾットを食べたことがある。電車やバスを乗り継ぐこと数時間(どこでバスを降りるのか分からず乗り越し、終点まで行って戻った)ようやく星のついたレストランに着き、メニューの中の一番高い料理(当時の値段で約6000円)当店ご自慢のミシュランも推す八目ウナギのリゾットを注文した。待つこと数十分。上品な給仕によってリゾットがうやうやしく運ばれてきた。
 陶器鍋に入った、ぐつぐつ音を立てているリゾットは、まるで地獄の血の池だ。ほとんど黒に近いような暗褐色のドロドロの汁の中に米の粒がうごめき、真っ黒なぶつ切りにされたドジョウ程の太さのウナギが見え隠れしている。こんな不気味で高価な料理は後にも先にも食べたことがなかった。なぜ高価かというと、ただでさえ希少な八目ウナギを、地元の最高級ワインで煮たものだからだ。したがってまずいわけがない。これは美味しいものなのだと自分に言い聞かせながら食べた。食べながら、日本のウナギの蒲焼はなんて美味しいんだろうと思った。そしてこんなに小さいうちに捕獲され、最適とは思えない調理法で食われるウナギを不憫に感じた。

 もし今同じものを食べたら、また違う感想を持つだろう。ウナギの滑らかなゼラチン質の身の弾力、芳醇なワインの香り、うまみを吸った米に、ああ、これこそが王者の食べ物だと感涙にむせび泣くかもしれない。近所のレストランで「八目ウナギリゾットあります(4切れ入り)25ユーロ(約4000円)」という張り紙を見た。宝くじに当たったら、ウナギをもう4切れ追加して注文するつもりだ。いずれにせよ、見た目をどうにかすれば良いのにという意見は変わらないだろう。
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2012年2月12日リスボンのミーニョ地方郷土料理店で食べた八目ウナギリゾット。
不況のため八目ウナギが値崩れしていると漁師は嘆くが、庶民には嬉しい17ユーロでした。

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by caldoverde | 2007-04-09 23:38 | シーフード | Comments(1)