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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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阿蘇列島旅日記4 フローレス島・コルヴォ島篇 その2 コルヴォ島訪問

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 プロペラ機がフローレス島サンタ・クルス空港の短い滑走路に着陸し、機内から降りた乗客は歩いて小さな空港の建物に向かった。そこには私たちを迎えるINATELのホテルの車が待っているはずだったが、ドライバーらしき人も車も見当たらない。おば様4人グループのリーダー格の元気のいいアンドレス嬢は近くにいた若者を捕まえ、INATELのホテルの車がどれか知らないかと訪ねた。彼は親切なことに電話でホテルに問い合わせ、もうすぐここに来るからと私たちを安心させた。アンドレス嬢と彼の間では、32、いや、27、などと値段を交渉する会話が続いていた。彼は遊覧船や車で島を案内するガイドで、仕切り屋のアンドレス嬢は、さっさと7人がコルヴォ島に行く遊覧船の予約を取り付けたのだ。その日から三日連続で、私たち7人は若き島の生き字引カルロス氏の案内でコルヴォ島とフローレス島を外側と内側から鑑賞することになる。
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 HOTEL DAS FLORESは昔の鯨の加工場のそばの、海岸に接した絶好のロケーションにあり、大きく取ったロビーの窓から海とコルヴォ島が見える。私たちに割り当てられた部屋4つのうち1つだけがオーシャンビューで残りは全く面白くない村側に面していた。ここでもアンドレス嬢が早速くじを作り、引き当てた人がオーシャンビューの部屋に泊まるように段取りをつけた。少し後に比較的若い女性客がやって来た。後から彼氏と合流かと思ったらこれまたポルトガル人女性に珍しい完全な一人旅で、ポルトから来たそうだ。彼女もSATAのストライキの影響を受け、予定より多い日数をここで過ごすことになってしまった。アンドレス嬢はもちろんこのポルトの女性も仲間に引き入れ、遊覧船がチャーターできる人数に頭数を揃えた。
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 昔鯨を引き上げていた小さな港に20人乗りのボートがやって来た。先ほど空港で会ったカルロスがボートを操縦し、島の産業や地形、生き物の生態などの話を織り交ぜ島の沿岸を回り、様々な形の小島、切り立った崖から流れ落ちる滝、大小の洞窟、不思議な模様の岩などを見せてくれる。どの景観も太古の昔、海中から火山が爆発しアソーレス諸島が形成されていく天地創造のプロセスを誇示するような凄まじい美しさだ。
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 島を半周したところで、外洋に出て20km沖のコルヴォ島に向かう。この辺りの海にはよくイルカがやってくる。またたまに鯨も見られるらしい。フローレス島はアソーレスで最初に鯨漁が行われた島である。今、日本のイルカ漁を取材した映画が話題になっているが、確かに波間に跳ね躍るイルカは可愛い。声も可愛い。殺すのは可哀相という気持ちが湧くのも解るかも。

 私はどちらかというとフローレス島よりもコルヴォ島の方に興味があった。リスボンのジャーナリストが書いたコルヴォ島のルポルタージュを読み、この最果ての小島を見たくなったのだ。幅4km、長さ6.5km、ひとつの集落しかないコルヴォ島の四百人の住民は全員顔見知り、ホテル、レストランは一軒だけ、常駐の医師は一人。隣のフローレス島からの連絡船は1日1往復、物資を運ぶ船は15日おきにやってくる。空港には週に三便のプロペラ機が発着するが、天候が悪ければ、他の島との連絡は絶たれる。そんな閉塞的な島の教会に赴任する若い神父は、孤独に耐え切れずほとんど任期を全うせず本土に帰ってしまう。
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 唯一の集落ヴィラ・ノヴァからはフローレス島が見える。向かいのフローレスには、変化に富んだ美しい景観に惹かれてやってくる世界中の観光客が何組も宿泊できるホテル、自然の磯を利用した海浜プール、スーパーマーケット、若者向けのバー、クルーズやダイビングをアレンジする旅行社など、観光地としてのインフラはいちおう整っている。売りが火山の噴火口ひとつだけのコルヴォにとって、フローレスは何でもある、羨ましい存在なのだ。

 コルヴォとはカラスの意である。カラスが生息しているからではなく、肩をすぼめてうずくまったような姿が、カラスに似ているから名付けられたのだそうだ。いじけたような形と名前のコルヴォ島の人々は、花の島と呼ばれる華やかなフローレス島に嫉妬と憧憬のまなざしを向けながら、互いに助け合いながらもひそかに監視しあいつつ、つましい暮らしを送っているのだろうか。まったくの一人旅ならこのような感傷にゆっくり浸ることもできたのだが、賑やかな本土のポルトガル人達と一緒ではもう陽気に楽しむしかない。

 港に着くと、今度はボートの操縦桿をバンのハンドルに持ち替えカルロスが火山の噴火口まで案内した。山道の途中に門があり、その先は個人所有の牧場になっている。他の島同様コルヴォの重要産業は酪農で、昔はバター工場もあった。登るにつれ山肌が白っぽくなっていく。カルロスが拳骨を白い岩に押し当てると、そのまま腕がずぶずぶと岩の中に飲み込まれていった。岩のように見えたのはコケの一種で、厚みは1mにも達するのだそうだ。
左側の白っぽい斜面がコケの群生地。雪よりも歩行が困難。
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 火山の噴火口は息を呑む風景だ。火口に下る斜面の半分は継ぎはぎ模様の牧場、日当たりの悪い側は先ほどのフカフカした白いコケで覆われている。火口は水がたまり京都の寺院の庭のように美しい池ができている。雨の多い時期は大きな湖となる。
斜面を区切る青い線はアジサイの花
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 村に下り、一つしかないので必然的に島一番の店となるレストランで昼食。メニューはクエの塩焼き。お通しはフローレス島のチーズ。パンが意外に美味しい。ワインは名高いピコ島の白ワイン。
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 大阪のおばちゃん並の厳しい値切り攻勢に押され、一人29ユーロでボートを出してくれたカルロスのすばらしい案内に大いに満足した私たちは、30ユーロに切り上げて払い、翌日のフローレス島内観光も彼を指名することとなった。
おば様のアイドルとなったカルロス。目元がトム・クルーズ似です。
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Commented by おっちゃん at 2010-07-15 17:56 x
また今年もバカンスシーズンがやってきたのね。絶海の孤島、住民は皆顔見知り、サスペンスのシチュエーションですな。
Commented by caldoverde at 2010-07-15 20:48
火山の外は断崖絶壁で、人も車も近寄れない。島には警察もないから、よそ者がやってきて行方不明になっても事件は迷宮入り・・・
by caldoverde | 2010-07-13 22:52 | ポルトガルの旅 | Comments(2)