世界遺産スイーツ
2011年 01月 06日

ユネスコ世界遺産の町エヴォラには数々の歴史的建造物があり、文化財的食べ物がある。フレッシュチーズを使った焼き菓子ケイジャーダもその一つである。エヴォラのケイジャーダはしっとりとして優しいミルクの味がする。マデイラ島やアソーレス諸島を含めたポルトガル全国にケイジャーダはあるが、エヴォラのそれは世界遺産級に美味である。町の中央ジラルド広場の一角にある「アルカーダ」という菓子屋のケイジャーダは私のお気に入りであったが、最近この店を凌駕するケイジャーダを見つけてしまった。

ジラルド広場のアーケードの緩やかな坂を下り、アーケードが終ったところで左に曲がり、小さな広場を二つほど通り過ぎながら奥に進むと右側に目立たない菓子屋がある。その名は修道院菓子処Pão de Rala という。Pão de Ralaとは直訳すると粗挽き小麦粉のパンという意味だが、粗挽き粉のパンとは対極にアンチヘルシーなウルトラヘビー級の重~~~く甘~~~い巨大な饅頭のようなアレンテージョ地方の郷土菓子である。

オリーブの実を象ったという真ん中に1本の筋を入れた丸いマジパン(アーモンドペースト)のかたまりの中に、鶏卵そうめん、糸かぼちゃのジャム、黄身クリームなど、色も甘さも強烈な材料を混ぜた餡を入れたもので、切り口を見るとねっとり目の詰んだ粘土のようなマジパンの中に、真っ黄色の糸と蜂蜜色の糸が蜜に絡み合ったものが挟まっている。昔は貴重品であった砂糖をこれでもかこれでもかと使った、血糖値の限界への挑戦を挑むような、形がボクシングのグローブに見えてくるような、そんなお菓子である。大食い大会でこの菓子が出されたら、どれだけの選手がお茶を飲まずに完食できるだろうか。

このお菓子には古い言い伝えがある。16世紀の若き国王セバスチャンが突然エヴォラを訪れ、ある尼僧院に泊まることになった。6月のうだるような暑い日にやって来た王様ご一行をもてなすために、貧しい尼僧院が用意できたのは、わずかなパンとオリーブの実と水のみであった。それでも長旅と灼熱の暑さに疲れた王と廷臣たちにとっては十分なごちそうであった。王はリスボンに帰った後、感謝の印にオリーブの形の菓子を尼僧院に賜った。それがこのPão de Ralaであったという。

そんな由緒のあるお菓子を看板としたこの店のその他のラインナップは、マジパンで作ったチーズの形をしたケーキだとか、プラムの砂糖煮とか、卵黄を砂糖で煮詰めたプチフールとか、見ただけで歯がうずき胃酸の分泌が活発になる伝統菓子が中心であるが、その中で現代の嗜好に合わせ?甘さがしつこくないものが、ケイジャーダとアーモンドタルトだ。

花形のビスケット生地にフレッシュチーズ、砂糖、卵、小麦粉を混ぜたフィリングを入れて焼いたケイジャーダは、大きさはエッグタルトとほぼ同じ。甘党なら2個は楽勝の量と糖度である。初めてこの店のケイジャーダを食べたときは、しばらくこの手のものから遠ざかっていたせいか、今まで食べていたのは何だったのかと思えるほどの衝撃的な美味しさだった。それはまさしく新鮮な絞りたてのミルクの味だった。
アーモンドタルトはさくさくとした感触と軽く焼いたアーモンドの香りが、田舎の菓子屋のものにしては洗練されていて、上等な紅茶が欲しくなるようなスイーツである。
どちらも一個1ユーロとお土産に手ごろな値段ではあるが、やはりその日に作られた新鮮なものが美味しい。一方伝統のパン・デ・ラーラは一年間もつという店の人の話であるので、日本に持ち帰っても品質に影響ない。いや、360度に分けて毎日1度分づつ薄く切って食べて一年間楽しめると言うことか。この甘さなら食べ切るのに一年かかるだろう。
昔四十年も前、近所のおばさんの焼いたケーキは固くて味が濃くて甘かった。卵の味も今より濃かった気がします。そういうのは日本ではもう食べられないのかもね。
0
ポルトガルのお菓子はホームメイドのように不ぞろいでボソッとしたものが多いけど、余計なものは加えてないので、焼きたてはとても美味しい。香料を入れていないので、卵の風味がしっかりです。
その代わり保存がきかず、長持ちするものはこのような砂糖をどっさり入れたものです。でも保存料を使うよりは健康的なのかも。
その代わり保存がきかず、長持ちするものはこのような砂糖をどっさり入れたものです。でも保存料を使うよりは健康的なのかも。
by caldoverde
| 2011-01-06 20:18
| お菓子・カフェ
|
Comments(4)





