ベスト・オブ・パステル・デ・ナタ
2012年 04月 22日
先日、日本ではエッグタルトの呼び名でおなじみのパステル・デ・ナタのコンクールがリスボンで行われた。最優秀賞に輝いたのは、私の家から歩いて3分のカフェ「アロマ」だった。カウンターと小さなテーブルが幾つかあるだけの小さな店だが、このカンポ・デ・オリーク地区で最も古いカフェだそうだ。向かいは取り壊されてマンションになる予定の映画館が恐竜の骨のような残骸をさらしているが、かつては映画の前後にコーヒーを飲む客で溢れかえった時代もあった。映画の黄金期は去り「アロマ」はTVもBGMも昼定食もない、町内のあちこちにある小さなカフェの一つとして地道に営業を続けていたが、再びスポットライトを浴びることになった。
クリスマス時期にはボーロ・レイがウィンドウを彩り、時々クリームたっぷりのエクレアやサヴァランがあって私を引きずり込むことがある。でも突出して美味いお菓子があるとは思わなかった。
ある日、朝の焼きたてのお菓子が並ぶ時刻にたまたま入り、エッグタルトはベレンのパスティス・デ・ベレンのものしか食べない私がこの店のエッグタルトを食べたところ、凄く美味しく感じられた。
ベレンのエッグタルトは皮がやや焦げてバリバリに硬くて油っこいが、「アロマ」のパイ皮はサクサク感が歯に心地よい。カスタードクリームはベレンのほうが甘さは控えめで私の好みだが、ポルトガル人には物足りないのか、2~3個食べる人も珍しくない。「アロマ」のは甘さがやや強く、1個で満足できる。そのような点が評価されたのだろうか。
元祖「パスティス・デ・ベレン」がこのコンペティションに参加したのかどうか知らないが、住宅地の小さな店が、 有名店「スイサ」や5つ星ホテルのレストランのエッグタルトを抑えての最高賞は快挙である。
テレビのニュースで受賞が報道された翌日は、いつもは3~4人程度のカウンターに、お客が隙間なくぎっしりと列をなして順番待ちしていて、別のTV局も取材にきていた。突然殺到した人々に動じることなく淡々といつものペースで注文を受ける「アロマ」のおじさんに、今後もいつもの街角のカフェとして頑張ってくださいねと心の中で応援した。
別のカンポ・デ・オリークのカフェLomar(「鳥の巣」のある店)のパステル・デ・ナタも、軽い塩味が効いて美味。午前中の温かい内に行くべし。