イチゴワイン(モランゲイロ)
2012年 09月 29日
数少ない日本語のアソーレス諸島の紀行文の中に、リスボンにそのヴィーニョ・デ・シェイロと同じものを飲ませてくれる酒場があるという記述をおぼろげに記憶していた。確かモラリア地区にあるその酒場の事はどこか秘密めかして書かれていた。著者は誰にも教えたくなかったのだろう。
知人にその秘密の酒を飲ませる秘密の酒場に案内されたら、在住の日本人がよく納豆や大根を買いに行く中華食材店のすぐ隣だった。常連には「ゼー・ドス・コルノス(牛の角のゼー)」と呼ばれている。店の奥の壁に牛の角が飾られている。昔は炭を売る店だったそうだ。
ヴィーニョ・デ・シェイロは別名モランゲイロと呼ばれる。モランゴとはイチゴで、イチゴのような香りのワインという意味だ。店の人によるとミーニョ地方のヴィーニョ・ヴェルデの赤と同じものだそうだ。
いかにもブドウの皮ごと絞りましたと言わんばかりの濃い赤紫色の液体がコップになみなみ注がれると、表面を発酵時に生じるガスの泡が薄く覆う。モランゲイロはアルコール度数が低くすぐに酢になってしまうので、作ったその年の内に飲み切る酒だ。軽く冷やして飲むと美味い。サングリアにしても良い。イチゴを思わせるフルーティーな香りと酸味、軽い口当たり、低めのアルコール、そして1杯1ユーロという値段がついつい杯を重ねさせるが、要注意!
モランゲイロはメチルアルコールを生成しやすい性質を有している。メチルアルコールは失明を引き起こし量によっては死んでしまう程の猛毒だ。日本で戦後、酒税のかからないメチルアルコールを使った酒を飲んで失明した人がいた、という話を聞いた事がある。だからモランゲイロはEUでは流通してはいけないことになっている。
では、ポルトガルでワインを飲んで失明したという話は…あまり聞かない。アル中はいっぱいいるけど。西洋人は日本人よりずっとアルコールに強い体質だ。勤め人でも昼食にワインやビールを飲む人が多い。飲みやすいからといって日本人がモランゲイロをガバガバ飲んだら失明する可能性があるかも。
私は酒に弱くはないが、モランゲイロの有毒性を聞いてこの日はコップ4杯にとどめた。一応まだ目は見えている。
カレー粉とか使われてるのかいな?