絨毯の村アライオロス
2015年 05月 27日
アレンテージョの小さな白い村アライオロスは、伝統的な手法で作られるカーペットで有名である。ざっくりした毛糸を一針一針粗いジュート地に刺して、東洋風の花模様を描いてゆく。作業は根気と忍耐を要し、技術は母から娘へと伝えられてきた。
かつては26社もあったカーペット関連の会社も、今では10軒を超えるか超えないかというところまで減少してしまった。不況のために高価なものが売れず、カーペットを生業とする若い人がいなくなったのもあるが、村以外で作られる安価なコピー品が出回っていることが大きな要因だ。15年前、村のカーペットを買い漁り、中国に送った男がいた。数ヶ月後には中国産のアライオロス「風」カーペットがポルトガルに出現した。本物のアライオロスカーペットは、毛糸が脂っぽい羊の匂いがするような粗さがあり、人の手で刺す独特のタッチがあるのに対し、偽物は縫い目が均一で糸には艶があり、工業製品のような完璧さがある。昔は裏の縁の仕上げを見れば真贋が一目で分かったそうだが、今は偽物も技術が向上して見分けがつかない程になったそうだ。
アライオロス村では本物であるという保証書を付ける制度を設け、純粋なアライオロスカーペットの保存と普及に努めている。数年前には立派なカーペット資料館が生まれ、カーペットの歴史を紹介している。15世紀にリスボンから追放されたアラブ人が、アレンテージョの田舎町に定住し、彼らの伝統技法を伝えたと言われる。現在の村の広場はかつて羊毛を染色していた作業場でもあった。資料館はその広場に面している。また隣にはカーペット組合の販売所がある。
ポルトガルの各地の宮殿や高級ホテル、上流家庭の邸宅には大抵アライオロスカーペットがある。美しいばかりでなく、数百年保つ実用品でもある。熟練した職人が数人がかりで1ヶ月かけて仕上げるカーペットのお値段は6平方メートル1200€ほど。その手間暇を考えれば、また職人が受け取る報酬を想像すれば、そう高いものではない。しかし気軽に買えるような値段ではないことは確か。アライオロスカーペットが生き残るにはどうすれば良いのだろうか?伝統を守る一方で、21世紀のインテリアにマッチする新しいデザインも取り入れることも必要だろう。実際にピカソの絵を基にした特注品もあったそうだ。企業のロゴや個人の名入りなど細かな注文に応じることができるのも零細企業ならではの強み。綿々と伝わる技術を継承しつつ、新しい感覚も取り入れた製品を開発することが今後の課題となるだろう。
良かった。
内陸は夏暑くて冬寒いと思います。