阿蘇列島旅日記 グラシオーザ再び1
2015年 07月 12日

赤いタマネギ型の屋根を持つグラシオーザ島の風車
九島全島を征服した後、昨年はお休みしたアソーレス諸島の旅は第二ラウンドに入り、グラシオーザ島の再訪から始まった。アソーレス諸島9島中、1番か2番目に地味な感じの島なのだが、なぜか惹かれる。食べ物が美味しかったのもあるし、人々が素朴で感じが良かったのもあるが、今回の目的は、前回も行ったカラパッショ温泉と、ロバ牧場を訪れることであった。昨年末にポルトガル北部のミランダ・ド・ドウロにミランダロバを見に行ったが、グラシオーザ島にも絶滅危惧種のコビトロバ(burro anão de Graciosa)を保護している協会があるのを知り、ぜひ訪問し、できればロバの背に乗って島を散歩したいものだと常々思っていた。

今回拠点としたのはプライア(海岸)地区
春頃から時々アソーレス航空SATAのサイトで運賃をチェックし、行くか行くまいか悩んでいるうちに、急に値段が上がり、座席数も残りわずかになっていたので、えいやとばかりに購入してしまった。6月半ばのことである。ケチって一番安い日のチケットを選んだら、2泊3日となった。こちらの人にとってはあり得ない短い休暇らしい。

宿はネットで評価の高かった、プライア地区の「カーザ・ダス・ファイアス」を予約した。島唯一の砂浜と自然保護区となっている小島が見える港を前景に、島の最も重要な観光地であるカルデイラ山を背景にした抜群の立地にある、このトゥーリズモ・ルラル(民宿)は、溶岩を積み上げた伝統的な漁師の家を改装したものだ。
リスボンの5つ星ホテルをも凌ぐ快適な設備は、素朴な外観からは想像できず、嬉しい驚きだった。初日は他に宿泊客はいなかったようで、広いジャクジーバス付きの部屋で、リスボンでは味わえない静寂と解放感を満喫した。



昼ご飯は、以前も来た海岸の前のレストランJ&Jで、同じメニューのボッカ・ネグラ(黒い口)という魚の炭火焼を食べた。カサゴ系の魚で日本のアコウダイがこれに近いと思われる。炭火で焼いたボッカ・ネグラは香ばしく、そのままでも、オリーブオイルをかけても非常に美味。程よい茹で加減の付け合せ野菜も平らげた結果、夕食は不要となった。
残念だったのは、グラシオーザ島のワインが無かったことだ。アソーレスで一番良いワインはピコ島ではなくグラシオーザ島の白ワインだと言う人もいる。ブドウ畑が世界遺産となったピコ島はともかく、狭い石垣の中に植えられたブドウを人の手で摘み取る収穫作業は大変手間がかかるので、どの島でもワインの生産は衰退の道を辿っているようだ。放置されたままのブドウ畑も多い。外国の観光客がボランティアでブドウを摘み取り、その量に見合ったワインが翌年受け取れるような観光農園にしたら良いと思うのだが。


この島で作られる星型のケイジャーダは特に有名だが、他にも色々な種類がある
その店で先に食事をしていた91歳のご老人に話しかけられた。リスボンのポルトガル銀行を退職した後、生まれ故郷のグラシオーザ島に戻り、村の顧問みたいな役職も務めていたそうで、高齢にもかかわらず、冴えた頭脳と若々しい好奇心を持つ人のようだった。家にグラシオーザの歴史に関する本がたくさんあるのでいらっしゃいとナンパ?された。ちょうど島の人に話を聞いてみたかったので、願っても無い申し出ではあるが、求婚されたらどうしよう…