ロバに引かれてシントラ参り
2018年 03月 30日
シントラはシントラ王宮、ペナ宮殿、ムーア人の城というお城御三家で有名だが、他にもあまり知られていない、滅多に観光コースに入らないモニュメントがいくつかある。
その一つはシントラの旧市街から歩いて15分の所にあるレガレイラ宮殿。一見中世の魔女の館のような不気味な建物は、20世紀の初頭にブラジル人の大富豪モンテイロさんが建てた個人の邸宅である。コーヒーや鉱物で巨万の富を得た彼はフリーメイソンの会員で、建物や庭には様々なシンボルが仕込まれていて、フリーメイソン会員ならば意味が分かるのだろうが、何の事だか解らない非会員でも十分に楽しめる。あちこちに秘密の通路や洞窟や階段があって、子供が隠れん坊や探検ごっこをするのに絶好の庭園だ。バブル時代は日本の某建築会社が所有していた時期があった。当時イケイケの日本はヨーロッパの城やニューヨークのビルを買いまくっていたが、その会社はレガレイラ宮殿をテーマパークかホテルにするつもりだったのだろうか。
シントラの森の中の曲がりくねった山道の奥深く入った所に、苔むした古い小さなカプショス修道院がある。庭の石や建物はしっとりとした緑の苔に覆われ、質素な修道院の内装は湿気や冷気を防ぐためにコルクが使われていた。しかし今回はしみじみと侘び寂びを味わうのではなく、隣のロバ牧場でロバと一緒にシントラの山を散歩するために来たのだ。アルガルヴェやアソーレスのグラシオーザ島やミランダ・ド・ドウロでロバを間近に見て、この何を考えているのかわからない頑固者の動物のファンになった。シントラのロバ牧場では事前に予約すれば3才から12才までの子供はロバに乗って散歩する事ができる。ただし一人の子供につき一人の大人の付き添いが必要だ。散歩を含まない見学も可能であるが、やはりロバと一緒に歩いてみたいので、ポルトガル在住の日本人ファミリーに呼びかけてドンキーライディングを申し込んだ。
最初にレクチャーが行われ、馬との違いや寿命、食べ物などについての話を聞いた後、参加者はロバのブラッシングを体験する。子供たちが恐る恐る背骨に沿って、あるいは胴の毛並みに沿ってブラシをかける間、モデルのロバはただひたすら食べて、箱に餌がなくなると、もっと寄越せとばかりに箱の縁をくわえて音をたてる。
講義が終わるといよいよ実際にロバに乗る。身長に合わせて小さいのから大きいのまで、体格の異なるロバが用意されている。ロバの歩みは船のように揺れ、数歩歩いては路肩の草を食べ、また歩いては立ち止まったりするので、遅々として進まない。 普通に歩けば20分程度の距離なのだろうが、約1時間のロバ散歩。よほど信頼関係を築かないとロバは言うことを聞かないようだ。
シントラには他にも庭の素晴らしいモンセラット宮殿や、ペナ宮殿を作ったフェルナンド2世の後妻さんの別荘など、なかなか行く機会のないお城や屋敷がある。最近マドンナがシントラに別荘を買ったそうなので、また名所が増えるかもしれない。