シェフ・キコのポケもん
2018年 08月 25日
ある暑い日、友人のmoreiaさんに誘われてデパートのエル・コルテ・イングレスにビールを飲みに行った。地下の大衆的なフードコートで一杯1.5€を想定していたが、待ち合わせ場所は最近オープンした7階のグルメコーナーの中にある、有名シェフ、キコ氏の店だった。こういう機会でないとまず自分では行かない種類の店である。moreia さんによると、キコ氏は他にも数軒店を持ち、どれもすごーく美味しいのだそうだ。エル・コルテの店はポケ(ポキ)というハワイ風生魚料理をメインにした店である。
キコ氏はパリのコルドン・ブルーで勉強し、世界中の有名店で修行し、世界中を食べ歩き、TVの料理番組にも出演したポルトガルの若手シェフで、何冊か本も出している。めくってみるとカラフルで美しく繊細でとても美味しそうな料理ばかりだが、自分で作るのは到底無理だ。彼の料理はそれぞれの材料の特徴が際立って、一口食べる毎に驚きがあるとのmoreiaさんの評である。
メニューを見ると、一つ一つの料理の名前がやたら長い。暑くて頭がぼうっとしていたので解読をやめてボーイさんがこれはムイトボンと勧めるもの2品と黒ビールを頼んだ。一つは要約するとタコキムチ、もう一つはハンバーガーだ。
お通しに甘くないカステラのようなパンと薄い胡麻せんべいに、キムチ入りバター?と卵黄だけの酸っぱくないマヨネーズのようなものが出て来た。どれも濃厚な味と舌触りだ。
タコキムチにはタコばかりではなく新鮮な野菜と緑色のピュレがついていて、とても上品だ。上品過ぎて、キムチのパンチが足りない。よく見るとタコにポツポツ赤い唐辛子の破片が見られるので、これがキムチソースなのだろう。moreiaさんはキムチの味がしないとボーイにクレームを付けていたが、私達が慣れ親しんでいるキムチの発酵臭と辛さはポルトガル人にはおそらく耐えられない。まあ、ポルトガル人の味覚に合わせたアレンジなのだろう。でもタコキムチだと思わず、タコサラダと考えると、かなり上等のものだ。
ハンバーガーの方はmoreiaさんは一口食べて「美味い!」と合格点を得た。まるでマカロンのように綺麗な緑色のバンズは抹茶のパンだ。その間に赤紫のビーツの千切りやら何やら色々な野菜と脂肪たっぷりの黒豚肉が挟んであって、彩りが非常に美しい。一つ一つの材料は厳選され細心の注意を払い調理され一つのまとまりに統合されている。その辺のハンバーガーとは大違いの手間暇かかったものだ。ビールよりもアールグレイの紅茶で頂いた方が似合いそうだ。
このような手の込んだ料理を食べるのは久し振りだ。しかしお金に余裕があったら食べに来るかと言うと…私はタコのぶつ切りに市販の白菜キムチを混ぜたのを白飯にのせてガツガツ食べたり、カンポ・デ・オリークの「レイタリア・コンデスターヴェル」のプレーゴやポルトの「コンガ」のビファナの方が好きかも…貧乏性でスミマセン。