南蛮鴨
2018年 11月 11日
吹く風が冷たくなり、熱々のうどんや鍋が恋しくなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
エネルギーを消耗する仕事の後、家には最近買った無印良品のレトルトカレーがあったにも関わらず、ご飯が炊けるのを待ちきれないと、近所のレストラン「カーザ・ドス・パッサリーニョス(小鳥の家)」で倒れ込むがごとく昼食を取った。いつもピーク時は満席の事が多く、時には入り口で順番待ちをしている客も見られるが、一人だと案外空いている席に滑り込む事ができる。
その日のおすすめが店頭のボードやメニューの先頭に手書きで書かれ、早々売り切れるものもある。時々登場するものもあれば、本当にその日にしか無い幻のメニューもある。私が選んだのは、その日のおすすめの一つで、ここで食べるのは2度目の「鴨のオーブン焼き」であった。
ポルトガルの鴨料理というと代表的なものはアロース・デ・パト(鴨飯)であろうす。これは家庭で作ろうとすると結構手間のかかるものだ。まず鴨肉を茹でて、細く裂かなければならない。スーパーには既に裂いてある鴨飯用の鴨肉が売っており、これを使っている飲食店もあろう。しかし鴨の茹で汁にこそ鴨の旨味が抽出され、これでご飯を炊くからこそ美味いのだ。出来合いの細切鴨肉を使ったのでは、出汁ガラで調理するのと同じである。従ってちゃんと手順を踏まずに調理済みの鴨肉を使った鴨飯はあんまり美味しくない。また平皿にしゃもじでよそった様なものも反則だ。本物の鴨飯は、炊いたご飯を陶器の皿に盛って卵の黄身で色を付け、チョリソやベーコンを上に散らしてオーブンで焼かなくてはいけない。
正しいヴィゼウの鴨ご飯
そんな訳で、美味い鴨飯は旧式のレシピを守っている田舎で食べた方が美味しい。一応都会であるリスボンではじっくりと時間をかけて調理した鴨飯をゆっくり味わう暇がない人も多いので、もっとスピーディにできる鴨料理が主流?とならざるを得ない。多分。
「小鳥の家」の鴨のオーブン焼きは、それ程待たずに出てきて、しかも鴨の肉にご飯が付いているので、見た目は違えど腹の中では鴨飯になり、おまけに皮付きのジャガイモの素揚げも添えてあり、なんか得した気分になった。
鴨肉は醤油を使わない蒲焼き風とでも言おうか、甘辛系の味付けで脂ののった鴨によく合う。ご飯はレーズンやナッツを入れてスパイスを効かせた、辛くないアジアンテイストの香ばしいライス。ひょっとするとマカオやアジアの料理から影響を受けたレシピかも。大航海時代に日本にやって来たポルトガル人達は南蛮人と呼ばれたが、南蛮という言葉には広くアジアや異国から来たというニュアンスも含まれる。リスボンで食べた鴨のオーブン焼きにはそんな香りが感じられた。鴨南蛮ならぬ、南蛮鴨である。
鴨ご飯以外の鴨料理はポルトガルでは見たことがないので、このお料理はとても気になります。タスキーニャとネクタイレストランでの鴨料理とはまた違いますね。細かく刻まれたソースの具は何ですか?パイナップルですか?