リスボンでトンカツを
2019年 08月 01日
今年の日本の夏はやや涼しめで7月も終わりに近づいて、ようやくいつもの蒸し暑い気候になった。一方でヨーロッパは記録的な猛暑でパリでは嬉しくない新記録を達成した。いつもは太陽とビーチを求めて欧米人はポルトガルに来るのだが、今年は太陽から逃れるためにやってきた人達も多かっただろう。私も早い所快適なリスボンに戻りたいと思いつつも、日本の圧倒的な物や情報の種類と量に驚嘆せざるを得ない。常に新しいものが生まれ消えて行くスピードはポルトガルの比ではない。にも関わらず東京には昔の面影を残している場所もまだ有り、そのギャップが観光客には魅力的に映るのだろう。昭和の香りの漂う浅草は、日本人にも外国人にも懐かしい街だ。
高校以来の友達と浅草の「リスボン」で待ち合わせをした。確か昔「ぴあ」を片手に青春18きっぷで仙台から6時間もかけて東京に遊びに来ていた頃から、いやそれ以前から存在していた洋食屋である。店名とポルトガルの首都との関係は不明だ。メニューはリスボンで食べられそうなものはほぼ無い。しかし昭和の雰囲気漂うレトロな佇まいは、リスボンの下町のレストランと共通するものがある。いかにも手書きのメニューや、飾り気のないインテリア、余計なBGMがないところなど。
ハイカラな食べ物だったトンカツ、オムライス、グラタンなどは最もポピュラーな日本の家庭料理となっている。ルーツはフランスだったりイギリスだったり色々だが、ポルトガル料理が「洋食」として日本に定着したものは無いようだ。天ぷらは完全に洗練された和食になってしまったが。
一方ポルトガルでは日本食ブームで、日本にない発想のネタや盛り付けの寿司が大受けだ。日本料理と言えば寿司(最近ようやくラーメンが進出してきた)のワンパターン気味だが、サクッと香ばしく揚げた衣からジューシーな豚肉の覗くトンカツ、じっくりほろほろになるまで肉を煮込んだカレーやビーフシチュー、甘酸っぱいチキンライスを包んだ黄金色に輝くオムライスも立派な日本の味。どれも単純そうに見えて実はバランス良く作るのは難しい料理だ。ボリュームはあるけど、姿も美しい。そこがポルトガル伝統のてんこ盛り料理と違うところ。トンカツやカレーやシチューを引き立てるのは白いご飯。美味いシャリがあってこその洋食だ。そんな日本発の西洋料理を出す店がリスボンにあったら、まだ生魚に抵抗のあるポルトガル人にも喜ばれると思うのだが…店名は「リスボン」で。






