黄身クリーム
2019年 12月 23日
ポルトガルの伝統菓子はほとんどがこれでもかという位卵黄が使われている。カフェにずらりと並ぶ真っ黄色いお菓子は見ただけで味が想像でき、げっぷまで出てきそうになるので、今まではほとんど手を出さなかった。しかし今年になって初めて黄身クリームの美味しさに開眼した。気付かせてくれたのは、ベタな昔ながらのポルトガルのカフェでなく、フランス菓子屋で作っているポルトガル菓子だ。カンポ・デ・オリークの「ダックワース」では洒落たフランス風のタルトやプチフールをフューチャーしているが、それだけではポルトガル人の顧客は付かない。繊細だけどお高いフランス菓子を毎日食べに来れる程の余裕のあるお客さんは少ない。目新しいものや変わったものを試してみるものの、結局いつもの食べ慣れたものに落ち着く。それを多分店主は理解しているのだろう。お洒落なパリブレストや艶々のガトーショコラが華やかに並ぶ隣に、おなじみのエッグタルトや卵の黄身を砂糖で固めた修道院菓子も地味ながら存在を主張している。

ある日このフランス菓子屋で、どのカフェでも結構見かけるパーラ(ぶどうの葉)というリーフパイのようなお菓子を選んだ。パイ生地がいかにもパリッとしていて、多分マーガリンではなくバターが使われていて、美味しそうに思えた。中身は多分カスタードクリームだろうと予想しながら。ところが予想に反して、リーフパイの中身はカスタードではなく卵黄と砂糖だけの黄身クリームだった。でろーんと切り口から流れ出る黄色い流動体に少しがっかりしながら食べてみると、がーんと目が覚めるような衝撃を受けた。う、うまい…。
「ダックワース」ではフランスパンも製造販売しており、クロワッサンはプレーン、チョコ入り、クリーム入りの3種類ある。表面にアーモンドの散らしたものがクリーム入りだが、これも初めはカスタードクリームを期待して頼んだ。真ん中から切ってもらい、半分を手にとり口に入れようとすると、おっとっと、黄身クリームがとろ~と流れ出し、手に付いてしまう。慌ててこぼれたクリームをクロワッサンの外側に塗りたくり、指についたクリームを舐める。滑らかで思った程しつこい甘さはなく、卵臭くもない。黄身クリームがこんなに旨いものだとは知らなかった。
ボーラ・デ・ベルリンは揚げパンにクリームを挟み、表面を砂糖でまぶしたもので、これも昔からあるベタなポルトガル菓子であるが、普通のカフェのはカスタードの様でカスタードでない、微妙なクリーム(クレーム・パステレイロ)が使われる。一応卵と牛乳を使っているようだが、なんか半透明でデンプンが多いような、もったりしたテクスチャーだ。見ただけで胃もたれがするので、これも今まで一度も手を出さなかったが、遂に「ダックワース」で禁を破った。まずパン生地が軽い。そして中身はほんのりバニラの香りの本物のカスタードクリームだ。エッグタルトの老舗「パステイス・デ・ベレン」のと食べ比べてみたが、生地のふんわり感とクリームの滑らかさは「ダックワース」に軍配が上がった。またこの店のエッグタルトは「パステイス・デ・ベレン」と同様に、正しいカスタードクリームなので、私はここのとベレンのエッグタルトしか食べない。
美味しい黄身クリームを作るのは手間と材料がかかるのだろうか、初めて黄身クリームの実力に気付いたリーフパイはそれ以後見ることはなくなった。また黄身クロワッサンも時々無いことがある。2日間連続黄身クロワッサンがなかったので、まだ出来ていないのかと店の人に聞いた。支店に電話をかけて聞いていたが、その日は作らないという返事であった。いつも2~3個しか置いてなくて、私しか買わないので製造中止になったのだろうか、と残念に思いながら2日後に行ってみたら、今日は黄身クロワッサンあるよ、と声をかけられた。良かった良かった。
伝統を重んじながらも、洗練した味とは素晴らしいですね。クリームがとろーっとした写真、見ただけで満たされます。
1号店が開店した頃いたイケメンは2号店に異動したのかな?







