海賊酒場
2020年 02月 25日
以前リスボンの中心部のレスタウラドーレス広場に間口の狭い小さなバールがあった。そこの名物はピラタ(海賊)という赤ワインに炭酸か何かを混ぜた、サングリアから果物を取ったような飲み物で、店の名前も同じ『ピラタ』であった。この店はかなり古くからあるらしく、外国人向けのポルトガル語の教科書の中にリスボンの伝統的な店として紹介されていた。客筋は主に労働者や退職者のおっちゃん達で、カウンターでピラタを飲む人が多かったが、教材にもなり立地的にも観光局のすぐそばなので、外国人観光客もよく来ていた。その建物は数年前丸ごと買われ、今は高級マンションになっている。
リスボンの中心部は昭和の香り?のする昔ながらの庶民的な店がどんどん減って、世界中どこにでもある洋服屋やこじゃれているが別にどうってことのない飲食店にとって代わりつつある。ダサくて安いポルトガルを愛する私としては寂しい限りであるが、海賊は生きていた。ダサくて安い昭和っぽいお店がまだ残るモラエス・ソアーレス通りに『ピラタ』は新装開店していた。
アルミの食器がまたノスタルジック
昔の店舗はうなぎの寝床式に奥行きがあり暗い印象だったが、今は通りに面した窓を大きく取り、内装も明るくお洒落になった。しかし客筋は相変わらず地元のおっちゃん達が大勢を占めている。近くに住むMoreiaさんは既に顔馴染みであるが、私は10年ぶりだ。折しもコロナウイルスが連日ニュースを賑わせており、アジアンの我々が咳やくしゃみをしようものなら眉を顰められること必至なのだが、鈍感力に益々曇りがかかった私は周囲の視線など微塵も感じず、久しぶりに飲むピラタに舌鼓を打った。
モンゴウイカのフライと砂肝の煮込みをつつきながら、ピラタを2杯飲んだ後、今度は別の飲み物を注文した。木の義足(ペルナ・デ・パウ)はレモンの皮で香りをつけたマルティーニに似たものだが、わざわざ名前を付けているのなら材料はポルトガルの酒(ポートワイン?)を使ったスペシャリティだろう。「海賊」も「義足」も1.50€と年金生活者にも優しい。従業員は昔ながらの白シャツに黒いズボンというスタイルで、パタパタあるいは悠々と客の注文を受ける。こういうお店に「おもてなし」など期待はしていない。安くて美味ければそれで充分!





