ビファナの店からビアの店へ
2020年 04月 02日
美味かったのに…
ポルトガルのファストフード、トンバーガーことビファナとカタツムリ(カラコイス)でカンポ・デ・オリークでは有名だったローザさんは、病気のため惜しまれつつ旅立った。家族が後を継いだが長続きせず、小さなバールは扉を閉ざしたままだった。昨年の秋頃、工務店の職人たちが店に出入りするのを目撃した。ああ、本当になくなったんだ、あのビファナはもう食べられないんだとちょっと悲しくなった。
しばらくして近くを通りかかると、正直言って小汚かった店が何だか可愛らしくお洒落になっている。「ア・ダ・ビア」という看板がかかっていて、テイクアウトも承りますとの張り紙もある。間口の狭い、四人がけテーブルが3つ入るくらいの小さな店で、壁の片側がキッチンでカウンターが客席と区切っているのは昔と変わらないが、入り口の左右の、道路に面した窓にもお一人様用の小さな席がある。これは私の指定席だ!お皿は可愛いアンティーク、正面にはアズレージョが綺麗なアパートがあり、道ゆく人を眺めるのも楽しい。
メニューはどちらかというとベタなポルトガル料理であるが、鍋からよそってドン!ではなく別皿でやって来る。ワインも安食堂にありがちな箱の酒ではなく、今週のお勧めワインやリストがあり、グラスで注文できる。お値段はビファナ並みとはいかないが、それ程高くもない。新しいオーナー夫妻に、以前はよくここにビファナを食べに来ていたんですよ、と話しかけると、ああ、ローザさんね、亡くなったんです、と答えた。前の店の評判を承知の上でこの場所を選んだようだ。
奇をてらわず基本を守りながらお袋の味の良さを、吟味したワインと共に楽しんで欲しいという心意気は、地域の人々に愛されていたローザさんの後継者として支持されるだろう。今ポルトガルのみならず世界中の飲食店はとても苦しい状況に置かれているが、コロナ禍が収束すれば、人々は困難を乗り越えた喜びと懐かしさ(サウダーデ)に身悶えしながら街に繰り出すだろう。その日を待ちわびつつ、遠く日本から応援したい。










