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ポルトガルの食べ物、生活、観光情報


by caldoverde
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肉爆弾

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カステロ・ブランコで買った肉の詰め物を茹でるので食べに来ませんかと、年越しに田舎の家に招待してくれた友達からお誘いが来た。昔から肉そのものより肉の加工品の方が好きで、子供の頃は真っ赤な着色料で染まったウインナーや魚肉ソーセージ(違うか)が好物だった。今もコジード・ア・ポルトゲーザは野菜と腸詰だけでも十分で、肉はおまけみたいなものなので、このお誘いは超嬉しい。


件の肉の詰め物とは、カステロ・ブランコの市場で友達の彼氏が買ったもので、子供の頭もしくはハンドボール位の大きさの、黒光りするいびつな丸い物だ。重さの当てっこをしたら、私の予想が一番近く、1200gほどあった。肉の色んな部位を豚の膀胱に詰めて燻したもののようだ。日本は魚食文化で、種類によっては頭や骨も食べたり、肝やワタも珍重されるものがある。しかし肉に関しては捨てられる可食部が多いのではないだろうか。その点ポルトガルは豚を余す事なく食べ尽くす。皮や足や耳鼻はもとより血や内臓まで加工品の材料にする。その豚食文化において未知の領域である膀胱の肉詰めが賞味できるという事で、喜んでご招待に預かった。


このような物の調理はやはり男性に任せたい。鍋には肉詰めがお湯の中に浸っている。野菜やチョリソが既に茹でてあり、バットに上げてある。コジード・ア・ポルトゲーザを作る時のように、ちゃんと材料別に茹でたようだ。私はズボラなので、なんちゃってコジードを作る時は肉や野菜を一緒くたに圧力鍋に放り込むのだが、男の料理はキチンとセオリー通りに手順を踏む。


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取り分けも男の仕事だ。この肉詰めは相当茹でたにもかかわらず、かなり硬く、女性では歯の立たない代物らしく彼氏も難儀している。どうも何か硬いものが混じっている模様。やっと真っ二つに割れた断面に、香辛料で鮮やかに色付けされた肉が現れた。肉に混じって白いものも見える。骨だ。チョリソの匂いを更に強烈にしたような香りが炸裂する。それに加えて燻製香とアンモニア臭の混じった匂いも。これは肉を包む袋=膀胱に由来するものだろう。しかし臭いからと言って不味いとは限らないのはチーズや納豆が証明している。お味はチョリソを更にスパイシーかつ塩辛くした味で、茹で野菜やご飯が進む。酒もしかり。


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しかしこれだけの量がありながら、正直な気持ち、肉が思ったほど多くないと感じたのは私だけではなかった。隙間があるし皿に盛られた中身の2割は骨だった。道理でなかなか真っ二つに切れなかった訳だ。「残り物を詰めたんだな」と彼氏が言うと納得の笑いが。


しかし残り物を利用したにせよ、かなり手間ひまがかかっているではないか。昔の人々の、骨にひっついた肉も内臓も無駄にせず、長い間保存できるようにしっかりと味付けをして、更に燻して殺菌し、という食生活の知恵がぎゅっと詰まっている。敵に包囲され兵糧攻めにあってもこの肉詰めを備蓄しておけば、ある程度持ちこたえる事ができるし、武器がなければ砲弾代わりにこれを敵に撃ち込むこともできる。一番骨の分量の多いやつを。肉爆弾攻撃を受けた側は、敵にはまだまだ食糧に余裕があると判断して包囲を解いて撤退しただろう。そんな歴史のロマン?を感じさせる肉の詰め物を、友達は匂いが苦手でもう食べないからとお土産に持たせてくれた。


臭いで敵を撃退できる能力も有する肉爆弾の威力に私は感服しながら、自宅でも美味しく食べたのだった。


Commented by fernandapessoa at 2022-02-05 12:50
ずっとお店のケースの向こうの存在でした、これ。至近距離で(断面図も!)見たのははじめてです。しかし骨入りとは。ちくわやはんぺんに魚の骨を入れるような微妙な感性の差を感じます。
Commented by caldoverde at 2022-02-05 16:32
骨の付いた肉を詰めたものなのか、肉の付いた骨を詰めたものなのかは不明ですが、食うのも作るのも好きな人によると、一番美味いのは骨の周りに付いた肉だそうで、その理論だと最も美味な肉の詰め物という事になりますね。
by caldoverde | 2022-02-02 17:53 | 肉料理 | Comments(2)