アズレージョ美術館と女性アーティスト
2022年 03月 29日
リスボンのミュージアムやモニュメントの多くは日曜日は入場無料だったが、観光地としての人気が高まるにつれて制限が増えて、現在はポルトガル国内に住む人に限り、日曜日の午後2時まで無料とする所がほとんどとなった。せっかくの特典だからタダでミュージアムはしごをするぞ、と決心したのは良いが、身支度に時間がかかったり、バスがなかなか来なかったりと結局昼すぎに着いてみれば、昼休みのために1時から2時まで閉館だと言われる始末。2時過ぎでは有料になってしまうではないか。何のために出てきたのかわからない。そんな目にあったアズレージョ美術館のリベンジをと朝日と共に目覚めた日曜日、iPadの時間を見るとあれれ?もう9時半過ぎている。3月最後の日曜日は冬時間から夏時間への切り替えの日だった。シャワーしたり朝食を食べたり昨夜のうちに洗ってあった洗濯物を干したりしているうちに、開館時刻の10時を過ぎてしまった。週末ダイヤのバスを待つと美術館に着くのは11時半ごろか。夏時間のせいで1時間損した。
アズレージョ美術館には何度も訪れているが、いつ見ても面白い。建物自体が16世紀の修道院で、アズレージョ(タイル)とターリャ・ドラード(金泥塗りの木彫)の豪華極まりない教会があり、教会だけでも非常に興味深い。合唱隊席には彩色の胸像がずらりと並ぶ。胸にはガラス窓みたいなものが嵌め込まれていて、中に骨が入っている。聖遺物=信仰に人生を捧げた聖人と言われる人の身体や持ち物の一部、いわば仏教における仏舎利の様なものを納める容器だ。お釈迦様の骨とされるものは本物とは思えないが、ここにあるのは本物らしく、独特の臭いが漂う。以前は平気だったが…。
18世紀までは王侯貴族や教会の富や権力を示すものでもあったアズレージョだが、18世紀の大地震の後、アズレージョは一般市民の住宅にも使われるようになった。特に19世紀には工場で量産できるようになり、主に室内に使用されていたアズレージョが、外壁にも使われるようになり、都市の街並みはより華やかになった。現在も駅や学校などの公共建築にアズレージョが使われ続けている。ポルトガル土産の推しはアズレージョ、あるいはアズレージョの柄をプリントした様々なグッズ。アズレージョはポルトガルのアイデンティティを示す名刺である。
アズレージョの歴史の流れを知ることのできる常設展に加え、コンテンポラリーアート作品の展示もある。18世紀の青い宗教画のアズレージョに囲まれた部屋に鎮座する巨大なオブジェは、ポルトガルの女性アーティスト、ジョアナ・ヴァスコンセーロスの作品。17世紀風の青と黄色のアズレージョを貼り付けた柱に、クロシェ編みや刺繍を施したクッション、カーテン用の縁飾りや伝統的な柄の布などを絡ませた、ポルトガルのおかんパワー炸裂の包容力とユーモアに満ちた作品だ。
もう一人現代のポルトガル女性アーティストのベラ・シルヴァにもご注目を。彼女は私がリスボンに住み始めた最初の1年間下宿していた家の大家で、その家には色んな人々がやってきてとても楽しかったが、家一軒丸ごと借りたいという夫婦のせいで追い出されてしまった。古道具屋や泥棒市で買った家具や食器、思いのままにペイントされた部屋、製作中の作品がそこら辺にあるという環境で、料理上手で面白くキッチュなセンスのある彼女と過ごした1年はいい思い出だ。ベラの作品は漫画のような人物や動物がのびのび遊ぶ鳥獣戯画のようなテーマとポルトガル伝統のバロック的な装飾性の組み合わせが特徴だ。彼女の一番の大作は地下鉄アルヴァラーデ駅のアズレージョ。ポルトガルのアートはヘタウマが身上だが、彼女はまさにその王道を爆進している。
12時45分頃になるとすでに監視員は見学者を追い立てにかかっている。昼休みと閉館時間が近づくと彼らは水を得た魚のように職務に熱心になる。最後の展示室を横目で通り過ぎながら、今度の日曜日こそ10時に入館できるように起床するぞと決意を新たにした。
リスボンの路面電車がマデイラ刺繍でカバーされた、というニュースを見ました。ポルトガルおかん、クリストを超えるか?











