サッカーファンの集う食堂
2022年 12月 12日
12月8日は無原罪の御宿りの日というキリスト教の休日で、ヤマザキマリさんのご主人Beppi氏が日曜までの短い休暇を利用してリスボンにやって来た。パドヴァの高校で教鞭を取る彼にイタリア旅行中お世話になったJojoさんと、3人で夕食を取ることになった。当初はJojoさんのパートナーのペドロ氏が料理人顔負けのご馳走を作ってくれる予定であったが、残念ながら体調不良のため彼抜きの外食となった。ポルトガルでもボーナスが出たせいなのか、Jojoさんが当たりをつけた店はどこも満員で、滑り込みでタスキーニャ・ド・ラガルト(蜥蜴亭)というレストランを予約することができた。
ヤマザキさんの漫画に登場するイタリアのトッティのユニフォームも
蜥蜴亭は水道橋のよく見えるカンポリーデ通りの中程にある、昔から地元民に親しまれている店だ。シンボルマークの緑のトカゲは、リスボンのサッカーチームのスポルティング(クリスチアーノ・ロナルドも在籍)のサポーターを意味するのだそうだ。入り口にはガラスケースの中にサイン入りのシューズやボールが展示され、室内の壁は世界中のクラブのユニフォームで埋め尽くされ、サッカーミュージアムの様相を示す。TVはワールドカップのフランスーイングランドの試合を中継している。お客さんはむさ苦しい男のグループばかり。この日の午後、ポルトガルはモロッコに敗れ、準決勝進出を果たせなかった。彼らはポルトガルの勝利を見越して祝杯を上げるため来たのだろうが、ポルトガルが負けたおかげ(悲)で落ち着いて食事をすることができた。
メニューは伝統的なポルトガル料理で、しかもそれほど高くない。最近は若いシェフによるやたら凝った繊細な料理がもてはやされているが、ポルトガル料理は量が正義だ。小山となったポテト、その下にまだ隠れている肉や魚、煮すぎて変色した野菜がこぼれんばかりの皿には美しい絵付けは必要ない。でもトカゲが刺繍されたナプキンは可愛い。
Beppi氏はクエのリゾット、私は豚の頬肉の煮込み、Jojoさんはタコのグリルを注文した。ジロラモさんも絶賛するポルトガルのリゾットは、トマトベースで魚介類を煮込み、米には出汁が染み込み(アルデンテではない)、フレッシュなコリアンダーが、臭みを消し独特の風味を与える。豚の頬肉はファリニェイラという腸詰と一緒に煮込まれ、ホロホロと崩れるほど柔らかく、ポルトガルの腸詰によく使われるスパイスのクミンの香りが効いている。十分下ごしらえをされた柔らかいタコは、たっぷりのオリーブオイルで香ばしく焼かれる。このオイルをポテトやパンにつけると食べ過ぎ注意の美味しさだが、Jojoさんはカロリーセーブのため茹で野菜に変更。デザートはアレンテージョ地方の代表的なスイーツ、セリカイアとプラムの砂糖煮を皆でシェアした。激甘を覚悟したが、意外に上品な甘さとテクスチャーである。
Beppi氏はリスボンが大好きで、以前住んでいたカンポ・デ・オリークの家を休暇用に整備している。パドヴァは何も変わらないが、リスボンは常にアップデートして面白いと言う。私は古いものがだんだん無くなって少し寂しく感じているが、街がきれいになりつつあるのは確かである。奥様のヤマザキマリさんは日本での仕事が多忙でなかなかリスボンに来れないが、リモートワークが普通になった昨今、再びリスボンでペン(キーボード)や絵筆を振るう日もそう遠くはないだろう。
実はほんの数日前、長年愛用していたトカゲの刻印のあるイヤリング失くして、どっぷり落ち込んだ。ああ、こんなところにいたのか、君。
ポルトガルにはトカゲのステーキもあります。アソーレス名産で今まで食べた肉で一番美味いですよ。
トカゲステーキ ミゲル風で探してみてね。








