鯵のスペイン風ソース
2023年 02月 27日
ポルトガルでも最近は物価の上昇が甚だしい。野菜の値段は倍近くになっているし、トイレットペーパーも値上がりしたので、特売品を買いだめしてしまった。以前は5€しなかった中華レストランの定食が7€になっている。中華は野菜を使うからね。行きつけのカフェも値上げし、小銭整理を兼ねて飲食していた菓子やコーヒーが、もはや贅沢になりつつある。コロナのおかげで仕事が激減した上、インフレが追い討ちをかけている為、外食は自粛中なのだが、今日はたまたま現金収入を得たので、外でご飯を食べることにした。外食の理由はもう一つ、しばらく魚を食べていないからだ。魚を調理すると狭いワンルームの自宅が魚の臭いで充満し、換気扇を回し窓を全開してもなかなか臭いが抜けない。冬に窓開けっぱなしは辛い。ちなみに暖房も自粛中である。
そんな私のささやかな贅沢は、リスボンの最高級シーフードレストラン、ガンブリヌスの裏手にある食堂で焼魚を食べることである。表通りから引っこんでるとはいえ、街のど真ん中にあるこのタスカはリスボン市の認定する「歴史ある店」のリストに名前を連ねている。両側には同じような店が並んでいるが、行列ができているのはここだけである。昼定食が6€以下という安さと普通に味が良いのと普通に量があるからであろう。12時の開店時はまだお客さんはまばらだが、どんどん席が埋まり、あっという間に店の外で待つ人の列ができる。客は現場仕事の職人や付近の住民と旅行者が半々である。
コロナの規制があった昨年は外のテラス席で食べていたが、もう誰も気にしなくなったのと、まだちょっぴり寒いので、室内の席を選んだ。そこで安さの秘密を理解した。小さな厨房で調理するのはおばちゃん一人、その旦那がレジ係、彼らの娘か嫁らしきお姉さんとその配偶者がテーブル係、という家族経営で、人件費がかからないからあの値段なのだ。ひょっとすると店も借家でなく自分達の持ち家なのかも知れない。何せリスボンでは家賃が払えず泣く泣く廃業する店も少なくない。昔の値段でたらふく食べたければ、席が空くまで行列に並び、お姉さんが自分なりの法則で注文を取りに来るのを待ち、おばちゃんの孤軍奮闘を応援しながら空腹をなだめる忍耐力が必要だ。
生ハムとラベルのないハウスワインは知り合いの農家から仕入れています(多分)
私が注文したのは鯵のスペイン風ソースで、中くらいの大きさの鯵が2匹に茹でたジャガイモが添えてある。ソースはオリーブオイルに玉ねぎやパセリなどの野菜のみじん切りを加えパプリカで調味したもの。炭火で香ばしく焼かれた鯵は卵を持っていて、大雑把なみじん切り野菜入りのソースと一緒に食べると魚卵のサラダのようで、1匹で2度美味しい。ソースはジャガイモにつけて食べても旨いので、残らず食べてしまった。飲み物はハウスワインの赤のハーフボトルでいかにも安酒だが、文句は言うまい。
奮発してデザートとコーヒーも注文した。店の手作りのと出来合いのケーキが色々並んでいたが、値段は他のレストランと比べてやはり安い。自家製っぽいアグアルデンテ(焼酎)もサービスされた。今時こんなレストランは珍しい。ケーキもアグアルデンテもごく平凡な味だが(アグアルデンテはむしろ不味い)、交互に食べたり飲んだりしたらあら不思議、突然レベルアップし高級レストランのデザートに匹敵する味となった。
相席のテーブルには夫婦と2人の中高生の娘のフランス人家族がいたが、彼らはモンゴウイカのグリルを2皿頼み、4人でつついていた。これで足りるのかなあと思っていたら、アレンテージョ風ポークを1皿追加した。多分まだ何か頼むのだろうが、こんなに安いのだからドカンといっぺんに頼めばいいのに、とお節介ながら思った。どこから情報を得るのか結構外国人もやって来るが、有名になりすぎて顧客のポルトガル人労働者が追いやられる事の無いように切に願う。
さてここで問題。店内に時計はいったいいくつあるでしょうか? 正解者は当店でのお食事ペアでご招待!…だとうれしいね。
それにしても燃料サーチャージ額、なんとかならぬのか。あれじゃ実質運賃倍額。
サーチャージ、そんなに高いのですか… 水素やソーラー電池で飛ぶ飛行機が開発されるといいですね。