ギリシャカフェ 3
2023年 05月 07日
土曜日はリスボン市の主催するお墓ツアーが行われる。中には壊れて中身(棺)が見えているモノもあるが、立派な彫刻で飾られたギリシャ神殿風、ステンドグラスの窓のある中世の教会風、アズレージョを貼ったポルトガルの民家風など色んなデザインのお墓があり、なかなか面白い。墓の主がどんな人だったのか、装飾にどんな意味があるのか等の話を聞くのも興味深い。同好の士のJOJOさんとプラゼーレス墓地の見学の後、近くにあるギリシャ料理店でお昼を食べることにした。
かつては労働者の住む長屋だったと思われる建物に、ギリシャ文字風の青い看板がある。うなぎの寝床のような奥行きがある造りで、中に入ると薄暗いが、目を凝らせば白壁と青いストライプといういかにもギリシャっぽいインテリアだ。メニューには簡単なギリシャ語が紹介されている。英語やポルトガル語に共通する言葉はほとんどない。料理名も然りだが、どんなものかはポルトガル語の説明がある。以前行った別のギリシャ料理店ではオリーブオイルの中に肉が泳いでいる様なものを食べたが、ここにはどんなものがあるだろうか。
前菜はピタパンにつけて食べる4種類のペーストと、葡萄の葉でご飯を包んだドルマを選んだ。どちらもヨーロッパというよりは中東系の食べ物で、ギリシャがオスマン帝国の一部だったことを想起させる。きゅうりとヨーグルトのサラダ、ひよこ豆のペースト(フムス)、茄子のペースト、クリームチーズを、カリッと焼いたハーブ入りピタパンにつけて食べると、それだけで満腹しそうなボリュームがある。細長い皿には徐々にこってりする順番でペーストが並び、4番目のクリームチーズを食べた後になれずしのような酸味のあるドルマを食べると、さっぱりと口の中がリセットされ、再びヨーグルトときゅうりのサラダから順ぐりにループするのである。
メインは茄子と炒めた挽肉とマッシュポテトを重ねて焼いたムサカと、スパイシーな挽肉をソーセージ状にして焼いたのにピラフを添えたものを注文した。どちらもサラダと茹でた馬鈴薯が付いてかなりのボリュームだ。ムサカはポルトガル料理のエンパダンというマッシュポテトと挽肉をオーブンで焼いた料理に似ているが、ギリシャ版は茄子をベースにし、トマトと数種類の香草を使って挽肉を炒めているのが特徴であろう。ソーセージの方は更に多くの種類のスパイスが使われているらしく、エキゾチックな香り。ピラフは時折カリッと歯に当たるピーナツの食感と香ばしさが新鮮だ。
辛いもの好きのJOJOさんは激辛ソースをつけながら肉を食べる。黒い瓶のピリピリソースはポルトガルで一番辛いやつで、一滴で口内が熱くなる程の威力があるが、それを和らげてくれるのが、ギリシャの微発砲の白ワイン。初めは甘くてちょっと失敗したかと思ったが、口の中の火消しにピッタリだった。締めにギリシャコーヒーを頼んだのだが、食べ物は皆美味しかったのになんだこりゃな味だった。トルコ式なのだろうか、十分にローストされていないコーヒーの粉を直接お湯に入れてかき混ぜた様な味で、残念ながら半分も飲めなかった。粉が完全に沈澱するのを待てば良かったのだろうが。今回はデザートはパスしたので、次回は甘いものと共にもう一度ギリシャコーヒーにチャレンジしたい。
ただ目をあげれば、かつての遺跡はそのまま白い神話の世界、そこに乱入する路上のパン売り屋台やら、わいてでてくる野良猫やら…。ポルトガルとはまたちがうシュールキッチュな魅力がありました。
ひなびた雰囲気が魅力だったのに、路地でおばあちゃんが七輪で鰯を焼くイメージは無くなり、ちょっと残念。でも燦々とした太陽は相変わらずです。
6月はお祭り月間、鰯月間なので、アルファマの路地鰯も復活します。ぜひおいで下さい。